「わたしに何ができるかは、分かりません……けど」
(略)
「あの頃のわたしより、できることがあると、思うんです」
かつて謀略によって冤罪を着せられたモニカの父は、なぜ殺されたのか。
第二王子フェリクスは、後ろ盾である公爵に反発する素振りが見え隠れしていたいけれど、その真意とは。
そういった、様々な真相が明らかになる第8巻。
クロックフォード公爵、自分の目的の為は過去にどれだけの貢献があろうと、不要となった駒を切り捨てることを厭わない。
様々な便宜を図ってきたが、違法薬物を国内に持ち込んでいたラビアナ司教。
紐付きとして押し込んだものの、反逆の意志を見せたエマニュエル。
そして……かなり慎重に守り続けて来たフェリクスの秘密も、相手から噛みついてきたならば、排除する。
派閥の大きさなども併せて、クロックフォード公爵のヤバさというのは語られてきましたが、なるほど分かりやすい実例を見せられたものだな、と思いました。
モニカの方は、帝国側の間者と接触してとある交渉をしていましたが。
……予想外の相手が乗り込んできていたり、驚かされる場面も。それでもなお、切れる札が限られている中で、条件をもぎ取ったのはお見事。
作家としての顔を持つポーター、モニカを引き取ったヒルダ。モニカの父、ヴェネディクト・レインの死の真相を薄々察知しながらも敵の強大さゆえに何もできないで居た人々。
そんな彼らとの会話や、残してくれたものを使って道をつくろうとしているの、良いですよねぇ。
モニカもフェリクスも、目的のために何かを犠牲にできると思っていた。
けれど、これまでの交流を経て相手の事を知った上で、自分が思った通りの行動をとれないことに迷いもするようになって。
ここまでの積み重ねがあるからこそ、モニカや彼が思い悩むのもまぁ分かるんですよね。モニカの方に、特に感情移入しちゃうので、アイザック本当にもう……って気分にもなりますが。
フェリクスの欺瞞が、クロックフォード公爵によって暴かれ、地位を脅かされたとき。
モニカがこれまで隠していた自分の秘密を、他の人々に明かすことにしたの、WEBで読んだときもかなり感動しましたけど、良いシーンですよねぇ。
コミカライズで制服の上にローブを羽織っているイラストを見たから、そこから描写を膨らませた、とあとがきに書いてあって挿絵も含めて読み直しに行っちゃいました。二度美味しい。