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「全てを手に入れることは難しい。だからせめて、大切なモノだけは護り通す。お前にとって一番大切なモノは何なんだ?」

 

9回オーバーラップ文庫対象、銀賞受賞作品。

主人公の男子高校生・志郎は小説家の父に連れられて世界各地を転々とする青春を送っていた。

それは「苦楽を共にするのが家族」という父の方針だったことと、志郎が主人公体質とでもいうべきか様々な困難に遭遇するのを知っていたからだった。

 

獅子が千尋の谷に子供を突き落とすかのように、いろんな伝承のある土地に赴いて志郎を放り込んで、トラブルに遭遇したらそれをネタに小説を書く、という生活を送っているとか。

何も知らない方が自分の目と耳で良い経験が出来るから、と説明を省いたりする父親のキャラがハッキリ言って嫌いですね……。

志郎は、自分がいなくても父親一人でなんとかできてしまう超人であることを知っていていて、憧れている部分があるから無茶ぶりされてもなんだかんだ受け入れてますけど。

 

長い積み重ねがあればこそ、父も志郎なら死なないだろうという信頼もあるっぽくて、この親子は苦楽の「楽」を重視してるんだなぁ、というのも分からないではない。

ただ1巻読んだ段階だと、個人的には苦の部分の方が強く見えてしまってどうにもなぁ……。

 

親子関係に思うところありすぎて、長々書いてしまった。

本編は、世界各地を巡っていた志郎がついに日本に戻れることになったけれど、そこは「未婚の女性は仮面をつけて暮らし、伴侶以外に素顔を見せてはいけない」という因習の残る離島だった。
離島だろうと住所上は東京らしいよ、やったね志郎! 

事情を知らず離島に来た志郎は、ついて早々に当主の孫娘真璃の素顔を見てしまったり、別の直という少女の素顔も見てしまったりして、少女たちの気持ち因習に向き合っていくことになる話ですね。

要素は結構面白かったですね。最後のシーンを見ると志郎は志郎で、確かに彼の息子だなぁという納得もありましたし。ただ、志郎の父が苦手過ぎて引っかかる部分が残っただけで……。