気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

三田誠

創神と喪神のマギウス

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「ああ、勝者が歴史をつくるなんてのは常識だわな」

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「だけど、驕るな勝者」

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「勝者が敗者みたいな面をしようってなら、お前は俺に負けるべきだ〈剣帝〉」

 

創神という「自分だけの神」を作り出す新たな魔術。

ただしそれを扱えるのは少年少女のみ。

16歳までにピークを迎え、遅くとも18歳になるころには失われる能力。

かつて行われた創神使い達の「戦争」から生還した主人公破上蒼士郎は、18歳になり伝手を使い念願の学生生活を送る……はずがなぜか教師として登録されていて。

 

それでも「学校」という場所に関われるのがうれしくて。

窮地の生徒を助けたり、教師らしい行動をしているわけですが。

既に終わったはずの戦争の影が迫ってきて。

何らかの事件に巻き込まれた生徒を庇うため、戦争の勝者である「管理軍」と戦い、渦中につっこんでいく蒼士郎。

 

過去敗れた相手だとか。

かつての英雄を元にした危うい実験の話とか。

仮にも「戦争」後の話だから、あちこち血生臭かったりきな臭かったりしますが。

それなりに面白かったです。

過去の因縁とかも出しつつ、新しい世界を生きているというのをいい塩梅で描いています。

主人公の現在持っている能力も明らかになっていますが、かなり制限が多くて、毎度騒動に巻き込まれて毎回死にかける展開になるんじゃなかろうか。

とりあえず二巻までの構想はあるようなので、それを楽しみに待ちます。

創神と喪神のマギウス (ファンタジア文庫)
三田 誠
KADOKAWA/富士見書房
2016-02-20
 

ロード・エルメロイⅡ世の事件簿3 「Case.双貌塔イゼルマ(下)」

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「魔術師だろうがそうでなかろうが、人にとってエゴは絶対だ。いかなる善行も悪行も、それが本当に他人を救ったか、はたまた傷つけたかなどしれたもんじゃない。だが、それが誤認だろうが誤解だろうが、自分が辿り着いた生き様だというのなら胸を張れ。自分のための戦い挑むなら、せめて独善で他人も染めてみろ。(後略)

そうしなかったのだから、お前は負けたのだと。

そうできなかったのだから、お前は這いつくばっているのだと。

 

エルメロイ2世の葛藤。

人間は成長するのかどうか。繰り返し学習することで、能力が伸びることはあるだろう。

けれど、人生の岐路は幸運や偶然に左右される。ならば本質的に成長する事などないのではないか。少なくとも、自分は成長はしたと感じていない。

 

グレイが思い起こしていた、ロードとの出会い。

灰色だった存在が、弟子として外に出た時の記憶。

始まりにこのエピソードを持ってくるあたりは、ズルいなぁ。2世の必死さが、彼の願いに向けるひたむきさが、より強く感じられる序章でありました。

聖杯戦争について触れる時。自身の願いについて語る時。かの王の影響が2世の言動に現れていますから。

 

エルメロイ教室の古参のメンバーとともに調査することになって。

スヴィンは2世の信奉者みたいですが、フラットはFakeと同様に引っ掻き回す天才で。

現役の生徒でも双璧とされる彼らの戦いぶりが見られたのは良かったですね。

まぁ、さすがに歴戦の魔術師や冠位を相手どるのは難しかったようですが。

 

襲撃をかけたアトラム・ガリアスタ。

依頼を受けてエルメロイ教室の敵に廻った蒼崎橙子。

イゼルマの魔術師と、二人の君主。黄金姫と白銀姫。

色々な思惑が入り乱れた、一触即発の状況で、どうにか会話できる程度に毒気を抜くとか、さすが2世と言いますか。手札の使い方が上手いですよね。

 

そして彼が、今回の事件に対しての推測を語りだすわけですが。

……結局あの冠位の魔術師が愉快なだけの一人勝ち、ってところなのかなぁ。

アトラムの狙っていたある呪体の行方が明らかになったときには、これでこそ蒼崎橙子と思うと同時、「何してんだこの人……」とも思いました。

イゼルマが呪体を得るためにつかった資金はどこから来たのか。解離城の時のように裏で動いている勢力があるのではないか、という考察が出てましたがそのあたりは次回以降明らかになっていくと信じます。

次回はまた夏予定とのことで。今から待ち遠しい。



ロード・エルメロイⅡ世の事件簿2 「Case.双貌塔イゼルマ(上)」

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「美の作用について、魔術はこう考えるそうだ。――美しいものを見ることは、自らを美しくすることだと」

 

Fateの正史。

エルメロイ2世が関わることになる事件。

今回は、メインの視点が義妹のライネスですけどね。

 

彼女が招待された「時計塔の社交界」。

究極の美の実現を目的とした一派の、成果のお披露目。

時計塔となれば魔術師の派閥もあるわけで。色々と面倒な事情もあるため、ライネスはグレイを護衛として連れてその会へ足を運ぶわけですが。

 

そこには冠位の魔術師がいて。事件が起きて。

ライネスは事件の犯人と疑われ、自分の潔白を証明するために調査していましたが泥沼にはまって。

本当良い所で2世が登場して。彼の知見によって、とりあえず状況はロード預かりになりましたが。

他家の魔術師のホームグラウンドで、敵視される状況はよろしいものではなく。駆けつけた2世も謎の答えを即座に導けるでもなし。

首の皮一枚つながった、よりはマシでしょうが良い状況ではないですね。

 

まだまだ事件の本質は明らかにならず。エルメロイ教室のウェイバーやスヴィンといった特徴的なキャラクターも登場して、中々楽しくなりそうな状況ではありますねー。

しかし、最後に登場したあの魔術師は……いや、確かに五次前なら生きてますけど。


ケイオスドラゴン 赤竜戦役2

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「あんたのせいで、あたしの可愛い部下が何もできずに倒れていった。その憎しみは生涯忘れやしない」

女将軍の瞳には、銃弾にも等しい『力』が籠っていた。

「……だけど、あんたにとって金は銃弾なんだろう。あんたが撃った。あたしが撃ち返した。それが戦争ってもんだ」

 

原典のレッドドラゴンは大好物だったんですが、アニメが振るわずちょっと残念に思っている作品。小説版です。

婁が女性になったり、忌ブキの力が異なる形になっていたりと差異が色々ありますが。

……たどる道は、こうなるのか、と。

原典とは違って、どんどん名前ありのNPCが命を散らしていく流れには、これが混沌の地ニル・カムイ……! と戦慄したものです。

 

しかし、形が違えど、歩む道が異なるものであろうとも。

不死商人はぶれないなぁ。もういっそ、彼こそがこの作品の癒しなのだと言ってしまっていいかもしれない。

……物資の値上げを行って、戦線を維持できなくさせて、戦争を中止せざるを得ない状況を作り出し。

多くの支援者がいると同時、星の数ほどの敵がいるはずなのに、なおも存命の恐ろしい商人ではあるんですけどね。よく暗殺されないな、この人。婁さんクラスなら忍び込めると証明されましたが、言葉によってその危機を脱しているわけで。

 

ハイガに辿り着いた婁と忌ブキが不死商人と出会った場面から。

オガニ火山での戦闘、そして忌ブキの妹が表舞台に上がるまで。

原典と一番差が大きいのは彼女なんじゃないかなぁ。阿ギトも、大分キャラ変わった感じがありますけど。

 

原典の忌ブキは、確かに殺すことを躊躇い、会話を望む性格でしたが。それでも、赤の竜を巡る波にもまれ、自らの意志でもって王として立つことを選んでいました。

けれど、ケイオスドラゴンでは。かれは、迷い続けているような印象がありますね。皇統種の位置が異なるというのもあるとは思いますが。

忌ブキの迷いが長いのもあって、ちょっと中弛みしてしまった部分があるように感じて残念に思っています。

まぁ、なんのかんの言いながらも、小説版は完結まで追いかけるとは思いますけどねぇ。

 

ケイオスドラゴン 赤竜戦役 1

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「あなたのしたことは、何も特別じゃないと思う」
また、エィハが言う。
「順番を守っただけ。命と命が対峙した時、必ずどちらかに順番が来る。あなたもそれを守っただけ」
(略)
「だったら……僕の友達なんて……誰もいなくていい……!」

RPFレッドドラゴンを正史として、再構成されたメディアミックス企画「ケイオスドラゴン」。
アニメ、アプリ、ボードゲームと連鎖した構成、という謳い文句でしたが。
うーん、期待値高かった分アニメは正直なところパッとしない印象。
毎回更新を楽しみにしていた「レッドドラゴン」程の熱量がない気がします。
アプリも一応手を出してみましたが、あっちもまたアレな出来でしたが。

閑話休題。
本編の話をしましょうか。
これもアニメと小説という媒体の違いもあるので、微妙に表現の仕方が変わってきてますね。
ハイガに婁が潜入するときのやり取りとかが、明らかに違います。
レッドドラゴンとの違いでいうと、やっぱり道中のイベントとかは、冗長になるためかばっさりカットされていますねぇ。

忌ブキが、レッドドラゴンの時以上に重要な人物に祭り上げられている感じ。
あちらでは苦労してようやく得た契り子という立場に一話で到達してますし。
ま、その分手にした力が厄介極まりないものですけども。
しかし、赤の竜は狂ったんじゃないのか。
皇統種の声に反応して、契約を交わしているのはどういうカラクリなんだろうか。
レッドドラゴンの第六夜で現れた声みたいに、「思念」だけが残って反応しているとかいうパターンなのだろうか。

エィハとスアローは派手な変更はありませんが。
婁が、女性キャラへと変貌したので、そのあたりの関係が変化したりしていて、これはこれで面白いです。
この調子でアニメとかも盛り上がってくれればいいんですけど、どうかなぁ……
とりあえず、懐かしくなったのでレッドドラゴンを近い内に読み直そうと思いました。


ロード・エルメロイⅡ世の事件簿1 Case.剥離城アドラ

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「ボクは、もう十分な栄誉を受けたんだよ」
(略)
「その栄誉は後払いでもらったものだ」
(略)
「だから、ボクはその栄誉にふさわしい人物にならねばならない。順序が逆になってしまったけれど、あなたの見る目は間違えてなかったのだと証明しなければならない」


三田誠が描くFateの世界。
Zeroで描かれた、未熟で必死で、そしてサーヴァントとマスターという関係を変えた、良コンビ。
ライダーと共に戦った、ウェイバーのその後の話。
時計塔の講師になっている、というのはどこかで見たことあったんですが。
割と様になっているというか。

色々な巡り合わせもあって「君主」の一人として、菲才の身ながら末席に名を連ねているようで。
魔術師としては凡庸でも、頭脳の冴えは素晴らしく、第四次聖杯戦争において、キャスターの根城を突き止めたのと同じような空気を感じます。
そこからさらに成長が見られたり、自分の非力を真っ向から認められたり。
ある事情から集まった魔法師たちの中で一番弱くて、決闘したら死ぬのは自分一人だ、とか言っちゃいますからね。
確かに成長しています。けれど同時に、天才たちへの渇望というものもあって。

「君たちは、本当に卑怯だ」
(略)
「ただ天才であるというだけで、あっさり高みへ飛翔していく。私がただ思い描いているだけの空を自由に飛び回る」


剥離城アドラ。ある魔法使いの拠点とした工房。
城内には多くの天使が飾られ、遺言によって魔術師たちが集められる。
提示された謎を解き明かしたものが遺産を得られる、と。
キャラがそれなりに出てきた中で、ちゃんとそれぞれの事情や心情なんかをしっかり描いたうえで、話がするする進んでいくんだから流石というほかない。

まぁ、魔術師が集まって、謎解きやろうとすれば脱落者も出るわけですが。
その人たちもまた魅力的なキャラクターでした。
Fate好きなら読んで損はないんじゃないですかね。
自分がそこまでFateの派生追い切れてるわけでもないんですけど。
もうちょっと頑張って追いかけたいところはあります。
作品は文句抜きで面白かったです。アポクリファは完結しましたが、新たに始まったこちらはまだ巻数でるようなので、今から年末が待ち遠しいですねー。


RPFレッドドラゴンⅥ 第六夜(下) 果ての果て

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「みんなが抱いていたのは、特別な願いではありませんでした。望外な欲望ではありませんでした」
(中略)
「平等、自由、そんなありふれた、当たり前の幸せを掴むために、多くの人が立ち上がりました」
そう、信じている。
信じたいと思う。ついには理解できなかった人々も、しかし彼らにとっては当たり前の幸せを追い求めた結果なのだと。


ついに、物語は終焉を迎えます。
竜という災害に見舞われて一致団結するのではなく、危機的な状況だからこそ、それぞれが己が生き方を貫いた、その結末。
恋する怪人暗殺者が、魅了の剣を振るった時。黒竜騎士に蘇った所有欲。
あぁ、こうなるのか、と。
確かにスアローにしか認められない行動ではあったんでしょう。
それを受けての婁の行動もまた、一貫していたなぁ、と。

最終決戦。万人長の本気が怖かったなぁ。
蒸発って、どういうことなんだろうか。オーバーキルにもほどがあるというか。
もういろんな思惑が混ざりすぎていて、息つく暇もなく進んでく話に、ただただ引き込まれるだけでありました。

禍グラバの戦闘能力が結局どれほどのものなのかは最後までわかりませんでしたが。
五行体で防御力高い分、マシンガンとかって案外火力無かったりするんだろうか。
「儲け話だ」と最後ぶちかますシーンは、不死商人という看板に恥じないものでした。

エイハと忌ブキ。
二人の付き合いも、良い描かれ方をしていたのではないでしょうか。
何処かの巻でスアローに「実は忌ブキさん主人公だな?」みたいなことを言われていたように思いますが。
まさしく。少年だった彼は、阿ギトや、調査隊の面々と交流していくことによって、覚悟を決めた。
それは革命軍の王になったことでもあるし、生き残って彼が起こした行動そのものでもある。
もはや彼は迷うだけの少年ではなく、スアロー達と並び立つ英傑である、と。
このレッドドラゴンという物語の一面は、間違いなくこの忌ブキの成長譚であったと言えるでしょう。

その裏側で、恋する暗殺者が一人ヒャッハーして、わくわく天稜ランドつくったり。
黒竜騎士が秘密兵器ぶち込んで魔素流壊滅させたりしているわけですが。

巻末には、3Dプリンタで作られたという、各キャラクターのフィギュアだったり、WEB公開時のトップのイラストだったりが掲載されています。
フルカラー。最終戦闘用のステージに関してもそうですが、星海社、色々と力入れるところが間違っているというか。ここまでくると、いいぞ、もっとやれって感じがしますね。
あそこまでぶっ飛んだからこその面白さっていうのはあると思いますし。だからこそ、楽しめたわけですし。
新しい企画もあるようで、楽しみです。


RPF レッドドラゴン 第六夜(上) 夢幻回廊

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エイハ ありがとうございます。……情報がちゃんと、わたしに都合のいいように伝わるようにしないと(一同爆笑)。
婁 俺でもここまでは言わねえ!
FM プレイヤーが今必要なことを完璧に把握しているがゆえに、発言がかえってひどくなるという例ですね(笑)。
スアロー もはや、ひどいとかひどくないとかじゃない!


もうこれぞクライマックスという感じで、ゾクゾクしますね。
追加のスタッフも含め、野球ができるほどの人数で行っているとか。
極めつけは、あの細工ですけども。

今回は最終幕ですが、決戦前という事で、劇的な変化っていうのはないですかね。
契りの城が出てきた時点で、戦争じみた大規模戦闘がおこるのは分かっていましたし。
それぞれの道が別れた以上、実際に敵対するのも予想の範疇ではあります。
「わくわく天稜ランド」のスタッフと婁さんが息ぴったりで笑えましたけど。
だから、今回の展開は予想外というよりは予想以上、というのが正しいですかね。

大規模戦闘を乗り切ってそれぞれの決意がより強いものとなる。
分かたれたはずなのに、それでもお互いを理解してる部分があるのは皮肉というかなんというか。
まー恋する魔神さんはいっそ読みやすかったりしますけども。
それでも、あのFMにした「質問」についての反応は恐ろしいものがありました。
本当に、恋する魔神というか、一直線というか。
赤の竜の残留思念もこの人にだけは与えちゃいけない能力が与えられるという事を明らかにしますし、どー寸のこれ。下手すると本気で婁さん一人勝ちだぜ……?

一方で、エイハと忌ブキの方でもドラマがありましたね。
竜殺しを殺したいエイハ。それを知らされていない忌ブキ。
「背中を押すわ」と語り、「愛している」と云う。
エイハ、迷いがないんですよね。寿命が短いという事も関係しているようには思いますが。
度々言っている、「順番」。それが根幹にあり、優先するものが決まっているから、ぶれないんですよね。
しかしそんなエイハに迷いを差し込んでくるあたりFMも手が込んでいるといいますか。
スアローに「下衆め!」とか言われてましたけど。

そのスアローも、子供好き? というか「育っちゃう系」とか色々おかしな言動振りまいていましたけど。
根幹が語られるに至って、なかなかすさまじい価値観というか、重たいものを抱えているんだなぁ、という感じで。
呪いについて明かされた場面でも想った事ですけども、スアローはスアローで怖いし、でも格好いいですよね。

そして禍グラバ。
エイハから、人の命のかかわる取引、彼女の「順番」について明かされる。
赤の竜に、唯一取引を持ちかけられず、友として見守ってほしいと言われた人物。
正直、禍グラバの戦闘能力がどれほどあるのかさっぱりわからないんですよね。
いやドリルとガトリングガン抱えているのは知っていますけど、具体的なデータとしてどこまで戦えるのか。
それぞれ一騎当千というべき、驚異の中、一体どういう行動をとっていくのか、一番読めないのってこの人なんじゃないだろうか。

それぞれに譲れないものがあるから、ここに至るのは変わらなかった事でしょう。
何処に着地するのか、楽しみでもあり、怖くもあります。


RPFレッドドラゴンⅤ 第五夜 契りの城

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――なんだあの男は。
死んでいながらも変わらない。
――なんだあの男は。
生き返りながら揺るがない。
――なんだあの男は。
あれほど雁字がらめでありながら、あれほど自由に生きている――!


岩巨人を倒した後、禍グラバが財力に物を言わせて、他国からの干渉に対してバランスを取るような行動をしていた時も、すさまじいと思ったものですが。
婁さんが還り人となり得た能力は、それを超えるほどの衝撃があったといいますか。
これ、あの人にだけは持たせちゃいけない能力でしょう・・・
わくわく天凌ランド。字面は可愛いのにその実態といったらもう・・・
いや、率いている本人はこれ以上ないほどの喜悦に浸っているとは思うんですけども。

赤の竜の襲撃により、壊滅したシュカ。
残ったのはスアローただ一人。
忌ブキとエイハは革命軍と行動を共にし、禍グラバはその革命軍をストーカーして情報を探る。
一度死に、還ってきた婁さんは、島から離れられなくなったその身を呪い、媛の為に行動を起こす。
一人だけ別ゲーやっててすごく笑えました。

スアロー 選択肢ひとつで命が飛ぶ島、それがニル・カムイ――!


状況が瞬く間に変わり、安全って何だったんだろう、という感じであちこちで事件が起きていますが。
この発言が、本当に現状をよく表していると思います。
阿ギトだって、エイハたちが助けに行かなかったら、1巻で死んでいたわけで、そうなると、忌ブキたちの革命軍ルートっていうのも選ばれる可能性が減っていたかもしれないわけで。
そう考えると、色々とIFが気になったりはしますねー。いったいどれだけ選ばれなかった道があったんだろうか、と。

忌ブキがどんどん革命軍の王として成長していっていますが。
それと同時にどんどんこぼれ落ちていっているものもあるように思います。
婁とスアローをみて「優しい人」と言った少年だったころとはだいぶ違ってきてしまったなぁ。
それが悪いというのではなく、この島の置かれた状況からすればある種の必然だったんだとは思いますが。
どこか歪んでしまった部分があるんじゃないか、と思える。

スアローは母国ドナティアの一段と行動を共にしていますが。
彼は彼で迷っているというか、さすがに前回最後の結果に衝撃を受けている部分はあるようで。
それでも調査隊に最後に残った一人として、禍グラバの支援を受けながら色々と手を打っています。

禍グラバは・・・遊び心豊富だよなぁ、と言いますか。
革命軍の前に出てくるときのやり取りには思わず吹きましたよ。
一体あの商人は何を考えているのかと。
手を尽くして、契約の条件を自分に都合がよくしようというその行動理念は一貫していて安心できますが。

この作品はあちこち力の入れ方がおかしいと思いますが。
婁さんの新しい能力の為に分厚いルールを作ったり、計算の為に何人もスタッフがいたり。
しかし、カフェに依頼を出してニル・カムイ料理をPLにふるまうとか・・・贅沢だけど、何やっているんですかとツッコミは入れたい。
前回の結末を受けて、それぞれが現状把握のために尽力する話、という感じで、これまでと比べるとちょっと盛り上がりが足りない感じはしましたね。
でも、準備回ということで、ここまで怒涛の展開を起こしてきたPCたちが、これだけ溜めて最終決戦が面白くならないはずがない、と期待できる感じがいいです。


RPFレッドドラゴンⅣ 第四夜 夜会擾乱

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FM(雪蓮)「でも壊れるわ。壊れたらどう思う?」
スアロー 壊れた分だけ、新しいものを作るべきだろう。壊れることだけが続くのはやはりよくない。
FM(雪蓮)「……つまりあなたは、新たに生まれたものを愛し続けるのね」
スアロー その通りだ。僕が子供たちに希望を見るのは、彼らがまだ若いからだ。


恋する怪人、危険すぎる暗殺者である婁と媛が起こした行動によって、更に引っ掻き回されることとなったニル・カムイ。
折しも会談を行うために各国の要人がシュカへと集まろうというところで起きた惨事にそれぞれの国は対応に追われていた。
赤の竜対策のためのチームであったスアローたちも、婁が同行していたという一点で、渦中にいるわけで。
今回は、そんな随分と想定と変わってしまった夜会編です。

FM まさか、このルートに突っ込むとは……(後略)

と、FMが思わず零すレベルで夜会は荒れ、シュカの状態はかなり悪くなった。
禍グラバが、商人としては恐ろしいけれど、戦闘力はいかほどなのかさっぱりわからない。
物資の価格操作で戦争を止めたあたりからして、そもそも戦闘になる前にどうにかするっていう方針のようにも思いますが。

夜会の前に禍グラバは新聞を発行したりしている『連盟』の商人と渡りをつける。
エイハと忌ブキは、奴隷市場でこの島の現実の一部を知る。
想定では、ウルリーカが案内する予定だったそうですが、まぁあのような事態になったわけで。
それぞれの国の思惑とか、個々人の性格から来る対応の違いとか夜会の演出は面白かったですね。
禍グラバと楽紹のやりとりが個人的には笑えた。
でも一番ツボに入ったのでいえば、忌ブキの剣として覚悟を決めたエイハか。
黒玉さん怖い。スアローに「婁がいなくなった瞬間、エイハが婁並みに……! 何、あの殺人鬼、伝染るの!?」とか言われてましたしね。

おたやかならざる雰囲気を漂わせていた夜会。
それをさらに混乱させる、赤の竜の襲撃。
PCたちはここでも、己が信念を貫き、別々の道を行くことになっていくわけで。
ウルリーカがいないこと、婁が調査隊を離れたこと。
禍グラバが黄爛に情報を流したこと。忌ブキが王として決断を下したこと。
スアローの行動と、驚愕のダイス目。

もう、何から語ればいいのか分からないほど、密度の濃い状況。
一つ歯車がずれたらまた違う結末に至っていたかもしれない。
けれど、結果としてあぁなったことがまた凄まじいとしか言えない。
婁の離脱もありましたが、忌ブキの行動によって、決定的に調査隊は分裂しました。
彼らがこれからどんな行動をとっていくのか。序破急の破の終わりとしてはこれ以上ない展開だったんじゃないかと。


プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
 新刊・既刊を問わず読んだタイミングで記事を作成しております。
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