気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

スオウ

春夏秋冬代行者 秋の舞 下

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「頑張って、撫子。貴女なら出来る。俺はすぐ傍で見守りましょう」

 

橋国・佳洲の秋の護衛官・ジュード。

彼はある目的をもって撫子を拉致することを決めて。現人神を手中に収めるために、敢えてその神威を使わせて、意識を失わせるって言うのは荒っぽいながら効果的だよなぁ。

竜胆と侍女の真葛が致命傷を負わされたことで、必死にそれを救命しようとして……実際、成し遂げたのだから彼女の腕も磨かれてて良いですねぇ。

……それだけ過酷な状況に置かれてきたということで、なんとも喜びにくいですけど。

 

独自行動をとっていた雷鳥が追ってくれてたのは、まぁありがたかったか。

危険な状態だった2人は辛くも命を拾って。真葛さんは起き上がれないほどでしたが、護衛官の竜胆はそれでも助けに行ったんだから、流石というかなんというか。

同じようなシチュエーションだったのもありますけど、シリーズの途中で最初の頃のエピソード回顧するの良いですよねぇ。春の護衛官さくらと初めて会った時に発破かけられたのを思い出して、自分の秋を取り戻すために動いたのはお見事でした。

 

さて佳洲の秋の護衛官ジュードが果たして、何を考えていたのか。

秋陣営に傷を負わせて現人神を拉致した上で、撫子自信を害する気持ちはなく。彼は、ただ佳洲の闇を暴きたかった。そのための証人として大和を巻き込んだのだ、と。

自らの身の危険を顧みず踏み込んでいくあたり、四季の関係者というか。護衛官らしさはありましたが。現在の彼の立ち位置は秋の護衛官だけど、彼の歩き始めた場所はまた違っていて……そこがリアムの行動につながるんだから、やっぱり主従のすれ違いは悲劇招きがちね……。

 

佳洲秋主従の騒動がありましたが、闇を暴きだすという大目標は達成できてましたから、そこはまぁ良かった。

ただ撫子が2回攫われる羽目になって、周囲の人々に傷が増えたのはなぁ……。

大和に残っていた春主従、夏主従の片翼もまた独自に動いてより春夏秋冬の絆が深まった部分もありますが。

 

良かったことでいえば撫子の夢に関する竜胆の父親が語っていた下りが真実であるならば、秋陣営は少なくともある程度の未来まで無事ってことですしね……。まぁ命があるとしても、今回みたいに拉致されたりとかのトラブルには遭遇してそうですけどね。夢の中の竜胆が、今はいつか確認してきてたり「また来たんですね」とか言ってる当たり、実に怪しい。

……まぁあと上巻で竜胆父が心配していた、長生きする秋の神様は護衛官を手放さないって話も、懸念材料にはなりうるのかもしれませんが。主従の絆の強さを見ていると、それもまた良いんじゃないかと思えるんですよね……。

 

メロンブックスで購入したんですが、「人生行路」が好きでしたね。佳洲の幼い冬主従に大和の夏の双子神が、大和の冬について語って「冬のあるべき姿を見た」と思っているシーン、短編のメインとなる部分ではないんですけど好きな描写でした。



春夏秋冬代行者 秋の舞 上

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「俺も貴女が平穏に暮らせないことが辛くて許せません」

 

大和では春の代行者が季節顕現の旅を続けている時期。

秋の代行者・撫子は、『春の舞』・『夏の舞』の騒動を経て刷新された侍女と護衛を伴って、花見をすることになって。夏の陣営から護衛犬が派遣されていたりして、楽しそうな日々を送れているのは良かったですね。

……ただし、そんな中で護衛官の竜胆は忙しそうにしていた。それは外交部から持ち込まれたとある厄介ごとが原因で。

 

海外にある「橋国」の代行者から交流したいという要請があり、それが秋の陣営に持ち込まれていた。

雛菊が8年行方不明になっていた時期の様に、トラブルが起きた時に応援を頼める「互助制度」というのがかつてはあったようですが。異国に赴いた代行者が危害を加えられる事例があったために、大和ではその制度を放棄していた。

そもそも海外は大和よりも賊の活動が活発であることなどから、互助制度復活を狙う動きがあってそれに利用されかねないから、と竜胆たちはそれを受け入れないつもりだった。

 

しかし橋国も引かず……。春夏冬の陣営にも声掛けをしてきたし、最悪の場合は向こうがこちらにやってくるという提案までされて。

危険な地域に赴いて守るために尽力するか。過激な賊を招き入れる可能性を考慮してでも、迎え入れるべきなのか。最初に打診された秋が断ったことで、他の季節に迷惑をかけてしまった可能性。

そういういろんな思惑を考えた結果、再打診された秋陣営はそれを受けることを決めたわけですが。

 

いざ動く時に、夏の双子神の片翼である瑠璃と雷鳥、冬主従も出てきてくれたのはありがたかったですね。

季節の祖として、狼星は最終的に冬がその交流を受けるつもりだったみたいですけど。ただ、初手で提案を受けても軽んじられるから突っぱねたとか。そういった交渉のやりとりと、それぞれの季節を思いやった結果として、秋が受けてしまったのは悲しいすれ違いでしたね……。

 

春の誘拐事件を経て竜胆が彼女への愛を自覚するようになって、より大事にするようになっていたわけですが。

これまでの両親との距離感とかで示唆されていたものの、撫子が幼少期に置かれていた状況から、「良い子」であろうとし過ぎる彼女の在り方とで、秋主従の中でも微妙にすれ違いが起きていたのは、心配材料ではありましたね……。なんせ『秋の舞』の主役なわけですし。

橋国側のトンデモ要求をはねのけたり、今の竜胆は必死に主を守ろうとしていますが、最初期はそこまで必死ではなかった。そのことを知っている父との会話を撫子に聞かれたのも痛かったというべきか。

 

橋国での出来事がメインではあるけれど大和残留組である春主従とかの視点もしっかり描いていてくれたのは嬉しかったですねー。

瑠璃と狼星が初対面の時のいざこざを引きずってここまで来てましたが。季節の祖としての冬には、必要な態度というものがあるというのを、瑠璃が一緒に外交の場に出ることで感じて、少し態度が軟化したのも良かったですが。

……そうやって大和側が協力していてもなお、異国の地というのはなかなか動きにくいですよねぇ……。最後が不穏すぎる。

春夏秋冬代行者 百歌百葉1

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「車の中からで良いなら 桜を見に行くか?」

 

電撃文庫より刊行されているシリーズのコミカライズ。

本編のコミカライズはLaLaで連載している『春夏秋冬代行者 春の舞』で行っていて、こちらで描かれているのは断片集みたいな感じですね。

『春の舞』刊行後にカクヨムで発表された、春の舞本編後を描いた短編『夜半の春』や、冬主従をメインとした『護衛官寒月凍蝶による代行者日記』、『雪後の天』といったエピソードを収録。後ろ2編は『春の舞』の特典SSだったんじゃないですかね。こうやってコミカライズで見られるのは嬉しい限り。

 

雛菊が「さくら ねている の?」と言っているシーンとか華やかな絵柄で描かれていってたので良かったです。

春の事件を経て、各陣営の交流が盛んになっているのが好きなんですよね。冬はよく賊の襲撃を受けるから、警戒して意外とファーストフードも頼む。

しかし四季関係者からすると冬ははじまりなわけで、格式高い食事取っているのかと思っていた、という齟齬があったりする、と。

それとは別に、春の里での立場が弱い雛菊を腹違いの兄が気にしていて、休養場所に関して骨を折ってくれたりとか今後に関係しそうな情報もあるわけですけど。

雛菊が終始可愛くて良かったですねー。一緒のご飯を楽しみにしてパタパタ足動かしてるこま可愛くないですか? 可愛い。

 

冬主従のSSは読めてなかったので、45話のエピソードは良かったですねぇ。

凍蝶の日記だという4話とか、彼の心境がより分かる話なので本当に好き。負傷していた時期の筆致が乱れているのも、普段は冷静な彼の動揺が伝わってきますし。

そして春帰還について本当に知らされていなかった冬主従がニュースでしって、思わずスマホ落としてるのとか、実に人間味に溢れていた。

 

巻末に書下ろしSSが「恋に師匠なし」。

さくらが四季会議に参加する前、下見が出来るかどうかを凍蝶に相談して。そこで四季庁祭事部の人を案内につけてもらってけれど……その人物がさくらに粉をかけようとしてきて。

対人に不慣れなさくらが悩むことになってましたけど。別件で連絡した夏のあやめや、秋の竜胆の意見とかも聞ける環境が出来てたのは良かったですねぇ。

春夏秋冬代行者 春の舞3

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「今はどうかほめてください 貴方の刀としての私を」

 

812話までと、描き下ろし「春との別れの前」を収録。

夏離宮を賊が襲撃してきて……代行者とその護衛たちの立場の厳しさを、改めて感じるような展開でしたね。

過去の襲撃によって別れを経験していた春主従が、衝撃を受けつつも護衛のさくらが覚悟を決めて切り捨てているのは格好良くもありましたね。

最後に死を恐れるような発言を零していたのを見て、「死にたくないなら来るな」と口にするあたり年頃の少女としての顔も見えましたが。

 

夏の代行者の「生命使役」の能力の行使している風景も絵で見ると雰囲気あって良いですね。

襲撃撃退後、返り血に濡れたさくらを案じてそれを拭いにいく雛菊が可愛くてよかった。……主に心配されて嬉しいけど、彼女の来ているものが高額だから……! って心配しちゃうさくらの庶民らしい心微笑ましいですよね。

雛菊の手が震えていたり、今回描かれた「帰還した後の春主従」のエピソードを見ると、2人の絆の重さを改めて感じることになるわけですが。

 

雛菊の経験談を伝えられた夏主従が、喧嘩してたけど和解できたの良かったですね。

そしてその存在について知らない若い秋主従が好き勝手言っていましたが……賊の襲撃についても集大成というか、より派手な行動を起こされていたのが厄介極まりないというか。

あの距離でミサイル視認していて、よくも竜胆生きていたな……って思っちゃった。

 

そしてアニメイト限定の20P小冊子「春泥」も良かった。

春主従が夏離宮を出た後の夏主従の話から始まり。瑠璃がせっかくだからちょっと外に出たいと言ったけど、襲撃後だから里に変えるべきとあやめに言われたり。その報告を婚約者に回したりする様子だったりは微笑ましい。

春主従が冬の護衛との距離を近づけたり、その報告を聞く冬主従の様子だったりも描かれていたのが良かったですねー。

春夏秋冬代行者 春の舞2

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「…夏の代行者様は 本当に貴方が支えだから」

 

凍蝶が国家治安機構が捕らえた賊の確認に来る、というコミカライズ独自のシーンを入れて、春と冬の間にある溝について見せつけてくるのは良いですねぇ。

直前ホテルで、風呂上がりの雛菊を世話してるさくらの構図とかも微笑ましくて良かったですし。……そこでも冬の話題が出てて、どうしてもドロッとした感情を覚えずにはいられないさくらが実に人間らしい。

 

冬主従もまた傷ついているのを知っているけれど、それでも恨みを捨てきれないところとか。

そんな中で渦中の雛菊は冬を恨んでいないと言いますが……。彼女こそ一番傷ついて、ボロボロなんですよねぇ。それでも春の代行者として帰還した強さもありますが、それはさくらという支えがあってこそですし。

代行者主従の関係は各季節で異なりますけど、どこか歪でも不思議とかみ合っているあり方が好きです。

 

春顕現の旅を続けている雛菊たちが、道中夏の離宮にお世話になることになって。

夏の権能で小動物が多くいる離宮になごんでいる様子が画になると破壊力高かったですね。カワイイ。
そこでも夏主従が喧嘩してたり、新たな賊の襲撃があったりとトラブルが尽きませんが……。
どうか乗り切って欲しいと見守りたくなる、良質な描かれ方をしてました。満足です。

春夏秋冬代行者 春の舞1

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「春は無事 此処に います」

 

季節の巡りを人から選ばれた「代行者」が担う世界。

代行者たちが儀式を行うことでその土地の季節が切り替わる、という重大な役割をもつ現人神なわけです。

その力を狙う過激派なども存在し……春の代行者雛菊は誘拐されていたことで、大和には10年も春が来ない期間があって。

 

帰還した雛菊がついに代行者としての活動を再開するわけですが。

専属護衛であるさくらが雛菊の安寧を何よりも大事にするため、10年ぶりの春到来を盛り上げたい四季庁との折り合いは良くないようです。

……雛菊たちの事情を考慮せずヘリで乗り付けるような真似して、むやみやたらと注目集めてる当たりはダメダメすぎるというか。

誘拐された過去があるんだから、初回の春顕現に関しては石橋をたたいて渡るくらい慎重でもいいくらいだと思いますけどね……。

代行者を管理する組織として四季庁側にも言い分があるのは、分からないでもないですけど、やり方が悪い。

 

過去のトラウマを抱えている冬の主従……特に従者側が過激な賊への警戒を怠っていないのを見るに、春の職員たちの在り方はうーんって感じではあります。

……まぁ冬の代行者も、我を通す部分はありますけどね。はい。

春夏秋冬代行者の世界は、現人神と民の間に温度差があったりして、綺麗だけど厳しい部分があります。何もかもうまくはいかない苦さがある、現実と同じではありますが。それでも雛菊たちが前に進もうとする姿勢が美しくて、それを鮮明に描いてくれる良いコミカライズだと思います。2巻以降も楽しみです。


春夏秋冬代行者 暁の射手

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「花矢様。先程のお言葉ですが……おれも貴方が居てくれたら、それで良いんですよ」

 

既刊『春の舞』から『夏の舞』は、時系列的に直後の話でしたが。

この『暁の射手』では秋が巡り冬顕現が始まっている時期になっていたので、ちょっと驚きました。

夏と秋の間のエピソードで、次が出るとして秋主従の話をやるのかと思っていたので。

秋の舞が出るとしたらここから半年ほど経った、次の秋顕現の時期になるんですかね。……『春の舞』から一年以上たつわけですし、また族の活動が活発になりそうなのは気がかりです。いやまぁ、代行者があり続ける限り不満を持つ過激派も尽きないでしょうけど。

 

閑話休題。

大和の北端エニシにおいて、朝を齎す儀式を行う「暁の射手」。

当代を務める少女・花矢は毎日登山して神事を行うのと同時に、射手であることを秘匿して学校に通ったりもしていた。

これは歴代の射手が待遇改善を訴えて勝ち取った権利のようで、朝を齎す儀式を行う時間が黎明であることもあって、なかなか大変な生活なようです。

 

当人は学生生活をそれなりに楽しんでいるようで、大変だろうと続けてるとか。これは一つ所に留まれる射手たちならでは、ですねぇ。

これまでメインで登場してきた四季の代行者たちは「移動する現人神」だし、賊も狙っているから、こうして通学するって言うのは難しいでしょうし。

そして当たり前ですが四季には四季の悩みがあるし、射手には射手の悩みが存在して。

 

花矢は守り人として選んだ青年を、ずっと自分に縛り付けることになることに苦悩し続けていたようです。

守り人の弓弦はすべてを納得したうえで彼女の傍にいるのに、悩んでいる花矢が彼に「守り人を辞める選択肢だってあるだろう」という主旨のことを言い続けるのがおもしろくはなかったりして。

親しいけれど、互いに踏み込み切れない。そんなもどかしい状態だったのが、少しずつ変化していって、良い方向に進もうとしたところで事件が起きるんですからたまりませんね……。

 

動揺した花矢は、黄昏の射手・輝矢にあるお願いをして。

そこから秋主従や冬主従も関わってくることになるわけですが……話を聞いてからの四季の代行者の動き出しが早いこと早いこと。

今代の代行者たちの縁がどんどんと繋がっていくのがいいですよねぇ。

『夏の舞』の時には、エニシにある神社を頼ってそこから伝えてもらう、みたいな遠回しな伝言を頼むしかなかったのに。あそこで接点が出来て、輝矢から竜胆へ直通で連絡出来たりするんですから。

 

代行者たちの協力プレーでウルトラCを通すの、読者目線だと盛り上がって嬉しいですけど、管理する側の四季庁に本山は悩ましいだろうなぁというのも、ある程度分かる。

とは言えこれまで出てきた上層部に暗躍してる人が多すぎて、印象良くないからなぁ。現場には代行者たちの味方してくれる人もいるので、丁度いいバランスで落ち着けば良いですけど、どうなりますかねぇ。

ひとまず今回の騒動に関しては決着を迎えましたし、暁主従が健やかであることをあの世界の神に祈るとします。

 

今回もメロンブックスで特典SS付のものを購入しました。

事件に関与してなかった春主従の様子を描く「春隣」、本編後の黄昏の射手陣営を描く「籠鳥恋雲」に同じく本編後の夏主従の話「芝蘭の友」の3本収録。

しっかり護衛官してる雷鳥が見られた「芝蘭の友」が結構好きですね。「冷遇に慣れないで」とハッキリ言ってくれる彼が夏の双子の傍にいてくれるのは、結構な救いだと思う。

春夏秋冬代行者 夏の舞 下

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「なら利害は一致してる。黄昏の射手は夏の代行者様方に捜査のご協力をお願いしたい」

 

黄昏の射手の輝矢さんが、自身の過去にトラブルがあって傷を負いながらも、職務を全うしてる姿とか、自分よりも幼い夏の代行者たちを気遣える姿勢とかを見ると、現人神側の人材はまともでホッとしますね……。

今回の事件で暗躍していた夏の里の黒幕も、家族に呪われてあぁするほかなかったと描かれていましたが……代行者を道具のように認識して、そのように扱う性根だからこそ今の袋小路に追い込まれてるんだから、自業自得だよなぁとしか言えない。

 

下巻第一章の、四季の代行者と射手とでは神の代行者という立場は同じでも、権能を与えた神も在り方も違うのもあって、それぞれの領域には詳しくない。だから情報共有しましょうって場面が好きですねー。

輝矢さんが真っ当な大人としての振る舞いをしてくれるし。新しい協力関係が生まれて解決に動きだした感じがしましたし。

 

老獪亀たちに対抗する勢力である、一匹兎角の面々も概ね味方ではありますけど。

彼らもまた過去の在り方に縛られてたなぁ、という印象。もっと早くから他の代行者に頼っていたら、もう少し別の解決もあったような気がします。

まぁ、独自で動いたことで春夏秋冬の同盟で結ばれた今代の代行者たちの絆は確かだと改めて示すことが出来たのは大きいと思いますし、これからに繋がる結果になったとは思いますが。

 

あと怪しい情報屋の介入とかもあって、通話やメールの妨害までされてたから、そこまで変わらなかった説もあるにはある。

……あの情報屋もなぁ……今しばらくは味方で居てくれると思うんですけど、何かの間違いで道を踏み外した時が怖いなぁ。内側の情報を知ってる人間が、敵に回るのは本当に恐ろしいですから。

 

あと代行者たちが動き始めて現地入りしたタイミングでは、もう状況が変化していたからこそ386387Pの見開きイラストが見られたわけですし。

契約結婚のつもりでいたあやめと連理の関係の、この騒動でしっかりと答えを出せたのも良かったので、ひとまず終わり良ければ総て良しと言う事にしたいですね。

まだ潜んでる敵対勢力だっているし、賊も今回は大人しくしてたけど力を蓄えてまた動き始めるでしょうから、トラブルは絶えないでしょうけど。それでも健やかに育ってほしいものですね。

シリーズが続くのなら次は秋の舞で、当代でもっとも幼い代行者撫子がメインになるわけですから、尚更に。

 
カクヨムの方で夏の舞、本編後の外伝「一夜酒」が掲載されていて、そちらもまた良かったので読んでない方は是非。



春夏秋冬代行者 夏の舞 上

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「こんかい、は、雛菊たち、が、夏の、ふたり……たすける、番、と、雛菊、思い、ます」

 

春の事件において、前例のない春夏秋冬の同盟を結び良好な関係を築いた代行者たち。

その結果として、四季庁の内部に入り込んでいた不届き者もいくらか捕縛することが出来たようですけれど。

それはつまり、これまで季節を回すための機構のように使い潰されてきた代行者たちが、今の権力者に噛みついたとも見ることが出来て。

 

良く思わない勢力が工作をして、「夏がなってしまった双子神は凶兆である」という噂を流し、彼女達は窮地に立たされます。

家同士の関係などもあり、婚約破棄までされてしまってかなり心が折れていた。

あの様子を見ると、『老獪亀』と名付けられた保守派の打ってきた一手はあながち間違いでもなかったんですよね。

 

ただし、彼らは「これまでの積み重ね」を重視しすぎて、春の一件が代行者や護衛官に与えた影響を軽く見てしまったんですよね。

別の思惑も相まって瑠璃とあやめと連絡が取れなくなって、春も秋も冬も心配していますし。危険が迫っているかもしれないと助ける為に行動を開始しますし。

戦う覚悟の決まった代行者と、彼らを守る戦力が整っている集団を敵に回したいか問われて「ちょっと戦車とか欲しい」って竜胆が返すシーンが笑えて好きです。

 

葉桜姉妹の共依存な関係、好きでしたけど……家族が神様に選ばれてしまって、何の影響もなかったはずもなく。

色々抱え込んでいたあやめの内心がとても痛い。思わず一度逃げ出そうとしてしまったのも頷けるけど……その結果として、婚約者と出会って良い恋を出来たんだから運命的とか言いたくなりますね。

 

瑠璃も明るい子だけど馬鹿ではなく、彼女は彼女で抱え込みまくっていたよなぁ……と言うのが明らかになって。それでも、行動を起こせる強さがあるのが「夏」って感じだよなぁ、とか。

四季の現人神だけではなく、この世界では朝と夜を齎しているのも射手と呼ばれる神様の代行者で。黄昏の射手が登場して、そちら側の情報とかも出てきたのは設定開示回好きとしては嬉しかった。

 

代行者と護衛官の周囲はとても尊いですけど、その周囲には悪意が蔓延っていて、中々生きにくい世界ですけど、せっかくの縁で四季の同盟を組めたのですから、倦まず進んでほしいですねぇ、ホント。

今回でいうと、味方側ですけど残雪視点がなぁ。あそこで呪われてしまっただろう感が凄くて。血縁ではあれど、問題には関与してなかった人だけど逃げられなくなったんでしょうね……。アレ、何かのきっかけで暴走しかねないので怖くもありますけど。

春夏秋冬代行者 春の舞 下

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「信じてくれ、絶対だ。お前を助けに行く」

『……わかった、待っている……早く来い……凍蝶』

 

秋の代行者が攫われてしまい……かつて攫われた春主従は、やられっぱなしでは終わらないぞ、と捜索チームに協力する事に。

その際に、夏の代行者たちに話を通したり、独自に動こうとした冬主従とも連携を約束したりと、かつて救われなかった少女がそれでも救おうとする行動は、とても尊く見えました。

 

まぁ、同情したからとか感情ベースの話ではなく(そういう想いが無いわけではないでしょうけど)、さくらなりに利益を求めての行動であった、というのも良いさじ加減だったと思います。あれだけ大事にしている主君を攫い、八年の断絶を味あわせてくれた相手に反撃したいという気持ちは、とてもよくわかる。

 

冒頭、春主従の過去についても明かされていましたが……それがまた重いというか。雛菊が攫われた後、三か月で探索が打ち切られたのも分かる冷遇っぷりというか。

代行者に選ばれたため最低限の扱いはするけれど、あれは尊重してるとは言えないでしょう。そりゃあ、失態を侵したとしてさくらを追放するのも分かるわぁ。中々の腐りっぷり。

親の因果が子に報い、なんて言葉もありますが……それをここまで突き付けられると、春の里一回叩いた方がいいんじゃないか、みたいな気になる。

 

協力体制を築いて、攫われた秋の代行者・撫子を探しに行くチーム。四季庁舎にて待機しているチームに春夏秋は別れて行動する事になって。冬は参加が遅れる代わりに、根回しをしてくれて……と言う連携が取れていたのは良いですね。

ただ、四季の主従が協力できても、四季庁舎とか公的機関の側に裏切り者が紛れ込んでいたらどうしようもないですよ。

 

襲撃を行った組織はここ数年羽振りが良く、金で職員を転がしたらしいですけど。その資金源となったのが、攫われていた雛菊なわけで。8年も攫われたままにしてなければ、そんな癒着も進まなかったでしょうから、これは春の里の失着でしょう。

……先代・春の代行者の時に既に里と四季庁の癒着は進んでいたようですし、すぐに改善できる問題でもないですけどねぇ。

 

賊の連中には、各季節を憎む根絶派やその能力をもっと活用しようとする改革派がいるそうですが……今回、代行者たちの能力行使を見ると、手を出してはならないと思ってしまいますけどねぇ。

御前とか、自分がやったことをやり返されるとは考えていない、自己中心的な考えを持っていたようですし、視野が狭い……。楽しい残業をしている春と冬の護衛、生き生きしてたんだろうなぁ……。無理もない。

 

あとは、他愛ないやりとりではありますけど、278Pの「すごく気になってきました。結婚式呼んでください」が妙にツボでしばらく笑ってました。

メロンブックスの短編小説つきセットを購入していたんですが、上下巻後のエピソードである外伝「冬桜」、『冬』短編「探梅」『夏』短編「いずれ菖蒲か杜若」が収録されていて、どれも面白かったです。本編に入っててもおかしくないというか。

凍蝶がさくらに贈り物をしようとする話。かつてのさくらと狼星についての話。事件後の竜胆とあやめの会話。あやめの婚約者の情報が出て来てましたが、伝聞だけでも中々好印象な人でしたねぇ。

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 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
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