「ありがとう明くん。……私を見つけてくれて」
桃香が言ってくる。
「明くんが気づいてくれなかったら、ずっと迷子になってたね」
昔の作品ですが、再読ー。
たまに読み返したくなるんですよねぇ。
事故にあった高校生須玉明。
それ以来彼は、この世にとどまっている幽霊が見えるようになって。
会話したり、身体を貸したりなんかもできるので、未練解消の手伝いなんかをしています。
別に、一から十まで救おうとしているわけではなく。
例えば、初恋の幼馴染。例えば、画家志望だったクラスメイトなど。
彼の活動範囲にいた知人と会話したことがきっかけで。
幽霊の事情を知ってしまった時、それに力を貸さずにいられないという感じ。
一話ごとに違う幽霊と出会い、彼女たちとわずかな時間を共にして。
残された時間で、後悔は果たされるのだろうか、とそんなお話。
2話の絵の話と、3話の少女たちの話が結構好みですね。
彼女たちとのこれから先がないとしても、重ねた時間に嘘はない、という感じが。
合作が完成しなかったら厚士はまだ燻っていただろうし。
川名さんと出会わなかったら、由佳里はいなくなっていたかもしれないし、手紙が届けられたから、彼女は前に進めただろうし。
上手く回りすぎている感じはありますが、生きているそれぞれが、答えを見つけられている優しさがあるのはいいかなぁ、と思います。