「……ここの連中はみんな、貧乏を知らないんだ」
神託により第四十三代聖女として任命されたココ・スパイス。
歴代の聖女が貴族令嬢から選出されていたのに対し、ココは家も家族も失い、日々の糧をゴミ捨て場から漁ったり、下町から盗んだりする浮浪児だった。
そんな彼女を聖女として祭り上げるのに思う所のある人も多くいるようでしたけど。
内心はどうあれ、神託は神託として協会はかなりの人数を動員し、ココを確保して。
教育を受けて、外面は聖女として振舞える器用さと賢さをココが持っていたのは、体面を重視する教会の人々としてはありがたかったのでは。
……下町育ち故の強かさなども持ち合わせていて、奉仕を旨とする神職者でありながら給料をもらってるし、教皇相手に賃上げ請求したりもするので、同じくらい頭痛いでしょうけど。
聖女には任期もあるため、その期間勤め上げたら元の生活に戻っても構わないと思っているココは、せめて聖女活動中に資金をためておきたい。
一方で神職・政治家としての目線で考えている教会上層部としては、神職は原則として神への奉仕を喜ぶボランティアであるから、金銭支給は終わらせたいと考えている。
そりゃかみ合わないよなぁ、と思う部分はあります。
ココが聖女らしくない態度で荒く接しても、拒絶ではなく説教に留める辺り教皇と聖女の関係はいいと思いますけどね。
王国と教会の関係は良好で、ココを気に入った王子からちょっかいかけられたりもしてるんですよねぇ。
個々人としてはいいキャラが多いんですけど、勝手が過ぎるからとココを嗜めるために王子が取った手段とかは気に食わないなぁ。ココのこと理解しつつ、彼女の大切なもの取り上げたわけですしね……。
王族・政治家としての目線では聖女を留めるのに効果的はあるでしょうし、いい薬なの面があるのも確かでしょうけど。
素では聖女らしからぬ言動をしているココですが、悪人を懲らしめたり、オークと呼ばれる魔物を蹴散らしたりすることもあるんですよね。歯に衣着せない彼女の暴れっぷりが楽しめたら面白い作品。