『そうですか。ええ、貴方は、私が見てきたハイエルフの中でも、とびきりの、一番の変わり者でした。そして共に過ごして一番楽しいハイエルフでした。ですから、もしも剣となった貴方を持った誰かが私の前に現れたなら、私はこの背に乗ることを許すでしょう』
シリーズ完結巻。
まさかの冒頭の章から、長くかかわってきたルードリア王国が滅亡したという話から始まるのは驚きましたねぇ……。
ヨソギ流の本家が貴族として迎え入れた時のように、新興貴族の武家が増えていく中で旧来の貴族との間で溝が深まり、最終的に破裂して群雄割拠の時代になった、と。
ヨソギ本家も小国を建てて、そのためにヨソギ一門へ波及する流れが出来ていたり。だからこそ、名を捨てる決断をする者も出てくるなど、いろんな決断がありますわな。
懐かしのヴィストコートは、プルハ大樹海の傍らにあるために戦力が整っていたことと、下手にそこを削ると魔物被害が広がる可能性があるために、ひとまずは無事だったようで安心した部分も無くはないですが。
色々と変わってくる中で、エルフのキャラバンについても問題になって。
黄古帝国で、金に詳しいとされる長蛇公。かの御仁がキャラバンとの取引枠の縮小を提言してきたことで、今の代表がエイサーへ会談への同行を頼んでくることになって。
それもまた、かつてエイサーがシヨウの国で感じたエルフの農業のように、長命種が力を持ちすぎる事への懸念があって、なかなか興味深い御仁だと思いましたね。
仙人の素養を認められたソレイユが、健やかに育っている様子が見られたのも良かった。
エイサーは彼が世話になった人々の記録を残すべく、石工の技を学び彫像を作っていましたが。その技術を教えてくれたマイオス先生の実家、マルマロス伯爵家が没落し家財を手放す、なんて話も聞こえてきて。
元々マルマロス領があったシグレアという国が亡くなり、別の国の所属となり立場も変わりつつも、マイオス先生の言い伝えを残し続けたのは、長命ならぬ人間の家としてはかなり凄いことをやったのでは。
エピローグで、森を出てから知り合ったエルフ、アイレナとの別れを描き。さらにはそこから、エイサー自身のハイエルフとしての終わりをも描いて。
最後まで彼は彼らしかった、というか。精霊として生まれ変わってからも、風の精霊とかではなく、鉱物に宿る精霊となって剣にしてもらおうか、なんて思いながらハイエルフとしての生を終えて行ったの、あまりにエイサー過ぎてちょっと笑っちゃった。
そして「後日譚 あるかもしれない未来」で、実際に剣となった彼の姿を見られたのは良かったですね。……なんか世界すごいことになってましたけども。