気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

感想(ライトノベル)

9S〈ナインエス〉true side Ⅹ

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「一つだけ助言を。あなたという人間の本質は、否応なく鳴神尊の継承者です。ゆえに真目不坐や勝司などの言葉はまやかし程度に思いなさい。他人の視点はあてにならないと知りなさい。あなたはあなたの目で見て考えて解釈するのです。そのためにまず鳴神尊の使い方を熟知するのです。強さを追い求めるために作られた小刀。ならばその本質は強さの中にあります。本質をしれば、あなたは鳴神尊を自在に操れる。私はそう思うのです」

 

再読。

脳の黒点と禍神の血だったり、峰島勇次郎の研究との関係といった話の軸というのが明確になってきて……この10巻からは「true side」とつけられて展開していくんですよね。

また、9巻までのイラスト担当していた山本ヤマトさんが多忙のため、ここから増田メグミさんに変更となってます。

 

闘真との決別を選んだ由宇は、自由に外を歩いた結果として得た絶望を抱えたまま地下深く沈み込んでしまって。

これまでの鳴神尊の継承者は脳の黒点が内向き……つまりは自己の変革のために作用していた。けれど、闘真はそれが外向きであり変革を周囲にもたらしていく存在になっているということに由宇は気付いていて。だからこそ、次に対峙した時には殺さなくてはならないと悲痛な決意をしていたわけですが。根が善良なので、抱え込んじゃうんだよなぁ……本当に。

 

一方の闘真も、敢えて父・不坐の下に飛び込むことで自分の血についての理解を深め、由宇の敵になるだろう父に備えようとしていたわけですが……元の性格もあって、なかなか進展はしていない模様。

口絵でホットケーキ焼いてクレールと才火に提供しているの、ほのぼのしすぎてて笑っちゃった。

 

今回の遺産騒動の舞台はシベリア。

短編集「memories」にて、日本に亡命してきたマッドサイエンティスト、セルゲイ・イヴァノフが遺した研究所に放置された技術が、二十年の時を経て表舞台に躍り出てくることに。

ロシアの駐在武官から、その事件に関する映像を見せられた伊達は、懐かしい女性の姿を確認したわけですが。

 

ロシア側はADEMに協力を要請を出してきたわけですが……機材の持ち込みに制限を掛けられたり、派遣人数は文官三名と制限を掛けられたり……さらにはそのうちの一人に重要人物である岸田博士を入れろと言ってきたり、なかなかのみ込みがたい条件を付けて。

昨今の情勢で、日本ひいてはADEMの立ち位置は微妙になっているし、遺産関連も織り込んだ第三京都条約が次の安保理で締結される状況だから、条件飲んでくれるならそっちで協力するよ、とは言っているわけですが。……胡散臭いなぁ、という気はする。

実際、ロシアの新たなマッドサイエンティスト、イワン・イヴァノフの描写があったりして、またややこしくなりそうだとは思いましたね。

 

諸々の状況を踏まえて伊達は条件を呑んで人員を派遣したわけですけど。

マモンと八代が減圧室からようやく脱出できるタイミングだったのは、運が良かったか。……というか先の事件から2週間程度で、規模の大きい遺産事件が起きるんだからADEMに暇なしですね……。

第三京都条約の決議が2週間延期されたことで、第二京都条約の期限が切れた1週間の間だけ使える、Bランク相当の技術を使った耐衝撃スーツを引っ張り出してきたのには笑いましたが。法には従うけど、裏技も駆使してくる強かさは好きです。

 

ADEM側が行動を開始したのと同時に、真目家に戻った闘真も勝司から情報を得てクレールの母とクレールを再会させようと、シベリアの渦中に飛び込むことに。

先代の継承者、蛟の妻でもあるわけですからヒントを得たいという事情もありましたが。

 

あの短編から果たして彼女は一体何をしていたのかと思えば、ミネルヴァの創設者でもあったとか言う情報が出てきて。海星みたいに遺産犯罪撲滅を誓う組織だったものの、遺産の毒に飲まれてあんな犯罪者集団に堕ちたとか。

……それを思うと、幼少期の由宇を保護した上で今まで変節することなくADEMという組織の在り方を貫き続けている伊達って、思っていた以上の傑物なんじゃないですかね。

 

ADEMから派遣されたマモンはイワンを探った結果消息不明に。八代、岸田博士はそれを確かめるべくイワンに近づき、こちらも姿を消してしまって。

闘真たちも無機物生命体の危機にさらされるど真ん中に飛び込んでいるわけですし、どこもかしこもスリル満点でどうなるのかハラハラしますね……。

9S〈ナインエス〉Ⅸ

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「僕は由宇が好きだ。大好きだ。由宇が、誰よりも大事だ」

由宇の背をまっすぐに見つめて、闘真はずっと言えなかった言葉を口にする。

 

再読。

あとがきでは59巻を纏めて「ADEM&海星編」としてもいいかもな、と書かれていましたが。海星を巡る騒動に決着がつくことになる1冊。

海星陣営の工作によって予期せず沈むことになったスフィアラボ。

脱出過程でトラブルがあって由宇が放り出されて、闘真が助けに出たことで更にADEM陣営も分断されることになったわけですが。

キスした直後だから若干気まずそうにしてる2人が実に微笑ましくて良かった。

 

ただ状況はかなり悪くて。2222ポイントに沈んだフリーダムの探索に乗り出した闘真たちですが……由宇に隠し事はないかと切り込まれたタイミングで、闘真は彼女の姿を見失ってしまって。一人でさまよった中で因縁の相手であるベルゼブブと対面することになったりしてましたしね。

スフィアラボ側もレプトネーターが投下されて、由宇不在の状態で対処しなくちゃならなくなって苦戦する状況に陥ってましたし。

それでも誰もが諦めず足掻き続けて、苦境を打破してくれたのは痛快でしたね。

やっぱり海底から由宇と闘真が脱出するための方法がユニークで笑えて好きです。

 

面白さでいえば減圧室にマモンと一緒に隔離される、という方法で彼女を無力化した八代が、本当にチェスやったりして時間潰してるの笑っちゃった。

外ではドシリアスな展開やってるのに、なんかここだけ空気感違うんだよな。2週間も隔離されるとなれば、まぁ緊張状態続けられもしないでしょうけども。

後はスフィアラボの復帰作戦、成功確率が低いけれど伊達と由宇がそれぞれ「0でないだけマシ」という同じリアクション示していたのもなんか好きです。

最後に不坐がやってきたことで、またしても由宇と闘真の道が分かたれることになってしまったわけですが……最後にこれまで言えてなかった言葉を口にできたのは良かったか。



推しにささげるダンジョングルメ 最強探索者VTuberになる

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「いろんな意味でアレな台詞なんで、口説いているように聞こえるかもしれませんが。――俺って、徹頭徹尾あなたに笑ってもらうためにしか動いてないんですよ?」

 

現代にダンジョンが現れてそこに挑む探索者という職業が登場した世界。

より深くに挑める上澄みの探索者は物理法則とか超越した力をふるったり、これまでの常識にとらわれないアイテムを持ったりしているようです。

ダンジョン産の食材は超高級食材として流通してたり、一応の法整備も進んでいる中で、そういう職業・文化の一つとして受け入れられている状況になっているようです。

 

そんな世界で生きる主人公の夜桜猪王は、一度ハマったことには猪突猛進で突っ込んでいくタイプの青年で……。

高校入学と同時にダンジョン探索資格を手に入れて、ダンジョンに潜り……深部で活動できるだけの実力を身に着けた。

ただ学生時代に十分に潜ったから今はちょっと飽きてきているぐらいで……最近の趣味であるVTuberの配信を視聴していた時に、推しがダンジョンの美食を堪能している場面を目撃して。

……そこで彼は思ってしまったんですよね。「自分もVTuberになって接点を得て、推しにダンジョン産のグルメを届けよう」と。

 

そのあまりにも強すぎる行動力と、強いメンタルによって実際にデビューを決めるんだからお見事というかなんというか。

彼が所属することになった事務所デンジラスも、基本は女性VTuberが活動している事務所であるけれど、過去に所属した男性VTuberがアンチの反発にあって辞めてしまった過去があって。

主人公は素人が企業所属でデビューを決めて、目的のための導線ができてラッキー。

企業側も鋼のような強さのメンタル持った新人を確保できて、再チャレンジが出来るということでお互いに得る物がある状況ではあるようです。

デンジラス側のマネージャーさんも、主人公のメンタルを買いつつかつての失敗を繰り返さないように、色々と気を配ってくれてるようでしたし、良い縁が出来たなぁという感じでした。

 

とは言え、群雄割拠の時代でもあるし、女所帯にいる男ということで目は厳しく……同期とのコラボも控えている状況で、新人の男VTuber山主ボタンの数字は思うように伸びず。

テコ入れとして、ちょっとだけリアル事情……彼が探索者であるということを明かして、ダンジョングルメを堪能する配信をすることに。

VTuberとしての山主ボタンも猟師設定になっていたこともあって、親和性は高かった模様。

まぁそこでお出ししたのが、名前もろくにしられておらず専業で食べていけるクラスの探索者を蹴散らせるヤバいモンスターを引っ張り出してくるんだから、そりゃ話題にもなりますわ。主人公的には楽に倒せる部類みたいですけどね。

 

ちなみにダンジョングルメを食べる配信をしている配信者もいるにはいるみたいですが……ギリギリ市場で買える範囲のものに収まっていて、主人公みたいに超希少食材を持ってきたりはしてないもよう。自分で取りに行くボタンみたいなのは例外もいいところで、一流の探索者に依頼すると費用もうなぎ上りで、実際テコ入れに相応しいブルーオーシャンではあったようです。

そうやって数字を獲得して同期とのコラボも解禁されて、少しずつ上手く回り始めたかというところで、予期せぬ方向から火種が飛んできて……。それにグレーゾーンの手を使ってはいましたが、一応合法な手段を用いて解決してのけたのはお見事。

9S〈ナインエス〉memories

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「記録映像になくて、写真にあるもの、それは気持ちだと思います」

「気持ち?」

「ええ、気持ちです。写した人の気持ち、写された人の気持ち、そして写真を見る人の気持ち。きっと気持ちを残すために写真を撮るのでしょうね」

 

再読。8巻と9巻の間に刊行された、シリーズ2冊目となる短編集。

メモリーズのタイトル通り、主要キャラの過去編をたっぷり三編盛り込んだ1冊。

 

1話「夏の日の空になりたい」。

ADEMに入局して四か月目の時に、八代がNCT研究所を初めて訪問した時のエピソード。

人手不足ゆえにこき使われて、ゲノム・リモデル技術実験の哀れな被検体であるドーベルマンのような黒い犬を運び込んだようですけど。

 

それを峰島由宇に見せて情報を貰おうとしたわけですが……初期のまだ刺々しかった時期の由宇が見られたの懐かしかったですねー。いや再読で一気に読んでるんですけども。

態度はつっけんどんですけど、隠していた身体能力を発揮して八代や岸田博士を助けたあたり、人の好さは相変わらず。八代がそのことをいつまでも覚えているのも彼らしくて良かった。

 

2話「Romantic holiday」は、由宇に麻耶がアルバムを見せるシーンから開始。

監視カメラでずっと観察されていたから記録としては残ってるだろう、というあまりにもあんまりな由宇に、「思い出を記した写真と、記録では意味が違う」とちゃんと指摘してくれる麻耶ちゃんは偉い。

そして、そこから闘真と麻耶の初対面の頃の話になっていったわけですが……。後に読んだ報告書を基に自分も知らないタイミングの話も盛り込んだりして、脚色して話すの面白かったですね。

 

3話「亜麻色の髪の娘」。

一番時間軸としては過去……二十年前を描くお話。

まだマッドサイエンティスト峰島勇次郎の存在が知れ渡っているわけでもなかった時期であり……伊達もまだADEM司令ではなくて。

「マッドサイエンティストの護衛」という任務に従事している彼が守ることになったのは、セルゲイ・イヴァノフというロシアからの亡命者だった。

その傍には亜麻色の髪色のクレールというなの女性が居て……本編時間軸に繋がってきそうな描写とか、今は亡くなっているキャラとかも居て、過去編として良いエピソードでしたね。



9S〈ないんえす?〉SS

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「私に女らしくなれとほざいた不届き者がいる。むろん根拠のない不当な評価だ。私は充分に女らしい」

 

再読。6巻と7巻の間に発売された短編集。

1話 峰島由宇、ただいま花嫁修業中!」「2話 峰島由宇、ただいま乙女の修行中」は、「5話 由宇と麻耶、二人で花嫁修業中!」。

闘真に「もう少し女の子らしくしたほうがいい」と言われた由宇が、「どうしたら女の子らしくなれるのだろう」と考えるようになって……。

 

刃物こそ貸出が許可されなかったものの、まずはパンケーキでもということで料理にチャレンジしたわけですが。

フリルエプロンを着て楽しそうな由宇を、涙ながらに見る岸田博士の挿絵あったの笑っちゃった。

そして作り上げられたものがアレなのが……うん。実験とかはできるだろうに料理に失敗するの、なんでやろな……。裁縫の方はいっそ見事な腕前でしたけども、関係したブツがアレだと思うと……うん……。

 

他には逃走時の横田家に滞在していた時、由宇は自分の下着とかの扱いも粗雑で……そういう所が女の子らしからぬと言われるところではあるんだけど。

ちょっとズレているところはあるけれど、だからこそ峰島由宇らしくて好きです。

5話は書き下ろしで……タイトル通り由宇と麻耶が花嫁修業するという、12話と似たテイストの話ですが……闇に葬られる事件になってしまったのは……うん……2人の良いところは別のところだからね、はい。

 

3話 男の生き方、プライスレス」は八代の配下として動いている萩原君。

危険な任務に派遣されることが多いものの、その嗅覚で無事に帰還するリターナーとしての才能を買われている彼ですが。

元々は警察に属していたようですが、危機回避の勘……その理由を人に説明できなかったため腫れ物扱いというか、上部も上手く扱いかねていたようです。

退社したのちは警備会社に入っていた萩原君、燻っていた状態だったわけですが。そんな彼を見出した八代に引っ掛けられてADEMに参加することになっていった経緯についてのエピソードでしたが……初期からあの2人らしいやりとりをしてて笑えました。

 

4話 Lady Steady Go!?」はアメリカからやってきたアメリアと、アドバンスLC部隊のあきらの交流がメインの短編。

アメリアの事が気掛かり……というか、伊達を狙っている関係で一方的にライバル視してるようなあきらですが。アドバンスLC部隊にいるだけのことはあるというか、やろうと思えばしっかり頭も回るし腕もある有能な人材なんですよねぇ。

ウンディーネを巧みに操って光学迷彩みたいな使い方したり、結構柔軟なのは良かった。

文庫用の書き下ろしなんですが、本編に居れようとしたものの入れる場所がなく断念された話を復活させたものだったようですが、確かに闘真や由宇が絡んでないエピソードで本編にはなかなか盛り込みにくそうではありました。でも良いノリで楽しめたので、こうして読めたのはありがたかったですね。

9S〈ナインエス〉Ⅷ

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「解っています。でも私は必ず実現させてみせますわ。それがどんなに困難でも」

麻耶が微笑む。その微笑を見て伊達は、不坐に確かに似ているが、不坐とは違うとも思った。

「由宇さんが明るい陽を浴びて暮らせる場所を、この世界に作り出して見せます」

 

海星は一機のフリーダムを失ったものの、二機目に乗り換えて逃亡。

そして、全世界の遺産犯罪者への宣戦布告を行って、遺産を悪用している勢力を排除しにかかった。悪の道に進もうとも、巨悪を叩けるのであれば構わないという覚悟があったということのようですが。

理念としては、間違ってないんでしょうけど。実際、あきらとかも単純に海星を悪と批判するのではなく、その理念は正しくとも海星の在り方は間違っているから倒す、という判断を下していたのが良かったですね。

 

ただまぁ……苛烈な道でありますよね。実際、黒川たちも歴史に悪名を残すだろうし、命を掛ける前提で動いているのが厄介過ぎる。

フリーダムのステルス機能は優秀だし、由宇とリーディング能力で繋がった経験のあるマモンがその能力を発揮してるのも面倒ですが。

由宇は自分の知識が奪われたことに責任を感じてちょっと落ち込んだりもしてました。自白剤や毒を打たれたり、その前からして体調を崩していたわけですから。海星から由宇を取り戻してから2週間も眠り続けていたのも仕方ないでしょう。

 

それを仕方ないと素直にのみ込めるタイプの子ではなかったわけで。闘真は由宇の事をきにかけて、元気づけようとしてましたがなかなか上手くいかず。

……朝倉と闘真が仲良いのかと嫉妬したりしてる由宇、可愛かったですよねぇ。中盤、麻耶も焚き付けるために奮闘したりしてたし、闘真も嘘を交えつつ彼女を動かすことに成功したわけですが。

 

それで由宇の意識が別のところに向いたところに嫉妬した闘真の行動よ……どっちも臆病というか線を引いてるところあったから、一気に踏み込んでいくのもアリなのか……? その後ハッキリ言葉にできなかったのは減点ですけど。

この8巻終盤には由宇の心情とかも言葉にされていたの良かったですねぇ。「伝えたいこと、言ってやらなくては気が済まないこと」を是非後々ぶつけてもらって。すれ違いを挟みつつ、長期化させないのはありがたい。

 

由宇が再起して海星を止めに動いたわけですが……ルシフェルと対面したことでシミュレーター作ってレプトネーターを潰したり、黒川の思考パターンを予測して作戦妨害したりしてやっぱり由宇が活躍してくれるの良かったですねぇ。

一方エピローグで消息を絶った不坐の調査に赴いて……過去の再現映像を目撃して、何が起きたのかを知ることになっていましたが。麻耶、たびたび悲鳴上げたり泣いたりしてていい子なのに可哀想に……。



望まぬ不死の冒険者1

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「……お前はここ最近、何かに呪われているかのように、おかしなものに立て続けに遭遇するな?」

 

大陸端にある辺境国家ヤーラン王国のさらに端にある都市マルト。

主人公のレント・ファイナなそこで冒険者として活動していたものの……階級としては長年銅級下位で停滞していた。

面倒見が良く後輩冒険者の世話を焼いたり、こまごまとした依頼を片付けたりで、階級のわりに顔が広く色々な人んい認められている人物ではあったようです。

ただ、そんな彼の目標は冒険者としてトップクラスの神銀級冒険者になることで……その夢に対して、彼の実力は足りていなかった。

 

日々ダンジョンに戻って日銭を稼ぐ。そんなローテーションを繰り返していたある日、彼はダンジョンに見慣れない通路を発見して。

本来ならそんな怪しい場所には踏み込まず逃げるべきだった。しかし、その日の彼は魔が差して奥へと踏み込んでしまい……最高位の魔物「龍」と対面し、殺されてしまうことになって。

 

そこでレント・ファイナの物語は終わるはずだった。

しかしなぜか彼は、骨格だけで動く魔物……スケルトンの姿で復活。「年月や経験を経た魔物は、存在進化と言って上位存在へ変貌することがある」という知識を持っていた彼は、せめてスケルトンよりは人間に近いグールへ進化しようと魔物討伐に勤しむことにして……成功。

 

拙いながらも発声ができるようになったことで、新人冒険者を助けてコミュニケーションを取ることも出来て。

その伝手で服を買ってきてもらったり、一緒に付き添ってもらったりして、ひとまず街に帰れるくらいの状況にはなって。ただ、それでも冒険者ギルドに「レント・ファイナ」として顔を出すと討伐対象になってしまう危険性があるため、接触できるのも限られた範囲にはなってましたけど。

少しずつ存在進化したり、縁を増やしたりして望まぬ状況からの脱出を果たそうとしているのが良かったですね。まだまだ先は長そうですけど、めげずに頑張って欲しいものです。

9S〈ナインエス〉Ⅶ

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「由宇。ごめんね、遅くなって。由宇。由宇。……助けに、きたよ。由宇」

熱に浮かされたように、少年もまた由宇の名を何度も呼ぶ。それにどれだけの想いが込められているのか、由宇には解らない。ただ、名を呼ばれるたび、熱い涙があふれた。

 

再読。ADEM編第三弾! 上中下でも終わらなかったから、完結編が追加されるよやったね! たくさん読めて、嬉しい。

プロローグは黒川視点。紛争地帯に赴いて、海星でも副官になっている福田と様々なものを見て……今実行している計画について決断を下して。理想を抱いている人物ではあるようですけども。

 

由宇に投与された毒のカプセルの残り時間はわずか。

闘真は解毒薬を持って敵拠点のフリーダムへと乗り込む事を決めて。

海星の精鋭を蹴散らして由宇と再会できたのは何より。

再会に歓喜した闘真が由宇を抱きしめたのも、これまでは共に戦っていたけれど今は完全に助けられる側に回ったことと、闘真との距離の近さに由宇が照れているの可愛くて良かったですね。

 

そんな尊いシーンに七つの大罪のアスモデウス達がちょっかい出しに来て……2人は危ない賭けに踏み切ることになってしまったわけですが。勝ちの目を拾ったのはお見事。

由宇を取り逃がし、スフィアラボも入手できず……その上で、一番大事なものはNCT研究所の選挙が第一目標である、と方針を切り替えられる黒川は厄介ですねぇ。

厄介さでいえば、七つの大罪のマモンが六道家の舞風という人間であり……従兄弟の才火を連れている勝司が麻耶の見舞いに来て情報提供していたのも、それによって妹を盾にしようとする目的もあるという点で油断ならない。

……まぁ、それもADEMと連携してるから避けられないことだろとけむに巻く勝司、真目家の人間だなぁ……って感じで好き。

 

由宇を庇護した麻耶が、戦闘能力がない身で由宇をして油断ならないと考えていた七つの大罪ルシフェルと対峙したの、覚悟が見えて良かったですねぇ……。

NCTに籠城している伊達たちも、サタンという埒外の七つの大罪相手に上手く時間を稼いでいたのお見事でした。

マモンまで合流して研究所のバトルが激化していましたが、彼女に対峙するのがLAFIとの接続を経た朝倉さんだったり、八代だったりしたのが総力戦感が出ていて良かったですね。

最後に黒川の油断をついて一撃をお見舞いしたのも、ADEM司令としての伊達の格を見た気がする。

9S〈ナインエス〉Ⅵ

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「いつも僕は君に助けられてばかりだ」

――必ず、助けるから。

心の中で、決意をもう一度繰り返した。

 

再読。ADEM編第二弾。上下巻ではまぁ終わりませんでしたねぇという感じで。

海星は由宇を捕らえ、ADEMを抑えようと兵隊を動かして、敵対ムーブをかましてきたわけですが。LC部隊も抑えに動いているあたり用意周到ですねぇ。七つの大罪ともつるんでいるし、厄介極まりない。

ADEM本部の破棄を八代が決断して間に合ったのは良かったか。NCT研究所に伊達と岸田博士が立てこもることになったわけで、権限が奪われている状態ではなかなか厳しい状態に追い込まれてますねぇ。

あくまで表面上は法に則って動いている素振りをしているものの。七つの大罪と繋がっていたり、アメリカが開発していたフリーダムという兵器を奪っていたりするのは、切り札でありアキレス腱でもあると八代が指摘していたのは良い着眼点でしたね。

 

闘真の奮闘を見た萩原が「禍神の血を献血したらどうなるんだろ」って言ってましたが、継いでいる血だけじゃなく、脳の黒点が重要だからそこまで影響はないんじゃないかなぁ。……まぁポケポケ闘真が献血に行ったら真目家が回収とかするでしょうけど。なんかそれどころじゃないけどちょっと笑っちゃった描写でした。

 

由宇を救うために別行動をとり、研究所内部に残った闘真。

LAFIサードの風間を連れて動いていましたが。それを察知した海星の黒川が、出入り口全部コンクリートで固めてしまえ、と言ったの的確に嫌な行動ではあったか。

……そしてついに、その場所に峰島勇次郎が現れたわけですが。彼の創作した口笛を闘真が知っていたり、気掛かりではあったか。

使えなくなった鳴神尊の件についてアドバイスをくれたのは助かりましたが、怪しすぎるんだよな……。

それで過去の闘真を呼び起こして、大暴れさせることで封じられた研究所からの脱出は叶いましたが。闘真の裏人格は裏人格で相変わらず危ういなぁ。

 

捕らえた由宇に自白剤を投与したり、黒川たちのやり方は気に入りませんねぇ……。

でも、遺産関連技術を暗号化して覚えていたり、相手の思考を読み取って破壊する七つの大罪のマモンに読み取られても反撃してのけたり、由宇も一筋縄でいかないところを見せてくれたのはまぁ良かったですが。

これだけの事をしでかすあたり、黒川も油断ならないのはまぁ……これまでの由宇の在り方を見てきてると腹正しいけれど、まぁ敵としての格が高いのは悪い事ではないのでぐぬぬ。

9S〈ナインエス〉Ⅴ

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『いざとなったら、坂上闘真』

「なに?」

『おまえが敵を排除しろ』

 

由宇と闘真はADEMからも真目家……麻耶からも離れ、2人で逃避行を開始。

彼らの目的地は、かつての勇次郎の研究所。彼が失踪し、由宇が拘束された因縁の地であった。

由宇は希望でミネルヴァ相手に暴れた後、治療等を受けていないこともあってガタが来てしまっているというのは不安材料ではありますね。

その道中、横田さんの家族の家を訪問してましたが。横田健一氏、「簡潔明瞭に解説されたLAFIの理想の論文」を纏めていたとかで、素晴らしい人だったんですねぇ。有能すぎて消された説。

 

一方のADEMも穏やかではなく……変異体木梨の暴走による被害。重要監視対象である峰島由宇の逃走。

その後の【天国の門】を巡る騒動でも、由宇を捕らえられなかったこと。

そういった事情からADEMに解体の危機が迫ることになってしまって。

伊達のかつての後輩である黒川が、自身が率いる低烈度紛争対策組織「海星」の司令としてADEMの権限剥奪の場に介入してきて。

 

前任者としてハウツーを学びたいという論で、ADEMの即時解体ではなく一部を残した特権の凍結に収まったのは、ギリギリ踏みとどまったと言えるか……?

「今日限りで凍結」というのを活かして、今日中にできる事している伊達と八代が好きだなぁ。強かだ。

お互い昔とは変わっていたり、変わっていない部分もあったりして。今の黒川には不穏な噂が付いて回っているようですが、「ADEMの正義は、俺が受け継ぐ」という言葉自体は本心だったり。かつての黒川は清廉潔白だったと伊達が語っていたりして、彼の真意はなかなか伺い知れない部分がありましたが。……まー不審は不審でしたね……。

 

アメリカでも秘密裏に開発されていた遺産が盗難される騒動が起きていて、エージェントが日本に派遣されることになったりもして。相変わらずいくつもの思惑が絡んできますねぇ。

さらには「七つの大罪」と呼ばれる遺産技術を用いて、都市伝説のような実績を積み上げてきた傭兵集団が来日してきて、由宇達に襲い掛かってきたのも厄介でした。

しかも七つの大罪が扱う遺産技術は由宇の頭の中にないもので……それはつまり、消息を絶った後の峰島勇次郎が開発したものである可能性が高かった。

先の事件からどんどん峰島勇次郎の影が濃くなってきてますねぇ。

由宇は最悪の場合、自分の知識の悪用を避けるべく死ぬ事を考えていましたが、闘真とのやり取りで踏みとどまってくれたのが良かったと言えるような未来を掴んで欲しいものです。踏ん張れ、闘真。

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
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