気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

アース・スター・ノベル

野生のラスボスが現れた! 9

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「――まずは貴女が救われるべきだ! 女神アロヴィナス!」

 

完結巻。

ルファスに龍の対処を任された十二星たちや、魔神王たちは見事にその役割を果たして。

ついに女神本体と対峙することになったルファスでしたが……彼女は地球のあちこちの神話をモチーフにした節操のない攻撃を繰り出してきて。

ほとんどの事を再現できる能力を持っている女神でしたが、ルファスに言わせれば「猿真似」であり、未知を生み出すことができない存在である、と。

彼女が創世神ではないということすら見切って、全力で叩きのめしに行ったルファスはさすがでしたね。

 

最終局面で勇者を唆しに行った女神も女神ですけど。唆されても、弱さを認めて力を求めない選択をできた勇者君は偉い。

一方のルファスはしっかり対策を取っていたわけですが……女神が「勇者レベル1000を作っちゃいます!」って流し込んだ経験値を横取りして、この期に及んで自分のスペック向上させてるとか、なにしてるんですか。むしろまだ上がる余地あったんですか貴女。

 

その直前で、普段はふざけたお爺ちゃんRPしていた木龍が、ポルクスが独立したアバターとなることを寿いでいった良いシーンやってるんだから、温度差で風邪引きそう。

……いやまぁ、どこぞの吸血姫さんも担当した火龍の経験値独占してレベルアップしてるし、世界のバグすぎるなこの2人は本当にもう。

インフレ極まった世界で、ド派手に暴れまわってハッピーエンドつかみ取ったルファスはお見事。

 

だいたい半分くらいで本編が終わり、後は書下ろし中編「野生のEXボスが現れた!」とSS「属性会議」が収録。

属性会議は眠り続けていた龍たちが、精神世界で繋がりこの世界のことについて語り合っていた時の一幕。まぁ属性テキトーすぎぃって言いあってるギャグエピソードなんですが。

 

そして、後日譚とでもいうべき「野生のEXボスが現れた!」は、地球に帰った勇者君といい感じのウィルゴがメインの話。

本編中でルファス自身も足を運んでましたし、勇者君送り返してもいるわけですが、何事もなかったかのように世界間移動を可能にするアイテム作ってウィルゴに渡しているあたり、ルファスの制作技術高すぎるし、配下に甘いの相変わらずだなぁって安心感がある。

転移に使ってる力自体はディーナのものみたいですけども。

 

女神アロヴィナスをめぐる騒動が決着した後で、彼女が試作した後放棄したEXボスが暴れる話、でもあるんですが。どうせ最後には最終決戦でパワーアップしたルファスに蹴散らされるのに粋がっちゃっていっそ可哀想だった感。

まぁ相手の事慮れてなかったから破滅は必死でしたけどね。合掌。

野生のラスボスが現れた! 8

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「わかっている。躊躇などせぬさ……ああ、私はもう決めている。――女神を殴り倒して、其方を救う」

(略)

「約束だったからな。其方が女神の不興を買ったら私が全力で守ってやる、と」

 

レオンの事でかい猫くらいに認識してるルファスだったり、女神のアバターであるディーナが本体のことわりとポンコツなの気にしてたりするの、細かいけど面白いポイントでしたね。

 

力と記憶を取り戻したルファスが帰還したことで、女神への挑戦権を賭けて、兼ねてより約束していた魔神王とルファスの決戦が開始。

龍相手でも圧倒的有利を取れるルファス、規格外すぎるな……。

女神の駒として、これまで何度も自身に挑む勇者たちを蹴散らすことになってきた魔神王が、今回は挑む側になるのも良い構図ですよね。

 

 

そして、ついに女神が龍を本格的に動かしはじめることになって。

揃った十二星やポルクスの招く英雄たちなど、戦力が整ったルファス陣営ならチーム分けしても挑めるというのはありがたい。

まぁルファスみたいな規格外を抜きにすれば龍は強者であり、圧される場面もありましたが……こっち側も結構な人材揃ってますから、割と安心してみてられました。

 

人類を守る箱舟のようなものを準備してあり、保護するまではルファスが行うことを決めましたが、混乱は避けられない。

その説得を、この世界に来てから無益な戦いに挑まなかった勇者君に頼む、というのは良かったですね。弱い彼にも意味があったというか。

ルファスに言わせれば彼女は力によって覇王になったことで、弱者に寄り添えなくなってしまったから勇者君だからこそ良い、ということでしたけど。

 

ポルクスが女神の駒になった時も怪獣大決戦じゃん、って思ったものですが……。

ただ女神も他にも手を打っていて……忠臣のようにふるまっていたリーブラが、実は女神の配下だったことを明らかにして。

素材が女神の天秤だったことや、それを加工したミザールがその時にはもう女神の影響を受けていたこともあって、ルファスが200年後の復活を企画したように、女神もまた埋伏の毒を仕込んでいたというのは周到で良い。

……まぁ、ゴーレムだというのに誰の命も受けずにミザールの最期を看取りに来たり、リーブラもまた一貫した存在というわけでもなくて。

敵に回ったリーブラを止めようとするのが、ガミガミやりあってたスコルピウスだって言うのが面白い構図ですね。

スコルピウス、龍への戦力分散へは付き合わず単独女神に挑むつもりだったルファスにへばりついてきたわけですが、いい仕事しましたね。

 

巻末SSは「吸血姫の憂鬱」。

文字通りベネトナシュ視点ですが……レベル上限を突破できる存在である彼女もまた、異質な存在であることに間違いはなくて。

幼少期から圧倒的な強さを持っていたために、他の家族たちの魔力や存在感が薄く感じられてしかたがなかった。そしてその力は時の王ですら「ベネトナシュこそが王だ」と、心から認めるほかないもので……。

彼女は肉親の情なども得られず、王になる他なかった。強者の孤独と虚しさを味わっていた彼女の前に、ルファスみたいな規格外が現れたのならそりゃ本編での執着も納得。

もう一編は「空☆気☆王」。終盤の加入だったこともあり、存在感がさっぱりない『魚』のピスケスことエロスの話。えーっと……どんな話でしたっけ? というのは半分くらい冗談として。

アホだった彼がルファス一行に初めて会ったとき、既に戦力は整っていて一蹴されて。昔から空気だったのが明らかになって、ちょっとだけ哀れみを覚えたよ……。


野生のラスボスが現れた! 7

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「いいえ。ルファス様。私はもう人形に戻る気はありません。私は貴方に出会うまで、自らの意思を持たない人形だった……貴方が私を『私』にしてくれた。ならば私は、女神様すら欺いてみせましょう」

 

ポルクスを乗っ取った女神の襲撃を退けたルファス一行。

その裏で姿を消したディーナが、実は女神のアバターであったことが合流したポルクスから指摘されて。

果たしてこれまでの彼女の行いの裏には、どんな思惑があったのか。それをルファスが探る一方で、十二星メンバーは残りのメンバーの回収へ向かう話。

 

ディーナが一体何を企んでいたのか。彼女の本心とは。

その核心を突くシーンは、当然作中でも屈指の名シーンになるのはわかりますが……口絵で答え出てるんだよなぁ。

まぁ「実は女神のアバターで、姿を消しました」ってイベントの後に、素直に女神のところに戻ってるようなキャラでもない、ってコレまでの振る舞いから察せる部分はありましたけど。

 

『水瓶』のアクアリウス。彼女は火龍の封印を担当していたが、対象はまどろみの中でアバターを生み出して暴れることがあり、その時期だから自由に動けなかったとか。

応援で十二星が駆けつけたら、そりゃアバター程度蹴散らせるよね……対面するきっかけにするために蹂躙された歴戦の魔神族もいましたが。合掌。

『魚』のエロス……じゃないピスケスは、女神の息子って情報が出てから登場までが遅かったし、あとがきでも弱くはないけど終盤に登場したのもあって印象薄くなるよね……的に語られてて哀れな……。

深海に世界のバグ枠の邪神が生息していて、同じくバグ枠らしいアイゴケロスが派手にぶっ飛ばしてたの笑っちゃった。思い切りのよい挿絵好き。

 

ルファスに宿ったゲーマー主人公の魂がどこ由来だったのか、とかも作中で理屈つけて設定にこだわってるのは好きです。

長い時間をかけて計画を練ってようやくたどり着いた現在。そのために暗躍を続けていた彼女の努力には頭が上がりません。

……現代の「俺」を引き寄せるために作りあげたゲーム、異世界の空気感を再現するためになかなかのクソゲー仕様だったようで、勇者君の翻弄されっぷりを見ると「それは確かに」としか言えなくて笑えた。

 

巻末SSは「夢は悪夢(げんじつ)に変わる」。

冒険者ルファスが、覇王ルファスに変じるまでの物語。夢に向かって進んでいるうちは良かったけれど、ひょんなことから夢が手元に来てしまったときに、選択を誤ってしまった。

過去のルファスもまた迷いながら進んでいる人間だったんですよね……見逃した存在が悲劇を起こしたせいで歪んでしまったのは、悲しかった。

もう一編が「邪神様はダラダラしたい」。アイゴケロスに吹き飛ばされて、新天地にたどり着いた邪神様がそこを満喫する話。深堀りすると別の物語になっちゃうから、このくらいでちょうどいいけど、かなり愉快な性格してたんだなと思うと割と好きだな邪神様。

野生のラスボスが現れた! 6

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「同意するぞ、ポルクスではない何者かよ。確かに余計な輩は舞台から降ろさねばならん。――其方が失せよ」

 

魔神族が生き残る可能性を求め、七曜のテラは妖精姫ポルクスに接触。

彼女の特殊能力に翻弄されつつも、当人の戦闘能力は低いという点をついて交渉を成立させたのはお見事。

しかしまぁ、そのタイミングでポルクスに女神が干渉してきて……自立した存在ながら、女神に近しい彼女を乗っ取って利用しようとたくらんだ模様。

 

そのころルファスは勇者一行と共に、武の都レーギャルンを訪れて。

……勇者パーティーどんどん色物感じ強くなっていくの、笑うしかないんだよなぁ……。

勇者君自身は結構まっとうに育ってはいますけど。レーギャルンで特殊なアーティファクト持ちに優位を取られたり、実力的にはまだまだ青い。

でも、十二星もだいぶそろってきてるし、それと合わせるように女神側の手札も少しずつ削られて行ってるわけで。

勇者君が今から最終決戦に見合う実力をつける余裕はないでしょうけど。悩み続けた彼がこの世界にどんな影響を与えるのか、その結末を見届けたい。

 

ポルクスに憑依した女神は彼女の力を使って、過去に倒された竜王ラードゥンなどの戦力を召喚し、ルファス達を攻めるわけですが。

ベネトナシュとぶつかってかつての力、その一端を思い出したルファス相手にぶつけるにしては物足りない軍勢でしたね……。

過去、仲間であった七英雄に対しては攻撃を躊躇ってしまう部分があって、そこを突かれると危なかったですけど。そこで頼れる応援が駆けつけてくれるんだから、ルファスの歩みが間違ってなかったと思えて良い。

 

急に街の傍で神話級の決戦が開始されたレーギャルンの住民の方々は、さぞ胃を痛めたことでしょうけど……。これまで何度かルファス一行の力を見てきたガンツたちは、自分たちでコーヒーを入れて飲む余裕があるの面白かったですね。

騒いだところでどうしようもない、というあきらめの極致みたいな態度ではありましたけど。それを受け入れられる、というのも一種の強さですよ。えぇ。

 

無事にポルクスを取り戻したところ彼女かなり常識人で、割と抜けてるルファス相手に「今までなにしてたんですかー!」ってツッコミ入れてくれるので助かる。

同様に指摘を受けたリーブラが「高山よりも深く反省しております」とか返すあたりも、十二星の親しみを感じられてよい。

 

巻末SSは「王子は世間を知る」。

メラクが王になるための試練として、一年の旅に出た先でルファス一行に出会う話。

試練には緩い縛りしかかけられておらず、手を抜こうと思えばできる。けれど、それをしてしまえば侮られて発言力が下がる。はたしてどうしたものか、と悩んでいたようですが。悩みすぎても良くないんですよねぇ……。

ルファス達と出会って常識を破壊されたのが、果たして良かったのか悪かったのか。……後悔は、してなさそうですけどね。

 

もう一編は「ルファス一行の金銭事情」。ディーナが心を砕いて、今の時代でも浮かない性能の武器とかをルファスに作ってもらって、売りさばいていたとか。

でもたまに危険物混ざるあたり、ルファスは本当にさぁ……。

野生のラスボスが現れた! 5

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「何を今更。私はいつだって大した奴だ。でなくば貴様の宿敵など名乗れるものか」

「ああ、そうであったな。其方は確かに余の宿敵を名乗るに相応しい存在だ。今、改めて心からそう思うよ」

 

レオンの下へ行くことを決めたルファス。

しかしそれはつまり、近くにいる七英雄ベネトナシュに近づくことでもあって……待ちきれずベネトナシュの方からやってくるのは行動力ありすぎ。

むしろよくこれまでちょっかい出しに来なかったな……。初回は招待状を渡すにとどめてくれましたが、訪問してからはドンパチ始めるし。

 

これまでの実績からルファスがトンデモなのはわかっていましたけど、ベネトナシュもまた自力でレベル上限を突破するまでに至っていたのが凄まじい。

ベネトナシュ的にはルファスのことを、むしろ好いているし認めてるけど……だからこそ挑まずにはいられない、というあたり難儀ですねぇ。

そんな彼女の一撃すら、微睡んでいた「ルファス」を起こすきっかけにしかならないって言うあたり、ルファスはもうこの世界のバグか何かでしょ。

 

ルファス抜きでレオンと対峙することになった十二星のメンバーでしたが……強大なスペックを誇るレオン相手に、協力プレーで有利を取ったのはお見事。

しかしまぁ、女神の誘惑をはねのけたベネトナシュの後に見ると、レオンの小物感じがヤバい。

でもスペック最強のレオンに、最弱のアリエスが「自分は信じられないけど、ルファスに与えられた力は信じられる」と有効打を入れた展開は熱くて好き。

レオン小物でおバカな子という印象は強かったですけど、ルファス的にはそういう所が猫っぽくて可愛いという認識らしいって描写もあって、なるほどなとはなった。

 

巻末SSは「竜王が勝負を仕掛けてきた」。

クラウン帝国に喧嘩を売ってきた竜王ラードゥン。ルファス達のような例外を抜きにすれば、人類が及ぶべくもない相手。

戦う中でどうしても犠牲は出るだろうから、と弱気になったトップがルファス達を引き渡す判断を下して……むしろそれを好機として竜王狩りに行くあたり、強すぎるんだよなぁ……。

「一般人は語る」はベネトナシュとルファスの戦いを遠くで目撃した、一般吸血鬼視点の話。いやまぁ、ステータス差がありすぎて、実際ろくに観測はできなかったみたいですけどね。

野生のラスボスが現れた! 4

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早計に失するな。疑惑で目を曇らせるな。もっと冷静に情報を吟味しろと俺の中の何かが訴え続けている。俺はまだ何かを見落としている。

「よく説明は出来んがな……今ディーナを追い詰めるのは間違いのような気がするのだ」

 

いやしかし七英雄の鍛冶師ミザールは、移動する都市ブルートガングを作ったかと思えば、自分のコピーとも言うべきゴーレムを作って遺してるんだから、一人だけ技術力おかしくない?

……それに付き合えるルファスも相当ではあるんですけど、彼女は常識外れの覇王だからなぁ……。ミザールコピーと一緒になって開発満喫して、リーブラ強化されてるのは笑っちゃった。

後にルファスが「強化しなくても充分強かったリーブラを更に強化してしまうという馬鹿をやらかした」とかサラッと流してるのもあってなお笑える。

 

そしてルファス達が次に訪れたのは、獣人たちの国ドラウプニル。

タイミングよく狩猟祭が開催されるところだったようですが……ルファス達からすればどうしたって低レベルな狩場でしかないわけで。

ただ新たな『乙女』として任命されたウィルゴが、物は試しで参加することに。レベル上限に到達してるルファスや他の十二星に比べると弱い彼女ですが、それでもレベル300あって、どこぞの剣聖とかより圧倒的に強いですからね……。

 

そもそもがパルテノスに育てられて、隔離された場所で育った彼女は自分の強さに無自覚だったため、良い経験を積ませられるだろうとルファスは考えたわけですが。

「あれ、狩猟祭の獲物って弱い?」って別方向の勘違いをしてたのが愉快。実力差に唖然としてる勇者君レベル35だぞ……。

その後、別の場所でパルテノス直伝の護身用の術使って、現代の人を驚かせてましたが。アレ十二星の前で使ってたら「パルテノスの術、しっかり教わってたんだねー」くらいのリアクションで終わって、大仰な背景教えてくれなかっただろうからクルスはいい仕事をしました。

 

ルファスへの合流を選ばなかった十二星のサジタリウスが現れたり、七曜が暗躍してたりして、ただの狩猟祭では終わらなかったんですけどね。

優秀な成績を収めたことで国からある依頼をされたウィルゴ。サポートにアリエスがついてましたが……現存の国家が求める至宝が、王墓にはゴロゴロ転がってたなぁと思ってる当たり、格差の激しさにいっそ泣けそう。よくもまぁ人類生き延びてきたな……。

 

トラブルが起きている中、力量差を自覚しながらもルファスの前に立てる胆力だけでも、勇者君は結構資質あると思います。

そして今回の一件で情報を得たルファス達は十二星レオンのところへ行くことを決めて。十二星もそこそこ揃ってきたから、別の気掛かりへとパーティーを分断させる選択肢出てきたの強いですよねぇ。

……いやまぁわりと単独行動とかしてるし、だいたいそれで対処できる戦力ではありますけど。

 

巻末のSSは「フェクダは冒険者に進化したい」。

小人族のフェクダ。彼は人類国家として最大規模を誇るクラウン帝国に兵士として所属しており、獣人のドゥーベと共に門の見張りをしていた。

そこに竜殺しを成し遂げ装備を更新したルファス達が現れ……さらにはタイミングを同じくして国が偽竜の襲撃を受けて。その活躍を見て、最後までルファスに臣従する戦士も現れたりする、大イベントに発展した模様。いやはや、運命的ですねぇ……。

未来の決別を知ってると、惜しいですけど。戦士の残した自伝の最後の一文が味わいあって好き。

あと「変態のスコルピウスが飛び出してきた」もついてましたが……まぁいつものスコルピウスなので、ある意味で安心。

野生のラスボスが現れた! 3

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――野生のルファス・マファールが現れた。

(略)

――野生の魔神王も現れた。

 

前回のあらすじ!

『乙女』に会いに向かっていたはずだったけど、道中で暗躍する魔人族と鉢合わせた上それに協力していた『山羊』と再会することになったぜ!

……なんかあとがきの変なノリが移った気がするな……。

山羊のアイゴケロスはルファスと対面して、戻ってきてくれましたが。彼が齎した情報によれば、十二星天で随一の崇拝者だった『蠍』は七英雄の国一つ滅ぼしたとかいうし、ルファスいなくなった影響大きすぎるな……。

 

さらに勇者召喚の情報が魔人族に掴まれていることも発覚。

ルファスとしては、ゲームシナリオ的に言えば勇者が魔神王を倒す存在なんだから、あっさり倒されては困る。

そのため勇者排除に動くだろう七曜を、返り討ちにしてやろうとルファス直々に赴いたわけですが……。

相手もそれを予測して魔神王が乗り込んできてたのには笑った。旅立ち第一歩で、ラスボスと実質ラスボスがエンカウントするんじゃないよ! 

 

でも、ここで魔神王と遭遇したことはルファスにとってありがたかったというか。

彼女自身は全力を出しているつもりでも、魔神王から「相手が私では本気を出すにも値せんかね?」とか言われたり、他にも気になる情報を聞けましたしね。

この世界に根付く「女神のシナリオ」。それをかつてのルファスは終わらせようとしたのだ、と。

 

更には当初の目的通り訪れた『乙女』パルテノスの所在地で、パルテノスからも色々と情報を聞くことができて。

あくまで肉体が人間のパルテノスはさすがに死んでしまっていましたが、幽霊となってでも在り続けてくれたのは忠義の重さを感じた。

所在不明の十二星天の何名かにはルファスが役目をいたことだったり、200年前のルファスは記憶を失ったりするだろう現状についても予測していたことだったりを聞くことが出来ました。

 

ゲーマーな主人公の魂がルファスに宿っていることが、ルファスの枷となっているというのはなかなか面白い設定だと思いましたね。

それを知ったことで主人公自身が、ルファスの足跡をたどり巻き込まれたことへの復讐をしてやろうと決意したのは熱くて良き。

 

巻末書き下ろしは「野生の魔竜が現れた」。

200年前、ルファス達が鍛冶師のミザールと遭遇することになるSS

鍛冶に特化しすぎていて、龍種の区別がついてないミザールよ……。依頼を出して、誰も受けてくれないなぁって思ってたなら何かおかしいって思いなさいよ。

そして事情を知ったら今度は自力で取りに行こうとかするし。馬鹿だけど、だからルファスに「面白いやつを見つけた」って思われたんだろうなって納得もある。



野生のラスボスが現れた! 2

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「長い間待たせて済まなかったな。迎えに来たぞ、リーブラ」

「…………状況判断……ルファス様本人である確率、100%……ルファス様本人であると確定。……王墓防衛の任務を解除します」

 

十二星天の一人、アリエスと無事に再会を果たしたルファス。

ディーナから情報をもらい、ルファスを慕う勢力によって作られた「黒翼の王墓」を守護するリーブラを回収しに行くことに。

王墓を名乗るだけあって当時ルファスが使っていた装備など、今の時代では貴重な数々のアイテムも収められているとか。

 

人類の生存圏が縮みレベルの低下も著しい今となっては、再び作ることも難しいそれらを求めて王墓に乗り込む人々も絶えないそうです。

王墓内部には強力なゴーレムがいるし、最深部はリーブラが守っている。オマケにリーブラは初手高火力ぶっ放してくるので、苦労して到達しても生存者ゼロ。

それだけ希少なアイテムが求められていたということでしょうけど、有望な人類側の戦力削りまくっていたってことでは……。

まぁリーブラはルファス亡きあとも忠義を尽くしていただけなので、責められる謂れないですけどね。

 

無事に最深部でゴーレム・リーブラと再会し、壊れかけていた彼女の修理を終えて。

必要な宝物を回収することになったわけですが。昔から光物が好きで集めていたらしいルファスが、性能ではなく輝き具合に魅了されポンコツ化していたの笑っちゃった。

順調にルファスが配下を回収している一方で、誤って彼女を召喚してしまった国があきらめず勇者召喚試みてるのは逞しいな……。

ルファス一人ですら今の人類の総力上げても倒せる未来見えないのに、どんどん勢力強化されていくから、こんな状況で招かれた勇者君には今から手を合わせておきましょう。南無。

 

次の仲間に会いに赴いたところ、近くには存命の七英雄メレクが築いた天翼族の国があって。白い翼を何より貴ぶ彼らにとって、漆黒の翼をもつルファスは何より認めがたい存在だそうで。

ルファスが覇王として君臨していた折は、翼の色での差別を禁じていたそうですが、彼女が消えてからは従来の迫害が蘇り……ルファス達が訪れたタイミングで、それぞれの派閥の不満が爆発しそうになってるとか、無駄にイベントの引きがいいなルファス。

……ディーナがいろいろ動いているみたいですし、その影響も大いにあるとは思いますけども。ルファスのハチャメチャ具合が健在で今回も楽しかった。

 

巻末書下ろしは「野生の殺戮侍女が現れた」。ルファスと合流したリーブラの、他愛無い日常について。……無残に散った野盗が居ましたが。忠告聞かなかったし、そもそも野盗ですしね。ヨシ。

野生のラスボスが現れた! 1

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「然り。敗れはしたが余はあの戦いに満足しているのだ。世に勝利した者達が魔神王を倒せなかったのは不満だが……まあ、よい。それよりも今はこの世界を見て、そして愛でてみたい」

 

「エクスゲート・オンライン」。古いハードで出ていた王道RPGが移植されたタイトルで、幅広いキャラメイクや勢力争いを推奨する「戦争システム」、そして活躍したら公式とタイアップした小説サイトでノベル化されたりする企画などなど、盛り上げる施策は結構打っていたようです。

 

そんなゲームにドハマりした主人公は、天翼族の少女ルファス・マファールというキャラを作り、鍛え上げ……公式ラスボスの魔神王とその配下以外の全勢力を配下に治めるところまで上り詰めた。

その強さから他プレイヤーから「野生のラスボス」や「もうお前がラスボスでいいよ」とか色々言われていたようですが。一勢力が強すぎるとせっかくの戦争システムも機能しないから、と彼は他の有力プレイヤーと共同の「覇王ルファスへの反乱」イベントを主催。

悪役側のトップとして存分に楽しんだものの、さすがに数に圧されて敗北。

 

そしてそのタイミングで見慣れぬシステムメッセージが視界に現れ、YESと答えたことで彼の意識は途切れ……気が付いたら彼は、ゲームによくにた世界でルファスの姿になっていた。

彼が残した覇王ルファスの君臨と、英雄たちによる打破という歴史はそのままに200年も経過した未来。長命種がいることもあってか黒翼の覇王の伝承は残り続けていた模様。

中身はゲーマーなんですが、何らかの力で補正が働いてある程度は「ルファスらしい」振る舞いができるのは一安心(?)。

 

勇者召喚しようとしたら、かつての覇王を呼び寄せてしまった国の人々はそりゃ生きた心地しなかったでしょうけど。負けRPをしっかりしてこの世界楽しむつもりのルファスが楽しそうで何より。

問題も多いんですけどね……この世界ではルファスを倒したあとの英雄たちは、そのまま魔神王へ挑んだものの敗走。人類の生存圏はかなり狭くなってしまったようです。

 

多少はルファスとしての知識も引き出せるみたいですけど、現代の情勢などには疎くて。

かつての本拠地に立ち寄った際にNPCとして残していた少女ディーナと再会して、情報を得られたのはありがたい。

ディーナから情報をもらい、以前の配下・十二星天を回収しつつ今も存命の英雄たちに会おうと決めたルファス。英雄たちはあるいは自分と同じプレイヤーなのかもしれないと、淡い希望を抱きつつ気ままに歩んでいきますが……。

 

かつては当たり前のようにいた上限レベル1000の戦士がおらず、剣聖と名高い存在すら120レベルとかいう戦いの文明までもかなり後退してるようで。

そんな有様の世界では、ルファスの歩みを阻めるものなどなく。これは確かに「野生のラスボスが現れた!」って感じですよね……。

ぶらりラスボスの旅~魔人勢力は適当に蹴散らします~。うーん、これは歩く災害……いや実際そんなことしないの分かってるから言えることですけど。

ノリが合えばかなり楽しめる作品だと思います。私は好きですね。

巻末SSは「野生の悪魔が現れた」と「野生の恐竜が現れた」。
前者は「よい子にしないと、黒い翼の悪魔に連れてかれちゃう」という、子どもを怖がらせるための歌。それを信じていなかった悪ガキが、ルファスと出会ってしまう短編。
狼少年になりかけていた彼を、意図してないとはいえ正したのはラッキーでした。

後者は200年前、変わり者のエルフ・メグレズが冒険者として活動を始め、アリオトと出会い……彼らが40レベルとかの時に、すでに400レベルを超えていたルファスと遭遇する話。
3人がパーティーを組むことになる話で……こんな穏やかな(恐竜と出くわしたけど)始まりだったのに、最後には道を分かつことになったなら、そりゃメグレズも悩み続ける羽目になっただろうなぁ……みたいな気持ちになった。

転生してハイエルフになりましたが、スローライフは120年で飽きました2

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「もしかすると、明日僕が死ぬかもしれない。……ないとは思うけれど、ないとは言い切れない。だからそんな先の話は考えても仕方ないんだ。そして寿命だけを問題とするなら、アイレナだって僕よりずっと早く死ぬ、それを恐れるなら、僕はもう誰とも関われない。そんな生き方は、僕は嫌だね」


BOOK☆WALKER読み放題で読了。期間限定タイトルで1月31日まで。 

ハーフエルフの子供を迎えるために、アイレナのところを訪れたエイサー。

無事にその男子ウィンに受け入れられたのは良かったですけど……会いたさ優先できたからこの後ノープランだ、って気づいたときは相変わらずだなぁ、ってもう呆れより先に感心してしまった。

でも、それをそのままアイレナに言うと怒られるどころか、最悪以前の養われ生活に逆戻りだ、とそれらしいプランをそこで考えられるようになったのは成長でしょうか。

……エイサーがしっかりプランを話してくれた時に「驚きました」とかアイレナに言われてるので、どうせまたノープランだろうと思われていた節はありますけど。

 

ウィンを連れていく先として思いついたのが、かつて彼が訪れたジャンぺモンの町で。

成長した少女ノンナと再会。彼女にウィンの世話をお願いしつつ、鍛冶仕事で稼いだりして日々を過ごすのは、なんというか彼のこれまでの旅が生きてるようでうれしかった。

しばらく滞在してウィンが去る時に泣いたっていうのは、それだけの良い時間を過ごせたってことですしね。

 

ウィンを連れて旅をして。久方ぶりにルードリア王国の王都を訪れカエハたちと再会できたのは良かったですけど。

彼女たちは健在ながら……カエハの母に「呪いをかけた」と言われるのも納得できる状況ではありましたね。納得できるかと言われればし難いですけど。

そうなってしまったことが、変えられるわけでもないですからねぇ……。でも、カエハとエイサーの距離感、これはこれで嫌いじゃないから脳がバグる。

 

ほかにもエイサーはドワーフの国を訪れて、師匠と再会したり。北の帝国に根付いた敵を倒しに行ったりといろいろとしていますが。

彼自身にもその過程で変化があったり、彼に影響されたことで周囲の人々も変わっていくのが面白い。ドワーフの国に、エイサー以外のエルフが来るのだってそれまでは考えられなかったことでしょうしね。

 

書下ろしパートで断章と番外編がありましたが。

番外編「ハイエルフの足跡」では以前出てきたエルフの井戸の村が登場したり、異国で別れたエイサーの友カウシュマンの葛藤と決意が見られたり、ウィン視点から見たエイサーが見られたりしたのが嬉しかったですねぇ。


プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
 新刊・既刊を問わず読んだタイミングで記事を作成しております。
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