気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

だから僕は音楽を辞めた

ヨルシカ「エルマ」を聴いて

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「君の人生になりたい僕の、人生を書きたい」

 

「エルマ」。

「だから僕は音楽を辞めた」と対になるコンセプトアルバム。

前作の初回盤は、音楽を辞めるまでが描かれた青年エイミーが綴った手紙が付き。

今作の初回盤では、手紙を受け取った少女エルマの日記がついています。


楽曲それ自体も魅力的ですが、創作に打ち込んだ二人の軌跡が分かる初回盤も素敵。

こういう作り込まれた世界の背景が分かると、なんかワクワクしますよね。

収録されてる曲、どれも好きですが、テンポとかは「雨とカプチーノ」、「雨晴るる」が好き。

好きなフレーズが多いのは「心に穴が空いた」ですねー。


エルマにとって神様に近かったエイミー。

音楽を、詩歌を、伝えあった師匠と弟子みたいなもの。

……決して、それだけではないんですけどね。

芸術に真摯であった二人の関係を、こんな陳腐な台詞で纏めたくはない。

とは言えど、悲しいかな、語彙力の問題で上手い言葉が出てこない。

 

姿を消したエイミー。

彼の手紙を受け取ったエルマは、同じ旅路を辿る。

「一年だ。この一年が僕の一生だ」と綴った、彼の人生を。

インタビューでも手紙でも、オスカー・ワイルドの「人生は芸術を模倣する」と言う言葉が引用されてますが。

「模倣される側」と「模倣する側」の話でもあるとか。

 

彼がいなくなり、どうしようもなく記憶はこぼれ落ちていく。

薄れていくそれらを逃すことができなかった。だから「日記を付けなければいけな」かった。

強迫観念に突き動かされていた。

足跡をたどり、日記をつけ、詩を記す。

青年の影を追う旅の終盤、日記が日付と一言二言だけになってきた辺り、このまま彼女も擦り切れてしまうのだろうか、と不安を覚えた。

「音楽を辞めた」青年と、そこまで同じ道を進むのだろうか、と。

 

どんな面白い作品にも終わりはあって、どう終わらせるのかは作者次第ですが。

旅路の果て、彼女は日記を書くことを辞めますが、その決断が何ゆえかは、各々で見守って欲しい。

強いて言うならば、「8/27」に記された所からの展開が、パズルのピースがぴたりとはまるような感じがして楽しかったという事くらいですかね。

 

エイミーは「藍二乗」で「君だけが僕の音楽なんだ」とうたった。

そのフレーズをエルマは「心に穴が空いた」で「今ならわかるよ」と言った。

花緑青、神様、夜紛い……聞き覚えのある単語が盛り込まれた詩が、繋がれた歌が、面白くない筈がない。

負け犬の詩とか、なんか気になるフレーズもあったので、他のアルバムも聴き直そう。

エルマ(初回限定盤)
ヨルシカ
Universal Music =music=
2019-08-28

ヨルシカ『だから僕は音楽を辞めた』を聞いて。

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「僕らの価値は自明だ 例うならばこれは魂だ」

ヨルシカ、好きなんですよ。
n-bunaさんの作風が好きなのもありますが。
好きすぎて、三月のパンタシアのアルバム『ガールズブルー・ハッピーサッド』も買いました。

閑話休題。
もう初回盤が出ると知ったタイミングで、特典とかも気にせず初回盤予約したんですが。
仕事でドタバタしてたのもあって、その後もあまり情報仕入れられてなくて。
合間で公開されたMVを聞いたりして、期待を膨らませるくらいはしてました。
そんな状態で引き取りに行ったもので、最初は箱状なことに驚き……更に開けた後手紙の物量にさらに驚かされました。
え、これ3500円って赤字にならないの? 大丈夫? みたいな気分。

とりあえず、まずは歌詞も手紙も見ずに曲を一巡聞いて。
その後手紙を読みながら、一曲ずつ追いかけていきました。
あと、気になるタイプなので手紙の並び順をメモしてから読んだ。

一人の青年が、音楽を辞めるまで。最後の創作の旅路。
正直最初は、エルマという友人が亡くなりそれで創作意欲を失ってしまったのかと思いました。
瓶詰の手紙を海に投げるように、届くかどうかわからない手紙を書いて詰めているのかと。
途中で違うんだ、とはわかったんですけど、

重かったり、暗かったり、辛さが伝わってくる。
でも、決してそれだけではなくて。
音楽に向き合ってきた青年の情熱が確かに残っていて、波及する。

収録曲「語学は花緑青の窓辺から」の一節「僕らの価値は自明だ 例うならばこれは魂だ」が印象に残ってます。
他の手紙に青年の解説があって、それもまたいいテイストになっていたんですが。
あぁいう製作者の意図に触れられた文章が、好きです。
青年の魂の叫びが、胸に刺さって痛い。
n-bunaさんの実体験が織り交ぜられて、青年が血の通った人のように形作られている。
いや、バイト収入6万で家賃5万6000円、手元に4000円しか残らないって極限生活すぎないか、とは思いました。ガス止まったとか書いてあったし。凄まじい……

手紙と一緒に曲を聞いたあと、気になってしょうがなかったので、公式で紹介してた各種インタビュー記事を読みに行ったりもしました。
エルマが青年の手紙を読む、その追体験をしてほしかったからこういった形式になった、とか。
無事に届いたんだ、とちょっとほっとしたような……届いてしまったのか、みたいな矛盾した気持ちが生じました。

Skream!のインタビューに在った、受け取った相手が祈りととるか、呪いととるか両方の側面がある、というのが的を射てますよね。
確かに、ここまでの情念を注ぎ込まれた手紙は、一種の呪いだし……音楽に対する真摯な祈りでもあると私は感じました。
とことん芸術に向き合っている、というか。
まぁ、青年の気持ちはかなり重いとも思わずには居られませんでしたが。
インタビューのひとつで「妄執の塊みたいなの」とか言われてましたし。
だからこそ、祈りか呪いかという二択が生まれたわけで。
こんな手紙を、そうして伝えられた詩を見せつけた上で、夏に「エルマ」というアルバムを予定しているって言うんだから、たまりませんね。

対になるコンセプトアルバムという都合上、今作の初回盤もすぐに生産終了にはならないみたいなツイートも見ましたし、是非、多くの人に初回盤の手紙を読んでほしいものです。
あとインタビューも楽しいです。なぜ音楽のインタビュー中に蠱毒の話になるんだろう(笑)。

どの曲も好きですが、表題の「だから僕は音楽を辞めた」、「語学は花緑青の窓辺から」の二曲が特に好みです。


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ちゃか

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