気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

ウィザーズ・ブレイン

ウィザーズ・ブレイン アンコール

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『――そうして世界は今日も続いてく。

(中略)

私達は、今日も元気に、がんばってる。

だからね、フィアちゃん。

世界はきっと、大丈夫だよ』

 

電撃の公式海賊本などに掲載され、文庫未収録だった『ハッピー・バレンタイン』、『正しい猫の飼い方』、『最終回狂騒曲』を収録のほか、書き下ろしエピソード『湯宴の誓い』、『旅路の果て ~Journey home~』、『そして物語は続く ~Cooking for you~』を収録した短編集。

 

書き下ろし『湯縁の誓い』は、戦争終結から一年ほどが経過した後のエピソード。世界再生機構の街は多くの人や建物が増えて、変化し続ける日々だったとか。

新しい施設を作ろう、という議題が出た中でファンメイが「温泉がいいと思う」とか言い始めて。シティ生活に切り替わってからも長く……改めていろんな知識が断絶してるなぁ、と感じる部分もありましたが。

かこーんって音だって主張した後「それ、鹿威し。温泉とは関係ないと思う」ってツッコミ入ってるの、地味にツボだった。

そしてタイミングよく地下の調査を行うことになって……予期せぬものを発見して。危うい時もありましたけど、最終的には丸く収まって良かった。

 

情報の断絶が活きてるエピソードでいえば『ハッピー・バレンタイン』もそうか。なんで月夜頭がいいのに時々あんな暴走するんでしょうね……。

『正しい猫の飼い方』はエドやファンメイが、猫の幽霊を見ることになる話。情報制御理論が通るこの世界だと、普通にありうるのか。作中でも出てましたが、人形遣いとかまさしく「ゴーストハック」使いますしね。

最も自然発生的なものは粗が多く、魔法士が使うものは洗練されている、など色々違う部分もあるようですが。毒になりうると知っていても、会いに来た幽霊の猫が、とてもいとおしい。

 

『旅路の果て』は歩み続ける錬とフィアが遭遇した、やり残し……というか。

彼の行動の結果、巡り合うことになった2人と言葉を交わすことになる話。いやまぁ、うん。錬の旅は、これからもこういうことの繰り返しなんだろうなぁ、と思いますが。フィアが隣にいてくれることは本当に救いだな、とも思いました。

最後に収録されているのが『そして物語は続く』。セラがとある目的からクレアの好物を探ろうとする話。身近にいるディーに話を聞いたりもしてましたが、彼もセラに会うまでは立ち位置が定まらずにいたわけで。他数名にも話を聞いてましたが、コレというものは見つからず。

でも、不意に「なぜそもそも食べ物なんだ」という疑問を投げてくれた人がいて。それでセラが見つけた答えが素敵で、本編後にこの話を読めて良かったなぁと思いました。

ウィザーズ・ブレイン10 光の空

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「人類にも魔法士にも、シティに属する方にもそうでもない方にも、戦争に賛成する方にも反対する方にも、全ての人々に等しくこの回線は開かれています。――誰でも構いません。思想も、立場も、生まれの違いも生物としての在り方も問いません。互いに一切の区別無く、ただこの星に生きる対等の一個の命として。世界の命運が決するまでのひととき、共に語り合いましょう」

 

長く続いた物語の終焉。あとがきで語られていましたが2001年始動だったみたいですね。いやぁ、本当に完結巻まで読めて良かったです……。

短編集の刊行も決定したようですし、もう少し楽しめるのは嬉しいですけど、まずは一つの大きな流れが決着を迎えたことを喜びたい。

 

雲除去システムという存在があるからこそ、魔法士も非魔法士もお互いを殺しつくして青い空を取り戻そうとしようとする。

そこで錬が掲げたのは、未来に滅びるとしても戦争を止めるために雲除去システムを破壊しようというもので。

錬に言わせれば、これは儀式のようなものだから、と結構日時を高らかに宣言して。

 

当然それを阻止しようとする人々もいるし……錬の側についてくれる人だっている。

錬の宣言で耳目を集めた裏側で、エドの船であるウィリアム・シェイクスピアを世界再生機構が奪取して、雲上航行船3隻がそろうことになったのは熱い展開でしたねぇ。

エドの船の管理をしていたシティの研究員たちは、あくまでシティに家族や友人がいるから残ることを選んだけれど、船はあくまで彼に返すべきだという選択をした。

誰も彼もが迷いながら、それでも後悔しないように動いているのが良いですねぇ。

 

錬がサクラの待つ衛星に踏み込む、そのために他の主要キャラが奮闘してくれるの好きです。

最終決戦の前に、それぞれがどんな経験をしてきたのかというのを語り合っているシーンとか、集大成感が強くてとても楽しかったですし。

そうだよなぁ、これまで何度も出会って別れてを繰り返してきて、多少は相手の事を知っていても、どんな経験をしていたかは知らなかったわけですし。

こういう語らい下手すると死亡フラグになりかねませんが、錬たちが戦いの果てに生き延びてくれたのはホッとしました。

 

錬を送ろうとする側と妨害する側。その攻防が決着した後、システムの行く末はサクラと錬の戦いにゆだねられることになった。

じゃあその間他のキャラは何もすることがなかったのかと言えば、そうでもなくて……。

全世界と通信網を繋いで誰でも発言できる場を設けて、世界の真実について語らう場を設けることになっていたの、かなり好きです。

何も知らなかった一般市民の勝手な発言があって、それも事情を知るメンバーや指導者たちは受け止めた。まぁあまりにも勝手すぎれば、「発現には責任を伴う」という言葉の重みを知ってもらうことになってましたが。

 

そして戦いが決着し、その後のエピソード見られたのは嬉しかったですね。

何もかもが上手くいくわけではないとしても、争い合って滅びるような決着を迎えることが無かったのにはホッとしました。

戦争時の絶望的な空気を思えば、天国のようですね。まぁ、火種はあれど歩みを止める者がいないと信じられる決着なのが、この物語らしい気もします。

あぁ、たどり着いたんだなという気持ちです。長く待ち続けたシリーズの完結巻というだけあって、満足感と寂しさが胸に残る。

傑作ファンタジーなので、どうか多くの人に読んで欲しいものですね。

ウィザーズ・ブレイン9 破滅の星・下

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「(前略)オレはな、『人間』ってもんにどうやっても返しきれねえほど恩があるんだよ」

(略)

「だから、オレは行くんだよ」少女の頭を柔らかく撫で「どうにもならなくても、何も出来なくても、絶対に上手くいくわけ無くてもな。……それでも、行かなきゃなんねぇ所に行って、やらなきゃなんねぇ事をやるんだよ」

 

 

世界再生機構、天城博士の秘密研究所に逃げ込めたけど、魔法士と非魔法士が入り混じった状態だし……追い込まれていく中で、自死を選ぶ人すら出てきてた。

70Pの祐一の死を受けて他の面々が取った行動が、短いながらに味わいがあって良いですね……セラが泣き崩れるのも、イルが持ち帰られた紅蓮を見つめ考え込んでいるのも。

彼の死があったからこそ、戸惑いながらも錬が動き始めたのも。黒沢祐一というキャラの偉大さが分かって良いなぁ。

喪失の大きさも分かって、寂しいですけど……。

 

雲除去システムを起動するために、賢人会議は非魔法士を根絶しようとして、カウンターとしてシティ側が手にしたのは魔法士を排除するという手札だった。

そしてシティの生産能力的に見ても、賢人会議の切りつめ具合からしても互いに戦争状態を継続できるとしても2か月ほどで、それを過ぎれば兵器製造用のプラントを生産活動に転用するなり拠点整備に移るなりをしないといけない状況にまで追い詰められていて。

 

シティ・マサチューセッツは代表がディーによって殺され、ファクトリーシステムが破壊されたことで陥落。

三千万もの難民が生じる結果となり……シティ側はそれを保護することとなり、賢人会議はいつでも刈り取れるからと放置している状況が作られた。

 

シティ側としては、叶うならば賢人会議をおびき出して一網打尽にしたかった。そこでシティ・ロンドンの代表サリーが提案したのが、シティ・北京の遺産を活用することだった。

マサチューセッツの難民を囮に賢人会議を誘い込み……かつてファンメイたちが暮らしていた『島』の予備。近くにあったそれを落とすという悪魔の作戦が実行に移されてしまうことになり……それぞれの事情から、ヘイズもファンメイも止まることが出来なかった。

 

どちらも腕利きですけど、シティと賢人会議それぞれが覚悟を決めた状態で臨んだ戦場において、個人と個人で出来ることは限られていて。そもそもこれまでの状況から疲労も溜まっていたわけですしね……。

無理かもしれない、と折れそうになっていた時にヘイズをクレアが焚き付けて、ファンメイを助けるためにエドが力を尽くした、というのが本当に良かったですね。

 

2か月というのは、両陣営が戦いを継続できるギリギリのタイムリミットなわけで。当然、どちらの陣営もそこに至るよりも早く動き出すわけですが。

最終決戦に際して、錬は自分が生み出された場所へと踏み込むことに。そこには天城博士の伝言なんかも残されていたわけですが……。

アリスの見出した『世界の解』と言い、天城博士が語る『錬が作られた理由』と言い、全部解決してくれる優しい回答なんてものは与えてくれなくて、結局は今を生きる人々がどうしたいかというのを問われ続けているんですよね。

 

そういう意味では、作戦に参加した人々の尽力によって生かされたイルが、英雄として戻る決断を下したの、良かったですね。

公には死んだことにされていて、だからこそマサチューセッツの兵士たちは戦いに望む覚悟を決めていた。けれど、彼の生存の噂が流れるようになり……イルが舞い戻ったことにより、彼に付いてくれる人々が居たというのがこの窮地にあって本当に嬉しかった。

イル生存の噂を広めることに、弥生やヴィドに孤児の少女沙耶の関与があったのも、魔法士たちだけで物語が動いているわけではないという証明になっていて好き。

迷い続けていた錬が、誰に強いられるのでもなく自ら決めて最終決戦の場所に乗り込んで、存在感を示したのがとても印象的でしたね……。



ウィザーズ・ブレイン9 破滅の星・中


普段は極力抑えようとしてるのですが、
今回はネタバレ全開で感想を書きます。



ご了承の上、お読みください。続きを読む

ウィザーズ・ブレイン9 破滅の星・上

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「……出来ないよ、そんなこと」とっさに首を振って少女から視線を逸らし「月姉やフィアだけじゃない。大切な人がこの世界にはたくさんいるんだ。そういう人たちをみんな魔法士にするなんてできない。だから」

「そうか……」

 

賢人会議の参謀、天城真昼が死んでしまったことにより運命は定まった。

覚悟を決めたサクラは、非魔法士の根絶を目的とした全面戦争を布告して……。

サクラやディーといった一線級の戦力でなくとも、魔法士というのは戦場でその強力な力を発揮する存在なわけで。

シティ側も警戒・対策を取ろうとはしていたんですが、どうしても被害が増えていく。そんな絶望的な状況で、各々の立場で出来ることをしようとしているのはまだ良かったと言えるだろうか。

シティの上層部の覚悟が決まっている証として、生き残ったシティが連合組んで戦争に応じる構えを取ってしまったので、易々と止まれなくなったことは心が痛くもなりましたけどね……。だからと言って賢人会議に蹂躙されろ、なんて言えないしなぁ。

 

……ただまぁ、ここまで状況が煮詰まってしまうと、どうしたって望まぬ行動を強いられるキャラも出てきたりはするんですが。

錬とフィアが露骨に影響を受けてしまってるなぁ、という状況ではありましたね。マザーコア用の「天使」であったフィアの存在が露見し、連れ去られて……錬は不本意ながら前線に立つことになって。

祐一やヘイズたちもその事には途中で気付いたんですけど、差し迫った状況で割ける戦力が無く、先送りすることになってたりしてましたしね……。

 

辛さでいえば、他人を傷つけることを嫌うセラが過激さをました賢人会議に残っていたこともまた悲劇的ではありましたよね。

争いを厭う子供たちはいるけれど、一度舵を切ってしまった以上はもう止まることはできない状況になっていて……。セラはサクラを止めたいと願ってこそいたけれど、結果を出せずにいましたし……。

 

賢人会議に多くの魔法士が流れる中、シティに残って協力する道を選んだ人々もいて。

本当にこの世界の人々の生き様は格好いいなぁ。良いキャラが多いんですけど、そういう人が多くても、どうしようもない戦いに転がっていってしまうくらいに絶望的な世界だということが改めて示されているようで辛くもありました。

 

イルはモスクワの英雄としての立ち位置を定めていてることもあって、賢人会議との決戦には参加して。サクラも覚悟を決めていた中で、未だ錬が迷いの中にあったのは彼らしかったですね。

アリスが見た『世界の解』についても示されて……本当に最終局面なんだと実感しました。サクラが衛星を抑えたことで賢人会議側有利になってしまったのか、という所で引き。

 

上巻、発売直後に購入していたので手元に初版があるんですが……いやぁ、続きが出るまで気長に積んでたんですが。当時に読んでいたら続き気になりすぎて、気が気じゃなかったろうし、10巻発売までまって駆け抜けられたのは個人的には良い読書体験でした。

ウィザーズ・ブレインⅢ 光使いの詩

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「……君がこの剣でどれだけのことを為したとしても、君の罪は決して消えない。君の剣はこれから先も数え切れないほどの命を奪い、悲しみを生むだろう。人は君を兵器と呼び、恐れるだろう」
祐一は、剣の柄をディーの手に握らせ、
「それでも戦え。罪も痛みも、すべて背負って生きろ。強さとは……たぶんそういうことだ」

ウィザーズ・ブレインの中でも一、二を争うくらい好きなエピソードですねー。
舞台はシティ・マサチューセッツ。
『黒衣の騎士』として、過去の大戦で活躍した、現存する中での最強騎士、黒沢祐一。
その元に、かつての戦友から届いた一通の手紙を元に、その年を訪れる。

マサチューセッツでは、壊滅したシティ・神戸とは違う形でマザーシステムを維持していた。
『ファクトリー』。
「一体で恒久的な使用に耐えるコア」というコンセプトではなく、「安価で大量生産が可能なコア」という思想。
数か月、時には数日で「壊れる」コアを生産し、使いつぶしていく。
……いったい、どれだけの魔法士がコアとなるために作られて、使いつぶされてきたのかを思うと、こみ上げてくるものがありますけどね。

大量生産の過程の中で、乱数として、希に特異な能力を持った魔法士が生まれることがあった。
現存するのは3人。
一人は知覚能力が発達した、クレア。もう一人は、今回は登場せず。
そして、表紙に移っている最後の一人が、ディー。デュアル No.33。
右脳か左脳、どちらか片方にだけあるはずのI-ブレインを両方に備えている規格外。
並列処理によって、通常の騎士が持つ弱点を克服した魔法士。

だが、能力が優れていても、精神面では未熟で、悩みを抱えていた。
人を傷つけることができない。
その悩みによって、多くの任務を失敗してきたディーに、与えられた新たな任務。
今、マサチューセッツでは正体不明の魔法士『光使い』が破壊活動などを行っていた。
『光使い』の追跡調査。
道中で、ディーは、セラという少女と出会い、少しずつ変化していく。

更に話が進むと、祐一とディーが交流を持ったりするわけですけどね。
祐一が先人として、「まだ人を斬るべきではない」と諭したり、色々と教えている光景がいい感じ。
ディーとセラは、何も知らない状態で出会い、そして最後には亀裂が入った状態で、そばにいることを選ぶわけですが。
何とも言えないというか、全てを背負っていく決意を決めたディーが格好いいなぁ、という感じでしたけど。

母親として、強さを発揮しながらも、少しだけ間違えたマリアも、嫌いじゃないですよ。
ディーの悩みを深して、セラにも暗いものを背負わせてしまったわけですが・・・あの思いが、努力が全て否定されるのは、悲しすぎるかなぁ、と思うので。
P291のイラストがまた。あぁいう時間がもっと早く訪れていればよかったのに、と。
そういう残念さはありますかねー。でも、文句抜きで面白かった。



ウィザーズ・ブレインⅡ 楽園の子供たち

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――いいか、お前は生きなきゃならん。なにがなんでも生き続けろ。それでなんになるのかは、わしにもわからん。辛いだけかもしれん。苦しいだけかもしれん。この先どんなに頑張っても、いいことなんかひとつもないかもしれん。それでも生きろ。生きて、突っ走って、這いつくばって、そして笑え――


フリーの便利屋として活動している魔法士、ヴァーミリオン・CD・ヘイズ。
彼がシティに雇われ派遣されたのは、ヒマラヤ山脈上級2万メートルに浮かぶ、極秘の研究施設だった。
しかし、生き残ったシティも一枚岩ではないので、下手な場所に落ちて被害出ない内に、破壊してしまおうという意見が主流になる。
それに反対する一部が、ヘイズを雇い、攻撃作戦が開始される前に、情報を盗み出して来い、と侵入させられることに。

特殊な雲に覆われた世界。
その雲の中においては、情報制御が使えない。
だから、雲の上を飛ぶことのできる航空鑑定には限りがある。
一応、高性能な演算機関と、高速演算能力を備えた魔法士が居れば、雲の上行けるようですが。
魔法士なんて特に、イレギュラーが誕生することもあるぐらい、不安定なもので。
狙って開発できない技術。
今の世において、雲の上を飛べるのは、3対のみ。
シティ・モスクワに1対。シティ・ロンドンに1対。
そして最後の1対が、フリーで活動しているヘイズ。

自らの肉体を変化させて戦う魔法士《龍使い》を研究していた施設。
事前に得られた情報によれば、実験体には暴走の危険性があるという。
分からないことだらけの状況で、侵入した先で出会ったのは、4人の少年少女だった。
彼ら、彼女らの明るさに戸惑いながらも、交流していく。
その果てに得たのは、驚くべき真相だった。
世界そのものが危機的状況にあるなかで、あんな優しい場所が、ただそれだけであるはずもないか。

ヘイズがこんな世界でフリーで一人で生きていくには、結構甘い性格だよなぁ、と思います。
でも、彼の出自というか、経験的にあそこで手を差し伸べないのは、なるほど嘘だよなぁ、という感じで。
しかし、ヘイズがたまたま派遣されてきたからこそ助かったけれど、もし来ていなかったら。
必死の抵抗をしていた彼らの痕跡っていうのは、消されてしまっていたんでしょう。
だからこそ、これはある意味での運命だったのか、と。

優しい場所にいたファンメイが、厳しい現実を知り、その中でどう過ごすのか。
外に出ることを選んだからには、負けないでほしいですねー。
最新刊まで読んでいると、とりあえず、その願いはかなえられているのですが。
色々と切羽詰まった状況で、あの明るさには救われます。
新刊でちょっと世界に変化が訪れそうな勢いですし、そこから先、どうなっていくのが本当に気になります。


ウィザーズ・ブレインⅧ 落日の都〈下〉

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「世界は優れた個人が変えていくべき物ではなく、人々の総意によって自ずから変わっていくべき物。『未来のために、弱者を切り捨てても変革を行うべし』という意思は、名も無き数多の民衆の間から自然に湧き上がるものでなければならん。そうでなければ、世界は変革に耐えられん。仮に私が認め、シンガポール自治政府に属する全ての議員がそれを認めたとしても、民衆の同意が得られぬのであればその変革はいずれ決定的な破局を招くことになる」


待った、三年まったよ……!
後書きで作者も書いていましたが、さすがにもう出ないかと諦めかけていました。
上中下の下巻を三年も待たせるとか鬼の所業ですよね。
しかし、出ないかもと思いながらも手を伸ばしてしまうくらいには、この作品が、描かれている世界が好きですよ。
だからこそ、もうどれだけ時間かかってもいいので、どうか、残り2エピソードで完結だというのなら、最後まで描ききって欲しいですね。

さておき、本編。
同盟を結ぶべくシティに赴いた賢人会議。
しかし、それを拒む一派の行動によって、参謀真昼が囚われの身に。
市民たちは、賢人会議が神戸を滅ぼしたという情報に踊らされ、暴徒と化す。
裏に工作がなかったとは言わないけど、火種がなければそれを煽って大火事にすることもできないわけで。
魔法師と、人間という二つの立場とそれぞれの抱えている問題、軋轢。
今まで誤魔化しながら進んできていたそれらが今回ぶちまけられてしまった。

今までバラバラに動いていた主役級の人物が、それぞれの立場や思惑は違えど一つのシティに集まっているのだから、こんな状態からでもなんとか救いを手にしてくれるんじゃないかと思っていましたが、一人一人が傑物であったとしても、止められないものはあるんだよなぁ。
どれだけ強い力があっても山を動かすことはできない、とかそういう類。

暴徒と化した市民の前に、賢人会議の面々は悩む。
力を以て突破するのは容易い。しかし、それをすると、賢人会議とシティ、魔法師と人間の関係は修復不能な傷を負ってしまう。
同盟を結ぶために訪れたからには、出来る限り被害を出したくない。
そういう悩みを付かれて、どうしようもない方向へと、押し流されてしまう。

『世界再生機構』として祐一も動き出すけど、少しでも被害を減らすための対処療法しかできない。
要するに焼け石に水。
誰も彼もが、必死になって、最悪の状況を逃れようとしているのに、どんどん状況は悪化していく。

同盟反対派の議員も、信念があって、嫌いにはなれない感じはします。
神戸の残党もそれぞれに必死だったという事に間違いはないでしょう。
ただ、もう少しだけ、信じてほしかった。

リン・リー議員にも信念があり、マザーコアとなった執政官のように、「政治は神の代理行為ではない」と信じていた。
だけどそこまで確固たるものがあるんだったら、市民にもっと情報を渡すべきだったんじゃないのか。
隠された情報を求めることすら、市民が動かないことには始まらない、というんだろうか。
判断材料がない中で、犠牲を強いる道を選ぶとしても、自ずから選ばれなければいけない、っていうのは、ちょっと詭弁なんじゃないかな。
結局、魔法師っていう存在の脅威を理解できていない市民が多かったから、暴動は起きたし、賢人会議側が冷静だったせいで、その人たちはそのままに生き残った。
いや、魔法師じゃない人間を滅ぼせって言いたいんじゃないですけど、「魔法師は人間と違う者」というだけの認識で行動を起こしたからこそ、あの暴動は止められなかったんじゃないか。
驚異すらも教えて、その上で、道を選ばせるべきだったんじゃないのか。
『光耀』に盲目になったシティの中ではそれも難しかったんだろうか。
まー、いくら嘆いたところで、起きた結果は変えようがない。
流れができてしまった以上、それに乗るかどうかの決断は下さないといけない。

もう、しょっぱなにあんなシーン入ったもんだから、嫌な予感はしていましたけど。
滅びが迫った世界で、救いを求めて、最善を尽くそうとしている。
それは間違いないはずなのに、道は分かたれてしまった。
選ばれたはずの可能性が閉ざされ、決断は下される。

あぁ、優しくない世界で、優しくない物語だ。
けれど、読まずにはいられない引力がある。
脱落者がでて、争いへと向かうことに。
それだけは避けたかった人が大勢いたはずなのに。
資源が限られた世界で、争いを起こすという事は、滅びへ加速する道ですらあるだろうに。
どうか、ここから、少しでも救いがあって欲しいと願う。

……さぁ、次は何年後かな!


ウィザーズ・ブレイン

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「どうせなにかを犠牲にしなければ生きていけないのなら、一人でも多くの命を、一つでも多くの幸福を望んでなにが悪い!」血を吐くような声で、祐一は叫んだ。「世界中の人間が助かるような都合のいい答えがあるなら――言ってみろ!」

2月に新刊が出るので読み直しー。
全部の感想記事は間に合わないでしょうけど、ちまちま書いていこうかと思ってます。
1巻が発売されたのって2001年の事なんですねー。もう10年以上前なのか・・・
刊行の間がかなり空く作家さんだから、未だに完結してないんですよね。
好きなシリーズなんですけど、そこはちょっと残念だと思ってます。
上中下構成の下巻を2年? 3年? まぁ、それぐらい開けられると内容薄れますって。それでも新刊出ると買ってしまうぐらいには好きなシリーズです。

滅亡の危機に瀕した地球の話。
資源が枯渇しかけていて、あちこちでエネルギーやらなんやら、全体的に足りていないんですよね。
〈シティ〉という巨大な建造物を作り、閉鎖型の都市として管理しています。
そのシティですら全てを賄いきれず、シティの外で生活する難民じみた人も多くいるようですけど。
世界には、もう7つしかシティが残っていなくて、今回舞台になっているのは神戸にあるシティですねー。
そして、この世界には「魔法」とそれを使う「魔法士」が存在しています。
「I-ブレイン」というコンピューターを脳内に埋め込み、それによって、情報を書き換え、物理法則を操ると言う魔法。
これは、荒廃した世界で生きる人々の物語ですし、その中にある「魔法士」と「それ以外」の立場の差とか、そういうものが描かれた作品でもあるんですよね。

個人的には、祐一が一番好きなキャラですねー。
かつて起きた大戦で英雄と呼ばれた「黒衣の騎士」。戦闘能力だけじゃなく、判断や実行力など全てにおいて、現存するなかでは最強の騎士。で、過去に「最強騎士と呼ばれた恋人」がいて、その上で亡くしている。
・・・シリーズ終盤で死ぬんじゃないかとばかりに色々積み重ねてますけど。

錬という魔法士の少年が、シティの存続にかかわる重要人物である少女をさらったことから動き出していきます。
祐一は、シティに属する騎士として、また過去に犯した罪を自覚するがゆえに、少女を追い、まだ青い錬は理想を掲げ、少女を助けたいと願う。

罪のない少女を犠牲にして、ほんのなん十年かを永らえてなんになるのか。心のどこかで、そう叫ぶ自分がいた。人類の命運などとうに潰えているのだ。どうせ滅びる世界なら、せめて潔く、すべてのものに優しくあればいい。
だが、その声を押しとどめるように、もう一人の自分が叫ぶ。ここで諦めていい世界なら、どうして彼女は死んだのか。どれだけ醜く穢れても、生きることを諦めてはならない。
どちらが正しいのか、一〇年考え続けても、ついにわからなかった。


作中で、シティ側の祐一が抱えている悩みとして書かれている文章ですが。
この作品全体通しての悩み、みたいなものですよね、コレ。
滅びを受け入れるのか、どんな手を使ってでも生き延びて汚れてなお立ち上がるべきなのか。
魔法士の扱いっていうのは、この荒廃した世界においては、酷いところでは酷いものです。
シティの為のパーツ、みたいな実験も色々とあるようですし。
それでもなお手を尽くそうとする行動が、その先を見てみたい、という気持ちを引き出しますね。

シティ神戸を巡る争いの着地点、っていうのは結構凄惨なものでしたけど。
生き残った人間の数が、決して主人公たちにやさしくない。
今回登場した主要キャラたちは、この後それぞれの道を行き、時に交わったりするわけですけど。
シリーズの最後、どうか少しでも幸せな結末を迎えてほしいものだと思います。
打ち切りエンドだけは勘弁してほしいので、どうか残りのエピソードを書いてくださいという心境です。


プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
 新刊・既刊を問わず読んだタイミングで記事を作成しております。
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