あなたが諦めたのなら、あなたの大切な人は、確実に異界に奪われてしまいます。
――決して、諦めないように。
私達が生きる現実世界と重なり合うように、異界と呼ばれる異なるルールが適用された無数の世界が存在している、という設定のTRPGシステムのルールブック。
増殖し現実を飲みこもうとする異界の事を、ほとんどの人は認識できないが……フェイズシフターと呼ばれる人々だけは、異界の存在を見ることが出来た。
ただ出来るのはあくまで「見る」ことだけ。異界は自身を認識できるシフターを取り込もうと蠢くし、通常であれば無力なシフターはそれに抗うことはできない。
そのシフターを繋ぎ止めて、現実に連れ戻す楔となるのがバインダーと呼ばれるプレイヤーキャラクターである、と。
『アンサング・デュエット』が特徴的なのは「ふたり用のTRPG」ってところですかね。
GMが進行とシフターを担当して、プレイヤーはバインダーを作成する。
一応、GMが進行だけを担当して、シフター役とバインダー役のプレイヤーを招いての3人プレイしたっていいんですよ、とは書かれてましたね。TRPG、基本は楽しんだものが勝ちですからね。楽しむために何しても良いわけではないですけど。
異界に巻き込まれた2人が困難を判定とロールプレイで乗り越えていく、という感じ。
いくつか掲載されていたシナリオの構成も、異界に迷い込んで、2人がその異界から脱出するために力を合わせる、というシチュエーションと対処法の描写に終始してましたし。
他のシステムだとNPCの台詞とかで状況説明入ることもありますけど、あくまで「シフターとバインダーの物語」にするために、RPの部分はプレイヤーにゆだねられている感じ。
このあたり、人数を削った『銀剣のステラナイツ』味を感じる。デザイナーさんがRP大好きなんだろうなぁ。
シフターとバインダーの絆だけで困難を乗り切れるならばそれも良し。
それでも叶わぬのならば、自身を構成する記憶や身体のいずれかを失うことで、目の前の絶望を超えることも出来るかもしれない。……致命的に変異してしまうことが、救いになるかは別として。
いいRP生み出せそうな設定のシステムだなぁ、と思いました。