「強者の天敵は弱者だが、弱者の天敵は強者じゃない――より弱い者だ」
「馬鹿と自覚してる馬鹿は――自分が賢いと思っている馬鹿より、よほど手強い」
吸血種と海棲種。
血を吸うことによって成長し、しかし相手に病気をあたえる種族。
海中でしか生きられず、女性しか生まれず、繁殖に他種族の男性を要するものの、絞りつくして殺してしまう種族。
『十の盟約』で縛られた世界において、生存条件的に「詰んだ」種族。
ならば、詰んだ者同士で手を組み共生しようと吸血種は考えた。
だが問題は、海棲種の「馬鹿さ」加減だった・・・!
海中に棲み水精に親しむという特殊さがあるからこそ、序列15位をあたえられているものの、「馬鹿の代名詞」とでも言うべき存在らしく。
ゲームで引き分けることによって共生しようとした吸血種の意図を見逃し、大勝利。
共生どころか、明確な上下関係を生じさせてしまった阿呆さ加減。
いやぁ、大戦を生き残ったのもすごいですけど、この2つの種族が「今」まで生存してきたっていうのも中々の快挙なんじゃないでしょうか。
まぁ、緩やかに衰退していた2種族ですが、本気で崖っぷちに立ってしまったため、吸血種のプラムは空と白に助けを求める。
ゲームにおいては無双する二人ですが、リアルではめっぽう弱いわけで。
状況を変える一手『眠り続ける海棲種の女王を起こせ』というゲーム。
その条件が「リアル恋愛ゲーム」であると知ったときの反応が、さすがというかなんというか。
作中でなんども「愛ってなんだ」と問いかける姿がまた愉快ですな・・・
女王の夢に干渉し、空の意識を反映させた「学園を舞台として恋愛ゲーム」に挑む一行。
三十人の嫁が居るという衝撃の事実が明らかになったいのが先陣を切りますが、何アレ怖い。
下半身に忠実過ぎる、ドン引きする暇も与えない土下座押し。
何をどうするとこんな戦術を編みだそうとするんだろうか。「先手必勝」って。
いやこれ以上ない先手、これ以上ない驚きではあるだろうけど。
ある意味、漢ではありました。
しかし、この2種族、ただの「馬鹿」でもないようで。
相変わらず後半張られていた伏線を回収していく様は見事の一言。
勝ちでも負けでもなく「中断」という手段を持って、2種族にチェックを賭けた空と白。
それで満足せず、さらなる手を打とうっていうんだから、すさまじいですね。
相変わらずの面白さでした。