「あなたはわたしに、たくさんのものをくれています」
三百年前に降った星。
それは極彩色の柱状になって地に刺さり、呪晶石と名付けられた。
呪晶石は周囲に毒をバラまき多くの命を奪い、村を、街を、国を滅ぼした。十年の後、毒の放出は止まったが、どんな攻撃・魔術・兵器を駆使しても呪晶石を破壊することはできなかった。
さらに、呪晶石の毒で死なず異形の獣と成り果てた、呪晶獣と呼ばれる存在まで生まれた。
不幸中の幸い呪晶獣は呪晶石と違い不滅ではなく、倒すことは可能であったが……その力は強大で英雄や賢者と呼ばれるものが死力を尽くして勝ちを拾えるかどうかというレベルだった。
さらに呪晶石は30年周期で飛来を続け、どんどん人々は生存権を脅かされていた。
そんな情勢もあって、呪晶石災害が発生して以来、呪晶獣を討伐した者は呪晶獣が縄張りにしていた土地の所有権が生じるようになった。
ただそれもあくまで「権利」の話であって、呪晶獣によって生来の土地を追い払われた人々からすれば、よそ者が彼らの土地を奪ったと思われ恨みを買うこともある。
……実際、主人公たち朱雀の民と白虎の民がそれで土地の権利を巡って長く争うことになったわけです。
途中から犠牲を減らすために、それぞれの代表の一騎打ちをして勝者の意向に従うという方針になったみたいですけど。
そんなある日、呪晶石の飛来を予測・監視する世界塔と呼ばれる機関の巫女が、朱雀の里の頭領であるシラヌイに会いに来て言うわけです。
「白虎の頭領アウラと結婚して、子どもを作れ」と。
未来を見ることが出来るという巫女に寄れば、2人の子どもが未来に起こる大災厄を打破する希望になるのだとか。
シラヌイはアウラに一目惚れしていたこともあり、それを受諾。
ただ「予言だから結婚する」のではなくて、朱雀の頭領として白虎の頭領との一騎打ちに勝利を治め、2つの里の間で合意が取れていた決着をつけてから先に進もうとしているのとか、真面目で好きです。
直ぐに飲み込める素直な輩だけではなくて、白虎の民から襲撃まがいの事を受けたりもしてましたが……魔術は凶器になるからこそ、家族には向けられない、と。朱雀と白虎の民は家族に慣れると信じてそれを受け、あしらったシラヌイはなるほど一つの民をまとめる頭領なんだなぁ……と納得しました。
初恋の相手であるアウラの前ではかなり初心で、どうにも先に進めずにいましたけど。
なんならアウラに手を出すよりも先に、より大きな戦果を挙げに行ったりしてて、それを贈り物にしようとするとか微妙にズレてるところもありますけど。
そんなだからいざ一線を越えてからアウラに圧されるんだぞ……。
大災厄に備えるためとは言え呪晶獣討伐を成し遂げて国を作ろうとか大それたこと考えるなぁとも思いましたが。
そして、その土地に元々住んでいた国の人に良く思われず襲撃を受ける羽目になったりもして。「呪晶獣を討伐したものに所有権を与える」ってルール、さっぱり守られてないじゃないですか。元の所有者が呪晶獣を打破して平和裏に取り戻したケースとか、ないんだろうか。……物語的に盛り上がりに欠けるから描かれないだけか……。
主人を慕うがゆえに暴走してしまったメイアですけど……キャラデザめっちゃ好きですね。可愛い。彼女の使う術を知ってから見るとちゃんと小物にもネタ詰められてて良い。