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「学力テストが100位下がるよりも、」

僕は疑問になったことを尋ねてみた。

「人間力テストで10位下がる方が嫌なんだね」

「当たり前ですよ……だって、友達は重たいです……重たくて、潰れちゃいます」

 

帯には圧倒的勘当で頂点に輝いた衝撃作と有りますが……

感情が動く作品ではありましたね。電撃でこれを対象にするのかと、感心しましたし。挑戦的な作風ではあると思いました。

ただ、感銘を受けたかどうかというと疑問符がつきますな。

 

人気者だった少年が自殺し、クラスメイトの一人を名指しで悪魔と謗る遺書を残した。

特殊な制度を取り入れていた学校。イジメが原因にあったらしいが、目撃者が誰もいない。

多くの謎が残された彼の死の真実を求めて、死んだ少年の姉が調査を始める。

……最も、この姉初手から「死んだ生徒の姉です」と相手を委縮させて上手く情報集められてませんが。

 

徐々に明らかになっていく真実。

悪魔と呼ばれたスクールカースト最下位にいた地味な少年、菅原拓が「革命」と語った彼の行い。

菅原拓が望んでいたのは、本当にちっぽけなことだった。けれど、それすら彼は手にすることができなかった。失敗してしまったから。喪われてしまったから。

 

彼がとった手段は決して正しくはなかったけれど、志はそれほど間違ってないと思いますがね。例えば、陰口叩いてる連中を糾弾できるのは、貴重ですよ。

それを思うに、校長の勝手さはちょっと目に余るような。生徒に期待を押し付けすぎというか。頼ってさえいればこんなことにはならなかった、なんていうのは傲慢だろう。

善人に救いがあるでなく。悪人に裁きがあるでなく。すこしモヤモヤする気持ちも残ります。
大人たちの対応もどうなんだと思います。読んでいて息が詰まりそうになる。
あるいはこの息苦しさが、悪魔である彼が、死んでしまった彼が抱いていたものだったんだろうか、なんて思いましたが。 
挑戦的な作風は面白いと思いました。粗もあるけど、読ませる力というか引力はあると思ったので今後にも期待。 

 

ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫)
松村涼哉
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
2016-02-10