気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

メディアワークス文庫

時槻風乃と黒い童話の夜2

ico_grade6_4 
「嘘は、善でも悪でもない。ただ、優しいものよ。ただ優しく、耳にした者と、口にした者を、共に等しく、腐らせるの」
一瞬理解できず、なおは風乃を見た。
「他人にとて優しい嘘は他人を腐らせるし、自分にとって優しい嘘は自分を腐らせる。それだけのものだわ」


今回は、「白雪姫」と「ラプンツェル」。
断章とか神の悪夢とか出てこないんですよ。これで。
いやぁ、人って怖いという月並みな感想しか出てきませんが。
風乃が、自分から積極的に絡んでいるわけではなくて、話を聞いて、彼女なりの見解を口にしているだけなのに。
少女たちがどんどん壊れていく様が、何とも言えない。

絆が何よりも大事だから。
大切にしている相手が、実は想像と違っていたら。
思わず手を離されてしまったら。
収録された2話とも、友人が家庭環境とかに、闇を抱えていて。
風乃に影響されて、歪み、果てには命を落としてしまうわけですが。
その最期の姿を、友人たち自身が目撃しているというのが、えげつない……というか救いがない。

白雪姫は、嘘のつけない少女と顔だけが自慢の少女。
お互いに親友だと思っていたけれど、或る日、顔だけが自慢の少女が顔にけがを負って。
家族が少女に安心させようと嘘をつくが、親友が嘘をつけないことを知っていて、少女は問う。
「奈緒。ちゃんと――わたし、可愛い?」


嘘を嫌う少女については、風乃が白雪姫の鏡にたとえて、興味深いことを言っていました。
「真実を見る目と、嘘をつけない口。二つが揃えば呪いだわ」

破滅に向かうことが分かっているのに、嘘がつけないから。真実を告げて、苦しむのが分かっているのに言わなくてはいけない気持ちは果たしていかようなものなのか、と。

そして「ラプンツェル」。
箱入り娘と育ったから男に免疫がない少女と、父親が下種だから男を嫌っている少女。
これは、巡り合わせが悪かったというか、傍から見ているといっそ面白いぐらいタイミングが悪くてボロボロと零れ落ちて言ったなぁ、という感じ。
本人たちからすれば、タイミングの悪さが面白いとか言っている暇もなくて。終いには失われてしまうんだからたまったものではないですよね……

相変わらず、家族に恵まれている人がいませんね。
まぁ、家族に恵まれているようなひとは、風乃の人生相談教室に迷い込んだりしないからな……


推定未来 白きサイネリアの福音

ico_grade6_3
「だけどね。私は傘が無駄になったことより雨が降らなくてよかったと心から思う」
直後、彼女が真剣な眼差しを浮かべる。それは切実と呼べるほどの。
「犠牲者を一人でも減らせればそれでいい。それがミゼンの存在する意義だから――」


最初はすごくわくわくしていました。
犯罪を予測して、未然に防ぐための組織。
捜査一課に属してはいるものの、そのお題目の怪しさから、内部からの評判は悪く、人数も少数。
設立したばかりで実績にも乏しく、スタートを切ったばかりの「捜査一科犯罪未然防止対策係」。
その設立に奔走した上司と、スカウトされて所属することとなった巡査部長の青年の物語。

犯罪を予測するといっても決して、怪しいオカルトな手段ではない。
現代に存在する膨大なデータを集約して計測することで、「犯罪の起きるかもしれない確立」を割出し、確証を得るための捜査を行う、っていうのは中々いいと思っていたんですけどねー。
設定部分と、最初の事件くらいまではまだ面白かった……んですよ。
後半一気に失速した感じが。
ちょっと1巻でまとめるには欲張りすぎたんじゃないかと。

もうちょっとミゼンっていう組織を中心に描いてからだったら、後半の展開も許容できた気がする。
あれ、2巻あたりのネタじゃないのか。
1巻でもっとストライカーを活用して事件を解決していって、ミゼンの名前を内部に広めていく。
その上で、上司との距離を縮めていったり、その秘めた謎に興味を抱いたりする。
そして最後、暗躍しているらしい老人が「ミゼンに新人が、ねぇ。面白そうじゃないか」とか言って幕……とかいう展開で問題なかったと思うんですが。
前半部分と後半部分の温度差がもうちょっとなんとかならなかったのかと、残念に感じる一作。
一作目の電撃文庫『月光』ほどの衝撃がない。
あれぐらいの作品が出てくることを期待したいところなんですが。


時槻風乃と黒い童話の夜

ico_grade6_3h
「うん、そういうと思った。君は優しいね。毒みたいに優しい」
平然と答える風乃。それを聞いて洸平は、溜息を吐いた。
「君は、人の醜い所を否定しない。受け入れる。手を差し伸べる。だから君に相談した人は破滅する。君に相談すると、君にそんなつもりはなくても、背中を押されるんだ。ここの奥底の、一番醜くて、一番狂ったところを、君の言葉が掘り起こす」
洸平は言う。風乃は何も言わない。
「だから、君を責めると、きっと僕も破滅する」


『断章のグリム』好きなので迷わず買っていた・・・んですが。
その割に積読の山に埋もれてました。
埋まっている間に二巻出てしまったので慌てて読了。
書下ろしの「シンデレラ」、「ヘンゼルとグレーテル」。断章のグリムに収録されていた「金の卵を産むめんどり」。
三話が収録されています。

いやー相変わらずの甲田節といいますか。
タイトルからして風乃がいるし、いつも通りロクな目には合わないんだろうなぁ、と思ってまいましたが。
安定して暗い、エグい、グロい。
けど、短編3作掲載な感じで、一つ一つが短いので、その分いつもよりは抑え目かな、と。
甲田作品の入り口としては案外いいんじゃないだろうか。
「断章」という異能がない分、より人間の醜さがすさまじくなっているというも見方もありますが。

父親は単身赴任で遠くにあり、母と姉の三人で暮らしている夕子。
姉がいつも優先され、自分の願いは通らない。そんな家に暮らしていた彼女は、我慢を重ねて、なんとか生活してきていた。
「……シンデレラは、本当はシンデレラのお父さんが救うべきだったわ」

風乃に相談し、我慢し、怯えながらもなんとか行動を起こした瞬間に足を掬われて。

彼女たちは決して、悪くはなかった。
埒外の幸福を望んだわけではなく、手の内に収まるようなちっぽけな願いを持っていただけだった。
けれど、ちっぽけであるそれらは、彼女たちにとって最後の砦でもあり、それを踏みにじられた瞬間、最後の一線を越えてしまった瞬間に、零れ落ちて、壊れていってしまっただけで。
境界線上にいて、見守るだけの風乃がどうしようもなく恐ろしい。
風乃は少女たちと偶々あって悩みを聞いて、自分の意見を述べただけなので、彼女は彼女で悪いことをしているわけではないけれど……冒頭引用したように、「毒のように優しい」少女でもあるので。
その影響を受けて壊れ方が加速した面もあるわけで。
いや、相変わらずの筆致で安心したといいますか、さすがとしか言えない。


ビブリア古書堂の事件手帖5 ~栞子さんと繋がりの時~

ico_grade6_4
「……大輔さんと一緒じゃなかったら、こういうことはやりません」
「え?」
「もし一人だったら、受けません」
怒ったような早口で言い、そそくさと眼鏡をかけた。目の縁がほんのり赤くなっている。再び歩き出してから、この前の質問の答えだと気付いた――俺が居なくてもこういう依頼を受けるのかどうか。どうして今ここで答えるのか。いつも本当にタイミングがつかめない。

デートに誘ったこともあって大輔が結構踏み込んでいくのがいいかなー。
免疫なくてあわててる栞子さんが可愛い。
しかし、それでも本の話題になると、スイッチ切り替わる辺りは相変わらず。
想いが固まっているものの、葛藤も抱えている栞子は、どうにか母と連絡を取ろうとする。

今回はいつも通り、短編連作な形ですねー。
一つの事件が解決した後に、別の視点から、補足が入る感じ。

まとめて本を売ったかとおもいきや、しばらくした後に買戻し、また別の店に売りに行く女性の話。
なにか目的があるんだろうけど、そっちにいくんですね。
志田さんがかかわってくるとは思わなかった。大輔と同じような感じに思考誘導されそうになった。
ただ、大輔が納得しているってことは、別の視点もあるんだろうなぁ、と思っていたら案の定。

続いては、親の書斎に何冊もあるブラック・ジャックの話。
父親、結構不器用ですねー。わらにもすがりたい想いっていうのはああいう事を云うんだろうか。
もう少し言葉を選んでいたら、この騒動はなかったんじゃないか。それが難しいから、色々ともめ事とか事件とかっていうのは発生するんですけどね。
さて、今回は栞子さんの友人の滝野リョウさんが登場。はっきり登場するのって初めてかな?
今まで店に来なかった理由として、内心で、「親友の幸せを呪うほどクズではないつもりだったけど、わざわざ見物しに行くげんきもなかった」といっていますが。
栞子さん的には、重要な事でも、傍から見ているとみていられないというか、犬も食わないっていうか、そういう面があることは否定できない。
今回大輔が積極的になったぶん、甘い描写というか栞子さんが照れてて可愛い部分とか増えてましたしね。

そして、最後は、親族に敬遠されている男に、兄は大事にしていた本をやろうといった。
しかしその約束を果たす前に、彼は亡くなり、他の親族は「そんなことをあの人が言うはずない」と本を渡さない。
ビブリア古書堂を立ち入り禁止にされた経験もある、不謹慎というか軽薄というか、そんな感じの男の依頼を受けた背景には、母の影があるわけで。
ただ、あの弟は、絶対に好きにはなれないタイプだと思いましたが、最後の最後、憎めない人のようにも思いましたけどね。
テンプレでいうなら、雨の日に捨て猫を助ける不良を見た気分というか、ちょっとしたギャップが描かれていて、何となくほっとしたというか。

いやー、結構いい感じでした。
最後の大輔の返答がまた。対比としても優秀というか。違う道を進んでくれそう。
母親の得体の知れなさも健在で、安心しました。
シリーズも終盤にかかっているようで、因縁が再び、という展開になりそうですが、どうなっていきますかね。


彼女を好きになる12の方法

ico_grade6_4
病は気からという。意味は逆だが。そして恋の病という言葉がある。たいてい、悪い意味でつかわれないのだが。その二つを組み合わせた結果、ひたすら彼女が可愛いと思い続けてみることにした。なにしろ彼女はかわいい。よしだいぶ病んできている。



「好き」という気もちがわからない「俺」。
「好き」という気持ちに身を焦がしている「僕」。
この二つの視点が織りなす話。
「俺」の隣には「彼女」がいて、「僕」はその二人を遠くから見ていたり、時に不気味に近づいたりしています。
端的に言って僕はストーカーっぽい。っぽいっていうか、構成要素はおおよそストーカー気質。

いいかえると、ポジティブルートとネガティブルートみたいな感じですかね。
何となく付き合いが続いている「彼女」と、友人以上恋人未満みたいな関係を続けていた「俺」。
なんでこの関係が続いているんだろうと考えたとき、彼女を好きになればそれが理由になるんじゃないかと思い、4月から、1年間をかけて彼女を好きになろうと試みる。
その発想が酷いというか、頭良くないのにややこしい頭だと12月に言われていますが。
まさしくそんな感じで、考え過ぎて空回りしている感じ。

一方で僕は、彼女の事が気になりつつも生来の性格なども合わさり、声をかけられずにいる。
そして、行動を起こしてみたは良いものの、かなり不審者で、最終的には避けられたり、気分や状況などを合わせて、大分落ちていってる感じが。
こっちのルートにはほとんど救い無いので、なかなかアレです。
ただ、僕視点からみた「俺と彼女」のやり取りは、結構面白かったり。

もう俺と彼女は、傍から見ていると普通にカップルみたいですけどねぇ。

「それは、わたしの一番嫌いなことね」
「なんで好き? とかきかれるのも、どこが好き? とかも最悪」
「だって理由を好きになったわけじゃないの。わたしはっ、ほら・・・・・・」

「言わなかったことに、『理由』があるのよ」
「なんか褒めるときに、すごいすごいって何回も言っていたら逆にすごくなさそうに思えるでしょ? 言葉は流し放題の水。味が薄くなるのよ。だから、こういうのって口にしない方がいいと思ってた」


12月あたりからの「彼女」が可愛くて、結構楽しんで読みました。
「彼女」には「彼女」の哲学とかがあって、それでも「俺」の近くにいたってことで。
こういう距離っていうのは結構羨ましいような気もしますな。
まぁ、劇的な事件が起こるわけでもないから、淡々と進んでいく感じもあります。
ただ個人的には結構気に入りました。


プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
 新刊・既刊を問わず読んだタイミングで記事を作成しております。
 コメント歓迎。ただし悪質と判断したものは削除する場合があります。

メールアドレス
kimama.tyaka@ジーメール なにかご依頼等、特別連絡したい事柄はこちらにお願いします。
メッセージ
アーカイブ
カテゴリー
記事検索
最新コメント
  • ライブドアブログ