気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

電撃文庫

9S〈ナインエス〉true side XIII

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「私はもっと話し合いたかった。理解し合いたかった」

(略)

「何を言う。充分に話し合ったではないか。科学という正確無比なやりとりは、万の言葉より有意義なものだ」

 

ついにシリーズの決着を迎える最終13巻。好きなシリーズの完結はどうしたって喜ばしくも悲しいものですが。刊行の間が空いていたので、このシリーズに関しては見届けられた嬉しさの方が勝ったかなぁ。

 

閑話休題。鳴神尊の暗殺者は、当主の命令に逆らえない。

そんな悪縁すらも絶って闘真の裏人格は自由に動けるようになったわけですが。彼は、完全に世界の外へ踏み出してしまった峰島勇次郎が自分を介してこちらに干渉していることにも気付いて。人格切り替えスイッチである鳴神尊を破壊しようとしたわけですが。

裏人格もまた闘真であるわけで……彼との別れを嫌った由宇に止められることに。

 

岸田博士が峰島勇次郎と再会して、「実の親よりも親らしい」とか言われてましたが。

どの口でほざくんだこの野郎、という気持ちと今更親らしく振舞われても困惑するよなぁって気持ちが同時に沸きました。

由宇がグラキエスを滅ぼすだろうと確信し、闘真の行動を由宇が止めたことに感謝して、今自分がやりたい実験にウキウキ乗り出すのどこまでもマッドサイエンティストだなぁって感じがして、最終巻までブレなかったところは評価しても良い。

 

闘真の認識によって峰島勇次郎の干渉度合いが濃くなるという事実を由宇達も認めることになって。そこに当主である不坐を排除した状態で行われた真目家会議の結果を携えた麻耶の通信が繋がるのは良かったですね。

最悪の場合、殺すことも辞さないという覚悟を示した上で……闘真の存在が逆にこちらの手を峰島勇次郎に届かせてくれるかもしれないから、一番守らなくてはならないと結論を出したのも熱かった。

 

由宇と2人きりになった状態で闘真が真っ直ぐに「大好きだ」と伝えて、由宇もそれに応えているのはニヤニヤしてしまった。決別してからの復縁はめでたい。

その直前の会話で不坐から「お前の恋人はおっかないな」と、不坐が2人の関係を「恋人」と表現しているのも、たった一文ではあるんですが好きな描写でした。おっかないところもあるけど、闘真の前では可愛いんですよ、その子。

 

由宇が考えていたグラキエス対策に必要な最後のピースを、予期せず闘真が見つけてきたりしたのは良かった。スヴェトラーナとクレールの存在も、要所で光ってましたし。

マモンもまた要所で活躍してくれたりしてましたし。最終決戦に臨むにあたっては敢えて情報を拡散してみせる必要もあったりで、サブキャラ達にも役割があったのは結構好きな要素でしたね。

 

勇次郎と由宇がついに再会を果たして……科学の信奉者であった勇次郎に対して、もっと話し合いたかったといったシーンの地の文が良かったですね。闘真と会って、人と人の綱がりの大事さを知り人になれた、という描写がとても良い。

グラキエス対策、峰島勇次郎との決着。闘真の脳の黒点……もう一人の自分とのやりとり。そういった、これまでに描かれていた様々な出来事に決着がついて良く流れは熱く、一気に読んじゃいました。良い完結巻だった。

9S〈ナインエス〉true side XII

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「……伊達」

「なんだ?」

「決めたぞ。私は私の枷をとる」

 

11巻が20123月刊行だったらしいので、実に12年ぶりに刊行されたシリーズ最新刊。最終巻となる13巻と同時発売してくれたのは、本当にありがたかったですねぇ。

峰島勇次郎、元は峰島勇という名前だったけれど……由宇の才能を認め自分の名前を与え、自分は2番手であるという表れで「勇次郎」に改名したと。

勇次郎は基礎知識とかを踏まえず独自のルートで答えを導く異才であった。そして由宇は、幼少期から秀でており……一般的な文法に則って峰島勇次郎の技術を説明することが出来た、と。

 

まぁその理論を一から十まで説明しようとする部分で尖ってるんですが。より分かりやすく解説できる横田健一氏の才能についても想いを馳せてしまった。やっぱり有能すぎるから1巻で消されたのでは……?

岸田博士が峰島勇次郎のゼロファイルを流した……パンドラの箱を開けた、この物語の始まりを告げた人物であるということが11巻で明かされたわけですが。

伊達に対して、由宇を信じ続けて毒のカプセルなんて必要ないと言い続けた善性の人であることも間違いがなくて。

その岸田博士が不在の時に彼の存在を通じて、伊達と由宇の関係が少し変化したの良かったですねぇ。

 

伊達は彼女を信じて今回は毒カプセルを注射しなかった。そして伊達の決断を見た由宇は、自らに課していた枷を外すことを告げた。

すなわち遺産技術、という彼女自身が抱え続けた武器を開放することを。かなり良い展開でしたねぇ。シリーズの集大成というか、最終局面だなぁと思わせる熱量があった。

 

マモンと八代が救助されたシーン、ヘリで吊るされることになったシーン微笑ましくて好き。……グラキエスに襲われてる状況なのであんまりほのぼのできる状況でもなかったですけど。

あとは僻地に配置されて燻りつつも認められるためにイワンの蛮行も見逃してきた司令官であるゴーゴリが、いろんな思いをのみ込んで「誇り高く戦い誇り高く死ね」と部下に命じたシーンは、彼なりの意地を感じて良かった。

 

規模の大きな作戦になるので、伊達が交渉によって勝ち取った「海星の恩赦」によって、動かせる兵隊が増えたのはありがたかったですねぇ。

合法で動けるようになったことでロシアの兵も動かせてましたけど。人手があるに越したことはないでしょうし。

遺産技術を開放しただけあって防刃スーツとか、市販の防犯ブザーの音データを書き換えてグラキエス対策にしたり、由宇が有能すぎる。由宇の的確過ぎる分析による指揮、凄まじかったですね……

 

ただ、善性の少女であるため犠牲を許容する作戦の指揮を任せるのは……というのを、かつてネズミを撃った八代が提案するの良いですねぇ。アドバンスLCの蓮杖とかが後半の犠牲が出るタイミングの指揮を請け負ってくれたのもありがたかった。良い人材が揃ってるな。まぁ優秀な彼らをして、由宇の指揮を模倣するのはかなりの難行だったみたいですが……。

 

さてそんな風に由宇やADEM陣営が奮闘している中で、闘真が何をしていたのかと思えば……。

洞窟のような場所で目覚め、峰島勇次郎と対面することになってるんだから、彼は彼でどんな運命の下に生まれてるんだ……って感じのイベントと鉢合わせてましたが。

世界の外側を覗きすぎたせいで、境界線を越えてしまったためにほとんどの人から認識できない状態になっているとか、マッドサイエンティストの極致ってすごいと思います。

実際に対面していたというよりは、夢のような世界で一瞬チャンネルがあった結果のようでしたけど。勇次郎と会った直後に記憶を取り戻したスヴェトラーナと出会ってるわけで、悪運尽きることなしって感じ。

 

終盤、麻耶や勝司たちが真目家と峰島勇次郎の繋がりだったり、峰島勇次郎の目的だった李……グラキエスで再現された脳についての考察だったりをして、情報を整理してくれたのはありがたかったですねぇ。

同時に、物語が終わりに向かっていっているのを感じてちょっと寂しくもありましたが。

9S〈ナインエス〉true side XI

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「そう言うことじゃなくて。彼女は普通の優しい子です。彼女自身は。でも……。僕は彼女を守る力が欲しい」

(略)

「必要なのは強さであって力とは違いますよ。そこをはき違えると不幸になります」

 

再読。無気力状態の由宇よりも先に、無機物生命体……グラキエスの生息域を見抜いた岸田博士はお見事。その情報を聞いた由宇が計算したところ、地上を支配するのにかかる日数はなんと「十日」。予想以上に早いタイムリミットが切られることになって……由宇が自らシベリアに赴くことになったのは、一つの進展か。

いつまでも地下に引きこもっているのも、彼女らしくないですしね。

 

シベリアへと赴いた由宇は、すぐにイワンと話すために手近な兵士に駆けられた洗脳を話術に解いたわけですが。イワンも速攻で使えなくなった兵はいらないと切り捨てにかかったので、おっかないですねぇ……。従えてるいかずち隊からして死兵だからな……。

true side」で本当にいくつもの伏線回収されて行ってるの好きなんですよね。トンデモ能力者だったサタンもまた、今回猛威を振るっている無機物生物であり……グラキエスとは違う進化を遂げた存在である、というのとか。ちゃんと理由付けされていくの好き。

 

由宇が基地に侵入したのと時を同じくして、イリーナの母スヴェトラーナや闘真たちと行動を共にしていたミネルヴァのリバースも基地に入り込んでいて。

予期せぬ接点が出来ていたわけですが。闘真から由宇の話を聞いていて、彼の言葉を借りてフォローしていくたびに由宇が不機嫌になっていく描写、好きです。

グラキエスに飲まれた村々から生き残った人々を逃がし、難民を率いる状態になっているスヴェトラーナ達ですが。軍部の暴走によって全滅した街まで出ているとかで、もうメチャクチャですね。

さらにアリシアが不穏さを感じ取っていた通り、スヴェトラーナの記憶にも爆弾情報眠っていたのがもう……。

 

でも、伊達が上手く立ち回って交渉を成立させて、公的に認められた状態で介入できるようになったのはお見事でした。

マモンも八代も岸田博士も各々別の形で命を拾っていましたし、悪い事ばかりでもないですね。

……岸田博士だけ合流できていないのは気がかりではありますけど。最後、峰島勇次郎と旧知であった彼が行ったとあることについての描写があったのが、個人的には初めて読んだときに一番驚いた記憶がありますねぇ。



9S〈ナインエス〉true side Ⅹ

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「一つだけ助言を。あなたという人間の本質は、否応なく鳴神尊の継承者です。ゆえに真目不坐や勝司などの言葉はまやかし程度に思いなさい。他人の視点はあてにならないと知りなさい。あなたはあなたの目で見て考えて解釈するのです。そのためにまず鳴神尊の使い方を熟知するのです。強さを追い求めるために作られた小刀。ならばその本質は強さの中にあります。本質をしれば、あなたは鳴神尊を自在に操れる。私はそう思うのです」

 

再読。

脳の黒点と禍神の血だったり、峰島勇次郎の研究との関係といった話の軸というのが明確になってきて……この10巻からは「true side」とつけられて展開していくんですよね。

また、9巻までのイラスト担当していた山本ヤマトさんが多忙のため、ここから増田メグミさんに変更となってます。

 

闘真との決別を選んだ由宇は、自由に外を歩いた結果として得た絶望を抱えたまま地下深く沈み込んでしまって。

これまでの鳴神尊の継承者は脳の黒点が内向き……つまりは自己の変革のために作用していた。けれど、闘真はそれが外向きであり変革を周囲にもたらしていく存在になっているということに由宇は気付いていて。だからこそ、次に対峙した時には殺さなくてはならないと悲痛な決意をしていたわけですが。根が善良なので、抱え込んじゃうんだよなぁ……本当に。

 

一方の闘真も、敢えて父・不坐の下に飛び込むことで自分の血についての理解を深め、由宇の敵になるだろう父に備えようとしていたわけですが……元の性格もあって、なかなか進展はしていない模様。

口絵でホットケーキ焼いてクレールと才火に提供しているの、ほのぼのしすぎてて笑っちゃった。

 

今回の遺産騒動の舞台はシベリア。

短編集「memories」にて、日本に亡命してきたマッドサイエンティスト、セルゲイ・イヴァノフが遺した研究所に放置された技術が、二十年の時を経て表舞台に躍り出てくることに。

ロシアの駐在武官から、その事件に関する映像を見せられた伊達は、懐かしい女性の姿を確認したわけですが。

 

ロシア側はADEMに協力を要請を出してきたわけですが……機材の持ち込みに制限を掛けられたり、派遣人数は文官三名と制限を掛けられたり……さらにはそのうちの一人に重要人物である岸田博士を入れろと言ってきたり、なかなかのみ込みがたい条件を付けて。

昨今の情勢で、日本ひいてはADEMの立ち位置は微妙になっているし、遺産関連も織り込んだ第三京都条約が次の安保理で締結される状況だから、条件飲んでくれるならそっちで協力するよ、とは言っているわけですが。……胡散臭いなぁ、という気はする。

実際、ロシアの新たなマッドサイエンティスト、イワン・イヴァノフの描写があったりして、またややこしくなりそうだとは思いましたね。

 

諸々の状況を踏まえて伊達は条件を呑んで人員を派遣したわけですけど。

マモンと八代が減圧室からようやく脱出できるタイミングだったのは、運が良かったか。……というか先の事件から2週間程度で、規模の大きい遺産事件が起きるんだからADEMに暇なしですね……。

第三京都条約の決議が2週間延期されたことで、第二京都条約の期限が切れた1週間の間だけ使える、Bランク相当の技術を使った耐衝撃スーツを引っ張り出してきたのには笑いましたが。法には従うけど、裏技も駆使してくる強かさは好きです。

 

ADEM側が行動を開始したのと同時に、真目家に戻った闘真も勝司から情報を得てクレールの母とクレールを再会させようと、シベリアの渦中に飛び込むことに。

先代の継承者、蛟の妻でもあるわけですからヒントを得たいという事情もありましたが。

 

あの短編から果たして彼女は一体何をしていたのかと思えば、ミネルヴァの創設者でもあったとか言う情報が出てきて。海星みたいに遺産犯罪撲滅を誓う組織だったものの、遺産の毒に飲まれてあんな犯罪者集団に堕ちたとか。

……それを思うと、幼少期の由宇を保護した上で今まで変節することなくADEMという組織の在り方を貫き続けている伊達って、思っていた以上の傑物なんじゃないですかね。

 

ADEMから派遣されたマモンはイワンを探った結果消息不明に。八代、岸田博士はそれを確かめるべくイワンに近づき、こちらも姿を消してしまって。

闘真たちも無機物生命体の危機にさらされるど真ん中に飛び込んでいるわけですし、どこもかしこもスリル満点でどうなるのかハラハラしますね……。

9S〈ナインエス〉Ⅸ

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「僕は由宇が好きだ。大好きだ。由宇が、誰よりも大事だ」

由宇の背をまっすぐに見つめて、闘真はずっと言えなかった言葉を口にする。

 

再読。

あとがきでは59巻を纏めて「ADEM&海星編」としてもいいかもな、と書かれていましたが。海星を巡る騒動に決着がつくことになる1冊。

海星陣営の工作によって予期せず沈むことになったスフィアラボ。

脱出過程でトラブルがあって由宇が放り出されて、闘真が助けに出たことで更にADEM陣営も分断されることになったわけですが。

キスした直後だから若干気まずそうにしてる2人が実に微笑ましくて良かった。

 

ただ状況はかなり悪くて。2222ポイントに沈んだフリーダムの探索に乗り出した闘真たちですが……由宇に隠し事はないかと切り込まれたタイミングで、闘真は彼女の姿を見失ってしまって。一人でさまよった中で因縁の相手であるベルゼブブと対面することになったりしてましたしね。

スフィアラボ側もレプトネーターが投下されて、由宇不在の状態で対処しなくちゃならなくなって苦戦する状況に陥ってましたし。

それでも誰もが諦めず足掻き続けて、苦境を打破してくれたのは痛快でしたね。

やっぱり海底から由宇と闘真が脱出するための方法がユニークで笑えて好きです。

 

面白さでいえば減圧室にマモンと一緒に隔離される、という方法で彼女を無力化した八代が、本当にチェスやったりして時間潰してるの笑っちゃった。

外ではドシリアスな展開やってるのに、なんかここだけ空気感違うんだよな。2週間も隔離されるとなれば、まぁ緊張状態続けられもしないでしょうけども。

後はスフィアラボの復帰作戦、成功確率が低いけれど伊達と由宇がそれぞれ「0でないだけマシ」という同じリアクション示していたのもなんか好きです。

最後に不坐がやってきたことで、またしても由宇と闘真の道が分かたれることになってしまったわけですが……最後にこれまで言えてなかった言葉を口にできたのは良かったか。



9S〈ナインエス〉memories

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「記録映像になくて、写真にあるもの、それは気持ちだと思います」

「気持ち?」

「ええ、気持ちです。写した人の気持ち、写された人の気持ち、そして写真を見る人の気持ち。きっと気持ちを残すために写真を撮るのでしょうね」

 

再読。8巻と9巻の間に刊行された、シリーズ2冊目となる短編集。

メモリーズのタイトル通り、主要キャラの過去編をたっぷり三編盛り込んだ1冊。

 

1話「夏の日の空になりたい」。

ADEMに入局して四か月目の時に、八代がNCT研究所を初めて訪問した時のエピソード。

人手不足ゆえにこき使われて、ゲノム・リモデル技術実験の哀れな被検体であるドーベルマンのような黒い犬を運び込んだようですけど。

 

それを峰島由宇に見せて情報を貰おうとしたわけですが……初期のまだ刺々しかった時期の由宇が見られたの懐かしかったですねー。いや再読で一気に読んでるんですけども。

態度はつっけんどんですけど、隠していた身体能力を発揮して八代や岸田博士を助けたあたり、人の好さは相変わらず。八代がそのことをいつまでも覚えているのも彼らしくて良かった。

 

2話「Romantic holiday」は、由宇に麻耶がアルバムを見せるシーンから開始。

監視カメラでずっと観察されていたから記録としては残ってるだろう、というあまりにもあんまりな由宇に、「思い出を記した写真と、記録では意味が違う」とちゃんと指摘してくれる麻耶ちゃんは偉い。

そして、そこから闘真と麻耶の初対面の頃の話になっていったわけですが……。後に読んだ報告書を基に自分も知らないタイミングの話も盛り込んだりして、脚色して話すの面白かったですね。

 

3話「亜麻色の髪の娘」。

一番時間軸としては過去……二十年前を描くお話。

まだマッドサイエンティスト峰島勇次郎の存在が知れ渡っているわけでもなかった時期であり……伊達もまだADEM司令ではなくて。

「マッドサイエンティストの護衛」という任務に従事している彼が守ることになったのは、セルゲイ・イヴァノフというロシアからの亡命者だった。

その傍には亜麻色の髪色のクレールというなの女性が居て……本編時間軸に繋がってきそうな描写とか、今は亡くなっているキャラとかも居て、過去編として良いエピソードでしたね。



9S〈ないんえす?〉SS

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「私に女らしくなれとほざいた不届き者がいる。むろん根拠のない不当な評価だ。私は充分に女らしい」

 

再読。6巻と7巻の間に発売された短編集。

1話 峰島由宇、ただいま花嫁修業中!」「2話 峰島由宇、ただいま乙女の修行中」は、「5話 由宇と麻耶、二人で花嫁修業中!」。

闘真に「もう少し女の子らしくしたほうがいい」と言われた由宇が、「どうしたら女の子らしくなれるのだろう」と考えるようになって……。

 

刃物こそ貸出が許可されなかったものの、まずはパンケーキでもということで料理にチャレンジしたわけですが。

フリルエプロンを着て楽しそうな由宇を、涙ながらに見る岸田博士の挿絵あったの笑っちゃった。

そして作り上げられたものがアレなのが……うん。実験とかはできるだろうに料理に失敗するの、なんでやろな……。裁縫の方はいっそ見事な腕前でしたけども、関係したブツがアレだと思うと……うん……。

 

他には逃走時の横田家に滞在していた時、由宇は自分の下着とかの扱いも粗雑で……そういう所が女の子らしからぬと言われるところではあるんだけど。

ちょっとズレているところはあるけれど、だからこそ峰島由宇らしくて好きです。

5話は書き下ろしで……タイトル通り由宇と麻耶が花嫁修業するという、12話と似たテイストの話ですが……闇に葬られる事件になってしまったのは……うん……2人の良いところは別のところだからね、はい。

 

3話 男の生き方、プライスレス」は八代の配下として動いている萩原君。

危険な任務に派遣されることが多いものの、その嗅覚で無事に帰還するリターナーとしての才能を買われている彼ですが。

元々は警察に属していたようですが、危機回避の勘……その理由を人に説明できなかったため腫れ物扱いというか、上部も上手く扱いかねていたようです。

退社したのちは警備会社に入っていた萩原君、燻っていた状態だったわけですが。そんな彼を見出した八代に引っ掛けられてADEMに参加することになっていった経緯についてのエピソードでしたが……初期からあの2人らしいやりとりをしてて笑えました。

 

4話 Lady Steady Go!?」はアメリカからやってきたアメリアと、アドバンスLC部隊のあきらの交流がメインの短編。

アメリアの事が気掛かり……というか、伊達を狙っている関係で一方的にライバル視してるようなあきらですが。アドバンスLC部隊にいるだけのことはあるというか、やろうと思えばしっかり頭も回るし腕もある有能な人材なんですよねぇ。

ウンディーネを巧みに操って光学迷彩みたいな使い方したり、結構柔軟なのは良かった。

文庫用の書き下ろしなんですが、本編に居れようとしたものの入れる場所がなく断念された話を復活させたものだったようですが、確かに闘真や由宇が絡んでないエピソードで本編にはなかなか盛り込みにくそうではありました。でも良いノリで楽しめたので、こうして読めたのはありがたかったですね。

9S〈ナインエス〉Ⅷ

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「解っています。でも私は必ず実現させてみせますわ。それがどんなに困難でも」

麻耶が微笑む。その微笑を見て伊達は、不坐に確かに似ているが、不坐とは違うとも思った。

「由宇さんが明るい陽を浴びて暮らせる場所を、この世界に作り出して見せます」

 

海星は一機のフリーダムを失ったものの、二機目に乗り換えて逃亡。

そして、全世界の遺産犯罪者への宣戦布告を行って、遺産を悪用している勢力を排除しにかかった。悪の道に進もうとも、巨悪を叩けるのであれば構わないという覚悟があったということのようですが。

理念としては、間違ってないんでしょうけど。実際、あきらとかも単純に海星を悪と批判するのではなく、その理念は正しくとも海星の在り方は間違っているから倒す、という判断を下していたのが良かったですね。

 

ただまぁ……苛烈な道でありますよね。実際、黒川たちも歴史に悪名を残すだろうし、命を掛ける前提で動いているのが厄介過ぎる。

フリーダムのステルス機能は優秀だし、由宇とリーディング能力で繋がった経験のあるマモンがその能力を発揮してるのも面倒ですが。

由宇は自分の知識が奪われたことに責任を感じてちょっと落ち込んだりもしてました。自白剤や毒を打たれたり、その前からして体調を崩していたわけですから。海星から由宇を取り戻してから2週間も眠り続けていたのも仕方ないでしょう。

 

それを仕方ないと素直にのみ込めるタイプの子ではなかったわけで。闘真は由宇の事をきにかけて、元気づけようとしてましたがなかなか上手くいかず。

……朝倉と闘真が仲良いのかと嫉妬したりしてる由宇、可愛かったですよねぇ。中盤、麻耶も焚き付けるために奮闘したりしてたし、闘真も嘘を交えつつ彼女を動かすことに成功したわけですが。

 

それで由宇の意識が別のところに向いたところに嫉妬した闘真の行動よ……どっちも臆病というか線を引いてるところあったから、一気に踏み込んでいくのもアリなのか……? その後ハッキリ言葉にできなかったのは減点ですけど。

この8巻終盤には由宇の心情とかも言葉にされていたの良かったですねぇ。「伝えたいこと、言ってやらなくては気が済まないこと」を是非後々ぶつけてもらって。すれ違いを挟みつつ、長期化させないのはありがたい。

 

由宇が再起して海星を止めに動いたわけですが……ルシフェルと対面したことでシミュレーター作ってレプトネーターを潰したり、黒川の思考パターンを予測して作戦妨害したりしてやっぱり由宇が活躍してくれるの良かったですねぇ。

一方エピローグで消息を絶った不坐の調査に赴いて……過去の再現映像を目撃して、何が起きたのかを知ることになっていましたが。麻耶、たびたび悲鳴上げたり泣いたりしてていい子なのに可哀想に……。



9S〈ナインエス〉Ⅶ

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「由宇。ごめんね、遅くなって。由宇。由宇。……助けに、きたよ。由宇」

熱に浮かされたように、少年もまた由宇の名を何度も呼ぶ。それにどれだけの想いが込められているのか、由宇には解らない。ただ、名を呼ばれるたび、熱い涙があふれた。

 

再読。ADEM編第三弾! 上中下でも終わらなかったから、完結編が追加されるよやったね! たくさん読めて、嬉しい。

プロローグは黒川視点。紛争地帯に赴いて、海星でも副官になっている福田と様々なものを見て……今実行している計画について決断を下して。理想を抱いている人物ではあるようですけども。

 

由宇に投与された毒のカプセルの残り時間はわずか。

闘真は解毒薬を持って敵拠点のフリーダムへと乗り込む事を決めて。

海星の精鋭を蹴散らして由宇と再会できたのは何より。

再会に歓喜した闘真が由宇を抱きしめたのも、これまでは共に戦っていたけれど今は完全に助けられる側に回ったことと、闘真との距離の近さに由宇が照れているの可愛くて良かったですね。

 

そんな尊いシーンに七つの大罪のアスモデウス達がちょっかい出しに来て……2人は危ない賭けに踏み切ることになってしまったわけですが。勝ちの目を拾ったのはお見事。

由宇を取り逃がし、スフィアラボも入手できず……その上で、一番大事なものはNCT研究所の選挙が第一目標である、と方針を切り替えられる黒川は厄介ですねぇ。

厄介さでいえば、七つの大罪のマモンが六道家の舞風という人間であり……従兄弟の才火を連れている勝司が麻耶の見舞いに来て情報提供していたのも、それによって妹を盾にしようとする目的もあるという点で油断ならない。

……まぁ、それもADEMと連携してるから避けられないことだろとけむに巻く勝司、真目家の人間だなぁ……って感じで好き。

 

由宇を庇護した麻耶が、戦闘能力がない身で由宇をして油断ならないと考えていた七つの大罪ルシフェルと対峙したの、覚悟が見えて良かったですねぇ……。

NCTに籠城している伊達たちも、サタンという埒外の七つの大罪相手に上手く時間を稼いでいたのお見事でした。

マモンまで合流して研究所のバトルが激化していましたが、彼女に対峙するのがLAFIとの接続を経た朝倉さんだったり、八代だったりしたのが総力戦感が出ていて良かったですね。

最後に黒川の油断をついて一撃をお見舞いしたのも、ADEM司令としての伊達の格を見た気がする。

9S〈ナインエス〉Ⅵ

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「いつも僕は君に助けられてばかりだ」

――必ず、助けるから。

心の中で、決意をもう一度繰り返した。

 

再読。ADEM編第二弾。上下巻ではまぁ終わりませんでしたねぇという感じで。

海星は由宇を捕らえ、ADEMを抑えようと兵隊を動かして、敵対ムーブをかましてきたわけですが。LC部隊も抑えに動いているあたり用意周到ですねぇ。七つの大罪ともつるんでいるし、厄介極まりない。

ADEM本部の破棄を八代が決断して間に合ったのは良かったか。NCT研究所に伊達と岸田博士が立てこもることになったわけで、権限が奪われている状態ではなかなか厳しい状態に追い込まれてますねぇ。

あくまで表面上は法に則って動いている素振りをしているものの。七つの大罪と繋がっていたり、アメリカが開発していたフリーダムという兵器を奪っていたりするのは、切り札でありアキレス腱でもあると八代が指摘していたのは良い着眼点でしたね。

 

闘真の奮闘を見た萩原が「禍神の血を献血したらどうなるんだろ」って言ってましたが、継いでいる血だけじゃなく、脳の黒点が重要だからそこまで影響はないんじゃないかなぁ。……まぁポケポケ闘真が献血に行ったら真目家が回収とかするでしょうけど。なんかそれどころじゃないけどちょっと笑っちゃった描写でした。

 

由宇を救うために別行動をとり、研究所内部に残った闘真。

LAFIサードの風間を連れて動いていましたが。それを察知した海星の黒川が、出入り口全部コンクリートで固めてしまえ、と言ったの的確に嫌な行動ではあったか。

……そしてついに、その場所に峰島勇次郎が現れたわけですが。彼の創作した口笛を闘真が知っていたり、気掛かりではあったか。

使えなくなった鳴神尊の件についてアドバイスをくれたのは助かりましたが、怪しすぎるんだよな……。

それで過去の闘真を呼び起こして、大暴れさせることで封じられた研究所からの脱出は叶いましたが。闘真の裏人格は裏人格で相変わらず危ういなぁ。

 

捕らえた由宇に自白剤を投与したり、黒川たちのやり方は気に入りませんねぇ……。

でも、遺産関連技術を暗号化して覚えていたり、相手の思考を読み取って破壊する七つの大罪のマモンに読み取られても反撃してのけたり、由宇も一筋縄でいかないところを見せてくれたのはまぁ良かったですが。

これだけの事をしでかすあたり、黒川も油断ならないのはまぁ……これまでの由宇の在り方を見てきてると腹正しいけれど、まぁ敵としての格が高いのは悪い事ではないのでぐぬぬ。

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
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