「表現は翼ですよ」
(略)
「飛ぶことに意味はない。飛びたいから飛ぶ。飛べるから飛ぶ。それだけ。だけど、飛ぶためには技術が必要です。持って生まれたものだけじゃなくて、技術……飛びたくても、それを見につけてない人は飛べないでしょう?」
(略)
「飛べる人は飛ぶべきだ。僕はそう思うんですよ」
小さな活版印刷所、三日月堂にやってきたお客さんたちの物語。
わざわざ三日月堂に来る人々っていうのは、デジタルで色々と出来る時代に、活版印刷に興味を持ったり、それで何かを作ろうって人々ですから。
表現方法のひとつとして「活版印刷」をことばの可能性を見てくれている、という感じがして読んでいて心が温まります。
今回は「ちょうちょうの朗読会」、「あわゆきのあと」、「海からの手紙」、「我らの西部劇」の四話を収録。
冒頭の「ちょうちょうの朗読会」が結構いい感じでした。
店主の弓子さんが「いまできることだけをやってたんじゃ、ダメ」と、想いを新たにする場面とか好きです。
朗読会で取り上げられていた作品は知らなかったのでいつか読んでみたい……いつかとか言ってると、記憶の彼方に行ってしまいそうですが。
あとは表題作の『海からの手紙』でしょうか。
銅版画をやっていたという女性が、三日月堂を訪れて。
弓子さんと交流して、気が付いたら豆本を作る流れに。
まぁ、過去を吹っ切るきっかけになったというか、楽しそうにやっているからいいんじゃないですかねぇ。
他の2作も味わい深い感じでした。
元々、弓子の祖父がやっていた店を彼女が継いだという形で、失われつつあった三日月堂に灯がともった感じでしたが。
残された者が、残して行った者、残されていた物とどう向き合うかという話にもなってきて。
残せる物が果たしてどれくらいあるだろうか、何て考えたりしましたけど。
シリーズ3弾が出てくれることを祈っております。