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「でも、ひとつ分かりました。なんにせよ人は死ぬんです。だったら、僕は自分が綺麗だと思うものにこだわりたい。自分がやりたいだけのわがままをしてから、笑って前のめりに倒れたい」

 

呪い緒を招く特殊文化財。

それを専門と知る神祇鑑定人九鬼と、就職に失敗し彼に拾われた夏目。

夏目は拾われた恩から九鬼を慕っている部分があるようですけど……

「怪しいものを持ち込まれてはたまらないから脱げ」と言われて実際に脱いで見せる人を信じちゃあかんのでは……

いや「僕は脱ぎませんからね」とちゃんと自己主張は出来てるので、まだ大丈夫かな……?

 

初っ端から眼帯のみ着用した全裸の男という驚愕の要素がぶち込まれて、衝撃を受けましたが……内容は面白くて、流石としか言えない。

片方はベテランで、片方は拾われたばかりの訳ありの新人。

現代において、魔術だとか呪いの品だとかの総称――特殊文化財を扱う部署に所属している二人がメインとなって話が進んでいきます。

古くは権威を持っているところだったようですが、どんどん影響力は落ちている様子。部長がノルマ果たさないと査定が厳しい、とか零してて世知辛い。

 

魔術という、一般的ではない手法に手を出した人、特殊文化財に魅入られた異端の側に寄っている人々を上手く描いている、と言いますか。

一話の「イェイツの日本刀」、三話の「月の小面」で描かれた呪いに囚われた人々の、情念は凄まじく、それを端的に描き切っているので引き込まれます。

それぞれの事情についてもまだまだ深く追求できそうですし、刊行続いてほしいなぁ。