「――俺は、諦めない。たとえ魔力が少ないって言われようと、無能だって言われようと、足掻いてみせる、さ……」
WEB既読。樋辻先生の作品、どれも結構好きなんですよねぇ。
レイセフト子爵家に生まれたアークス。
しかし彼は武門の誇りを持つ両親が廃嫡を決める程度には、魔力の量が少なかった。
熱にうなされる彼の前で「しぶとい子供だ」と虫を見るような言い草をするくらい、期待されていなかった。
そんな彼が、技術の発展した世界で生きた男の記憶を追体験するような夢を見て……ただの6歳児よりは、知識も増えたし精神的にも成長した。
そんな中でせめて父を見返してやろうと、国定魔導師として認定された叔父と会ったタイミングで、教えを乞うことにして。
叔父もかつて魔力量がないために家督を継げなかった、という経緯があるそうでアークスへの指導を行ってくれることになって。
この世界で魔法を使う際には、言葉そのものに力が宿った古代アーツ語を適した組み合わせをして、魔力量などのいくつかの条件を満たす必要があった。
魔導師は、全ての古代アーツ語が記載されていると言われる6つの紀元書を読み解くことで、オリジナルの魔法を作ったりもする。
あくまで言葉の組み合わせが大切なので、詠唱が必須というのが面白いですね。『地震』って古代アーツ語が読み解けても、その単語の持つ力が強すぎるのでそのままでは魔法として発動できない、とかの解説パート好き。
国定魔導師の教えを受けて、アークスは紀元書の知識はしっかりつけていったわけですが。そもそもの魔力量が少ないというハンデはぬぐえなかった。
魔力量を測るようなものもなく、単語に込める魔力量に関しては勘でしかなく、魔力量が少ないアークスは試行錯誤できる回数が少なくて……。
悩んでいたアークスは、叔父から借りた書物や彼が得た「異世界の知識」を組み合わせることで、自身が最も必要としたアイテムを新たに生み出すことに成功するんだからお見事です。
その発明だけで既にある程度の成功は約束されたようなものですが、彼の目指す場所はまだまだ遠いので、応援したいですね。
上級貴族の不正について関わることになってしまった妹を助けようと、アークスが赴き天空塔と呼ばれるところに隔離されてしまうエピソードが、WEB掲載時よりも加筆されてましたね。危険と噂の国定魔導師の介入があって、噂の正しさを知りましたね……こわー。