読まなければいけない、と、そう言った。
「僕が読めば、その著者の書いた本に“意味”が生まれる。あなたの書いた本は、ちゃんと、後世の誰かに届いたよと。僕が受け取ったよと。僕が証明する」
ダンジョンがあって、それを探索する冒険者がいる世界。
アシタ・ユーリアスは田舎のダンジョン片隅にある書店で働いているもやしっ子。
本を読んでいられれば、それでいいというような青年だった。
けれど、生きていくためにはどうにか金銭を得る必要があって……彼は、本を読んで得た知識を提供することにして。
実際、名前が知れる程度には需要があり、成果を上げていた様です。
本来なら外から情報だけ出すはずが、現場に行かないと分からない物もあり……彼の求めるものを良く知る幼馴染にダンジョンに引き込まれる羽目に。
貴重な本を持ってきて、これ読みたいでしょ? とか悪魔か。
冒頭のゴブリンの一件は、ちょいとアレでしたが。
ひ弱な人間を引っ張り出しておいて、見失うのはまだしも、その後追われてる彼の様子を、しばらく見てたっていうあたり。オマケにその後笑ってましたからね……
アシタの弱さを見せて、エルシィとの気安さを演出する格好のエピソードで、読みやすくはありました。それに、そこで引っかかっても、続きが気になる魅力があって、全体的には楽しめました。
アシタ、情報を売っていたように、ただ本を読んで知識を蓄えるだけじゃなくて、それを活用できる人材なんですよね。
それで窮地を脱した場面もあるわけで、中々に得難い人材だと思われます。
今回得たものや、アルマの示唆した情報の事もありますし、またダンジョンに引っ張りだされるんだろうなぁ。流石に体力のなさを痛感して、少し鍛えるようにはなったようですが、元が元なので、あまり無理をしないで、生き延びて欲しい。