「――――生涯、共に在ることを約束しよう。愛しいアレリラ」
(略)
「はい。イースティリア様。わたくしも貴方を幸せに出来るよう、生涯をかけて努力いたします」
ダエラール子爵家令嬢アレリラは、幼少期から表情を上手く作れない少女であった。
貴族の通う学院を首席で卒業した優秀な人物ではあったんですが……だからこそ、婚約者に婚約破棄されてしまうことになって。
弟の学費の関係もあるから仕事に打ち込むようになって、彼女は『お局令嬢』なんて呼ばれるようになったりして、結婚とは程遠い人間になってしまったんですが。
彼女は宰相の秘書に抜擢される位優秀で、その宰相であるイースティリアもアレリラと似たタイプであり、冷静かつ優秀で……だからこそ惹かれて、婚約を申し込まれることに。
アレリラは思考が早い分、先んじて自分の中で「納得できる答え」を作ってしまう部分があって。
婚約破棄をされたときも相手の言葉に存在しない裏を読んで、別の意図を受け取ってしまっていたし。イースティリアを慕っている人物の噂を知っていたので、自分との婚約関係はそれを隠すための側面があるのだろうと思ったりしてましたし。
実際は元婚約者ボンボリーノは彼自身と比べてアレリラが秀でているから「釣り合わない」と考えて、婚約破棄をしたがっていたそうですし。イースティリアも普通にアレリラ自身を好きで、妻に迎え入れたいと思っていたという誤解が発覚するんですが。
そういう自分の至らぬ部分を自覚した時、苦手分野も向上させていこうと思えるアレリラ嬢のこと好きですねぇ。
イースティリア相手にしているときは、鉄面皮がちな彼女が照れたりしているのも、実に微笑ましくて良いですし。2人とも優秀だから、会話が流れるように進んで行くのも快適で良い。
反面、ボンボリーノはちょっと苦手でしたねぇ。ちょっと考えの足りない行動を起こすことは有れど、人当たりの良さと、何だかんだ最終的には上手く話がまとまるところから、認めている人が多いようですけれども。
アレリラとの婚約破棄も自身と釣り合わないから、破談にしたいと両親に伝えたもののアレリラの優秀さを知る両親は破談にしたくなかった。だから、浮気して公の場で今夜期は気に踏み出した、と。
その後、娘を溺愛している父が暴走したこともあって、縁談がアレリラのところまで届かず……彼女は「お局令嬢」になってしまったわけですよ。最終的にイースティリアと出会えててお似合いですけども。
他にも、機密性の高い話を漏らしてしまったりとか。そっちも周囲がフォローに動いて、何だかんだ上手くまとまってましたし、フォローしてもらえるだけボンボリーノが慕われている証拠でもあるとは思うんですけど。
婚約破棄されたアレリラ本人の認識として、自分が勝手に裏読みした部分もあるし勝手な噂を広めた夜会の参加者だっている。「後先考えなかった婚約破棄宣言」だけがボンボリーノの責任であると言ってますが、一部とはいえ問題はあって、そのことに対して彼は「親と相手方からしこたま怒られた」くらいで、早い段階で幸せ満喫してるのなんだかなぁ……みたいな気分になった。「まぁ、ゴメンな!」じゃないんだよなぁ……。
でも彼が婚約破棄したから、イースティリアとアレリラが結婚まで行ったので、これが「最終的には上手くいくから許されている」空気か……。