「負けました。……ありがとう」
竜王のタイトルホルダーである八一。
しかし彼はまだ若く、未熟な部分もある。
プロ棋士になって初めての公式戦で惨敗し、涙を浮かべ逃走したこともあったとか。
恥ずかしくて泣いて、走って、一門の下にも帰らず家出した。
一週間で迎えが来て回収されたみたいですけど。
その後も相手に苦手意識がついたのか、三連敗。研究に余念がない、A級の実力を持つ相手ではあるんですけど。なかなか個性的な性格してますしね……
壁を超える為に、手を打ってみる事に。関西にいるもう一人のタイトルホルダーの下で、腕を磨く。何千時間と研究を重ねた相手に、二週間なんて焼け石に水みたいなものですが……それで、勝負に行くんだから、八一のメンタルどうなってるんだ……
窮地に追い込まれても諦めず、勝ちを掴み取る様はこの上なく熱かったです。コレがクライマックスでもおかしくなかったのに、まだ続きがあることに驚きましたね。
八一の奮闘を見て、桂香や姉弟子も衝撃を受けてました。将棋星人とか言われてましたしね。
研修会で、親しい相手に勝ったことで、涙を流したあい。
でも、棋士として上を目指すならそれは珍しくないと突き放すような事を言う八一。厳しさを教えるのも、師匠の役目。普段デレデレと甘いけれど、ちゃんと指導もしてるんだよなぁ。
今回のもう一人の主人公は、桂香さんでした。
二十五歳という年齢。女流棋士になるにはリミットが迫っている。
そんな中、研修会で桂香さんと天衣、あいがそれぞれ対局する事になって。
それを見守る八一と姉弟子がまた良かったですね。無言で隣に座って「私達は、どうして…………戦うことしかできないんだろう?」というやりとりが、いい。
彼女もまた、重いものを背負って戦っている。そんなキャラばかりだから、この作品は熱く、時に苦しくもなりますが、読むのを辞められない魅力にあふれてる。
もっと早く読んでればよかったなぁ、と思わずにいられません。