「我々もこの調子で どんどん人間たちを辱めていこうではないか」
X(Twitter)発のドタバタコメディ、加藤拓弐さんが原作で、ガしガしさんが作画を担当してタッグで送る作品。
剣と魔法のファンタジー世界、人と魔王軍とは戦いを続けていた……わけですが。
例えば1話から登場するのは憐憫卿と呼ばれる、魔王軍の開発局局長。彼は「衣服だけを溶かすスライム」とか「いい感じに拘束する触手トラップ」とか、人に恥辱を与える罠の開発に苦心しているわけなんですが。
一応その裏側には「魔族は人間が発する敵意などの悪感情から魔力を得ている」、「だから多くの人間に恐れられている魔王は強い」という説を踏まえた上で「恥辱から生じる負の感情でしか得られない魔力が存在するのでは?」という自説を立証するため、というしっかり理屈を建てた上でエロ罠の開発に勤しんでるのが笑えます。
いやでも実際、憐憫卿って魔族側で見ると良い上司なんですよね。助手くんの秘密に気付きながらもしばらく触れずにいたし、彼女がミスった時には上司として頭下げてくれるし。
開発局の下には洗脳支部とかもあって、各支部の監督役も兼ねているけれど、各々がフェチを追及することは推奨するし、意見出せるのは良い職場だというし、自分の「恥辱」という思考実験を押し付けようとはしないし。
部下に信用されまくって、大きなプロジェクトが動きそうなときに贈り物合戦が勃発したのも頷ける。
……まぁ、人類目線に立った時には、「衣服を溶かすスライム」の実験が上手くいかず普通に溶けて激痛にのたうちまわる冒険者が居たりするし。
そもそも作り上げた憐憫卿の恥辱罠・恥辱装備で辱めを受ける側なので、たまったものではないでしょうけど。コミカルに描かれているのもあるし、憐憫卿以外の魔族側のエピソードもあって、楽しかったです。
憐憫卿と助手のレツェ周りのエピソード多かったのと、この2人が結構好きなのでそこの話ばっかりしてるな……。
「すべての服を溶かすスライム」は難しいけど、「狙った素材を溶かすスライムなら作れる」=「有用な布素材を人類に流し、それが蔓延したところで『服を溶かすスライム』を送り込む」とか言う1話の流れ、結構好きです。やってること、いろんな意味でえげつないですからね。
魔王にすら「布素材流す」こと伏せているから、見方からは「最近妙に人類の防御力上がってるな……憐憫卿の罠は凄いから高評価」とかなってるし。
憐憫卿の研究テーマが「恥辱」に寄ってるから辱められるだけで撤退できましたけど、これが「布素材」とかじゃなくて、食糧とかもっと根幹に関わるものだったら人類とかもっと困窮してもおかしくないな……って恐ろしさがある。
「恥辱」を求めている憐憫卿とか、フェチを求め続けている連中だからこそ妙にコミカルになっていて、味わい深いんですけど。