「私、今、すごく、幸せなんだと思う」
ぽつりとラニアが言う。
「俺もそうだね。たぶん」
「わわわっ、私も」
主人公のエドは、故郷のエルダニア都市がスタンピードによって滅ぼされ……そこから流れ着いた人々で構成された、近隣にあるトライエ都市の城壁外に創られたスラム街で暮らしている6歳の少年。
父は亡くなり、母は姿を消した。そんなある日、頭を打った彼は前世の記憶を取り戻し……さらには『鑑定』魔法も扱えるようになって。
トライエ都市からの食糧の配給は続いているものの、長く続いたことで今はイルク豆一種類に統一されているとか。トライエ都市内部でも食糧不足が深刻になってるって話ですし、まぁそりゃ急に養う民が増えればそれはそうか……。
両親が居ないエドは、仲良くしているミーニャという少女や彼女の両親たちの助けを得つつ暮らしていたようですが、先述の通りスラム街は支援も限られ、貧乏が貧乏を読む悪循環に入っている状況で。
スラム街の住人は、野草の知識も薄く……かつてキノコに手を出した人物が命を落とした例もあって、食べられるのに手を出されていないものが身近に多く存在していた。
そんな中でエドは「鑑定」魔法で食用かどうかを区別できるし、前世の知識も活用して色々と工夫していくことになるわけです。
彼に懐いている少女も2人ほどいて、仲良く行動しているのは微笑ましかったですね。
前世知識と鑑定魔法で底上げしているとはいえ、子供数人の行動で改善できる環境で大人はもう少し何かできなかったのかなぁ……という気持ちも若干沸きますが。
貧乏ではありつつも、子供の稼ぎ巻き上げようとかしないし、逆にエドが何気なく上げたものが高すぎるのではないかと親が飛んできたりしてるし、街を捨てざるを得なかったスラム街の住人達ですが、善性を捨ててはないので、貧しいのは貧しいけど荒んだ雰囲気がないのは不思議な感じでしたね。