「どうしたらいいかわからない。
ならば、どうしたいかを考えなさい。
それならもう、あなたの答えは出ているでしょう?」
ニアが弟子たちと行った狩りで資金の目途がたち、武闘大会が開催されるという噂が流れ始めた王国。
賞金が億単位となれば、各国か精鋭がやってくるだろうし……裏社会からヤバい連中も出てくるかもしれない。……実際、噂を聞いた他国の腕利きが優勝賞金五億に飛びついて、楽しい大会になりそうではあります。
ニアが集めた八億に加え、セドーニ商会を筆頭に出資者が続出し最終的には四十億と言う資金が集まったのは凄まじい。
その資金を使って、浮島一つまるごと会場として、整地から建造などなどかなりの金が動く事業として動き始めて。その熱量は学生たちにも通じるほどでしたが。
資金稼ぎと注目を集めるためにつくった看板『冒険家リーノ』が大会に参加し、その優勝を持って引退することを発表したことで、さらにその動きは過熱。
『冒険家リーノ』は、ニアの想像をはるかに超えるほど成長していた、とニアが認めるほどでした。短期間で稼ぎまくった冒険家ドリームを体現する象徴として、注目を集めやすい対象ではあったんでしょうけど。
他国の参加者も集うってことは、単純に人が増えるってコトですからそれだけトラブルも起きやすくはなるんですよね。
天破流の師範代代理として学院で指導を行っているガンドルフが、本国からやってきた人員に八百長に近い提案をされて、ニアの弟子としても鍛え上げられた彼からすると呑み込みがたいものがあって悩むことになってましたが。
最終的に自身の腕で問題解決してたのは笑っちゃった。ニアが多少暗躍してしりぬぐいと言うか、火消しもしてましたけど力で押しとおったガンドルフの選択は称えたい。
ある意味で一番ニアの弟子やってる気がしますよね、ガンドルフ。武人肌だし。
リノキスは侍女としても傍にいるし、ニアを溺愛してるから過剰に守ろうとする部分があるし。アンゼルやフレッサは元々裏社会の住人だから、ニアの歩もうとする覇道とは道を違えてる人物なんですよねぇ。
しかしそんなアンゼルも、裏の住人だからこそ欠かせない義理というものがあって……。
アルトワール裏社会のボスであるカフス。アンゼルにとっても育ての親も同然の人が、アンゼルに大会に出場して優勝するように言ってきて。
裏で行う優勝者を決定する賭けで、アンゼルの優勝に賭けるから勝てという無理難題付きで、いつもニアに無茶ぶりされているのを見てるので、さらに背負うもの増えて流石にちょっと同情の念が湧いた。
ただアンゼル、他の弟子たちが技を教わる中で基礎を伸ばすことに注力していて、それはニア思う正解に近い鍛え方ではあったわけで。そういう意味では、ガンドルフとは別の意味でちゃんと弟子やってるんですよねぇ。
……そういう意味では、一番ちゃんと弟子してないのリノキスなんじゃないか疑惑。
本物のニアを知っていて、侍女と言う立ち場でニアの傍にいるのもあって、独特な距離感にいる。リノキスが睨み聞かせてないとニアは宿題後回しにしたりするでしょうから、ニアを英霊時代のような修羅に落とさず、人間として生活させているって言う意味では評価してますけど。
武闘大会はニアの個人的な願望であり、そちらに尽力はもちろんしていますが。
リストン領の魔法映像を発展させたい、という希望もニアの中には確かにあって。ウィングロードと言う、飛ぶバイクみたいな競技用単船でのレースに目を付けて。
厄介ファンがついてしまってちょっと消極的な部分のあったニアの兄が、進んで参加してくれるようになったのも、今後に期待できそうなネタで良いんじゃないですかね。
その切っ掛けとなった準放送局のシャール、確かに初登場時に興味のあるネタとして挙げていたなぁ。事故って捨てられたウィングロード用の単船を見つけて、そこで興味を持って自分で修理にまで挑戦してるとか。中々面白いテーマでしたね。
準放送局に与えられている魔石が、短時間撮影用のものであることを踏まえて複数回撮影した物を編集して一つの番組纏める形式で放送したのは、新技術を活用しようとするアグレッシブさが感じられて良い。
魔法映像、まだまだ広まり切っていない中でも、アニメとか料理特番とか結婚式の風景の記録や、シャールのドキュメンタリーだとかいろんな方向性が見出されているの凄いですよねぇ。