「彼女が投獄!? いったいどうして……!?」
「倒錯罪」
色んな世界線の物語を詰め込んだ短編集。
例えば、長命種の女性に見込まれた短命種の青年の話。長命種の女性的には「悠久の時の暇つぶし」だったけど、男が老いて彼女を置いて逝きかけると泣き喚いて一人にするな、とか言うのコミカルで好き。
かつて自分に価値が無いからと放り投げた「不死を授ける魔導書」とか「若返りの秘薬」とかを探してでも彼と一緒に居ようとする情の深さ好き。
同族に「新しいの飼えば」とか言われてケンカしちゃうくらい大事にしてるのも良き。そしてケンカ相手も「あそこまで言うなら」と別の人間拾って保護して大事にしてるの、良いですよね。
喧嘩相手の方は女の子拾ってある程度育てた後に、彼女が見込んだ男の元へと送り出して……保護するために自分の身体の一部与えていたり。彼女の子孫との交流が続いて層だったりするのも良かったです。
あとは魔法少女に変身して戦い、平和を守ることになっている少年の話。TS魔法少女モノで、親友がその事情をしって応援してくれてるんですが……魔法少女状態だと親友に惚れてて、女の子としての心に引っ張られまくって「変身したくない」なんて思うようになったけど、結局は変身してまた心揺さぶられることになる……という繰り返し。毎度良い反応するから魔法少女にさせられた感があるな……。
異世界が勇者を招こうとしたら、なんか世界観が違う意思のある巨大ロボットが来てしまった話。某ロボットアニメのパロディらしいですが、ロボアニメは知らんのよなぁ……。でもノリは良くてしっかり勇者してて良き。
古代の伝承に曰く、エルフは長く美しい耳をもち悠久の時を生きるという。
……エルフを求めて伝承を辿り古代遺跡に辿り着いた青年は、「エルフ」というのは古代人が作り出したゴーレムであったことを知って。
彼の理想は存在しなかった。ならば自分で作ってやる、と決意してそれを成し遂げたのは凄すぎる。フェチは強し……強すぎて投獄されてたけど、あれは奥さんの方が正しいよ……。
その後の「わかってるガールズ」とか「戦闘支援AI『GAL』」とか、作者さんがロボット系好きなんだなぁという話が多くて楽しい。
好き放題やってるので言えば「サッカーズデスゲーム」。好きな作家たちのスケジュールを把握し、推し作家全員の手が空く瞬間があったから、最高の1冊を作ってもらうために監禁した、と。そこに注力しすぎてて本のテーマを決めてなかったのは手抜かりが過ぎますが。作家陣、ぶつかりつつ認めるところは認めて仲を深めてるの良いですね。
そして当然ながら主催への当たりが強いのが笑えて好き。完成した作品が良すぎて「語ることは何もない」と言った主催に「礼を言え」「謝れ」「外に出せ」とテンポよくツッコミ作家さん達が良い。
「無表情な後輩ちゃん」とか「団長」は外見に反して……というギャップの在るキャラの見せ方が笑えて好き。