気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

古宮九時

成り代わり令嬢のループライン 繰り返す世界に幸せな結末を

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「人には絶対に譲れない、ここを超えたら戦争だという一線があるのよ」

 

9回カクヨムWeb小説コンテスト恋愛(ラブロマンス)部門特別賞受賞作品。

派遣社員として働いていた女性、八瀬咲良。労働で疲れた彼女の癒しになっていたのが、WEBで投稿されていた小説『妖精姫物語』だった。

同人誌即売会でも頒布されると知った時、迷わず買いに行き手紙を託し……作者である真砂と友人になったわけです。

『妖精姫物語』はとある悲劇を回避するためにループを繰り返す、という展開の物語だったんですが。ある日、咲良は真砂から、『妖精姫物語』は自分が経験した出来事だ、と打ち明けられて。

 

悲劇を回避するために行動する令嬢ローズィア。

彼女に憑依というか、転生みたいな形で成り代わり、ループして悲劇を回避しようとする。

しかし、それが叶わない場合は次の誰かにローズィアになってもらうための引継ぎ期間が設けられているとかで。その期間の間に真砂が記したのが『妖精国物語』で、彼女の願いを正しく受け取ってくれたとして、咲良は新たなローズィアとして活動を始める事になるわけです。

 

真砂の前にも何人もの人が「ローズィア」になって悲劇を回避しようとしたけど、失敗してきた。咲良も真砂の紡いだ『妖精姫物語』で彼女の繰り返した十五回の試行についての事前知識を持った状態で動いていたわけですが。

問題の根は深く、直ぐに解決には至らず。冒頭も、咲良の1回目の失敗から始まりますからね……。それでもすぐに新たな試みを初めて、前に進み続けられるのが良いですね。

繰り返しの中で折れそうになりつつも、解決を諦めなかった咲良の行動がとても尊いと思います。

アリアドネVol.2 Unnamed Memory―AFTER THE END―

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「心配しているならあまり放任もやめて。今回のことで充分気が済んだし」

「やってみたがっていることを『失敗するだろうからやめろ』というのは違うだろ」

 

2025冬コミ(C107)に刊行された同人誌。

『アリアドネ』シリーズの第2巻。イベント当日はいけなかったので、メロンブックスの通販で注文したんですが、イベント後に通販パンクして手元に来たのは1月下旬でしたねぇ。その後感想書くのにまた時間空いてしまってこんなタイミングになってしまった。

目次の「2.生まれる前の物語に寄せて」が46Pになってるんですが、実際は62Pスタートでしたね(小声)。仮置きした後に加筆したんですよ、きっと。

 

エギューラ症候群を患い病弱だったが、なんとか快復し働けるようになった少女シーライア・イーア。

もうすぐ十九歳になる時期らしいですが、職場で「恋人を選ぶ決め手は?」という雑誌コラムを見ているところを同僚にみつかり……婚活パーティーに連れ立っていくことに。

そもそもオスカーの事が恋人と思われているの、解釈一致すぎるなぁ。

まだはっきりと関係が定まっておらず、オスカーの事を選択肢の一つとして真剣に考えると言ったシーライアですが、選ぶためには他の可能性も探るのが彼女らしいというかなんというか。

 

あくまで可能性を模索するためだから、そこまで本腰入れているわけじゃないのに変なの引っ掛けるあたりもまた彼女らしい。

一応、研究方面で話が合うしシーライアに執着せず別の気になる相手を見つけてくる……簡単にまとめると、シーライアと友人になれそうな相手とも出会っているので、パーティーの質が悪かったわけではないんですけどねぇ。

シーライアのやりたい事を見守りつつ、危ない場面では助けに入るオスカーが、実に良かった。

あと良かったので言えば、シーライアの弟君も中々良いキャラしてましたよね。83Pのやりとり、ちゃんと姉弟しててなんというか、凄い好き。

いやぁ2巻も実に平和でしたね。あとがきで先生が不安を感じてましたけど、ちゃんと面白かったですよ!! というのは声を大にして主張したい。

 

Unnamed Memory -after the end-Extra 紅毒の眠る床

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「お前の期待に応えるか」

(略)

「勝てて当然の戦闘だが、やりすぎないようにしないとな」

 

電子専売の『Unnamed Memory』短編集。

同時発売の『Unnamed Memory Extra 奇跡のような嘘をあなたと』と同じく、古宮先生が過去に刊行していた同人誌の再録ですね。紙版がもう在庫なくなったシリーズが読める形なので、気になってた方は是非。

イラストは表紙のみで、挿絵はなし。表題作『紅毒の眠る床』モチーフの表紙になっているわけですが……同時刊行のと明暗くっきり分かれすぎててもう、ね……表紙のティナーシャはそっぽ向いてるのにオスカーは横目でティナーシャ見てそうなのが、実によい。無限に味がする。

 

収録作品は、『青光跡』、『ヴィヴィア・バベルと屍人姫』、『砕けた月を瓶に詰めて』、『紅毒の眠る床』、『短編集』、『鳥籠が壊れた後に』(書き下ろし)。

タイトルに『-after the end-』が含まれている通り、逸脱後のエピソードがメインとなっています。

書き下ろし含めて中~長編サイズのエピソードが5本。

『短編集』には31の短編が収録されています。この短編集は、『時の夢』・『時の夢2』という他のシリーズ含めた総集編として刊行された同人誌から『Unnamed Memory』関連のエピソードを抜粋したものになりますね。

一応、ate表記なので現パロとかのエピソードは割愛されています。

 

『青光跡』は、ティナーシャがファルサスに嫁いだ後のエピソードなのでUM16巻後であればいつでも。

『ヴィヴィア・バベルと屍人姫』はBabel4後のどこか。『砕けた月を瓶に詰めて』はate4~『Fal-reisia』間、『紅毒』は『Fal-reisia』~ate5間のエピソードとなっています。

そして書下ろしの『鳥籠が壊れた後に』は、タイトルから連想できる通りate5収録の「鳥籠の女」後のエピソードになるので、タイミングを合わせて読みたい方は参考にしてください。

 

◇同人誌版の感想リンク
ヴィヴィア・バベルと屍人姫
砕けた月を瓶に詰めて Unnamed Memory
Unnamed Memory Side Story 紅毒の眠る床
時の夢 no-seen flower小冊子総集編 感想1
(『Unnamed Memory』)
時の夢Ⅱ no-seen flower短編総集編 感想1

『Unnamed Memory』と『Unnamed Memory本編後』)

時の夢Ⅱ no-seen flower短編総集編 感想2
(『Unnamed Memory』(消滅史)から、『Fal-reisia』、『Babel』)

no-seen flower ガイドブック“Closed Garden”
 


本編の感想については下記。ネタバレを含みますー。



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Unnamed Memory Extra 奇跡のような嘘を貴方と

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「幸せだからいいんですよ。毎日飽きません」


電子専売の、『Unnamed Memory』シリーズ短編集。

より正確に言うと、古宮先生が過去に頒布していた同人誌の再録ですね。

Unnamed Memory』本編、書籍で言う所の16巻を読み終えていれば、全てまとめて読んでネタバレなく楽しめます。

一応「Act.1」、「Act.2」、「消滅史」でカテゴライズされているので、13巻読んだ後にAct.1分類だけ読むとかも出来そうですけど、そこはお好みで。

 

収録タイトルは下記の通り。

Act.1 『水月妃』、『魔女の遺骸』、『死骸の森』、『回顧分岐点』。

Act.2 『着せ替えは心変わりを呼び起こさない!』

消滅史 『奇跡のような嘘をあなたと』、『灰の見る夢』、『零れた灰を嘆くとも』、『虚ろ月』

正史 『二十年越しの恋』(書下ろし)

 

同人誌は紙版の在庫がなくなっていたシリーズなので、気になっていたという方にはオススメ。

chibi先生の美麗なイラストは表紙のみで、挿絵はなし。なんですが、表題作『奇跡なような嘘をあなたと』モチーフのイラスト、凄く良くないですか。私は表題作大好きなので、凄く嬉しかったです。


8割くらいは同人誌版の感想を書いてたのでそっちのリンクも貼っておきますね。
 
◇同人誌版の感想記事リンク

Unnamed Memory 水月妃
Unnamed Memory 魔女の遺骸
Unnamed Memory 死骸の森
着せ替えは心変わりを呼び起こさない!
Unnamed Memory 奇跡のような嘘をあなたと
灰の見る夢(Unnamed Memory)
Unnamed Memory 零れた灰を嘆くとも
Unnamed Memory 虚ろ月

本編感想は下記。ネタバレを含みますー(念のため)。


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アリアドネVol.1 Unnamed Memory―AFTER THE END―

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「もともと急がせるつもりはなかったんだが……分かった。ゆっくり決めればいい」

 

2025夏コミ新刊。……夏コミ直後に買ってはいたんですよ……。「買ったけど感想書いてない本の山」がちょっと積み上がりすぎり、タスクが重なって感想書くのが遅れに遅れただけで……。

 

閑話休題。

Unnamed Memory After the end』シリーズの、逸脱者たちの話ですね。

時系列的にはate5ate6の間のエピソードになります。「アリアドネ」本編のネタバレは抑えめにするつもりですが、どうしても逸脱者周りのネタバレには触れることになるのでご注意ください。

 

 

舞台は『Fal-reisia』とかと同じ大陸ですね。

ate6P64あたりでサラッと触れられていた、約4800年ぶりのエギューラ症候群の発症者として生まれた少女シーライア=イーアの元に、記憶を取り戻した状態のオスカーが現れる……という形で今回の逸脱者たちは出会います。

 

オスカー、入院中のシーライアと出会ったときに初手で「結婚しよう」とか言っちゃったせいで、シーライアが退院して技術者として働き始めてからも交流があるみたいですけど、どうしても恋人関係とかまでは進展していない模様。

オスカーの方から連絡を入れたり、関係を断たないようにはしてるみたいですけど。

「貴方からの連絡は通知を切っている」と言いつつ、なんだかんだ食事には付き合ってくれたりするシーライアとのやり取り、好きだなぁ。

 

というか逸脱者の片方だけが記憶を取り戻しているときのやり取りが、初々しさがありつつもそれまでの積み重ねてきた時間がにじみ出る場面もあって、無限に味がするから好き。

……初期逸脱者はまだ「再会の喜び」とかがありましたけど、『アリアドネ』のate5ate6あたりの時期だと、危うさとかも垣間見えてハラハラもするんですけど。

エギューラ症候群は今のレイジルヴァ大陸では稀有な事例で……シーライアの家族をはじめとする多くの人の尽力で、過去の記録から「エギューラ症候群患者の対処法」を見つけて、多少の苦労はありつつも生活がおくれてるの凄いですよね。

オスカーが無理に手をかさず見守る構えを取っていたのもなんかわかる。

初手の接触でミスしてましたけど、このまま穏やかに距離を詰めていければいいなぁ……と思いつつ、そんな平和なエピソードは本にならないんだってしってる。

 

ただまぁ、Vol.1でシーライアもまだ記憶を取り戻していませんし、シーライアの家族がトラブルに巻き込まれてオスカーが助けに向かう、という割と平和な決着迎えたのは何よりでした。

ぽつぽつシリーズ刊行される予定らしいので、続きを楽しみに待ちたいですね。

 

Unnamed Memory after the end6

一つの区切りを迎える『Unnamed Memory after the end』第6巻。

今回はネタバレ満載の感想を書くので、ご了承の上ご覧ください。


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月の白さを知りてまどろむ2

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「充分よくしてもらってる だから… きっとここに帰ってきてくださいね」

「……了解した」

 

58話と描き下ろし8.5話、原作古宮先生の書下ろしSS『身辺調査』を収録した第2巻。

イーシアの似顔絵、上手いですねぇ。「そうそうこんな感じ」と身を乗り出してるサァリがとても可愛い。

暗躍してる人物が居て、神供の家系が狙われている。そんな中で、かつて取り逃がしてしまったものの「化生を生み出す呪術師」の存在を知るシシュが居たのはラッキーでしたね。

生み出された化生には特徴的な紋章が浮かぶから、仮面しているのもそれが理由だろう、と相手の手札を暴く過程を多少スキップ出来たわけですしね。

 

それを聞いたトーマが化生斬りとして動きだそうとして。

一番狙われるサァリと、王都から来た新参として警戒されているシシュを月白に留めておこうとしたわけですが。

2人とも事件が起きている中で黙っていられる性質でもなくて。

シシュの警戒を解くためにサァリが持ち出してきたのが、彼女の客に与えられる紐だったの、目的のためには手段を択ばないなサァリ……。

アイドには見られないでとは言ってましたが、そもそも他の人にもあまり見られない方が良かったのでは……? 鉄刃とか、まさに誤解する結果になってましたし。いやまぁ逆に間違ってないのか……?

 

王の巫から贈られた呪の掛けられた骨。そこから生じた犬によってシシュは敵を追いかけることに。……ミシロ先生がSNSで、この犬がポメラニアンだったバージョンのネタイラスト描いていて、シリアスぶち壊しだけどとても可愛くて良かったです。

 

そして巫としての力を持っていないサァリもまた、街を愛するがゆえに足を止めてはいられず。どうせこうなってしまうんだったら、まだシシュが連れて行った方がお互い無茶せず良かったのでは……? サァリの存在が明らかになって敵が動き出してしまうかもですけども。

シリアスシーンだけど、忍び込もうとして届かなくてぴょこぴょこしてるサァリが実に微笑ましかったですねぇ。……事情知ってからだと、一番危ないところに一番大切な宝が飛び込んでいく場面なので、とっても危ういですけど……。

 

アイリーデという街を狙った、南部のブナン侯の策略で……それに加担している裏切り者もいたわけですけども。アイドさぁ、拗らせすぎてて本当にもう……。

嫌いじゃないですけど、歪みすぎてて見てられないな、という気持ちにはなります。

神話として語られている、太陽を飲み込もうとした蛇を神が滅ぼし、その返礼として美酒と音楽と人肌を神に収めたことがアイリーデの始まりで……その物語は真実である、と。

蛇の毒に蝕まれた呪術師、神供三家が継いできたもの、王の思惑。そういったものが明らかになっていく展開が好きですね。

踊らされていたシシュがそれでも王への忠誠を譲らず……それでも寒さに震えるサァリの手を取ることも躊躇わないのが良いんですよね。

複雑な感情を抱いていながらサァリを助けるために動けなかったアイドとの対比が光る。いや、アイドも悪いやつでは……ありますけど。重いものを抱えていて歪んでて。繰り返しになってしまいますが、嫌いではないです。

巻末の『身辺調査』は、享楽街であるために一時滞在して去る人が多い中で、『戻る』と言ったシシュの事を喜んでるサァリが可愛くて良かったです。

Unnamed Memory8

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「さあ贖罪を始めましょう」

 

3943話を収録。

ティナーシャの魔力を使い、大陸全土に影響する魔法を行使しようとしたラナク。

彼がかつて使った禁呪で生まれた魔法湖……その際に用いた定義名もこの時明らかになるわけですが。

始まりに憐憫、2番目に嫉妬。3番目に否定、4番目に憧憬、5番目が憎悪。

暗黒時代に出来たトゥルダールの王族は、力によってえらばれた。王族として認められる力があったら、親元から連れてきて教育を受ける形になったわけですが。

ラナクはだから、はじめはそうやって連れてこられた年下の少女に憐憫を抱き……自分以上の才覚を示す少女に嫉妬し、否定したくなり、力を求めるようになり……最後には憎悪に満ちてあんな行いに至った、と解釈することが出来るわけです。

 

そしてその全てが明らかになったところで、ティナーシャが彼女の目的の為に動き出すわけです。

パシッと手を払いのけるシーン、実に良いですね。

……ラナクが魔法の眠りで400年を過ごし、長い年月を生きたことで精神的に不安定になっていると示した上で、断片的でもその400年をしっかり生きて来たティナーシャの在り方見せてくるの、重い……。

憎悪で動けなかった彼女が、100年で何とかそれを封じ込めて、塔を築いて達成者との交流をすることで、少しずつ人を好きになれたというの良いですよねぇ。

18Pのこれまでの達成者が階段の先に進んで行く中で、ティナーシャは階段に座って動かず……そもそも、ティナーシャの座っている隣の段から断絶を示すように欠けている、というのが魔女ティナーシャのこれまでの生を示してて、寂しさもありつつ良い画だなぁとも思います。

全てが終わった後、彼女が階段の先に進む描写もされているのまで合わせて好き。

 

ティナーシャの目的は、魔法湖に囚われたかつての民の魂の解放。

そのためにラナクの構成を組み替えて動けなくなっていたところを、オスカーが庇う構図は熱かったですね。

軍勢を滅ぼして調子に乗ったのかは知りませんが、オスカーを舐めたクスクルの魔法士長バルダロスがあっさり切り捨てられるのは痛快で好きです。

コミカライズでオスカーがラナクに最後の問いかけを投げた時、ラナクがどんな顔をしているのか描かれたのは味わい深かった。いろんな感情が入り混じってるのが伺える良い顔でしたね……。

 

そして全てが終わった後の、第42話の扉絵がよかったですねぇ。円柱に幼少期のティナーシャと、成長した彼女が背中合わせで座っている構図。本編のティナーシャが覚悟決めた目をしているのに対し、扉絵のティナーシャは幼少期は楽しそうだし、成長した方は穏やかな顔しているのが、抱えていた荷物を降ろせた安堵を感じてよい。

無事に帰ってこられて、その後オスカーに触れていいかと聞いて抱き着くくらいには愛着があるのに「婚約者という事になってる」と言われて「なんでだよ!」とツッコミ入れるのが実にティナーシャ……。

 

そして8巻最後のエピソードがルクレツィアの媚薬菓子事件なの、日常戻ってきたエピソードとして良かったですけど、温度差に笑った。

いや、好きな話なんですけどね。ルクレツィアがティナーシャに探してもらった指輪、いろんな感情がこもってるものだったわけですし。

Unnamed Memory7

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「親父殿 駆け引きは不要だ 俺は既に決めている」

「負ける気はないし 何かを手放すつもりはない」

 

3438話を収録。

帯文が「俺は花嫁(ティナーシャ)を取り戻す」なのが、オスカーの重さを感じて好き。

オスカーができる事をしている中で、ファルサスに2通の書状が届いて状況が動くことに。

一つは、タァイーリから。クスクルからの攻勢が激しいので救援要請。

内紛にどこまで手を出すべきか、という意見も出てましたが……同時に届いたクスクル側の手紙には、周辺の国に「クスクルに従属しろ」と宣言するもので。

更にクスクルに与したティナーシャによって、都市の住人が消失する事件まで起きて、アカーシアの剣士であるオスカーに魔女討伐の依頼まで合わせて持ち込まれることになったわけですが。

 

その上で、オスカーは諦めない道を選ぶの良いですよね。

彼の父であるケヴィンも息子を試すような物言いをして、決意が揺らがないのを確かめた上で、王位を譲ることを決めて。

……原作読んでいると、ここでケヴィンが零している「血筋かな」というの、彼も彼でファルサス王族なんだよなぁ……って思いが強くなるので地味だけど好きなセリフです。

 

タァイーリ、魔法士迫害をしているから魔法攻撃に弱いの、納得できる話ではありますが。大国が派遣した軍勢が、魔法士によって壊滅させられたというのは周辺国の意識を変えるのには十分で。

母が行方不明になった少年から、魔女を殺す気がないのかと詰められた時、「よく考えろ」と諭しつつ、自分の推測が間違っていたらその時は魔女を殺すというあたり、信じる部分と決断して切り捨てる部分の線引きがハッキリしてますよねぇ、オスカー。あまりにも王族として覚悟が決まってる。

 

この大陸にいる「魔女はなぜ魔女なのか」。つまり長く生きている高魔力持ちはなぜ全て女なのか、という問いかけなんですが……男は魔力的には不安定で、長く生きるのには向かない、という話で。

理想を語るラナクが精神に影響を受けているというのが、もう怖くてしょうがないよな……。

 

オスカーとティナーシャそれぞれの覚悟の決まり方を見ると、タァイーリのルスト王子とか魔法士排除を謳う国に育ち、常識を揺るがすティナーシャの言葉を全て否定しないあたり素質は感じますが……。

ティナーシャを完全に信じたわけでもなく迷いの中にある中で、援軍要請しておきながらティナーシャの言葉に従ってのらりくらりと誤魔化してたの、悪手だよなぁ……としみじみ思いました。

なんならティナーシャ達との戦いに発展しそうになった時、ティナーシャを逃がそうとオスカーに切りかかってましたが、王子が要請に従ってきた他国の王に切りかかるとか国際問題待ったなしでは……。

オスカーも招待無しで王子の私室に踏み込んだりしてますが、釣り合わんだろ感が強い。

 

とは言え、ルクレツィアも言っていましたが、ティナーシャにとって重要なタイミングでオスカーが居あわせたのは運命的ですよねぇ。

色んな思惑がまじりあった結果、ラナクが新しい秩序を作ろうとする瞬間にオスカー達は間に合ったわけですし。

あとは表紙絵になっているティナーシャが白い花嫁衣裳来てて、扉絵で黒いドレス来てるのどちらも似合ってて良かったですね。

Unnamed Memory after the end5

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「ティナーシャ、人であることを忘れるな。一人で全てをやろうとするな。酷なことだろうが……お前は人をやめてしまうには力が大きすぎる」

 

書き下ろしエピソードである「円卓の魔女」とWEBで掲載していたエピソードに加筆した「鳥籠の女」の2編を収録したate5巻。

水の魔女カサンドラに、屍人姫ヒルディア・ハーヴェにイラスト着いたのは個人的に凄い嬉しいポイントでしたね。

 

今回は表紙絵がティナーシャ1人で描かれている通り、逸脱者2人の協力はほとんど見られません。

「円卓の魔女」においてはオスカーまだ死んでるタイミングで、たまたまティナーシャがルクレツィアに会いに行ったときに、魔法大陸で起きている不穏な事件の話を聞いて解決しようとする話だったわけですし。

オスカーがエルテリアの繰り返し以外に、アカーシアを生んだ世界外の力を取り込んでいることで、呪具に対して特効を持っているのに対して、ティナーシャはその膨大な力でごり押ししている部分もあって。途中話題にあがってましたが、今回の呪具もオスカーが活動可能な状態だったら、もう少し楽だったんだとは思います。

ただ、呪具へのカウンターとして生み出された逸脱者2人は、呪具が減るにつれて生まれ変わりのサイクルに間があくようになっていて……だから、今回みたいな状況も珍しくなくなってしまうんですよね。悲しい。

 

事故で海中に沈み、近ごろ魔法大陸に運び込まれたことで、これまでティナーシャ達の探索から結果的に逃れていた、銀色の円卓。

13人の参加者を集め、そのメンバーに『ある都市の滅亡を回避する方法』を考えさせる呪具。ルール説明と、シミュレーションを走らせた後の結果を伝えるために、ゲームマスター的な人格が付与されていたのが、今まで例のない特殊な存在ではありましたね。

一般の参加者がどれだけ模索しても、シミュレーションの答えは「滅亡」から変化せず……。最後には呪具の意思によって排除されてしまう。

 

そしてティナーシャは一度介入した時に、呪具の意思が排除を成したときに笑うのを感じた。

彼女の片翼であるオスカーは「人の尊厳を傷つけられた」と感じたから、この長い呪具の戦いに臨んだのだ、と。だから、まさに尊厳を傷つけまくっている呪具を放置は出来ないと戦いを決めるの、良いですよねぇ。

……その解決方法が、自分の魔力に耐えられる12人を揃えて力技でごりおすだったのが実にティナーシャらしいですけど。

ルクレツィアは死ねないから助力できないといいつつ、ティナーシャが失敗した時に備えてオスカーに伝えるための情報を残していくように言ったり、彼女なりに動いて援軍に声をかけてくれていたのは良かった。

 

ファルサスに継承されたトゥルダールの精霊たちもそのほとんどが元の位階に戻っていて。さらには、その中の何人かは死んでいたというのがサラッと描かれていたりするの、無常だけど誠実だとも感じます。

12人の精霊のうち、1人はまだファルサスに残っている。3人は死んだ。そして残った8人を召喚して。逸脱の繰り返しの中で縁の出来た最上位魔族第二位ツィリーも招くことに。

 

ツィリー……元第2位がオスカーに執着したことでティナーシャに殺され、複数の位階が揺らいだことでバランスをとるために生まれた魔族なんですよね。

過去、同人誌『時の夢』収録の「猫の爪」や『時の夢2』の「寧日」なんかでその断片的なエピソードが描かれていて、その当時はオスカーに執着して殺された前後なので、まだまだワガママな子供って感じだったんですよね。

それが1人でも立てる立派な女王様みたいな風格を持って登場したので、驚きました。ティナーシャと相性悪いのは相変わらずみたいでしたけど、自分の助力について「見返りがあるからやったなんて恥ずかしいでしょ」と伝えないで良いと言った事とか、本当に成長していて……良かったですね。

精霊8人、ツィリーとティナーシャで10人。そしてティナーシャが出した求人になんかうっかり伝承で語られるような厄介ごとでもある「屍人姫ヒルディア」が応募してきて。彼女と彼女の従者を配置することで2枠を埋めて。

 

……そして、ルクレツィアが参加できない代わりってわけじゃないですけど、生き残ってる他の魔女2人が協力してくれることになったのは良かったですね。

ラヴィニアが参加者として。そして外れない占いをするカサンドラが盤外の応援として。

 

人外大決戦みたいになってて、凄いワクワクしました。

今回、呪具側に意思があることで、その悪意みたいなものもあからさまに受けることになったわけですが。

「ある都市の滅亡を回避したい」が思考会議のゴールなら「先んじて他の都市を滅ぼしてしまうのもアリでは?」とか、過激な提案してるのちょっと笑った。

イツとかに指摘されていましたが、状況を都度修正出来ないあたりが悪辣ですよね。

参加者が意見を出せるのは「こういう方針で進めよう」という最初の一手だけで、その後は呪具の演算まかせ。シミュレート結果は「複数パターン試しけど無理でした」ばかりで詳細は秘匿されている。

呪具は全てのパターンは網羅していると豪語しますが、性能限界で滅亡の50年前からしか演算が出来なかったり、「滅びる前に滅ぼせ」という過激なスタート地点には驚いていたりするので、全然完全じゃないんですよね。……完全だったらそもそも彼らの故郷滅んじゃないでしょうけども。

 

核に迫ってもなお足掻く呪具に、ヒルディアが提案をすることで「破壊への抵抗」ではなく「呪具本来の機能」で動こうとして隙を作るの、凄い好みの解決方法でしたね……。

強力な参加者をあつめてなお呪具は厄介で……ラヴィニアの命が代償になってしまったのは、惜しい。

死に瀕した中でも、ティナーシャに「お前は人だ」と祈りを託すように、母が子を教え諭すように言葉を紡いでくれたの、良かったですね……。別れは寂しいですけど。

 

魔法大陸の暦で考えた時に「円卓の魔女」は3005年と、UM165455年だったことを想うと、とても長い旅を続けて来たなぁ……という思いになります。

「鳥籠の女」なんて一気に時間が飛んで4690年代ですからね……。逸脱した2人は、元々最強の魔女とそれに対抗しうる魔女殺しの剣の遣い手であったわけですが。これまでの繰り返しから示すように、無敵じゃないし普通に死ぬんですよね。

永遠なんてない。全ての物には必ず終わりがある。……それは、彼らの旅の始まりであったファルサスが滅亡してることからも、伺える話です。WEB既読民として知ってましたけど、年表に明示されるときまで追いついてしまったか……と感慨深くなった。

 

さて、後半「鳥籠の女」。魔法大陸、戦乱大陸(東の大陸)、虚無大陸、埋没の大陸……とこれまで4つの大陸を渡り歩いてきたわけですが。

最後となる、埋没の大陸と同じく水の檻で閉ざされた閉鎖大陸が舞台となるエピソードです。

大陸内には毒が満ち、鍵という装置がないと死んでしまうとされる世界で、帝国の軍人として勤めるアルファスと、皇帝の前に現れて鳥籠と呼ばれる檻に敢えて滞在しているティナーシャの話。

ティナーシャと接触しまくってて、オスカーの肉体年齢も全盛期に近そうなのに、いつまで経っても記憶を取り戻す素振りがなく。

 

そんな中で、ティナーシャは別の人物と組んでクーデターに寄与したりと好き勝手やっている、なんか変わった味わいのあるエピソードなんですが。

この大陸の楔に迫る戦いにティナーシャが与していたのは、結局のところ彼女の連れ合いの為だった、と。

1600年近くたっているとはいえ、この前のエピソードの「円卓の魔女」で「一人でやるな」とラヴィニアに言われていたのに、一人でやろうとしまくってるティナーシャは本当にさぁ……。

 

「章外:青の部屋」が、好きなんですよね。オスカーが記憶を取り戻し、勝手をしていたティナーシャに、「2度とするな」と釘をさす話ではありますけど。彼が語る「一番うれしかった時」が、公人としての割合が強すぎるオスカーが我欲を珍しく示すシーンで、かなり好きだったので、しっかり収録されてて嬉しかったです。

まぁティナーシャもラヴィニアの指摘をスルーして一人でやったわけですが。オスカーはオスカーで、ate2の頃、ティナーシャを失った後にミラに言われた「ティナーシャ様がいないと何もなくなっちゃうところ、もっとあの方に見せた方が良いよ」ってのを明示してこなかったわけですから、似た者同士でもあるんですが……。

Ate6で、のこった2つの呪具にまつわるエピソードが描かれることで、物語に一つの決着がつこうとしているの、なんというかひどく感慨深いですね……。

楽しみです。Ate6の後に、『End of Memory』も描かれてくれると凄い嬉しいですけど、どうなりますかねぇ。

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
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