気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

電撃文庫

春夏秋冬代行者 秋の舞 下

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「頑張って、撫子。貴女なら出来る。俺はすぐ傍で見守りましょう」

 

橋国・佳洲の秋の護衛官・ジュード。

彼はある目的をもって撫子を拉致することを決めて。現人神を手中に収めるために、敢えてその神威を使わせて、意識を失わせるって言うのは荒っぽいながら効果的だよなぁ。

竜胆と侍女の真葛が致命傷を負わされたことで、必死にそれを救命しようとして……実際、成し遂げたのだから彼女の腕も磨かれてて良いですねぇ。

……それだけ過酷な状況に置かれてきたということで、なんとも喜びにくいですけど。

 

独自行動をとっていた雷鳥が追ってくれてたのは、まぁありがたかったか。

危険な状態だった2人は辛くも命を拾って。真葛さんは起き上がれないほどでしたが、護衛官の竜胆はそれでも助けに行ったんだから、流石というかなんというか。

同じようなシチュエーションだったのもありますけど、シリーズの途中で最初の頃のエピソード回顧するの良いですよねぇ。春の護衛官さくらと初めて会った時に発破かけられたのを思い出して、自分の秋を取り戻すために動いたのはお見事でした。

 

さて佳洲の秋の護衛官ジュードが果たして、何を考えていたのか。

秋陣営に傷を負わせて現人神を拉致した上で、撫子自信を害する気持ちはなく。彼は、ただ佳洲の闇を暴きたかった。そのための証人として大和を巻き込んだのだ、と。

自らの身の危険を顧みず踏み込んでいくあたり、四季の関係者というか。護衛官らしさはありましたが。現在の彼の立ち位置は秋の護衛官だけど、彼の歩き始めた場所はまた違っていて……そこがリアムの行動につながるんだから、やっぱり主従のすれ違いは悲劇招きがちね……。

 

佳洲秋主従の騒動がありましたが、闇を暴きだすという大目標は達成できてましたから、そこはまぁ良かった。

ただ撫子が2回攫われる羽目になって、周囲の人々に傷が増えたのはなぁ……。

大和に残っていた春主従、夏主従の片翼もまた独自に動いてより春夏秋冬の絆が深まった部分もありますが。

 

良かったことでいえば撫子の夢に関する竜胆の父親が語っていた下りが真実であるならば、秋陣営は少なくともある程度の未来まで無事ってことですしね……。まぁ命があるとしても、今回みたいに拉致されたりとかのトラブルには遭遇してそうですけどね。夢の中の竜胆が、今はいつか確認してきてたり「また来たんですね」とか言ってる当たり、実に怪しい。

……まぁあと上巻で竜胆父が心配していた、長生きする秋の神様は護衛官を手放さないって話も、懸念材料にはなりうるのかもしれませんが。主従の絆の強さを見ていると、それもまた良いんじゃないかと思えるんですよね……。

 

メロンブックスで購入したんですが、「人生行路」が好きでしたね。佳洲の幼い冬主従に大和の夏の双子神が、大和の冬について語って「冬のあるべき姿を見た」と思っているシーン、短編のメインとなる部分ではないんですけど好きな描写でした。



春夏秋冬代行者 秋の舞 上

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「俺も貴女が平穏に暮らせないことが辛くて許せません」

 

大和では春の代行者が季節顕現の旅を続けている時期。

秋の代行者・撫子は、『春の舞』・『夏の舞』の騒動を経て刷新された侍女と護衛を伴って、花見をすることになって。夏の陣営から護衛犬が派遣されていたりして、楽しそうな日々を送れているのは良かったですね。

……ただし、そんな中で護衛官の竜胆は忙しそうにしていた。それは外交部から持ち込まれたとある厄介ごとが原因で。

 

海外にある「橋国」の代行者から交流したいという要請があり、それが秋の陣営に持ち込まれていた。

雛菊が8年行方不明になっていた時期の様に、トラブルが起きた時に応援を頼める「互助制度」というのがかつてはあったようですが。異国に赴いた代行者が危害を加えられる事例があったために、大和ではその制度を放棄していた。

そもそも海外は大和よりも賊の活動が活発であることなどから、互助制度復活を狙う動きがあってそれに利用されかねないから、と竜胆たちはそれを受け入れないつもりだった。

 

しかし橋国も引かず……。春夏冬の陣営にも声掛けをしてきたし、最悪の場合は向こうがこちらにやってくるという提案までされて。

危険な地域に赴いて守るために尽力するか。過激な賊を招き入れる可能性を考慮してでも、迎え入れるべきなのか。最初に打診された秋が断ったことで、他の季節に迷惑をかけてしまった可能性。

そういういろんな思惑を考えた結果、再打診された秋陣営はそれを受けることを決めたわけですが。

 

いざ動く時に、夏の双子神の片翼である瑠璃と雷鳥、冬主従も出てきてくれたのはありがたかったですね。

季節の祖として、狼星は最終的に冬がその交流を受けるつもりだったみたいですけど。ただ、初手で提案を受けても軽んじられるから突っぱねたとか。そういった交渉のやりとりと、それぞれの季節を思いやった結果として、秋が受けてしまったのは悲しいすれ違いでしたね……。

 

春の誘拐事件を経て竜胆が彼女への愛を自覚するようになって、より大事にするようになっていたわけですが。

これまでの両親との距離感とかで示唆されていたものの、撫子が幼少期に置かれていた状況から、「良い子」であろうとし過ぎる彼女の在り方とで、秋主従の中でも微妙にすれ違いが起きていたのは、心配材料ではありましたね……。なんせ『秋の舞』の主役なわけですし。

橋国側のトンデモ要求をはねのけたり、今の竜胆は必死に主を守ろうとしていますが、最初期はそこまで必死ではなかった。そのことを知っている父との会話を撫子に聞かれたのも痛かったというべきか。

 

橋国での出来事がメインではあるけれど大和残留組である春主従とかの視点もしっかり描いていてくれたのは嬉しかったですねー。

瑠璃と狼星が初対面の時のいざこざを引きずってここまで来てましたが。季節の祖としての冬には、必要な態度というものがあるというのを、瑠璃が一緒に外交の場に出ることで感じて、少し態度が軟化したのも良かったですが。

……そうやって大和側が協力していてもなお、異国の地というのはなかなか動きにくいですよねぇ……。最後が不穏すぎる。

ストライク・ザ・ブラッド APPEND4

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「だいたいの事情は分かりました。帰り道は、わたしが案内してあげられると思います」

 

OVA特典などに収録されたエピソードをまとめたAPPENDシリーズ第4巻。

巻頭に『人工島の落日』という書下ろしが収録されたりもしてましたが。幽霊調査を依頼された古城が雪菜を伴って現地に赴いて……廃墟と化した絃神島を目撃することになる話。

その不思議な環境の中で、再び「偽姫柊」こと零菜ちゃんと遭遇したりもしてました。匂わせがかなり強まってきたというか、ほぼ答え示されているんだから、現実を見つめた方が良いよ2人とも……。

 

イチャついてる度でいえば、「第七話 凪沙のわくわく心理テスト」で相性の良い回答してるのを公の場所で披露してて、「砂糖吐きそう」って言葉に同意してるの笑えた。

あとはSSだから短めのエピソードが多いですねー。

プール掃除したり、海に遊びに行ったり和やかに過ごしてましたね。幽霊関連の話も多くて、なんか夏テイストが強かったかなぁ。

 

「第三話 彼女の中の……」という、古城が自宅で目撃した幽霊の話。

それは雪菜の心情が零れて生じた生霊で……素直な生霊ちゃんの願望に応えるために、リアルの雪菜の頭撫でたり抱き締めたりしてるの微笑ましくて良かったですね。

相変わらず雪菜が強ヒロインすぎましたが、「第十一話 いつかのバースデイ」で紗矢華のエピソードとかも楽しめました。

書き下ろしの一話と巻末の特別編で気になる情報が描かれてましたし、この世界特異な存在多すぎて笑う。

ソード・オブ・スタリオン2 種馬と呼ばれた最強騎士、隣国の王女を寝取れと命じられる

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「あとは任せたよ、ラス。たった一人の、私の最後の希望――」

 

ティシナに追い払われる形で、フィアールカの下へ帰還することになったラス。

本来はシャルギア王国の王都で、後から来るフィアールカと合流するハズだったが、ティシナ王女という予想外の存在によってそれが叶わなかった。

先入観を持ってほしくなかったフィアールカによって、情報が制限されていたからではありましたが。実際お抱えの諜報機関は優秀で、彼女が悪役王女なんて呼ばれる突飛な行動をとっている原因の予測を立てていたのはお見事。

自分たちよりも腕利きの諜報機関が協力している、という常識的な予測から、心が読めるとか未来が見れる、みたいな超常的な可能性まで追っているのは柔軟ですよ。

 

実際、彼女は未来を知った状態で過去にやってきた、いわゆるループ経験をしている人物だったわけで。真実にかすってますしねぇ。

ラスの所在について誤情報を流す工作をしていたのに、ティシナにラスの名前とかがバレていたというコトなんかも踏まえて、フィアールカが答えを導いてたの良かったですね。

そういう状況を踏まえて、当初の予定よりも早くフィアールカが動くことになっていましたが。

……ラスがうっかり「ティシナにキスされた」って零した下りも影響してるよなぁ、コレ。なんだかんだラス大好きで、嫉妬しがちなフィアールカ可愛いと思います。

 

皇太子として動く以上、国内の貴族への配慮も必要になる。さらに、亡き兄の婚約者候補と対面したり、その実家の人々とちょっとしたやり取りが発生したりもしてましたが。

それを乗り越えた上で、シャルギア王国に踏み込んだラス達。

あらためてティシナ王女と接触し、彼女の真意を探っていくことになって。

ある程度近づいた段階で、彼女が秘密を打ち明けてくれたのは良かったですねぇ。フィアールカの生存を知っていたこととか、ラス達側としては頭が痛いところではあるかな。

秘密を知った上で伏せてくれて、その上で協力関係になれたのはありがたくもありましたけど。

 

ティシナが回避したがっていた悲劇、その発端となった敵の作戦は結構面白かったですね。どうやって王都まで戦力を運び込んだのか、というところとか。

とりあえずは、1巻から続いてきたエピソードに一区切りがつきつつ、気になる情報も出てきたので、どうか続いて欲しいものですなー。

巻末には閑話『銀級騎兵、娼館に行く』として、ラスの紹介状を持ったクスターが噂の娼館に足を運んだ話でしたが……。うん、大変そうだけど多分強くなれるよ、ファイト!

あとは『黒の剣聖、弟子と出会う』として、フォンがラスに興味を示すきっかけとなった過去のエピソード。なるほど、そりゃ気になる存在だろうなぁという納得しかない。

ウィザーズ・ブレイン10 光の空

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「人類にも魔法士にも、シティに属する方にもそうでもない方にも、戦争に賛成する方にも反対する方にも、全ての人々に等しくこの回線は開かれています。――誰でも構いません。思想も、立場も、生まれの違いも生物としての在り方も問いません。互いに一切の区別無く、ただこの星に生きる対等の一個の命として。世界の命運が決するまでのひととき、共に語り合いましょう」

 

長く続いた物語の終焉。あとがきで語られていましたが2001年始動だったみたいですね。いやぁ、本当に完結巻まで読めて良かったです……。

短編集の刊行も決定したようですし、もう少し楽しめるのは嬉しいですけど、まずは一つの大きな流れが決着を迎えたことを喜びたい。

 

雲除去システムという存在があるからこそ、魔法士も非魔法士もお互いを殺しつくして青い空を取り戻そうとしようとする。

そこで錬が掲げたのは、未来に滅びるとしても戦争を止めるために雲除去システムを破壊しようというもので。

錬に言わせれば、これは儀式のようなものだから、と結構日時を高らかに宣言して。

 

当然それを阻止しようとする人々もいるし……錬の側についてくれる人だっている。

錬の宣言で耳目を集めた裏側で、エドの船であるウィリアム・シェイクスピアを世界再生機構が奪取して、雲上航行船3隻がそろうことになったのは熱い展開でしたねぇ。

エドの船の管理をしていたシティの研究員たちは、あくまでシティに家族や友人がいるから残ることを選んだけれど、船はあくまで彼に返すべきだという選択をした。

誰も彼もが迷いながら、それでも後悔しないように動いているのが良いですねぇ。

 

錬がサクラの待つ衛星に踏み込む、そのために他の主要キャラが奮闘してくれるの好きです。

最終決戦の前に、それぞれがどんな経験をしてきたのかというのを語り合っているシーンとか、集大成感が強くてとても楽しかったですし。

そうだよなぁ、これまで何度も出会って別れてを繰り返してきて、多少は相手の事を知っていても、どんな経験をしていたかは知らなかったわけですし。

こういう語らい下手すると死亡フラグになりかねませんが、錬たちが戦いの果てに生き延びてくれたのはホッとしました。

 

錬を送ろうとする側と妨害する側。その攻防が決着した後、システムの行く末はサクラと錬の戦いにゆだねられることになった。

じゃあその間他のキャラは何もすることがなかったのかと言えば、そうでもなくて……。

全世界と通信網を繋いで誰でも発言できる場を設けて、世界の真実について語らう場を設けることになっていたの、かなり好きです。

何も知らなかった一般市民の勝手な発言があって、それも事情を知るメンバーや指導者たちは受け止めた。まぁあまりにも勝手すぎれば、「発現には責任を伴う」という言葉の重みを知ってもらうことになってましたが。

 

そして戦いが決着し、その後のエピソード見られたのは嬉しかったですね。

何もかもが上手くいくわけではないとしても、争い合って滅びるような決着を迎えることが無かったのにはホッとしました。

戦争時の絶望的な空気を思えば、天国のようですね。まぁ、火種はあれど歩みを止める者がいないと信じられる決着なのが、この物語らしい気もします。

あぁ、たどり着いたんだなという気持ちです。長く待ち続けたシリーズの完結巻というだけあって、満足感と寂しさが胸に残る。

傑作ファンタジーなので、どうか多くの人に読んで欲しいものですね。

ウィザーズ・ブレイン9 破滅の星・下

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「(前略)オレはな、『人間』ってもんにどうやっても返しきれねえほど恩があるんだよ」

(略)

「だから、オレは行くんだよ」少女の頭を柔らかく撫で「どうにもならなくても、何も出来なくても、絶対に上手くいくわけ無くてもな。……それでも、行かなきゃなんねぇ所に行って、やらなきゃなんねぇ事をやるんだよ」

 

 

世界再生機構、天城博士の秘密研究所に逃げ込めたけど、魔法士と非魔法士が入り混じった状態だし……追い込まれていく中で、自死を選ぶ人すら出てきてた。

70Pの祐一の死を受けて他の面々が取った行動が、短いながらに味わいがあって良いですね……セラが泣き崩れるのも、イルが持ち帰られた紅蓮を見つめ考え込んでいるのも。

彼の死があったからこそ、戸惑いながらも錬が動き始めたのも。黒沢祐一というキャラの偉大さが分かって良いなぁ。

喪失の大きさも分かって、寂しいですけど……。

 

雲除去システムを起動するために、賢人会議は非魔法士を根絶しようとして、カウンターとしてシティ側が手にしたのは魔法士を排除するという手札だった。

そしてシティの生産能力的に見ても、賢人会議の切りつめ具合からしても互いに戦争状態を継続できるとしても2か月ほどで、それを過ぎれば兵器製造用のプラントを生産活動に転用するなり拠点整備に移るなりをしないといけない状況にまで追い詰められていて。

 

シティ・マサチューセッツは代表がディーによって殺され、ファクトリーシステムが破壊されたことで陥落。

三千万もの難民が生じる結果となり……シティ側はそれを保護することとなり、賢人会議はいつでも刈り取れるからと放置している状況が作られた。

 

シティ側としては、叶うならば賢人会議をおびき出して一網打尽にしたかった。そこでシティ・ロンドンの代表サリーが提案したのが、シティ・北京の遺産を活用することだった。

マサチューセッツの難民を囮に賢人会議を誘い込み……かつてファンメイたちが暮らしていた『島』の予備。近くにあったそれを落とすという悪魔の作戦が実行に移されてしまうことになり……それぞれの事情から、ヘイズもファンメイも止まることが出来なかった。

 

どちらも腕利きですけど、シティと賢人会議それぞれが覚悟を決めた状態で臨んだ戦場において、個人と個人で出来ることは限られていて。そもそもこれまでの状況から疲労も溜まっていたわけですしね……。

無理かもしれない、と折れそうになっていた時にヘイズをクレアが焚き付けて、ファンメイを助けるためにエドが力を尽くした、というのが本当に良かったですね。

 

2か月というのは、両陣営が戦いを継続できるギリギリのタイムリミットなわけで。当然、どちらの陣営もそこに至るよりも早く動き出すわけですが。

最終決戦に際して、錬は自分が生み出された場所へと踏み込むことに。そこには天城博士の伝言なんかも残されていたわけですが……。

アリスの見出した『世界の解』と言い、天城博士が語る『錬が作られた理由』と言い、全部解決してくれる優しい回答なんてものは与えてくれなくて、結局は今を生きる人々がどうしたいかというのを問われ続けているんですよね。

 

そういう意味では、作戦に参加した人々の尽力によって生かされたイルが、英雄として戻る決断を下したの、良かったですね。

公には死んだことにされていて、だからこそマサチューセッツの兵士たちは戦いに望む覚悟を決めていた。けれど、彼の生存の噂が流れるようになり……イルが舞い戻ったことにより、彼に付いてくれる人々が居たというのがこの窮地にあって本当に嬉しかった。

イル生存の噂を広めることに、弥生やヴィドに孤児の少女沙耶の関与があったのも、魔法士たちだけで物語が動いているわけではないという証明になっていて好き。

迷い続けていた錬が、誰に強いられるのでもなく自ら決めて最終決戦の場所に乗り込んで、存在感を示したのがとても印象的でしたね……。



ウィザーズ・ブレイン9 破滅の星・中


普段は極力抑えようとしてるのですが、
今回はネタバレ全開で感想を書きます。



ご了承の上、お読みください。続きを読む

ウィザーズ・ブレイン9 破滅の星・上

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「……出来ないよ、そんなこと」とっさに首を振って少女から視線を逸らし「月姉やフィアだけじゃない。大切な人がこの世界にはたくさんいるんだ。そういう人たちをみんな魔法士にするなんてできない。だから」

「そうか……」

 

賢人会議の参謀、天城真昼が死んでしまったことにより運命は定まった。

覚悟を決めたサクラは、非魔法士の根絶を目的とした全面戦争を布告して……。

サクラやディーといった一線級の戦力でなくとも、魔法士というのは戦場でその強力な力を発揮する存在なわけで。

シティ側も警戒・対策を取ろうとはしていたんですが、どうしても被害が増えていく。そんな絶望的な状況で、各々の立場で出来ることをしようとしているのはまだ良かったと言えるだろうか。

シティの上層部の覚悟が決まっている証として、生き残ったシティが連合組んで戦争に応じる構えを取ってしまったので、易々と止まれなくなったことは心が痛くもなりましたけどね……。だからと言って賢人会議に蹂躙されろ、なんて言えないしなぁ。

 

……ただまぁ、ここまで状況が煮詰まってしまうと、どうしたって望まぬ行動を強いられるキャラも出てきたりはするんですが。

錬とフィアが露骨に影響を受けてしまってるなぁ、という状況ではありましたね。マザーコア用の「天使」であったフィアの存在が露見し、連れ去られて……錬は不本意ながら前線に立つことになって。

祐一やヘイズたちもその事には途中で気付いたんですけど、差し迫った状況で割ける戦力が無く、先送りすることになってたりしてましたしね……。

 

辛さでいえば、他人を傷つけることを嫌うセラが過激さをました賢人会議に残っていたこともまた悲劇的ではありましたよね。

争いを厭う子供たちはいるけれど、一度舵を切ってしまった以上はもう止まることはできない状況になっていて……。セラはサクラを止めたいと願ってこそいたけれど、結果を出せずにいましたし……。

 

賢人会議に多くの魔法士が流れる中、シティに残って協力する道を選んだ人々もいて。

本当にこの世界の人々の生き様は格好いいなぁ。良いキャラが多いんですけど、そういう人が多くても、どうしようもない戦いに転がっていってしまうくらいに絶望的な世界だということが改めて示されているようで辛くもありました。

 

イルはモスクワの英雄としての立ち位置を定めていてることもあって、賢人会議との決戦には参加して。サクラも覚悟を決めていた中で、未だ錬が迷いの中にあったのは彼らしかったですね。

アリスが見た『世界の解』についても示されて……本当に最終局面なんだと実感しました。サクラが衛星を抑えたことで賢人会議側有利になってしまったのか、という所で引き。

 

上巻、発売直後に購入していたので手元に初版があるんですが……いやぁ、続きが出るまで気長に積んでたんですが。当時に読んでいたら続き気になりすぎて、気が気じゃなかったろうし、10巻発売までまって駆け抜けられたのは個人的には良い読書体験でした。

あした、裸足でこい。3

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「そもそも――お前が不幸にならなきゃいい」

端的に、俺にそう言った。

「お前が幸せになれば、その姿を見せりゃ、それで問題解決だろ」

 

今回のメインは六曜先輩。

家柄や才能を言い訳にすることなく、努力すれば誰にだって勝てるだろうと過去に成功体験を得た少年。

起業したいという願望があるものの父に反対されていて、学園祭の有志ステージを担当してメインステージに勝つことを条件に許されることに。

六曜先輩と二斗が学園祭の実行委員長と副実行委員長を務める、というかつての時間軸と同じ流れを辿ることになっていましたが。

 

そこに未来を知る巡が介入していくことで、またしても未来は変わっていくことに。

二斗もループを重ねていく中である程度未来を知っているわけですけど。彼女は、自分の望む未来のために他を切り捨てていくことしかできなくて……それでも望みには届かず、壊れていってしまった結果が、失踪するという未来なのかなという危うさがあったわけですが。

そこは救おうと足掻く巡とは違う視点ですね。まぁ今回は巡も色々と抱え込んで、迷走しかけたりしましたが。六曜先輩に喝を入れられて再起したのは良かったですね。

そうして救われた分、巡が六曜先輩へしっかりとお返しできていたのも良い関係になっていったと思います。

 

表紙イラストと作中の挿絵とで変化を見せつけにくる構成、インパクトあって好きですねぇ。あとがきに書かれていましたが、岬先生の癖が詰め込まれた結果のようです。

個人的には表紙イラスト側の方が好きではありますが、イメチェン後も好きなので悩ましい。

変化した未来において、巡は自分の果たすべき目標を見定めていましたが……地の文でも「やり直しの終着点が近づいている」といった風な書きかたされてて震えました。

 

あした、裸足でこい。2

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「……約束通り大事にしてよね」

「おう……」

「ちゃんとそばにいてね。浮気したら、キルユーしますから」

 

千華から「未来から来たでしょ?」という指摘を受けることになった巡。

彼女視点から見ても、隠そうとする巡の挙動は不審でバレバレだったけれど……そんな不器用な一生懸命さが「たまらなく尊い」と認識してるのが、読者目線だと尊くて良いですね。

そして未来から来た巡と、実は何度も高校生活をループして望む未来をつかみ取ろうとしていたという衝撃の事実を抱えていた千華。

 

出来る範囲でお互いの秘密について共有したうえで、恋人関係になって傍にいる時間を大切にすることにして。そしてお互いに未来を変えるために動くけど、「協力して何かを企むのは無し」というルールを敷くことになったわけですが。二斗から巡への想いもなかなかに重そうですなぁ……。

巡、あんな可愛い後輩の真琴のことをマスコット換算で「女子」として数えてないの、良くないと思う。

二斗を救うために過去を書き換えていく巡でしたが……その結果として、最初の時間軸においては仲の良かった真琴との過ごす時間が減り、距離感が変わっていくというのは寂しいなぁ……。

 

今回の改変の中心は、二斗の親友である五十嵐さん。

彼女と二斗が大喧嘩したことで未来では距離が出来ていることをしった巡は、五十嵐さんと二斗との関係改善を図ろうと、五十嵐さんとの時間を重ねることに。

時に六曜先輩も交えて青春を送っていたの面白かったですけど、恋人である二斗との時間減ってしまってるのは惜しくもありますが。

巡が五十嵐さんとの縁が深めていったこともあって、二斗との間に生じそうだった溝を埋めることが出来たのは良かったですね。

 

アーティストnitoとして所属事務所を決めた二斗は、専用の寮に入ることを決めてましたが……『恋は夜空を渡って』の御簾納咲ちゃんがしれっと現れたの、嬉しかったですね。こういう繋がりが岬先生作品には多くて楽しい。

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
 新刊・既刊を問わず読んだタイミングで記事を作成しております。
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