「國久様と共にある未来を、私も歩んでいきたい……あの時の言葉を、信じてもいいですか……?」
「……当たり前だ。何度だって約束してやるよ」
魔法の存在する和風ファンタジーの世界で、主人公がハーレムを築くエロゲー『ドキ恋』の世界に転生してしまった主人公。
そのゲーム自体も友人から借りてプレイしただけだし、チョロインが多すぎたりご都合展開が多すぎることもあって、あまりストーリーを覚えてはいなかったみたいですが。
自分が主人公ではなく、序盤で蹴散らされる悪役に転生していたことは分かった。
名家の生まれながら母はダメ親父に入れ込んでいるし、親父は家にいつかない……どころか、愛人のところに入り浸って、息子の名前すら憶えていない有様だった。
原作では母の死後、主人公が幼かったために、婿入りした父が家に戻ってきて当主代行として立った後、愛人との間にできた子供に家を継がせようと乗っ取りを図って、そうした工作の中で擦り切れた國久君は悪役になってしまったそうですが。
転生者としての知識がある主人公は悪役となって滅亡するのを回避するために、家という柵を捨てて一市民になることで自由な生活を謳歌しようと考えていたわけです。
……しかし、母の死を報告するために皇帝へ謁見するべく領地を離れた際に、ゲーム主人公にも攻略できなかった美少女と出会ってしまって、一目惚れ。
彼女もまたゲーム時代の國久のように、悪役に落ちていく宿命を背負っていたけれど、それを超えていこう、と彼は婚約を申し入れるわけです。
忌み子として疎まれていた雪那に、國久はかなりストレートに好意を口にして。
そうやって怯えて固まっていた彼女の心が、少しずつ解れていくのが良かったですね。人との距離感を上手く取れない彼女が、國久には心揺らされまくっているの外野から見てるとわかりやすいんだろうなぁ……感がしますが。見ていて和む。
結構サクサク時系列が飛んで、主人公も原作主人公と対峙することになった時に備えて領地を発展させたり、自分のスペック向上に勤しんだりもしていて。
そして原作開始の時期までおいつき……ゲーム主人公と対峙したわけですが。
身分制度のある世界に、女子にだけ優しく男の意見を聞き入れる耳を持たないタイプで、平等を知る異世界転移者でもあったゲーム主人公と対峙して。
國久と雪那の関係は良好ですけど、それぞれは家族との関係が微妙で。そんな隔意のある相手からの話を鵜呑みにしたゲーム主人公に、國久は決闘を申し込まれることにもなったりして、よりゲームでのメインキャラとの溝が深まった感はありますが。
ゲーム主人公くん、大分痛くてなぁ……そりゃあ、國久君も元ゲー流し見になるわ……みたいな変な納得があった。
因縁が出来たし、どうしたって今後も鉢合わせる可能性はありますけど、どうなるやら。