「荒ラ獅子魔王に限らず、陰陽師にはリスクが皆無ではありません。私は、陰陽師でございます。陰陽師を辞める気はございませんので、保険をかけておきたいのです」
(略)
「難儀なことじゃ」
天狗の羽団扇を作って陰陽師全体の戦力の底上げを図ったり、沙羅が得た羽団扇の持つ治癒能力によって引退していた陰陽師が戦線に復帰した。
初接触の時は撤退を余儀なくされましたけど、その後の対策と準備を怠っているわけではないんですよね。
一樹は占領地への強硬偵察任務なんかにも参加して、魔王の右腕が重症であることを看破してますし。
魔王は健在ですけど、羽団扇集めの時も見たように該当地域以外では普通の生活が続いているんですよね。
A級陰陽師だけではなく、普通の学生としての顔もある一樹が、分が差異を楽しむ余裕があったのは、良かったですね。
一樹の通う花咲学園で文化祭が行われることになったものの……一樹も蒼依も、そういった学校行事の知識は疎くて。
沙羅の妹である紫苑や、一樹の妹である綾華が通っている卿華女学院でも文化祭が開かれるのを知り、伝手で入場券を貰い見学に行くことに。
……紫苑のクラスがメイド喫茶やってて、からかいを交えて「美味しくなるおまじない」を頼んでいたのは……この2人の関係ならいいか。
そこで旧財閥三戸家の令嬢・愛奈と顔見知りになったりもしてましたが……そのお嬢様が、花咲一族の血が入っていて、犬神を継承する事でA級陰陽師になっている花咲家の当主継承戦に参加していたのはちょっと意外でしたね。
とは言えさすがに陰陽師としての鍛錬をしていた小太郎が勝ち抜くことになってましたが。……愛奈も愛奈で得るものはあったっぽいので、まぁ双方ヨシ。
メイド喫茶の視察に行ってきた一樹たちの報告と、伝手もあって一樹たちのクラスでもメイド喫茶をやることになってましたが。一樹がそこで、船の式神を会場に使うとかいう力技を披露し、大繁盛していたのは……良いのやら悪いのやら。
閑古鳥鳴くよりはよいですし、なんだかんだ良い思い出になりそうですけど、想定以上の修羅場経験をする羽目になってたのでそれは流石にお疲れ様です……としか。
そして、一樹は魔王討伐の前にもう一つ片づけておくべきことがあった。
それが昇神の道筋が見えていると言えど、未だ山姥になる可能性のある山姫である蒼依の存在で。一樹からの気の供給が絶えると、妖化してしまう。
だからそれを回避できる備えをしておきたい、と龍神から助言を貰ったり。先祖帰りしている五鬼堂家の令嬢・凪紗の助力を貰ったりして、無事にまとまったのは良かったですね。
慕っている主でもある一樹が、自らの死ぬ可能性を考慮していることに、蒼依は不満げでしたけど。とはいえ人間と妖怪で寿命の差があるうえ、一樹がA級陰陽師として危険な任務に向き合い続ける限りはいずれ対処しないといけない話でもあるわけで。
ひとまず、蒼依の問題には区切りがついたのは良かった。あくまで一歩目を踏み出しただけで、今後より高みを目指すならキリがないんでしょうけど。