「俺は取返しのつかないことをした。捨ててはいけないものを捨ててしまったんだ。もう一度手に入れようなんて、虫の良い話だった。そのあげくがこれだ」
第6回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作。
タイトルに童話とある通り、SFと童話を混ぜ合わせた作品が6つほど収録されています。
SFは余り読まないジャンルなんですが、知人から借りたので読了。
普段読んでないのもあって、新鮮で、笑えたのは良かった。闇鍋感ある。
精神をアップロードして、肉体から解放された人々が暮らす世界。
必要があればボディをレンタルして、そこに自分の意識をインストールする。
そんな世界で、電子化をしていなかった少女が継母や義姉にいじめられる「地球灰かぶり姫」。
分け合って隠れ住む竹取の翁が、半端ながら知性を得た竹と日々戦いながら、ある日出会った不思議な少女を育てていく「竹取戦記」。
NPCに囲まれた世界でただ一人の女王様として君臨していた少女の末路を描く、「スノーホワイト/ホワイトアウト」。
宇宙に進出し、しかし人類が去った後に残された知性もつエビやカニなどの要素を持つ機械たちが、人類の残した遺跡を探索する「〈サルベージャ〉VS甲殻機動隊」。
宇宙の果てに進出した、特殊な集団の残した遺物を回収して回っていたおじいさんとおばあさんが見つけた成果を描く「モンティ・ホールころりん」。
電子化に適応したアリと、それを選ばなかったキリギリスの交流と結末が記される「アリとキリギリス」。
と言った6つのエピソードが収録されています。
幸せな結末に辿り着いた、「地球灰かぶり姫」が一番好きかなぁ。初手な分読みやすかったですし。
「竹取戦記」で、求婚者モチーフの5人が、与えられた先進技術を解析しようとして失敗しまくる場面はユーモラスで笑えましたが。
モンティ・ホール問題に対して「最適を知っていて、選ばない」選択をしたおばあさんも結構好き。