「武とかどうとかはさっぱりだけど、賢い選択ができないってのはすごくよくわかるわ。賢く生きるための選択って話なら、私だって未来が見えない役者なんてやってない。
それこそとっとと実家に帰って農業やってれば、安定して暮らせるだろうしね」
ならばわかるだろう。
「私は行くわ。必要なことだから」
闘病生活を送っていたニア・リストンは、両親が快癒を願い様々な手を打ってきたものの、願い敵わず病没。
しかし、最後に両親が頼った男は怪しい術を習得した人物で……報酬を得るために、死んだニア・リストンの肉体に、別の魂を宿すことで一時しのぎをすることに。
病に侵された体は弱り……このままなら、新たな魂を入れても数日の命だろうと思われたものの。男が招いた魂は、尋常のモノではなかった。
サブタイトルによれば「神殺しの武人」であるところの魂は、体内の「気」を操る技法を習得しており、少しずつ病魔を追い払っていくことに成功。
ニアの肉体とこれからの人生をもらう形になってしまったのだから、彼女が背負うはずだった責任と義務は果たして親孝行はしよう、と考えるくらいの人間味は残っていたようですけど。
生まれ変わったニアの本質を一言でいうなら、戦闘狂なんですよね……のちに「凶乱令嬢」なんて二つ名を贈られてるのも、納得しかないくらいには。
かつてのニアの記憶も引き出せず、しかし前世で培った戦闘技術以外の記憶も朧気な主人公は、およそ4~5歳児らしからぬ言動をするようになるわけですが。
それでも受け入れてくれる両親の懐の広さは素晴らしい。
この世界、かつて「大地を裂く者ヴィケランダ」という特級魔獣が大地を裂き、その時の大地のかけらがどうしてか空に浮かぶ「浮島現象」が生じるようになって。
浮島では独自の生態系が作られたり、ダンジョンと呼ばれる迷宮が存在したり、かなり興味深い存在となっているようです。
プロローグで名前列挙されている、過去の英雄たちについても気になりはするんですけど。
「気」を操作し快方に向かっているとはいえ弱っていた初期のニアは、部屋で療養してばかりだし。彼女の興味が血沸き肉躍る「戦闘」に偏っているので、面白そうな世界観ながらこっちに流れてくる情報が絞られているのが惜しくはあります。
貴人の娘として求められた振る舞いをしつつ、裏では戦闘欲を発散する機会を伺っていて。1巻時点で裏組織一つにトドメを刺してるっていうんですから、将来が今から怖い子ではありますが。怖いもの見たさで見守りたくもある。