「俺の……望みは……」
第11回オーバーラップ文庫大賞金賞受賞作品。
人々の生活を助けるために生み出された疑似生命、フェアリーメイド。
かつて栄えて、しかし人間に滅ぼされた妖精たちがエネルギーとなることで生まれた「マナの大流」。そこからマナを一つだけ取り出して器に込めることで稼働する機械だったが、経年劣化などから稀に暴走して、人を害することもあった。
さらに近年では寿命を迎えていないのに暴走する、特殊な事例も勃発していて……。
主人公のリュウジは、天才と謳われる父親シシヤマ・テツジから基礎を教わり、父と同じ最高峰の職人である「三天人」の称号を持つバーンズに指導を受けてフェアリーメイドを作る職人を目指していた。
しかし初めてフェアリーメイドを生み出した後、ある悲惨な事件が起きて……彼は、フェアリーメイドを破壊することを生業とする「壊し屋」として活動することに。
その傍らに彼の幼少期を知り、もうじき寿命を迎えることになるフェアリーメイド・ティルトアを伴って。
主な活動を壊し屋にしたとは言え、妖精職人として学んだ経験も活かしつつ、無茶を言う依頼人に応えようとしてるのは、彼も真面目と言うか。善良な性根を捨てきれてないなぁ……と青さを感じましたね。
若いのに色々背負いこみすぎてるから、擦れすぎるよりは全然良いですけど。
道を違えたことや、両親を亡くした後保護を断ってから師であるバーンズ相手には若干気まずい部分もあるみたいでしたけど。
十三人いる彼の弟子が立て続けに失踪する事件が起きて、無事が確認できるのが不肖の弟子であるリュウジとなれば無下にも出来ず。
「アリシア・シンドローム」について調べ、いくつかの事例に遭遇したことで、リュウジは真相に少しずつ近づいており……バーンズからの呼び出しに応えたことで、彼は真実を知ることになるわけです。
消された歴史、「アリシア・シンドローム」がなぜ起きるのか。そうした問題について深く知った彼が選んだ行動は……まぁ、彼らしいものではありましたね。過去を一つ越えた上で、次なる目標として誰もなしたことがないものを掲げた彼の旅路が幸い多い事を願うばかりです。