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『命か誇りを選ぶのであれば、命を捨てることに微塵の躊躇いも持ってはならん。そのことさえ忘れなければ、武士はただ情熱を傾けて生きるのみ。何も恐れることはない。周囲に心乱されず、ただ只管に我が道を往け』
主人公の黒須元親は、領地を治める武家の三男として生まれ、過酷な修行で何度も死に瀕しながらも、鍛錬を辞めなかった生粋の武人。
大きな戦もなく泰平の世に向かっている時流に反するような、あまりにも苛烈な生き様を貫いてきたわけですが。家族が、その苛烈さが珠に傷と言いつつも受け入れているのは良かったですね。
全方位に喧嘩を売るような狂犬ってわけでも……そんなにはなくて。彼には彼の理想とする武士の姿、領地を治める家の者としての覚悟って言うのはあるんですよね。
自身が守る対象である、自家の百姓を殴った武士を諫めに行ったりしますし。諫めに行った(首を獲りに行った)なあたり、過激なのは間違いありませんが。
そんな彼は修行の旅にでることとなり……十年。武者修行をやり遂げたという達成感はないが、全力で戦うことも出来ない退屈さも感じていた。
そんな中で、不意に彼は魔法があり、異種族が存在する異世界に迷い込むことになるわけです。
異変を感じつつも考えて答えが出るものではない、と見切りをつけて森の中で過ごしてるのが強い。フラフラと森の中を歩いていたら、巨人に襲われピンチになってる現地人と遭遇し、救助することとなって。
冒険者だという彼等にこの世界の常識を教わる一方、黒須が彼等を鍛えるという形で良い縁が出来たのはありがたい。
黒須が冒険者たちのパーティーに加入して、メンバーやパーティーリーダーを尊重する態度を見せてるのも偉い。……ただまぁ、身内を侮辱されたら噴火するので扱いの難しい人物であるのも間違いはないんですけどね……。
黒須が迷い込んだ魔の森に隣接する、ファラス王国最西端にあるアンギラ辺境伯領。
あまり冒険者を重視してこなかった王国貴族が多い中で、当代当主は魔の森に隣接しているという点を活用し、冒険者を優遇するように動いていた。
それは結構うまくいっていたようですが……国の端にあるってことはつまり、他国と接してるんですよね……。
隣国オルクス帝国との関係は良くなく、整備された街道を荒らすと言った嫌がらせじみた工作はあったとか。この度、本格的に攻め入り村を一つ滅ぼすなんて真似をしてきて。
当代の辺境伯は領地改革に励んでいる有能な存在みたいですが、次代候補である息子たちには不安が残るんだよなぁ……。