気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

★5

Unnamed Memory 虚ろ月

ico_grade6_5

「誰のことも見たことないんですけど。人を好きになるってどういう気持ちなんですか?」

「そこからか……」

(略)

「お前にいつも幸せでいて欲しいという感情だな。その時に一番近くにいたい」

 

C1052024年冬コミ)合わせの新刊。

事前情報で消滅史っていうところだけ聞いていて、タイトルがこの「虚ろ月」という者だったので、悲惨なタイプの消滅史だったらどうしようかと思っていたんですが。

実際問題、ティナーシャが再会するまえにラナクが死んでしまって、彼女が魔女として長くを生きてまで成したかった魔法湖の昇華が叶わなくなってしまった。

 

そのため、もう死にたいな……という絶望にティナーシャが浸っていたところに、魔女の塔に呪われた状態のオスカーがやってきて。

下見のつもりだったけど、塔の解体を考えているとティナーシャが口走ったことで、そのまま挑戦することに。1度目は流石に無理で、塔の外壁を伝って降りたとか無茶するなぁって感じではある。

その後2度目の挑戦で制覇しているあたり、特訓は怠ってないんですよね……。

「死にたい」なんて絶望を負っているティナーシャ相手に、適度に距離をとって無理に踏み込まず、パーフェクトコミュニケーションをとっているオスカーはお見事でした。

 

魔法視の特訓で猫使われているのがなんか和んだ。

不可視で周囲をうろつくから、それをキャッチするのを頑張るという特訓を選んだ理由が「猫を捕まえると嬉しいから」なの可愛いなティナーシャ。人懐っこい猫だと、実際和みますけども。早く察知できれば前足側を掴める、ちゃんと習熟しないと無理なあたり特訓として効果的なのも笑えるポイントですが。

ティナーシャ、いつものルートよりも死を望んでいるからか、ラヴィニアに会いに行くハードルが低いのがなぁ。本編だと、出会った時期が早くてラナク生存の可能性がまだあったのもあって「ただの契約者だから、魔女と戦うまでではない」みたいな距離感だったハズなのに。

ラヴィニアから魔法球の存在をティナーシャが聞いて、それでも使わないことを選んで。

定義名が分からずどうしようもないはずの魔法湖に対して、オスカーなりにできる事をしていたり。普段と違う選択を見られるのは、消滅史ならではで……いつか失われるのが確定しているとしても、とても良いエピソードでした。

タイトルに「虚ろ」とか入ってるので、零れた灰みたいに闇よりだったら怖いなぁとは思っていたんですが(闇消滅史は闇消滅史で好きですけども)、読了後どこか温かい気持ちになれたので良かった。

 

完全版 金色のガッシュ!!16

 ico_grade6_5

(だからよ…今度は…オレ達が、お前を助ける番だ…)

(略)

(さ、もう一ふんばりだぜ…ガッシュ…)

 

LEVEL.304LEVEL.323」を収録した、完全版最終巻。

最終決戦に赴くためにガッシュ達が「では、行ってくるのだ」と飛行機に乗り込む「LEVEL.304 出発」からクリア編の解決と、王を決めるための最後の戦いまで盛り込んでいる満足度の高い一冊でしたね。

アポロ、ナゾナゾ博士が本が燃やされてもバックアップ存分にしてくれるの、良いですよね。これのお陰で清麿たちが戦いに専念できるわけですし。

事情を知って戦い続けていたからですけど、飛行機に乗り込む清麿たちを送る場所にリーンも来てて、そのくせ何も言わないのじわじわ来るな……。

 

キャンチョメの本を燃やしたように、クリアは完全体になる前でも超長距離狙撃の術が浸かる。一丸となって向かっては良い的なので、それぞれ修行していた地から分散して飛び込むことに。

ガッシュ達を囮にして、ティオの「盾」でやり過ごすための布陣でしたが……クリアの持っていたもう一つの力、バードレルゴに襲われることに。

巨大な鳥のような形状をした術が意思を持って襲ってくる、というとんでもない攻撃で、空の上では対処も難しい。

そんなガッシュ達をウマゴンが「シン・シュドルク」で駆けつけて助けてくれるの熱かったですね。サンビームさんが「我が腕に、彼奴を倒す覚えあり」って言うの凄い好きです。

ウマゴンも一人で戦うのではなく、最後ガッシュに助けてもらっているのが、良いコンビネーションだったと思います。

 

そしてウマゴンも合流し……長距離砲撃の術・ザレフェドーラにウマゴンの足とティオの盾で対抗することになるわけですが。

最終決戦前に恐怖を感じていたティオが「また明日」とガッシュと約束したことで、強くなって「私達の明日を作るんだから」とガッシュを最終決戦に無事に届けるために全力を尽くしてくれたの、とても良かったですね……。

ウマゴンもまた「シン」の術の反動に苦しみながらも、ガッシュを送り届けるため叶う限り全力で駆けてくれたの、頼もしかったです。

……こんな形で別れるのではなく、王の座をかけて真剣に戦いたかったとガッシュが涙するのも分かる別れではありましたけども。

 

ブラゴも修行で力を増して。ザレフェドーラの最後の足掻きを「ニューボルツ・シン・グラビレイ」で潰してくれたコマ、痛快でしたし。重力の使い方上手くなってるの、結構好きなんですよね。

ボルツ・グラビレイで相手だけではなく自分も吸い込まれることで近づいたり。ベルド・グラビレイで吸い込み切れない力を斥力で弾いたりする細かいコントロールが可能になってるところとか。「シン・バベルガ・グラビドン」というもう一つの「シン」の術も使えるようになってる当たり、ブラゴの成長度合い流石すぎますねぇ。

成長したガッシュ・ブラゴ両ペアの活躍により、クリアを追い込むことはできたわけですが……それによって完全体に覚醒してしまって。

 

打つ手がもうない、となったころでタイトルの「金色」回収してきたの、良すぎましたねぇ。その後のボーナスステージとでもいうべき最強術乱舞の展開、とても好きです。

金色の本に力を託しに来た魔物、ゼオンが「魔界に住む魔物を一つにした」と言ってるのを表すかのように、ロデュウとかゾフィスとかリオウとか、因縁の在る奴らもちゃんと力貸しに来てくれてるの良いですよねぇ。

そして見事クリアを打ち破り、ガッシュとブラゴが最後の2組となって。清麿の卒業式まで待ってもらって日常の区切りを迎えた上で、本当の最後の戦いするの良かったです。

 

最後の巻末ガッシュカフェは、前魔界の王ダウワン・ベルと魔本。魔本!?

オマケ時空だからこそダウワンが、パートナーだったウィリーに「また会えてうれしい」と言ってるコマ、涙浮かべてるの人間味がありますね。

千年王として在位するなかで大きな争いも3度経験してるそうですし、「一歩間違えば魔界は本当に滅んでいた」と魔本を追及して、魔本なりの回答を得られたのは良かったですかね。ゼオンに苛烈な教育をした顔ももってますが……まぁ最後にはゼオンも丸くなって、普通に話しかけてるから、終わりよければ良い、か……? ゼオンが許してるからな……。


忘却聖女5

ico_grade6_5

「エーレはきっと、ずっとエーレなんですね」

「お前は変われ。だが変わるな」

「えぇ……」

 

忘却の中でなんとかマリヴェルと神殿が合流し、これから協力していけるか……と思ったタイミングで、襲撃によってエーレが死亡。

彼が抱えていた聖印の効果によって、神官長たちが記憶を取り戻したのは良かったですが、それゆえに聖女を守るために彼らは命を掛けることに。

やっとお父さんと呼べた神官長を置いて逃げざるを得なかったマリヴェルでしたが、彼女は諦めるつもりはなく。王子と共に身を捧げることで、神の奇跡によって全てを治めようとした。

 

……しかし、王子もまたそれをただ受け入れるだけの器ではなくて。

ハデルイ神の前で、マリヴェルを必要とする主張をしてくれて。ハデルイ神、マリヴェルを人形と呼び、愛する人の子を守るために彼女を砕こうとしたわけですが……。

かの神は確かに人を愛していた。強大な力を持つハデルイ神は、十一柱の神を喰らったエイネ・ロイアーであろうと滅ぼすことは可能だった。

しかし、それだけの力を得たエイネとぶつかれば、余波でアデウスの民は死んでしまう。人でありながらエイネは同胞を人質にして、それを神が見捨てられなかったという背景が書かれていたのは、エイネの周到さや神なりの愛とか感じる描写で良かったですねぇ。

そして一度死を迎え、残滓となってなおハデルイ神はいろいろと手を尽くしてくれていたのが良いですね……。

 

エーレも、死ぬつもりは無かったけど最悪に備えて呪いに近い聖印を刻んでいたわけですが……死が確定する前に、マリヴェルが贄となって開いたハデルイ神と対話する世界にかくまわれたことで、神による治療が間に合ったと。

愛する人の喪失を知ったことで、神殿勢がこれまでマリヴェルが自分を大切にしない、喪われる前提での物言いに傷ついていたんだぞ、と改めて釘を刺しつつ「自分の喪失でそれだけ絶望してくれたのは結構嬉しい」とか言っちゃうあたり、エーレも愛が重い。

 

エーレやルウィがその身を捧げ、共に人の理から少し外れることで、神の器となる運命から解き放たれたマリヴェル。まぁ始まりが「器」なので、そういう助力があっても全く「人」と同じという訳にもいかないようですが。

人の意志が起こした奇跡は、実に尊いものであったと思います。4巻で神官長たちが記憶を取り戻してくれたことと言い、これが見たかったんだよ……というのが見れる終盤の展開、実に良いですよね。

 

想えばこの物語は終始、人の想いによって紡がれてきてましたよね。神が存在する世界で、神術とかも色々存在はしていますけども。

エイネ・ロイアーこと初代聖女アリアドナ。

マリヴェルは彼女の過去を垣間見て、その想いの一端を知ってましたが……あくまで彼女の始まりもまた、人としての愛ゆえの暴走だったというのが何とも。

復讐という強い炎に突き動かされて、多くの犠牲を出したアリアドナを自分だったら許せはしないな……と思ってしまいますが。マリヴェルが最後、彼女と対話する時間を設けようとしていたのは、関心しちゃった。マリヴェル、なんだかんだ結構ちゃんと聖女やってるんですよね……。

 

エーレの呪いが伝播して記憶を取り戻した神兵たちが、マリヴェルを忘れたことに強い罪の意識を持ってるのも、彼らとしては苛まれ続ける悪夢みたいな感情でしょうけど、それだけマリヴェルを聖女として抱く神殿の一員としての意識がしっかりしてる、ということでしょうし。

アリアドナの策略によって北の隣国が攻めて来たのと、大樹が君臨しアデウス王都が壊滅状態に陥ったのは派手でしたけど。これだけの大騒動の終わりは、予想以上に穏やかなもので……神の愛によって守られたものも多く、悲劇的な別れで終わらず神官長との再会が叶ったのは本当に感動的でした。

 

……アリアドナによって歪められ続けた神殿ではありますが、マリヴェル就任の際に新体制を整えたのが多少は効いてましたかね。後始末に際してアリアドナ関連の情報は全て開示したみたいですし、このままという訳にはいかずある程度形を変える必要はあるだろうとされてましたが。……難工事であるのも確かで、先送りにされているのも無理はない。

 

全てが終わった後、これまで他国の聖女との交流を立っていたアデウスの聖女という厳しい立場になって、マリヴェル大変そうではありましたけど。それでも為すべきことを為してるのは偉い。

とある神殿関係者が「マリヴェルが脱走できてた頃は平和でしたね」とこぼして、あの頃みたいになれるように頑張りますと返したところ「脱走はするな」と真顔で返される一連の流れ、正直トップクラスに好き。

冒険者酒場の料理人2

 ico_grade6_5

「俺はこれで料理を作ろう。最下層にこれがあったのはきっと意味がある。もう一度挑むなら俺の料理を食べていってくれ」

 

1巻でも加筆エピソードがありましたが、迷宮関連の話が増えていたりしましたねぇ。

相変わらず迷宮食材を用いた「迷宮料理」を出す店として人気を博しているヨイシの酒場。

異世界ならではというか、酒場の娯楽として吟遊詩人の歌は結構重要で。異世界に来た当初言葉が分からなかったヨイシ的にも、メロディに載って覚えられる歌は良い教材だったようですし、爺さんの葬式での葬送歌も頼んだとかで、かかわりが深かったそうです。

料理のおいしさで話題のヨイシの店は、一晩で帽子がいっぱいになるほどのおひねりが期待できる人気店だそうで……最初のエピソード「透明玉菜」もそんな吟遊詩人のひとりを招いたことで挑戦することになった食材でした。

 

歌にするためにいろんな噂に通じている吟遊詩人から「ヨイシの酒場」として噂になっていると聞くことになったり。最後にはヨイシの歌まで作って去っていったんだから、にぎやかで面白い御仁でしたねぇ……。合間にユグドラとセフィの歌も作ってるので、目の付け所が良い。

 

山二つほど離れたところにある養鶏場が魔物の襲撃を受けたことで、卵の供給が滞ることになって、爆発卵というそのまま割ると爆発する卵の調理方法を模索したり。

迷宮料理の噂を聞きつけたさる貴族から「食べると死ぬ昇天キノコの調理」を依頼されたり。うわさを聞き付けた王家が宮廷料理人を派遣してきたり……その後も式典に際しての協力を要請されたり。

爆発卵は近隣への影響が大きいのもあって、方法確立してからは結構直ぐに情報提供してましたし、「上手い飯を出す店の主」ってだけじゃなくて、ヨイシにそこまでの意識はなさそうですが、名声的な部分も高まってきてる感じはしますね。

 

ヨイシ、根が小市民だからなぁ。爆発卵の調理法を探しているときに、ウカノがちょっと反抗期的な振る舞いを見せて部屋に入れてくれなくなって、盛大に戸惑ったりしてるし。

実際は爆発卵ちょろまかして部屋で羽化させてペット化計画企んでただけだったわけですが。

ウカノのこと鹿とトカゲのハーフかな? とか言ってますが。吟遊詩人からは「ドラゴンみたいな尻尾生えてなかった?」と指摘されてもまさかと流してるし。

あからさまコカトリスだろうウカノのペット・ホウオウも「ニワトリだろ」で流してるし。

 

爺さんとの付き合いもあったアリムラックに不審なところを感じても、なんか丸め込まれてるし。ちょろい。赤い目と長くて尖った耳を持って、鏡の無い診療所でコウモリをペットにして夜間診療を行う、ニワトリの鳴き声で卒倒する一般人が居るか。吸血鬼だよ、それは。

まぁアリムラック先生、一瞬ちょっと危うい場面あったものの、おおむね善良になった吸血鬼ではあるようでしたけど。

閑話「料理人の冒険者」で爺さん世代のエピソードがちょっと見られたの良かったですね。迷宮が土の力を奪うために失われてしまった、かつて王国を代表する作物だった「氷芋」の話があったり。ヨイシを拾った「爺さん」の仲間たちのリーダーの家系、9世代くらい前に女神が居たとかで。わずかな神聖を頼りに迷宮の謎をほぼ解き明かしていた、っていうのも凄いし……そんな彼らですら最下層は攻略できずに、ヨイシが来るまで迷宮都市は健在だったというのが寂しくもある。

 

割と長命なウカノ、ヨイシに懐いていて実に微笑ましいんですけれども。

彼女の母は旦那を亡くしてから娘にあたっていたようですし……寿命差で別れが待ってそうなのとか、不安は尽きませんが。それでも今幸せなのは間違いないから、良いかなぁ。

大迷宮は踏破しないと土地の力を枯れさせ続けるし、成長を続けた果てには崩壊して大規模な砂漠を創り出したり、迷宮の主が外を放浪するようになったりするとか、危険しかないので、ユグドラとセフィが偉業を為してくれたのはホッとする要素ではある。

読了した人は、WEB版の最後に書かれている「裏話」を読みに行くことをオススメしますよー。



Invitation ――Unnamed Memory 現パロ再録本

ico_grade6_5

「あんたさ、それって恋人って言うんじゃないの?」

「えっ?」

頭の中大混乱の彼女が、「よそからどう見えようと違うと思えば違う」という結論にたどり着くのは、この十五分後のことである。

 

2411月のコミティアで頒布された、古宮先生の同人誌。

電撃の新文芸から書籍化された『Unnamed Memory』や『Babel』は「―world memoriae―」シリーズに属する作品なんですが、それらのキャラが登場する現代パロディとして『Babel学園』というのを古宮先生は過去にWEBで書かれていたんですよね。

(なお、『月の白さを知りてまどろむ』こと月白にも現パロが存在したりもしますけど、月白は『―world memoriae―』シリーズに含まれないので注意)。

 

で、『Babel学園』とある通り舞台はとある高等学校。雫とかが通っていたり、ラルスが教師だったり。エリクは教育実習生とかで来てたんだったかな? みたいな形だった気がします。

非書籍化作品『Rotted-s』のアーシェやレアのエピソードもありましたけど、レアは年上なので大学生だからアーシェ以外との絡みは基本無かったような。『Babel学園』を読んだ記憶もちょっと薄れて来てるのでちょい自信ない部分もあります。

 

閑話休題。

今回再録されたのは、そんな現代パロディ時空で『Unnamed Memory』のオスカーとティナーシャに焦点を当てたエピソード。『Babel学園マイナス』と題して描かれていたものですね。

あとがきにもありましたが、あくまで先に『Babel学園』があってその時代には夫婦になっている二人が結婚するまでの過去を描いたものなので、マイナスってついてるんですなー。

 

最初の一文というか章の区切りからして「結婚式まであと1011日」とかですからね! ざっくり2年半。『Unnamed Memory』本編では1年の契約期間の間に関係が劇的に進んで行ったのを想うと長いですけど、400年精霊術士を拗らせたりしてなくてもティナーシャは彼女らしい感性で生きているので、まぁ野良猫を懐かせるのには時間かかるよね……感。

 

オスカーは学園の理事長の家に生まれた青年で、作中開始時点ではまだ仕事を手伝ってるけど理事長に就任はしてない状況。

ティナーシャはその大学に通っている一学生だったわけですが、縁が出来てからオスカーが少しずつ距離を縮めていってるのは相変わらずの2人のやり取りでしたね。

ティナーシャの父母が健在だったり、現パロならではのほのぼのエピソードが多くて、終始ニコニコ読み進められて、本編も好きですが2人のキャラそのものも大好きなので、現パロで違う味わいの物語楽しめるのはやっぱり良いですね。

お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件10 アクリルジオラマ付き特装版

ico_grade6_5

「じゃあ、周くんの前だけ、ですね」

「そうしてください」

 

誕生日の翌日、幸せオーラを周の前で発しまくってる真昼、可愛いなぁ。

眩しすぎて思わず周が顔を逸らしてしまったら、それに即座に反応してしょげていくのも可愛らしい。これが開幕数ページかつ挿絵つきなので、これは甘さで人を殺しに来てますね。

 

恋人同士で誕生日を祝った後、樹たちや他の友人たちも招いたパーティーを開いてお祝いをできるようになっているの、良いですよねぇ。

去年はまだ付き合っていない状態の周ひとりだったことを想うと、かなり状況が変わっていってますが。間違いなく良い変化でしょうし。

……真昼が欲しいもの「砥石」というの、以前にありましたが。それを受けた樹たちが、実用的なものとして良い出汁セットプレゼントしてたの、ちょっと笑っちゃった。学生の友人間のプレゼントとしては珍しいかもだけど、貰うと嬉しいものではあるから。

その後さらに周は父母から送られてきたものがあったから、という理由もありつつサンタさんの真似事したりしていたのも、微笑ましくて良かった。

 

さて、周と真昼はお互いを本当に尊重し合っていて、相手がそう思ってくれることを実感している、安定した状態ではあるわけですが。

周のスペックが広く知られるようになって、彼に秋波を送る女子なんかも出てくるようになって。……媚びるようなものではなく、真摯だからこそ口にせずにはいられなかった想いでは、あったようですけどね。

それでもしっかりと答えを返して、2人で話し合う時間を取っていた最後の挿絵が味わい深くて良かったです。

 

周と真昼の関係は周側の母から激しくプッシュされてて。受験を控えている身で慌ただしくするのもあれだというのが第一ではあるけれど、親族への紹介まで済まされそうなのもあって、今年は帰省しないことになっていたようですが。

ちょっとした用事で父だけが顔を店に来た時、家でもめたらしい樹と一緒に来る一幕も。言い方は悪いけど名家のスペア扱いな次男坊の樹は、父からも兄からも尊重されない浮いた位置ではあって。そのことでふてくされている状態ではあったようですが。

樹の父が意固地になった一因は自分にもある、と見直すきっかけも得られてより奮起できそうなのは良かったですね。……まぁ、とは言え樹の父兄の方も年長者としての余裕が足りないなぁとも思いますが。周と真昼が安定しいているからこそ、他のエピソード挟む余裕もある状態なんですが、周囲の問題も落ち着いていってくれると良いですねぇ……でも問題全部解決しちゃうと、シリーズ完結しそうなので程よくトラブルにも見舞われて欲しいな? 心がふたつある。

 

今回はアクリルジオラマ付の特装版が発売。本編に合わせて、基本のセットにはサンタ真昼とトナカイ周のものが付いています。専門店では有償の差し替えパーツが付いてくる形になってましたが、メロブの晴れ着セットを購入しました。他のデザインも魅力的だったんですが、ちょっとコンプはできなかった……今年出費が激しくて。

特装版の表紙もサンタ真昼ですしね。かわいい。通常版の、プレゼント貰ってはにかんでるっぽい真昼も良いですが。

凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ4

ico_grade6_5

「人生はクソだ。何1つ思い通りになりゃしねえ……だが、それでも俺は、俺達は、戦うことを選んだ、そう、選んだんだ! 諦めるでもなく、受け入れるでもなく、戦うことを!」

 

致命傷を負ってしまった味山只人。

しかし耳の部位保持者であったことが幸いして、復活することに成功。部位保持者になること自体は災いみたいなものですから、不幸中の幸いというべきかどうか。

……まぁでも実際、あそこで味山が復活して、暴れまわってなかったら彼の友人たちやバベル島そのものが悲惨な結末を迎えることになったでしょうし、幸運を拾ってはいるのか。

ただし、その幸いはハッピーエンドを約束してくれるものではなくて。

 

ひとまず致命傷はふさがって、それ以降も制限なく使えていましたが、使うたびに「耳」に近づいてしまうという呪いのような制約もあって。

味山はまぁ、「怪物のような力であろうと、指定探索者だってある意味怪物ぞろいだし、俺は人間だ」とその力を受け入れて謳歌していましたが。

 

脳みそが派遣してきた肉人形や坂田による襲撃、耳が齎す「TIPS」や……恐らくは2週目特典として与えられたであろう、バッドエンドの分岐の数々。

それによって、復活した直後に足を止めることになってしまったわけです。

TIPSが提案するAルート、Bルート。どちらを選んでも被害甚大、大切な誰かが死ぬ。

いつか選んだような第三の選択肢は、味山只人には与えられない。

 

「耳」はさらに踏み込んで凡人探索者である彼の抱えている欠陥をあげつらっていくわけですけども。本当の意味で変わらない部分があるとしても、悲しいのもまた真実だから。

進んで喪う選択はしない。

……だからこそ。別の道を模索する。味山只人に与えられないのであれば……部位保持者としてより踏み込んで、彼は「プランC」を掴みとったわけです。

 

耳の化身と同じような変身を遂げてなお、人の意志を残した特殊なスタイルになってバベル島と西に東に大暴れ。

起きるはずだった悲劇のいくつかを踏み越えて、生き残るために多くを救っていった彼は、作中では「酔っていた」みたいな扱いをされていますが、かなり熱い演説をしてくれるわけです。

いやはや、これまでもその片鱗を見て来たつもりではありましたが、なるほど綺崎凛やアレタはこれに焼かれてしまったわけか。そりゃかなわんわ。

いや、実に主人公していたと思いますよ。挿絵が「耳」に汚染されてましたけど。濃すぎ。

指定探索者ですら心折れそうになる戦場で、彼女達を助け、「説得判定」へのチャレンジをした結果、なんか口説き落としたみたいな形になってるし。そのうち刺されるぞ。……刺されてたわ。坂田にだけど。

 

あと本編にそこまで関係ないトークですけど、朝顔・夕顔姉妹と思われる挿絵があったんですけど、めっちゃ可愛くなかったですか。キャラ造形めっちゃ好み。

……その挿絵が挟まっていた雨桐さんの過去エピソードはアレでしたけど。抱え込んでんな、闇を。王さん、めっちゃいいキャラしてて格好良かったですけども。

no-seen flower ガイドブック“Closed Garden”

ico_grade6_5

「だからちょっと引きずり降ろしてやろうかと思って」

「何を考えているんですか、あなたは……」

「じゃないとあいつは一人のままだろう?」

 

2024年夏コミで刊行された、古宮九時先生の個人サイト「no-seen flower」掲載の作品のガイドブック。

作品の解説だったり、いくつかの短編だったり、コラムなんかが収録されている満足度の高い1冊。シリーズ内作品群のページになんか、弊ブログの名前が登場した気がしますが、きっと錯覚ですね、はい(現実を見ろ)。

ちょっと1005本全部読んで感想記事書いてるだけの一般読者なのに……。

 

作品紹介のページの『Icy Prayer』で「ファルサスはひどい」と紹介されてるの、実際変な植物ネタとかあるから、ひどいんですが、各作品についている23行の紹介文に紛れ込んでるの笑っちゃうな。

短編は、Unnamed Memory本編の解呪前「共生の記憶」、Act.2の女王ティナーシャを描く「幕間にて」、Babelで雫が旅をしていた時のエピソード「旅の終わり」、Rotted-sでアーシャがレアの傍に居ることを選んだあとの「終着へとのびる」、月白のサァリが17歳の頃のエピソード、を描いた「朱色の帯」の5編が収録されています。

オスカーがティナーシャに対しての印象を語っているのが印象的で、「共生の記憶」が一番好き。あとは、「朱色の帯」でいつも通りのサァリとシシュのやり取りが見られたのも楽しかった。書籍完結してるし、WEBWEBで関係変化してってますからね……。

 

コラムは、オスカーとティナーシャの関係について。アニメ視聴者から「いつキスするような関係になったんだ」とアニメから入った人に驚かれた、というような記述がありましたが、撫ででも良いゾーンが広がった猫扱いされてるのが面白かったですね。実際、多数決するまで好意に気付いてないからな、あの最強の魔女……。

コラムでは「王同士の婚姻について」だとか、「Act2におけるティナーシャの変化」や「『Unnamed Memory』における言語」なんかにも触れられています。言語については、『Babel』だったり『ate4』を読んでいるとより味わい深いですね……。

あとは、あちこちで『Aeterna』に触れられることが多くて、ateの進行が進んでいることだったり、終わりが近づいている感じがして、楽しみでもあり惜しくもある。

 

あとは大陸別の異能とか、大陸の距離についての話についても触れられていましたね。

アイティリスと東の大陸の近さが、神話時代のアイテアの想いがあったからだというのも良かった。……時を経るにつれて、神の想いであっても薄れて変わっていくのは、寂しいものもありますが。

滅びない国も死なない人もいない、というのはこれまでも描かれてきたわけですからね。

コラムで「終わる物語と終わらない物語」についても語られていましたが、そこに通じるようなものを感じました。

何に使うってわけでもないですけど、後は各キャラの属性についても記述があったのは面白かったですね。

サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごとⅧ

ico_grade6_5

「わたしに何ができるかは、分かりません……けど」

(略)

「あの頃のわたしより、できることがあると、思うんです」

 

かつて謀略によって冤罪を着せられたモニカの父は、なぜ殺されたのか。

第二王子フェリクスは、後ろ盾である公爵に反発する素振りが見え隠れしていたいけれど、その真意とは。

そういった、様々な真相が明らかになる第8巻。

 

クロックフォード公爵、自分の目的の為は過去にどれだけの貢献があろうと、不要となった駒を切り捨てることを厭わない。

様々な便宜を図ってきたが、違法薬物を国内に持ち込んでいたラビアナ司教。

紐付きとして押し込んだものの、反逆の意志を見せたエマニュエル。

そして……かなり慎重に守り続けて来たフェリクスの秘密も、相手から噛みついてきたならば、排除する。

派閥の大きさなども併せて、クロックフォード公爵のヤバさというのは語られてきましたが、なるほど分かりやすい実例を見せられたものだな、と思いました。

 

モニカの方は、帝国側の間者と接触してとある交渉をしていましたが。

……予想外の相手が乗り込んできていたり、驚かされる場面も。それでもなお、切れる札が限られている中で、条件をもぎ取ったのはお見事。

作家としての顔を持つポーター、モニカを引き取ったヒルダ。モニカの父、ヴェネディクト・レインの死の真相を薄々察知しながらも敵の強大さゆえに何もできないで居た人々。

そんな彼らとの会話や、残してくれたものを使って道をつくろうとしているの、良いですよねぇ。

 

モニカもフェリクスも、目的のために何かを犠牲にできると思っていた。

けれど、これまでの交流を経て相手の事を知った上で、自分が思った通りの行動をとれないことに迷いもするようになって。

ここまでの積み重ねがあるからこそ、モニカや彼が思い悩むのもまぁ分かるんですよね。モニカの方に、特に感情移入しちゃうので、アイザック本当にもう……って気分にもなりますが。

フェリクスの欺瞞が、クロックフォード公爵によって暴かれ、地位を脅かされたとき。

モニカがこれまで隠していた自分の秘密を、他の人々に明かすことにしたの、WEBで読んだときもかなり感動しましたけど、良いシーンですよねぇ。

コミカライズで制服の上にローブを羽織っているイラストを見たから、そこから描写を膨らませた、とあとがきに書いてあって挿絵も含めて読み直しに行っちゃいました。二度美味しい。

宇宙戦争掲示板-1人なんかおかしいのがいるけど-

ico_grade6_5

『あれが欲しい。なんとしても欲しい。絶対に欲しい。あれさえ奪えれば、人類は黄金よりも価値ある時間を手に入れられる。技術を手に入れられる。勝利と平穏を手に入れられるのだ。だから行こう戦友諸君。妻を守れ。子を守れ。親を守れ。隣人を守れ。そして罪なき人々を、人類を守るのだ。軍人の本懐を遂げに行こう』

 

作中全編掲示板回、という一風変わった作品。

WEB時代から読んでいて好きだったんですが、まさかの書籍化に驚きました。

タイトルにある通り、人類が宇宙に進出した未来……人類初となる異星人との遭遇を果たしたわけですが、通称タコと呼ばれる「ガル星人」は、初手から攻撃を仕掛けてきて。

技術が発展していたガル星人相手に人類はかなりボコボコにされて。重要惑星の失陥、艦隊の敗北。母星であるセントラルまで敵の艦隊が迫って、絶体絶命の状況だったそうですが。

 

……そんな戦乱の時代に登場したのが、「特務大尉」。

田舎と呼ばれるような辺境の惑星で、のんびり暮らしていたものの……ガル星人の襲撃を受け、民兵として戦争に参加。人類のスペックを超過した身体能力、超能力じみた勘などを最大限に活かして、人類の逆転に寄与した英雄。

人類よりも発展した技術を持つガル星人の戦艦に、部下10名を連れて潜入して奪取した上で、勘で操縦したりするし。

載っているロボも、人類の限界をあまりに超過しているために、有人での試験を行えないくらいのスペックがあるし。

特務大尉自身も、他の軍人が武装しないと勝てないガル星人相手に、素手で殴って頭破裂させるとか、様々な伝説を打ち立てている傑物。

 

……宇宙まで進出している未来の時代に、アナログの紙媒体メインで情報を得ていたり。

様々な実績を挙げている反面、常識を超えた行動をとるため「軍人」としての枠には当てはまらない存在なので、勲章も多いけど賞罰も多い扱いに困る存在ではあるようです。

ガル星人の思惑を超えられる唯一と言ってよい存在であり、排除は出来ないけれど規律に従うべき軍人としては困った枠。……その折り合いをつけるため、というわけでもないでしょうけど。

「形式上は銃殺した」という扱いで、書類上でだけ死亡記録作ってるのはちょっと笑っちゃったな。形式大事にしすぎて、ダミーを射殺するだけなのにちゃんと勲章のシール作って貼ってるらしいのがなお笑える。

 

多方面の常識を破壊して混乱させまくってる人物であるんですが、おおむね好意的にとらえられており、そんな一般モブたちが特務を称える掲示板が作中で描写されている感じになりますね。

英雄的快進撃の代償に悲鳴を上げている技術部とか、新兵器開発部とか兵站部とかもありますけど……まぁ最終的に勝利につながるので……。

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
 新刊・既刊を問わず読んだタイミングで記事を作成しております。
 コメント歓迎。ただし悪質と判断したものは削除する場合があります。

メールアドレス
kimama.tyaka@ジーメール なにかご依頼等、特別連絡したい事柄はこちらにお願いします。
メッセージ
アーカイブ
カテゴリー
記事検索
最新コメント
  • ライブドアブログ