気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

電撃文庫

9S〈ナインエス〉Ⅳ

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「素直に真目家の力が必要だとおっしゃたらいかが? それで、どうやってあの球体の封印を解きますの?」

(略)

「だるま落とし」

 

再読。上下巻の下巻、3巻から続くエピソードに区切りがつくことになる4巻。

暴走した木梨の変異体と遭遇して負傷した闘真。

マイペースすぎる彼は入院することになった病室に、勝司の遣いが来たのにのこのことついていって……そこで対面したミネルヴァのマジシャンに操られていしまい、由宇や麻耶の前に武器を持って立つことになってしまったわけですが。

彼の手でADEMLC部隊の隊員の命が失われていったのは、辛いなぁ。闘真の暴走を見て麻耶もトラウマを刺激されて一時意識失ってしまったりしてましたし。

 

勝司が麻耶の知らない情報を掴んで独自の行動をとっているの、先達としての経験を感じますねぇ。その結果、闘真が操られているのでちょっと痛い目見て欲しいものですが。

でも操った闘真は脅威に感じないと本気の由宇に一蹴されていたのは、ちょっとスカッとしましたけど。

正気に戻ったタイミングで闘真またへこんでましたしね……。

 

いろんな思惑が交差した結果として、麻耶が由宇を保護することになってたのは面白かったですね。

初期からバチバチしていた2人ですけど、闘真という存在が心の中で重要な位置に居るという意味では似たもの同士なわけで。由宇と闘真のコンビも好きでしたけど、由宇と麻耶の協力関係もなかなか良かったですね。

不坐が差し向けてきたクレールという、少女であるのに禍神の血の力を振るう少女の存在とか、麻耶が居なければ今回の由宇の考察が伸びなかったでしょうしね。

由宇の優秀さを認める一方で、彼女が抱えている脆さとかについても麻耶が理解してくれたのも嬉しいポイント。

 

様々な勢力が蠢く大騒動の裏側には峰島勇次郎が居るのではないか、という疑いをADEMの伊達と岸田は抱いて、方針を定めようとしているの良いですよね。

伊達、由宇を封じ込める立場でこそありますけど、その厳しさは他者だけに向くものではないという点で信頼できるタイプ。

 

そして【天国の門】を巡る騒動について、一つの決着がつき……自分の意志で戦いたいと覚悟を決めた闘真が、由宇に同行する事を決めたのは良かった。

なし崩しとは言え少し前向きになれたかなぁ、と思う一方。残された麻耶の方では色々とあって涙することになっていたので、全部を上手くまとめるのは難しいですねぇ……。


9S〈ナインエス〉Ⅲ

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「行きなさい。そして、見極めてきなさい。私のような凡人では決して理解が及ばなかった、峰島勇次郎の本意を」

 

再読。

由宇が闘真を戦いから遠ざけようとした結果、離れることになった2人。

まぁ元々秘匿封印されている由宇と、特殊な血を引いてこそいるけれど一般社会で生きている闘真とでは住んでいる場所が違ったわけですが……それでも、敢えて決別を表明したことは意味があるでしょう。

 

闘真はいったん学校に戻って友人と再会したりしてましたが。……一度登校したのが、退学届けを出すためだ、っていうのは覚悟決まってるな。

進んで辞めたいわけではないけれど、遺産にまつわる事件に関わっていく中で、何事もなかったように日常に戻っていくことはもうできないと判断して距離を取ることにした、と。不器用だなぁ……。

 

学校に顔を出した際に、友人から「妖精が通り抜けるフェアリーショック現象」だったり、「謎のドラゴンの目撃情報があった」なんて気になる噂を聞けたのは良かったか。闘真、そのあたりに疎いですからね……。

他にも先代の鳴神尊の所持者はどういった人物だったのかと気にし始めたりもして。

……怜に突っ込まれてましたが、それを気にする段階大分遅いと思うんだよなぁ。のんびり屋にもほどがある。まぁ2年前の事件以来距離を取っていたというのもあるでしょうけども。

 

怜と会話する中で、闘真は歴代の所持者と比べても特殊な状況だと指摘もされてましたね。鳴神尊による人格切り替えのスイッチは完全に機能して、表と裏の記憶はほとんどつながらないみたいですが、闘真は違ったと。

男にしか現れないとされる禍神の血。しかし、過日麻耶を襲撃した人物の残した痕跡に闘真は「鳴神尊のような痕跡だ」という感覚を抱いて。

当主不坐の暗躍に気付いて警戒を強めることになっていましたねぇ。

他にも麻耶や闘真の兄である勝司がミネルヴァとつるんで動き出していて、真目家もなかなかの魔窟だよなという認識を新たにしました。

 

一方の由宇はNCT研究所LAFIのカオス領域に接続する試験を行い……予期せぬトラブルが発生し意識不明に陥ってしまって。

それを見たADEMに属するNCT研究所の木梨は、自分なら上手くできると高をくくって同じ実験に乗り出し……盛大に失敗していたのには頭抱えたくなりましたねぇ。肥大化した自尊心の果てがあれかぁ……。

 

死者も出るような大混乱が起きた結果として、由宇が外の世界に踏み出せのは良かったのか悪かったのか。

あちこちで別種のトラブルが起きている状況ではありますが。

由宇が風間から与えられた情報や、勝司が探し求めているもののとして【天国の門】という共通した名前が出てきて……様々な勢力の思惑が、不思議な噛み合い方をしてその遺産の前で対面することになった最終盤面はちょっと面白かったですね。何かがズレていたらどこかが出し抜いていたかもしれませんし。

9S〈ナインエス〉Ⅱ

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「私が査察で何を見極めたいか、それを知れば否応なく出したくなるだろう」

 

再読。1巻の騒動から少し生活に潤いを求める事を決めた由宇は、音楽に手を出してみる事を決めて。

監禁された彼女がそのために取った手法が「無害そうな遺産技術の知識を対価に、ヴァイオリンの名器を手配してもらう」だったのがもう……彼女らしくて笑えます。

 

一方の闘真はスフィアラボでの一件を経て、自分に流れる血の抱えた問題についてひとまず折り合いをつけて、自分の殺戮衝動を秘めた人格を呼び起こす鍵である鳴神尊を手元に置くことを決めたわけです。

そうやって2人が日常において少しずつ前に進む中で、遺産を巡る事件は待ってはくれず。

 

とある会社が携わる兵器開発において、不法な遺産技術の使用の可能性があるということをADEMは掴み……査察を行うことに。

その動きを察した由宇はそれに同行する子を決めたり、彼女の事を忘れられずにいた闘真がADEMに近づこうとするも情報制御用のブレインプロテクトに阻まれて叶わず……しかし、伊達の秘書である八代の策略で査察の現場に送り込まれることになって。

またしても2人は遺産事件の渦中で再会を果たすことになったわけです。

 

今回の発明品レプトネーターは、変形によって蜘蛛型をとって狭い場所であっても自在に動ける、対遊撃戦能力向上を狙って開発されたロボットだったそうですが。

当初開発は難航しており……頓挫間近に、主任が怪しいメールを見てそれに唆されてしまった、というまぁ破滅するよな……という展開で生まれてしまった産物でしたが。

遺産を狙う組織ミネルヴァのエージェントが現場に乗り込んできたりして、危うい状況もありましたが、今回は現場に出ていたADEMトップの伊達や由宇も闘真も無事に生還できたのはせめてもの救いか。

しかし、由宇からこのままいくと闘真が壊れてしまうから戦うな、なんて助言をもらう不穏な幕引きにはなったんですよねぇ……。



9S〈ナインエス〉

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「心配するな。この日の感動があれば、大丈夫だ。世界がこんなにも美しいなら、何を迷う必要がある?」

 

完結記念に再読。

峰島勇次郎というマッドサイエンティストの発明によって、様々な変化が齎された世界。

彼はとある一件から消息不明となっており、彼の残した技術はそのまま「峰島の遺産」のように評されることとなった。

遺産を用いたテロなんかも勃発するようになって、マッドサイエンティストを輩出した日本はいろいろと対処に追われることになったようです。

そのために設立された組織がADEMであり……その奥にはとある少女が封じられていた。

 

それから時は流れ、閉鎖型の自然環境循環を再現した研究所スフィアラボにて、テロリストたちが行動を起こして。

一介のバイトであった少年、坂上闘真も巻き込まれるわけです。スフィアラボは峰島メイドのスーパーコンピューターLAFIが設置されていて……それを狙った行動であったようですが。

テロリストの行動にスフィアラボの人員では対処できず、闘真の頼れる先輩横田など、多くの人命が失われることとなったわけですが。闘真はそんな理不尽な状況から辛くも逃げ延びることに成功して。

 

生の情報を知っている人物だから、ということで闘真はADEMに連行されて協力を要請されることになったわけです。

そこで彼は、ADEMの奥で封印されていた少女……峰島勇次郎の娘、峰島由宇と対面を果たすわけです。

闘真は闘真で、遺産への関与を避けつつも情報を武器に世界に名を馳せている真目家の血を引く特異さを持つ少年でもあったりして、二面性も持っているんですが。基本はのんびりすぎる部分はありますが、善良な一般人であって……封じられていた少女の事を心配する心があるんですよねぇ。

 

つまり遺産というオーバーテクノロジーによって変わった世界で、特殊な出自の少年と少女が出会うボーイ・ミーツ・ガールものなんですよね。

峰島の技術を熟知している由宇は、素直に協力してくれるのであればこれほど頼もしい相手もいない人物ではあるわけですが。

それだけに扱いに苦慮する相手でもあり……ADEMも基本は地下深くに閉じ込めているし、外に出す時も情報漏洩を避けるために時限式の毒を投与する徹底ぶり。

 

明晰すぎる頭脳と、少女時代から監禁生活を送ってきたことで情緒という面で不安の残る少女、峰島由宇。

そんな彼女を「峰島の技術を持つ存在」ではなく、一回の少女として扱う闘真は微妙にズレた状態で噛み合っているというか。

女の子が監禁されているような状況は心配だ、という闘真の思いが由宇には「私は女らしくないと言いたいのか!?」と受け取られてしまった一幕があったのはちょっと笑えました。……まぁ闘真も「由宇は女の子じゃないか」みたいな感じで、煮え切らない返答を繰り返してたからコミュニケーションに齟齬が生じたわけですけども。

 

闘真は戦闘能力高いし、由宇も頭脳担当かと思いきやその頭脳を使って自分の肉体の動きや物理法則を正確に計算し、理想的な動きを再現するなんて離れ技を駆使してのけるからどっちもバトル行けるんですよね。

由宇の問題解決能力が高いですけど、テロリストの首魁である風間は彼女の予想を超えてLAFIに適応していったりするので、由宇も万能の存在ってわけではないんですよね。一回脱走しようとして失敗してるし。

同じように未熟なところのある闘真が近くにいて彼女を支えて、事件解決に辿り着けたのは良かった。



ウィザーズ・ブレイン アンコール

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『――そうして世界は今日も続いてく。

(中略)

私達は、今日も元気に、がんばってる。

だからね、フィアちゃん。

世界はきっと、大丈夫だよ』

 

電撃の公式海賊本などに掲載され、文庫未収録だった『ハッピー・バレンタイン』、『正しい猫の飼い方』、『最終回狂騒曲』を収録のほか、書き下ろしエピソード『湯宴の誓い』、『旅路の果て ~Journey home~』、『そして物語は続く ~Cooking for you~』を収録した短編集。

 

書き下ろし『湯縁の誓い』は、戦争終結から一年ほどが経過した後のエピソード。世界再生機構の街は多くの人や建物が増えて、変化し続ける日々だったとか。

新しい施設を作ろう、という議題が出た中でファンメイが「温泉がいいと思う」とか言い始めて。シティ生活に切り替わってからも長く……改めていろんな知識が断絶してるなぁ、と感じる部分もありましたが。

かこーんって音だって主張した後「それ、鹿威し。温泉とは関係ないと思う」ってツッコミ入ってるの、地味にツボだった。

そしてタイミングよく地下の調査を行うことになって……予期せぬものを発見して。危うい時もありましたけど、最終的には丸く収まって良かった。

 

情報の断絶が活きてるエピソードでいえば『ハッピー・バレンタイン』もそうか。なんで月夜頭がいいのに時々あんな暴走するんでしょうね……。

『正しい猫の飼い方』はエドやファンメイが、猫の幽霊を見ることになる話。情報制御理論が通るこの世界だと、普通にありうるのか。作中でも出てましたが、人形遣いとかまさしく「ゴーストハック」使いますしね。

最も自然発生的なものは粗が多く、魔法士が使うものは洗練されている、など色々違う部分もあるようですが。毒になりうると知っていても、会いに来た幽霊の猫が、とてもいとおしい。

 

『旅路の果て』は歩み続ける錬とフィアが遭遇した、やり残し……というか。

彼の行動の結果、巡り合うことになった2人と言葉を交わすことになる話。いやまぁ、うん。錬の旅は、これからもこういうことの繰り返しなんだろうなぁ、と思いますが。フィアが隣にいてくれることは本当に救いだな、とも思いました。

最後に収録されているのが『そして物語は続く』。セラがとある目的からクレアの好物を探ろうとする話。身近にいるディーに話を聞いたりもしてましたが、彼もセラに会うまでは立ち位置が定まらずにいたわけで。他数名にも話を聞いてましたが、コレというものは見つからず。

でも、不意に「なぜそもそも食べ物なんだ」という疑問を投げてくれた人がいて。それでセラが見つけた答えが素敵で、本編後にこの話を読めて良かったなぁと思いました。

86―エイティシックス― EP.13 ディア・ハンター

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――お前が死ねば良かったのだと。

誰かに断じられることは。

そう、誰かの生を断じてしまうことは。

「正しい言葉じゃないと――俺は思う」

 

ヴィ―カがフレデリカの出自と、レギオン停止の希望について知ったことで高級指揮官との相談が出来る環境が出来たのはシン達にとって良かったでしょう。

まぁ、シンは出来れば早い段階でレーナに相談したいと思っているみたいでしたけど……彼女は未だ療養中だし。

そろそろ帰還できそうな時期に、首都で謎の連続爆発事件が発生。その近辺で、共和国からの避難民が目撃されていたことで「保護」の名目でレーナは隔離されることになってしまって。

 

そしてその爆発事件の裏には共和国の計画があったことが、明らかになってきて……。

かつてはエイティシックスの扱いについてもあるし、記憶に新しい盗聴器騒動もあって、どんどん民の中で共和国へのヘイトが高まってしまって。

その一面を見れば、確かに保護は必要だっただろうなぁというのは分かります。

ゼレーネへの尋問も続く中で誰が指揮機体になっているのか、を絞り込もうとしているようですが。読者目線でだけ分かっている情報として、ノウ・フェイスの正体がアレですしね……。

上層部はまだ冷静な部分もあって、実質軟禁だとしても保護の名目は守っていましたが。

 

共和国の陥落以外にも、どこかで生き残っていた国が滅びたのか連邦へのレギオンの襲撃の密度は高まるばかりで。

そんな中、疑心暗鬼に陥って人同士の諍いすら生じるこの状況に置いては爆弾情報すぎるんだよなぁ。

脱走したユートはチトリ達「小鹿」を連れた最後の旅を完遂せんと動き続けて。その中にダスティンの知人がいたことで彼もまた揺らいでいました。

想い人のレーナの「隔離」に、内心反発しつつも軍人としてはそれを吞むしかない冷静さを得たシンでしたが、戦場で大暴れしてたのも彼らしいですけども。

 

86区という地獄を生き抜いて、それでもなお誇りを胸に戦場に立つことを選んだエイティシックスたち。まだ若い世代が多いこともあって、青さが光ることも当然あるんですが、それでも彼らの在り方は覚悟が決まっていて格好いいですよね。

その体現と言えるエピソードが、今回最後に起きたリト周りのエピソードなんですよね。そう、彼らはあそこで止められるし、引き金を引けるんだ。

……だというのに、人の愚かさによってそれが損なわれて、さらにはあの悪習とほぼ同様の状況がこの最終局面で再現されるっていうのは、なかなかに耐えがたいものがありましたが。

せめて、少しでも多くの希望が残ることを祈りたいものです。

 

と言いつつ愚かな選択をした人々に相応の報いがあって欲しいという気持ちも、どうしたって胸に引っ掛かり続けるんだよなぁ……。でも、そういう連鎖が争いを生む源泉なのだ……。私も愚かだ……。

不可逆怪異をあなたと 床辻奇譚2

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「一緒に居る時は助けるし、離れていても力になる。相手を尊重する。理解に努める。それが及ばなくても、粗末には扱わない。――そういうこと全部を無条件で当たり前だと思ってる。俺にとって花乃と一妃はそういう相手だ」

 

床辻の守護をする地柱の一角になった蒼汰くん。

彼の隣には相変わらず異郷の住人である一妃と、以前の事件の影響で首だけになってしまった妹・花乃の姿があって。

彼は半分人間としての側面を残していることや、まだ就任直後ということもあって地柱としての職務については試行錯誤の毎日みたいです。

 

一部とはいえ土地神みたいな役割を担うことになったわけだから、監徒から市内の高校へ転校してくれと頼まれることになって。監徒関係者が多いだけなら驚かなかったのに、先輩地柱の墨染雨との出会いまであったのは驚きましたね。

先輩地柱達は、蒼汰みたいな半分人間みたいな状態ではなくしっかり「地柱」という存在を全うして長くを生きている方々で……。

 

知恵袋的に頼りになる場面もあったんですけど、やっぱり一妃みたいに人とは違う価値観を持っているな、みたいなシーンもあってちょっとゾクゾクしましたね。

人と似ていて、けれども違う。異種が異種であることが示されるシーン、結構好きなんですよねぇ。

多くの禁忌がある床辻ですが。「東西南北を結ぶ道を歩ききってはならない」という禁忌が破られないようにするために、信号が多めに配置されている話だとか。国に対して「そんなつい最近できたようなもの」とこぼしたりだとか。

違う常識で生きてる方々なんだよなぁ。それでも一妃みたいな変わり者を除けば、異郷の人物よりも、一般的な人間に近くて……だからこそ、人と交流できてしまうし、それによって揺さぶられることすらあるというのが危うさだとは改めて思いましたが。

 

地柱を止めるには死ぬしかない、という意味で蒼汰くんは既に不可逆な変化を迎えた主人公なんですよね。

それを受け入れて、その状態で出来ることを模索しているわけです。目下、一妃から妹の体を取り戻したいと思っているみたいですが。一妃と妹本人は現状を良しとしていて、不利な状況。それでも相手を否定するのではなく、自分はこうしたいという意見を発し続けていたわけで。

そんな彼だからこそ、あの最後になったのは納得です。彼が自分を貫くのであれば、同様に個人の意見を貫こうとする人物を否定するのは、一貫してないことになりますしね……。

不可逆な部分が、悲しくないと言ったら嘘になりますが。異種を交えた上で立派に家族をしていた3人の導いた結末が、良いものであったと私は思います。

 


ソードアート・オンラインIF 公式小説アンソロジー

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「何を言い出すかと思えば――まだ理解できていないんですか? 危機感が足りないのはそっちですよ?」

 

タイトル通り、『ソードアート・オンライン』をテーマにいろんな作家さんがIFストーリーを執筆して、公式で刊行しました! な1冊。

 

収録作品は下記の通り(敬称略)。

第一章『SAOif ピトフーイが、SAO事件に巻き込まれていたら~』時雨沢恵一×黒星紅白

第二章『もしキリトとアスナがゾンビゲームであそんだら』香坂マト×あるみっく

第三章『ドリームゲーム――くろすおーばー――』佐島勤×石田加奈

第四章『デスゲーム脱落編』周藤蓮×星河シワス

第五章『名探偵コヨミ/まだらのねこ』渡瀬草一郎×ぎん太

第六章『at the Children’s Steps』高野小鹿×rin

第七章『この呪いをどう解いたらいいの―シリカと幽霊少女―』牧野圭祐×かれい

第八章『もしアスナがレストランを開いた場合の、キリトの立ち位置的なお話』Y.A×長浜めぐみ

第九章『ソードアート・オンラインIf You Can Smile』川原礫×abec

 

第一章は、ガンゲイル・オンラインのコンビによるエピソード。タイトル通り、ピトフーイがSAOサバイバーとして知った情報をレンちゃんに語っていましたが……それは嘘八百で。それを信じてしまうレンちゃんが居たんだよ、という夢オチなんですが。軽いノリで楽しめる導入で良かった。

第二話はコンバート必須、つまりベテランゲーマーだけを対象にしたゾンビを蹴散らすタイプのゲームのベータテストに参加することにしたキリトとアスナ。最速クリアを目指して、想定されていなかった挙動も駆使して制覇したのはお見事。ゲーマー向けというのもあって難易度高めに設定されて、チュートリアルで脱落者続出なのはちょっと笑った。ハードル上げすぎぃ。

 

第三章は、メインの視点が魔法科の兄妹なのが特徴的でしたかね。魔法科の世界で聖遺物と呼ばれるアイテムの起こした、夢の世界との混信。それに巻き込まれた兄妹が、ゲームの配役を割り当てられて、クエスト攻略に来たキリト達と戦うことになる話。その前に一般プレイヤー蹴散らしてるのが達也だよなぁ。

第四章は、デスゲーム時代のSAOの攻略組に位置していたとあるパーティーに起きたトラブル。奇跡的な確率でバグに巻き込まれ、生き残ってしまったプレイヤーのお話。最後、想像の余地が残っているのが好きですね……。

 

第五章はSAOオルタナティブ・グローバーズリグレットシリーズのコンビによるエピソード。このシリーズも好きなので、IFであっても楽しめたの良かったです。ちょっと癖の強いクエストに挑んで、後日譚もちょっとみたいな感じ。

IF要素としては「もしもグロリグが館モノミステリーだったら」みたいなテーマらしいので、リアルでのヒロインがとても強くて良かった。

 

第六章は、原作より三歳年下なキリト君が規約違反承知でナーヴギアを入手し、ゲームに参加したというIF。ヒロインたちとの縁こそ、年齢差もあってか年上勢から可愛がられているような状態で。それでも頼られている部分もあって……。

年齢が近くなったこともあってか、そんな彼をよく見ているシリカの葛藤が良く描かれていましたね。

第七章もシリカメインのIF。シリカが「幽霊に取りつかれる」というクエストを発生させてしまって……そこでキリトとの縁も出てましたが、幽霊との交流を通じて一人での挑戦を選択したのは良かった。

 

第八章はタイトル通りの話。SAO時代に一度前線を離れて2人暮らしを始めた2人がアスナの「新しい事をしてみたい」とフレンド向けに料理を振舞ってみるお話。穏やかでしたね……。

第九章は原作者によるアリシゼーション編のIF。キリトとユージオが罪人として連行されず、そのまま学院に在籍し続けた未来を描く話でした。

七つの魔剣が支配するXIII

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「無粋な雑音はここまでだ。身の内の呪詛と共に、しばし妙なる楽の音に浸り給え〈呪樹〉。……その異名も謹んで預かっておきなさい。それもまた君への呪いであり――きっと、同じだけの祝福なのだから」

 

ガイが呪詛使いとしての才能を示した後……呪いが移るのを避けるため、彼は剣花団と距離を取ることに。

彼自身は植物の世話を手ずからできない事が気掛かりでこそあったけれど、一年生の頃から世話になっていたオリバー達と並べた事を喜んでいる部分もありました。

……ただ、ガイという人物は剣花団において潤滑油みたいな存在であって、彼との距離が生じてしまったことで、どうしたって他の5人の間がギクシャクするのは避けられない問題だったのでしょう。

 

折しもオリバー達も4年生になり研究室選び……つまりは進路を見定める時期だったというのも色々と大きいかな。

一線を越えたオリバーとナナオの関係を察して、距離を取りガイを拠り所としていたカティですが……彼女も不安定になっていましたし。

それをみたシェラが魔術師らしい合理で状況を強いた事でギスギスしてたし。彼女の血筋ゆえに抱えているのが明示されましたが。魔術師、業が深い家ばっかりかよ……こわぁ……。

剣花団内部だけではなく、彼らの後輩もまたキンバリーで鍛え抜かれて、時に先輩たちの心を刺しに動いたりもしてくるんですが。先輩・後輩関係の中でもまたいろいろ思惑が入り乱れてるのが面白い。

 

さて、キンバリーという魔境において、外部から派遣されてきた大賢者ファーカー。

その真意を探ろうと色々と動いていたわけすが。オリバーが切り込んで、グルグル心をかき乱される結果になったのは……敵もさるものというかなんというか。

彼の復讐相手である校長一派を抜きにしても、魔術界という魔人の巣窟で生き抜いてきた先人たちはやはり恐ろしいものですね。

ファーカーはエスメラルダを蹴落としたい勢力から派遣されてきたと思わせつつ、オリバーを揺さぶるような言動をして、その上で別勢力との接点まで出てきた。一体何を考えているのか。それが明らかになるときは……より過激な争いの中になりそうですが、さて五年生に進学したオリバー達は何と対峙することになるんでしょうか。今回もまたあとがきが不穏……。

あした、裸足でこい。4

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「上手くいくあなたも、そうでないあなたも、ずっと見てる。目を逸らさないから」

(略)

「どうか、あなたの願いが叶いますように」

 

ループを続ける中で二斗がいつも目にしていた、新小惑星らしきものを発見したことで表彰されていた同級生。

彼女は音楽を続ける中で色々と擦り切れていき……その中で、変わらず星を見つけ続けていた天体少年に声をかけてみる、という変化を発生させることにして。

そして、そこからは3巻最後に記されていた通り、彼女との縁が出来たことで巡の運命は変化してしまって、小惑星の発見を成し遂げることなく転げ落ちていってしまったわけですが。

 

彼もまたやり直しの機会を得たことで、二斗の交友関係が壊れることもなく続くことになって。

その上で二斗は音楽活動でも変わらず注目を集め続けていた。そんな彼女に追いつきたいと願い、小惑星を見つけるために奔走することに。

そんな彼の行動に惹かれる人もまたいるんですよねぇ……。天体観測のイベントに参加することを決意したものの、突発的なものだったこともあって六曜先輩たちの都合も着かず。そんな中、後輩かつ他校生でもある真琴が手を挙げて。

10代の学生」を対象にしていたから高校生・中学生のコンビでも参加可能って言うのは面白いルールの穴の突き方だなって感じがしましたね。

 

二斗と真琴が不思議とバチバチしてましたが……。真琴の胸中が明かされたことで、まぁそれもそうか……って感じではありましたね。

真琴も真琴で背負っているものが多そうで。繰り返しの中で、巡は最初に願った未来をつかみ取ることには成功した、と言っても良いでしょう。しかし、その代わりに失われようとしているものも示されて……次回、完結巻となる5巻でどういう決着を迎えるのか楽しみです。二斗好きだけど、真琴も不幸にしたら許さんぞ……の気持ちがある。

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
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