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「現実や真実なんかより よっぽど愛すべき嘘ですよ」
シリーズ累計50万部突破、目出度い!
49~53話、描き下ろし漫画「吹き続く風」、書き下ろし小説「ヤックの料理メモ(領軍時代)」を収録。
性別も身分も偽り、男子として過ごしていたアーサー。彼が実は「彼女」であることに気付きながらも、口を噤んでいたアッシュやマイカ、当然把握していたイツキたちは、極力彼女の心を乱さないように、密かにスパイを排除したかったわけですが……。
どこかで情報を掴んだらしく(WEB原典『フシノカミ』の断章「熟練密偵の憂鬱2」で種明かしあり。まったく情報ポロったバカはさぁ……)、ノスキュラ村近くまで近づいてきて。
それを察知して、アーサーに耳打ちして、彼女を落ち着かせつつ、敵を足止めするための罠を仕込んだり、しっかり反撃をしているアッシュ君の活躍っぷりよ。
アッシュから耳打ちされた時、アーサーの心境に沸いたのが、自分に敵の刃が近づいている……死ぬかもしれない、という恐怖ではなく。
アッシュから予期せぬ言葉を聞き、自分の秘密に気付かれているのではないか。これまで、自分が彼を騙し続けていたことが、バレてしまっているのではないか、という恐怖だったのが、彼女の心境を示していいですね。
それだけ、アッシュという存在がアーサーにとって大きい現れだと思えて好きです。
アーサーが自責の念に駆られていたところで、彼女の手を取って、前を向かせているのが良いですよねぇ。
密偵側も罠にかけられたり毒を盛られたりして削られつつも、人数を分けてアッシュの気を引きつつアーサーに迫ったりしていたのは、ちゃんと仕事しているな、という感じではありましたが。アッシュ君を敵に回した時点で運命は決まっていたと言えますね……。
しっかり罠を使ったり潜んでからの射撃で仕留めたりと、やっぱり戦闘的に言うとアッシュの適性は剣士とか騎士じゃなくて、狩人とか暗殺者なんだな……というか。
当人的には夢追い人、その実現のための研究者・探求者でありたいんでしょうけど。……夢への障害があれば戦うことを厭わないですからね、彼。
表紙にもなっている、夜アッシュとアーサーが月を見ている場面良いですよね。
アッシュの「嘘って好きですよ」の台詞とか、そこからアーサーが自分の本当の名前を打ち明けるまでの流れとか。シリーズの中でも屈指の名シーンだと思っています。
絵伝版(コミカライズ)で、彼女の名乗るシーンで表情がハッキリ写っているの良いですねぇ。それまで泣いていたのもあって目元が赤くなってる風だったり、瞳が揺れていたりするんですけど。うっすらと空いている口元と併せて、女性らしい柔らかい表情に見えて、実に可愛らしい。
アッシュが本当の身分に気付いたシーンでドレス姿になっているのも良い。身分を偽るに至った流れを思うと決して良くないんですけど……ドレス姿の彼女は可愛いですね……。
捕まえた密偵、密偵らしく口を割らなかったみたいなんですが……。アッシュ君の診察と演技によって情報を明かすことになるシーンも、コミカルで好きです。
密偵が口を割る程度には、そして表紙裏で見張りになっていた騎士が怯えている程度には、真に迫った演技してるの笑っちゃった。
あと、診察するからちゃんとアッシュ君が白衣きてるのも芸が細かい。いやまぁ、アッシュ君はそういう所ちゃんとしてるよな、という納得もありますが。
「私があなたを治したいのです」の時の笑い方とか、「あなたまだ人間のつもりですか?」って言う時の興味なさげな顔とか、アッシュ君の演技上手いからそりゃモルモット57世も怯えるわ……ってなるんですけども。
アーサーの問題が解決して、アッシュが仲間たちとまた新しい技術に挑戦しようというパート。その挑戦の過程がすごろく風に見開きで描かれているの、漫画的な表現で凄いワクワクしましたね。
描き下ろし漫画「吹き続く風」は野営訓練中のヘルメスたち。森での行動に慣れてなかったり、毒キノコとかの見極めが難しかったりする姿を見ると、年相応な面もあるなぁと微笑ましくなって良いですね。
……その後の書下ろし小説「ヤックの料理メモ(領軍時代)」が、タイトル通りヤックの領軍時代の思い出も垣間見えましたが。ヤックの年齢と、軍という立場も考えれば、そりゃ死に別れた友もいるよな……っていうもの悲しさがありました。
その悲しさにとらわれすぎることなく、次代を担う若者たちが飢えないようにしっかり教えているヤックの在り方好きだなぁ……。