「やれやれ……それよりも姫様。ここにいる皆、姫様を頼りにしているのは確かですが、姫様お一人に全てを押し付けるわけでは御座いません。何かあれば私も必ずお支え致します。どうかご安心を……」
「アデル……はい、ありがとうございます」
タイムスリップしたら女性化していた剣聖アデル。
女性だからこそ扱える戦技も会得し、研鑽に余念がないアデルですが……。本来聖女は、神獣と契約し使役する存在であって当人の戦闘能力が求められていないので、護衛がおかれていたわけですが。
……アデル、元剣聖なのもあって普通に強いんですよねぇ。護衛要らないんじゃ、という発言が出てくるのも頷けてしまう。
そんな彼女が、国境付近の破損した聖塔の調査に赴くことになって。
国境付近であるために、他国の軍もまた対応・調査のための部隊を派遣していて、現地で鉢合わせてましたが……マルカ共和国の代表の女性、苦手なキャラだったな……。
あまりにも自信がなく明け透けすぎて、すぐに泣き間延びして喋る……なんで国境地帯に派遣される代表になってるんだ……。
と、思ったら後に演技でしっかりと思惑あること分かったので、すっきりしましたね。いや、そうですよね。怪しいですよね!!
さらに帝国からも部隊が派遣され、聖塔が壊れたことで出来た未開領域に踏み込んでおり……そこに帯同していた帝国の皇族トリスタンとアデルが遭遇することになります。
彼は、前世においてアデルが主と仰ぐユーフィニア姫の死に関与したとされ、さらには大戦を苛烈にした原因でもあるため狂皇とまで呼ばれた人物で。
かつての時間軸ではユーフィニアの婚約者でもあったそうですし、狂皇という来歴を知り討伐したアデルだからこそ、今のうちに排除できないかな……って思考になってるのは、姫第一主義の彼女らしかったですね。
それでも仲間が傷つく可能性を放置してまで排除を優先するでなく、姫からの命令もあったとはいえ助けに行くんだから、なんだかんだアデルも人が良い。
実際に交流してみればトリスタンは前世と違う性格をしていて……。戦の大聖女の方は、この時代から後ろ暗い活動していたみたいですけど、トリスタンの方はまだ救いがあるのだろうか。
今のトリスタンから伝え聞いた話によれば戦の大聖女を伴った遠征の予定があったそうですし、以前はそこから闇に落とされたのかもしれない、とは思いましたね。
かつてのアデルは盲目であったことや、主を亡くして復讐に囚われてしまったことで見えていなかったことも多くあったようで。
前世における「剣聖アデルが着ていた鎧の来歴」、「前任の護衛メルルの去就」などなど、その真実と対峙することになっていましたが。
メルル父の業が深かったですね、というか。アデル達が放り込まれていた闘技場といい、この世界そういう場所が多すぎないか……? という不安は沸いた。
そういうアレコレが絡み合った結果として、前世では大戦にまで発展したのでは疑惑。
聖女アデルの存在がいい感じに状況を変化させていってるので、運命に負けずよりよい未来にたどり着いて欲しいものですね。