気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

タムラヨウ

軍人少女、皇立魔法学園に潜入することになりました。5 ~乙女ゲーム? そんなの聞いてませんけど?~

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「自分が戦わなければいけないことを辛いと思っていたのは、もう随分前のことです」

彼女は低い声でつぶやく。

本当に辛いのは、共に時間を過ごした仲間を失うこと。仲間はもちろん、一緒に時間を過ごしたあの子たちが、こんな不毛な争いに関わることが無いような時代を早く迎えたい。ただそれだけだ。

 

シリーズ完結巻。

ついに戦争が始まってしまい……ラゼは軍人として作戦に注力するために、「特待生ラゼ・グラノーリ」を殺すことにして。

学院から荷物を引き払い、退学の手続きも済ませて。それを知った同室のフォリアは、休みに入る前にラゼと意見の違いが生じていたこともあって、思わず涙するほどでしたが。

縁を培った学生たちは、こんな別れは認められず……どうにか情報を集めようとして。ただ、雛鳥たちの奮闘は美しいけれど国が本気になれば欺瞞情報しか掴む事は出来ず。

「ラゼ死亡」という事実が静かに学園では浸透していくことになります。

 

そうして、大切にしていた日常から離れたラゼは……完璧な軍人でしたねぇ。

移動魔法を駆使して敵地に浸透、重要拠点を破壊するという工作を単独で完璧に実行してのける。

敵がそれを見越して、より重大な爆発が起きるように罠を仕掛けてきても、それを見抜いて「重要地点の破壊、という目標は達成できるからヨシ」と踏み抜いて生還。さらには、その爆発地点に毒性のあるものが散布されていないかの確認まで済ませてくるのは有能すぎ。

 

彼女が「狼牙」と呼ばれることが良くわかる戦いっぷりでしたねぇ。

敵から首切りの亡霊と称されるのも納得できるし……ボンボン部隊と揶揄されていたゼルヒデが彼女の戦いぶりと、その疲労を感じて態度を改めるほどだったのも、良い描写だと思いました。

終盤の「……もっと違い人選はできなかったのか。狼牙殿」とかのやり取りはかなりコミカルで良かったですし、ゼルヒデがこんな味のあるキャラになろうとは。めっちゃ笑ってしまった。

 

帝国がバルーダの魔物を戦場に放つとか言う、世界初の外道戦法をとるくらい暴走してきて。それを感じ取った帝国内部にクーデターの兆しがあり、それを促すための潜入工作まで担当することになって。

潜入時の描写が加筆されていたのは良かったですね。書き下ろし番外編「とある少年の希望」で、ラゼとの縁で希望を見出したけど、秘密を知りすぎたために記憶を消されてしまったのは少し悲しかったですけど。戦争、だものなぁ……。

 

ラゼの奮闘もあって戦争終結の目途が立ち、皇上ガイアスや上層部の思惑の結果、ラゼが狼牙であるという情報を明らかにすることとなって。

それを知った生徒たちが、その上で自分たちにできる事をしようとしたり……変わらず彼女と友人で会ってくれたのは良かったと思います。ラゼ、自分のことになると鈍いからね。押しかけてくる強さがあるのは良い事ですよ。

軍人少女、皇立魔法学園に潜入することになりました。4 ~乙女ゲーム? そんなの聞いてませんけど?~

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「彼女の覚悟は、ずっと前に決まっていたのだと思います」

 

長期休みの間、フォリアはガーデルセン教会で穏やかな時間を過ごしていたようですが……そこに害獣が出現して彼女が慕っているゼールが毒を受けることに。

通常の魔法では効果が薄かったけれど、フォリアは諦めなかった。

カーナからシナリオについて聞いていたラゼは、乙女ゲーの範疇を超えて覚醒イベントとかいうものが発生したことに驚いていました。

……驚きつつも、ガーデルセン教会での異変について通達されたとき、軍人としての職務中だったけど即座に軍服を脱ぎ捨ててフォリアのマーキングに跳んでるわけですから、対応が迅速すぎてこっちがびっくりしますね……。

 

そうやって想定を超えてイベントが発生するのを目撃したラゼは、同様に「断罪イベント」も避け得ぬ形で襲ってくるかもしれないと懸念して。

自分が知人と共謀して「婚約破棄イベント」を起こそうとかしていたのは、ちょっと微笑ましくて笑いましたね。……軍人ラゼは多くの人に慕われており、大騒動に発展していたので、笑いごとではないんですが。

 

ラゼは変わらず長期休暇には軍人として活動しつつ、時期によっては学生として過ごす二重生活を送っていたわけですが。

帝国の転生者「予言の巫女」がバトルグランプリで王子の優勝を予言したため、ラゼに勝って欲しいという依頼が出されて。軍人としての苛烈さは抑えつつ、護衛対象である生徒たちへ配慮しつつ、それでも圧勝する彼女の強さにしびれましたね。

実力を示したことでアディスとかが、ラゼの秘密を伺う場面も出て来てましたが。軍人としての誇りを持つ彼女に、事情を知らぬとはいえ「危ない仕事は辞めろ」とか言えちゃうのが嫌いだなぁ、アディス。

 

作者の「彼氏よりまず先に女友達と仲良く過ごしたい」という思想が現れて、カーナやフォリアとばかり仲を府構えて、アディスが距離を詰められずにいるようですが。

クロードから指摘されて失言に気付くことはできてましたけど、個人的にはかなりクリティカルにワーストワード選んだ感じがして、そのままずっと距離詰められないでいてほしいと思ってしまった。

 

……まぁそれで言ったら、帝国の介入によって「魔物化してしまった人間」を目の前にしたとき、軍人として処理しようとしたラゼに「なんで諦めるの」と言ったフォリアも、ちょっとなぁ……とは思いましたが。

軍人として覚悟決まってますからねぇ、ラゼ。だからこそ大人たちは、彼女に護衛任務なんて建前を用意してまで学園生活を送らせてあげよう、なんて考えていたわけですが。

様々な事件が起きてしまい……ついには、軍人としての彼女に立ち戻らせることになってしまったわけです。重いなぁ。学生として振舞う特別任務が終わり、戦が始まろうという引きが、ラゼが学園を楽しんでいたことを知っているからこそ、刺さる。

軍人少女、皇立魔法学園に潜入することになりました。 3 ~乙女ゲーム? そんなの聞いてませんけど?~

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「――この任務を渡しに任せて下さって、ありがとうございました。残り二年、学生のみんなが無事に卒業できるように、精進します」

(略)

「そうか。その言葉が君から聞けて、何よりだ」

 

口絵にもなってる、眠れなくて夜外に出たカーナに「一人で出歩くのは感心しないよ」って王子が声かけに行くのは、いい感じの関係になってるなぁと思いましたが。

その裏で見守ってるラゼが(ふたりで出歩くのも感心しませーん!)ってバッテンマーク浮かべてるのも笑えてよかった。

 

エリート軍人のラゼですが学園長は、「小さい大人」として働き続けている彼女を心配して、一時の庇護のために迎え入れた面もあるそうで。

……そこで乙女ゲー世界だとしって、イベント回避に奔走する事になるので何事も上手くいきませんね。

とは言え、ラゼはラゼでそこでカーナやフォリアという同性の友人を作ったりして、青春を満喫してるので、概ね良い方向に進んでると思いたいところ。

 

敵国にも転生者がいてその知識を活用して絡め手で攻めて来たり、長期出張中なラゼが帰還した後仕事に忙殺されることになったり。

トラブル解決の際に失態を演じて、出会った知人に「学園生活のせいで、平和ボケしたか」って言われてしまう一幕もありましたが。

うっかり攻略対象の悩みを解決して、ラゼがヒロインなのでは? みたいな状況を突くちゃったりもしてますけど、敵が禁術使って来たりするから彼女の対処能力は必要なんですよねぇ。大変だろうけど、これからも頑張ってほしい。

軍人少女、皇立魔法学園に潜入することになりました。 2 ~乙女ゲーム? そんなの聞いてませんけど?~

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「……怖くないわけ? 君が死ぬ可能性だって、完全に否定できないんだろう?」

「誰だって今日死ぬかもしれないんですから、そう深く考えたって仕方ないです」

 

WEB既読。結構加筆が増えて来て、満足度の高い1冊になってましたね。

最初、カーナから貰った「予言書」を元にそれっぽくイベントを実現していたわけですが。

カーナの持っている知識は「悪役令嬢の破滅を回避する」という目的のためにまとめたもので、ゲーム時代の背景設定や発生するはずのイベントについて整理されているそうです。

しかし、ゲームヒロインのフォリアからして攻略対象じゃない人に夢中だし、ゲームだったらフラグで管理されているけど、現実になった世界では予期せぬ展開に成る事も多々あって。

 

上手くフォローしてるなぁ、と思った相合傘イベントがラゼの間隔だけでヒロインとの接触を回避させた、とかシレッと書かれていたのには驚きました。

その後、カーナに濡れ衣を着せようと毒が用いられた時もしっかり対処してましたしね。

ラゼ・グラノーリとして友人との時間を満喫しつつも、ラゼ・オーファンと言う軍人としてもしっかり活動してるのが、凄いとしか言えないんですよね。

これは理事長が小さな大人として「ここまで頼りになる人材もそういない」と思ってしまうのも無理はない。でも、教育者でもある理事長は、だからこそ彼女を学園に招いた側面もあるようで、中々に悩ましそうでしたけどねぇ。

 

加筆部分でアディスとの接点が増えて来て、壁ドン挿絵とかまでもらっていたのには少し驚きました。

やっぱりラゼの相手としてはアディス推しなんですかね。実戦演習というイベントでも絡みがありましたし。

その後秘密裏に行われた騎士のエースとの決闘で、狼牙なんて呼ばれている彼女の実力の一端が見えたのとか結構好きですね。

派手さはないけど巧みで、相手に負けを認めさせたのはお見事。

 

巻末SSは幼少期のアディスのエピソード「とある少年の立志」。電子の特典SSは「フォリアからの手紙」を受け取っているモルディール卿視点の話でした。ラゼのこと、モルディール卿も気にしてるみたいですね。……それでWEBだと直接会ったときに見定めて、アレなのかー。
この世界愛が重い人多いですよね……どこぞの殿下しかり。

軍人少女、皇立魔法学園に潜入する事になりました。~乙女ゲーム? そんなの聞いてませんけど?~

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「私の勝手な考えですが。シナリオに気を取られて暗い顔をするより、思いっきり楽しんで笑っている方が、どんな結果であれ後悔は少ないと思います」

 

なろうからの書籍化作品でWEB既読。

タイトルから分かる通り「乙女ゲー世界に転生する」系の作品です。

ゲーム的には乙女ゲームにバトルファンタジー要素を足して、悪役令嬢役の子に虐められるヒロインと、ヒロインを想う攻略対象がいて。

最後には悪役令嬢は、悪の魔法によって怪物と化す破滅エンドに到達するとか。

 

しかし、本作の主人公は転生者ながら、そうしたゲームの事はさっぱり把握していないラゼという少女です。

ある事件によって家族を失い軍人になった彼女は、前世の知識を持っていることもあり年齢不相応に優秀で。情勢が良くなかったこともアリ、実績を上げてかなり昇給してるようです。

「狼牙」なんて称号までもらっているようですが、名前と容貌は知る人ぞ知る秘匿された状態。

 

そんな彼女に、学園に通い「金の卵」と呼ばれている王子と同世代の子供達を見守るように、という任務が下されるところから物語が始まります。

大人たちからするとこれは、これまで戦いで酷使したラゼに与えた休暇というか。三年間とはいえ、学生とした若いなりに楽しんでほしいという思いやりの想いが含まれてはいるようす。

 

最も、ラゼ自身がかなり軍人としての思考に染まっているというか、既に個を確立してるからなぁ。

特待生になれるくらいには優秀で、ちょっと浮いて見える時もありますが。同姓の友人を作って、癒しを得たりしてるので、少しずつ安らいでくれればいいなぁとは思います。

 

ちなみに、ラゼが乙女ゲームの事を知らないので、その部分をサポートする事になるのが本来悪役令嬢になるはずだったカーナ嬢。

彼女も転生者で、破滅を回避したいと思い悩み、ラゼという相談相手を得た事で安心してくれればいいんですが。

 

ラゼとカーナの介入によって変動しつつも、「乙女ゲームのイベント」が発生する強制力のようなものもあるようなのでどうなる事やら。

カーナは婚約者の王子といい感じですし。本来のヒロイン相当なフォリアにも、攻略対象以外に想う相手が居たりと、既にゲームから大分離れているようでもありますが。

この「イベント強制力」がどう作用するか分からないのが困りものですなー。

 

書き下ろし番外編で「とある少女の過去」として、ラゼが軍人を志すきっかけが描かれたりしてます。これだけでも書籍化してよかったですね。

……彼女の家族が失われる前後のエピソードなので、そこを想うと心が痛みますが。立ち止まらないのが、ラゼらしいよなとは思いました。

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ちゃか

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