気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

同人誌

ほんとはもっと、したいだけ

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「ま 小暦ちゃんなりの考えがあるんやろ 信じて待ってあげや恋人やん」

「うん……そうだね 私が信じてあげないとだよね」

 

2024年冬コミ新刊の百合漫画同人誌。

表紙の黒髪の女性が椎名弥子。デザイン会社に勤めており、表紙に居るもう一人の女性……学生時代の後輩・日南小暦 と恋人関係にあった。

小暦は在学中に漫画の賞をとり、卒業と同時に商業連載を始めたとか。

漫画の才能は有ったみたいですけど、連載って過酷だっていいますからね……弥子がたまたま連絡をとった時、ちょうど無理がたたって生活が破綻した状況になってて。

 

弥子が世話を焼く日々を続けていたところ、小暦から告白されて付き合うことになって。

そこから同棲をスタートし、喧嘩もせず順調に交際を続け、ついに小暦から誘われて一線を越えることに。

可愛い恋人の姿に弥子さんは理性を抑えられず……小暦が意識を失うまで暴走してしまったわけです。

その翌日からギクシャクしてしまって……経験者な弥子は、昔の知り合いに相談に行ったりとかしてましたが。

 

……実は小暦が行為の翌日から様子がおかしかった理由、タイトルで明示されてるんですよね……。

告白も、先に進もうって提案も小暦の方からだったわけですし、割と行動的なタイプなんですよね小暦。

そんな彼女を受け入れたいと思う弥子も良いですよねぇ……末永くイチャイチャしてほしい。

奇跡の魔鳥は錬金術士の夢を見る2

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「……悩ましいんだ」

「失うのが惜しいものがかかっていたら、悩むだろう。動かない間は失わずに済む。お前の言う通り不誠実だがな」

「失うって、どういうこと? イルミナさんの気持ちは決まってるんだから、あとはニア次第でしょ?」

それだけで済むなら迷っていない。

 

ダンジョン討伐を終えてスタンピード問題も解決したことで、平穏を取り戻しつつあるノーウィットの街。

領主の言を伝える使用人が、結界装置をつくる錬金術師相手に「素材の使用量が買取規定の額を超えた分は自己負担」とか言ってくるあたり、不正してそうな気配が強そうでしたけど。

無事にスタンピードを乗り切ったことで、リージェが錬金術師協会に出していた苦情がまわりまわって不正を暴き、領主が変わることになったとか。

一度は街を見捨てるに等しい決断をした国と協会ですけど、無事に解決したからにはちゃんと仕事をするあたり、罷免された領主よりはマシだったみたいですね。

 

次が決まるまでの繋ぎなのかもしれないが、新たに赴任してくる領主がカルティエラ第三王女と言う話をリージェから聞くニアよ。

リージェにもツッコミ入れられてましたけど、世俗に疎すぎる。

素材にこだわらずリージェでもB+評価のヒールポーションを作れるようになっていましたが。

 

錬金術師になれるだけで、結構な才能が必要と言われる世界みたいですが。

そんな中でもリージェは、最高峰と言われる亡き祖母からの指導を受け、比較されて落ち

こぼれ扱いされていても王宮錬金術師になれる程度の実力はある。

錬金術師の中でも、言い方はアレですけどちょうどいいレベルの人材だったんですよね。伸びしろはあるし、職業故の地位はあっても平民なのもあって視点は民に近いし。ニアに色々常識を教えてくれる相手として頼もしい。

ニアの事慕う気持ちも芽生え始めてるみたいですし、それ抜きにしても属性感知とかの指導を受けて師匠と慕ってる相手なので裏切るなんてことも無いだろうし。

 

王女様がやってくることで、王宮錬金術師のトリーシアやイルミナも滞在期間を延長することになったり。結界を作り上げた錬金術師たちということで、ニアはリージェに表向きの功績を押し付けようとしてましたが……トリーシアのように、薄々察してる人はいて。

というかトリーシアは自分の実力を過信せず、ニアの助力があってこその成功だ、と思っているあたりの目利きは確かなんですよね。

 

ただ、自分が満足できないからと表向き機器洗浄しかしてないニアを式典に引っ張り出す事を決定事項として通達してきたり、いろんな基準が貴族的すぎる。ニアが魔物であること隠して目立たず生きたいと思ってるのと、相性悪いんですよね。

まぁトリーシアも悪い子ではないというか、リージェ宛の見捨てる通達を見つつも足掻いてできる事やる気概はあったし、ニアが迷惑がっているの察知してちょっと気まずそうになってたりとか、これまで彼女の周りに居なかったタイプで判断間違えやすいという点は同情できなくはない。

でもリージェが有志として来てなかったらノーウィットの街壊滅してたかもな……とは思いましたね。

 

ニアの作ったポーション、透明感とかから素人目にも「違う」ことが分かる代物らしくて、近隣の街グラージェスに赴いた時に転売されてるっぽいのを目撃して「出来の良さがバレてる」ことが明らかになったり。
王女付きっぽい、魔物とのハーフな双子の少女騎士シェルマとリュフマに、「稀有な経験をしたな」と助言をついしてしまったり。

第三王女殿下と交流した結果、なぜか兄のように慕われることになったりと。ニアの周囲は、スタンピード騒動以前とは打って変わってにぎやかになっていくわけです。
隠していた羽を公にして表向きはハーフと言う扱いになったりだとか、望まない変化もおきつつ……まだ踏ん切りがつかない部分もありつつも、変化する方向へ進み始めてるんですよね。

そんな中で、魔物側に神人と呼ばれる存在が降臨して活発になったりだとか色々起きているので、休まる暇がないんですが。……功績も、上げやすそうだから、なんとかプラスにしたいものですね。 

巻末SSは「第三王女の秘密の日記」、「愛ならいいけど恋じゃダメ?」を収録。

「愛なら~」の方がリージェ視点で彼女の胸中が描かれているので、良かったです。

奇跡の魔鳥は錬金術士の夢を見る1

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「ニアさんは多分、真面目に考えてくれる人だから」

「……」

なぜ、たった今思ったことが分かる?

「答えが分かったら、教えてほしいな」

 

WEBで連載しているシリーズを作者さんが電子書籍化して頒布している同人誌(BOOKWALKER上の分類はラノベ)。なのでイラストも表紙と、カラーのキャラ紹介口絵だけで挿絵はなし。

主人公のニアは、ダンジョンから生まれたフォニアと呼ばれる魔鳥だった。進化したフォニア種の声は神々さえ魅了すると言われる、綺麗な声を持つだけの魔物ではあれど無害な鳥だったわけですが。

 

ある日、小さな村に近付いた時なにか惹かれるものを感じ……そこで「錬金術」という、反発するはずの魔力と神力を融合させ素材を変質させる技術を教えている老婆と孫娘を目撃して。

そこから「錬金術」にほれ込んだニアでしたが……鳥の姿では、繊細な調合を行うことは難しかった。

上位種族のフォルトルナーに進化できるまで鍛えて、耳元に羽残ってしまう不完全な形ながら人に化ける術を習得して。

 

魔物を探知する結界の弱い辺鄙な町に入り込んで、錬金術師として活動を始めるわけです。

進化したことで「神々さえ魅了する」と言われる声の力も強まってしまって。出来るだけ力を抑えるようにはしているけど、漏れ出るものはあって……極力喋らないようにふるまっていた。

研究が楽しくてやっているタイプであるみたいですし、自分が魔物であることも相まって安定して高品質のポーションとかを作れるみたいですけど、目立たないようにランクの低いものを納品するようにしていた。

ただ採取の時とか、他の人が驚く素振りを見せたりしてたので、なんというか隠しきれてない感じはありそう。

 

種族特性か、かなり詳細に含有魔力とかを分析することが出来る彼の作る「低ランク品」は効能良さそうでしたしね……。

巻末書下ろしが「商業ギルド納品部、受付担当者の決意」だったんですけど。町にいるもう一人の錬金術師はランクにムラがあるのに、いつも安定した品質のものを一定量持ってくるニアのことを見て、多分もって凄い事できるんだろうな……って察してましたしね。

 

そんなある日、ニアが暮らしている町の近くに新たなダンジョンが発生して。

王都から人員が派遣されてきて、錬金術師であるニアに絡んでくるバカが出たり、結界更新の話がでてニアの好まない雑務が増えていくわけですが。

頼れる王宮騎士の少女イルミナや、かつて自分が目撃した錬金術を学んでいた孫娘であるところリージェと再会するなど、良い出会いもあって……それによってニアも少しずつ態度を軟化させていってるのが良いんですよね。

 

ただ領主は愚物で、街が壊滅するかもしれない状況下で結界更新に必要な機材を作るためのレシピを公開し、素材も最低限は渡すが買取価格を超えた分は自己負担とか言い出すし。

それをリージェが錬金術協会に報告したら、「事後調査する」という、町を見捨てるのと同義の連絡が来るし。

ニア良い出会いも経験してるけど、同時に人間の愚かさにも巻き込まれまくってるんですよね……。

当人、自分のやりたい事に素直なタイプなのであまり気にしてない……というか。

魔物姿を見られたイルミナが、初遭遇時にちょっとトラブったけどそれ以降はお互いに心配しあう良い関係になれたこともあってか、気に掛けてるんですよね。そうやって気に入ってる相手が無事であるように、出来る事をやっていくのが良いですね。ニア、信頼できる仕事人って感じで結構好きです。

各々が出来ることを尽くしたことでダンジョン出現からの騒動を乗り切れたのは何よりでした。

そしてもう一つの巻末SSで、ニアとイルミナとリージェの3人で無事に乗り切れたことを祝う打ち上げをする「ささやかで贅沢な祝勝会」があって、この時点でのイルミナ達の心境とかも知れたのは良かったですね。

もなかとわたあめ

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「趣味だけど?」

「わ~やっぱそうなんだ!!

 そっかー! カッコイイね!!」

 

ウルトラジャンプに掲載された読み切り……を、SNSで公開されていた時に見て好きになったんですよねー。

読み切りに加えて旧Twitterで公開していたラフだったり、ファンボックス公開エピソードに描き下ろしを加えた同人誌。

 

高校二年生男子の最中樹(もなか たつき)くん。

彼にはとある趣味があった。それは着物を着て喫茶店などで穏やかなひと時を過ごす事。

ただ着物を着ているだけではなく……いわゆる女装をしているんですよね。

短編の合間にちょっとしたコラム的に書かれていましたけど、別に性自認が女性ってわけではなく、「女性の格好がしたい」だけ。隠したいわけでも、黙って女性のグループに潜り込みたいとかそういうわけでもない。

あくまで趣味なんですよね。でも、自分用の着物を買って、祖母の使っていた小物を借りてコーディネートしたり、趣味だからこそしっかり準備してるのは好感が持てる。

 

幼少期から女性用の服装に興味があって。ただ、周囲の理解が得られないことにもすぐ気づいたので、週末にこっそり和装で出かけるのを楽しんでいた。

そんなある日、喫茶店から出たところで同じクラスの女子グループとすれ違ってしまって。内心ドキドキしながらも、素知らぬ顔でやり過ごした……つもりだった。

しかし翌日、そのグループに居たギャル・綿雲飴里が「昨日の和装の人、最中でしょ」と話しかけてきて。

メイクに本気だという彼女は、最中の変装を見破っていて。それを公言するでもなく、趣味で好きな格好をしている彼を「変だ」と切り捨てることもなく。

カッコイイと言って、「好きに純粋なの、良いね」と認めてくれるの良いですねぇ。

飴里、他の人の良いところ認めるのは得意みたいですけど、自分の中で「コレ」という軸がないことに悩んでいる部分もあるとかで……そんな彼女の、初めての和装を最中が選んで着て、「めっちゃ元気出た」と言ってるのがいいんですよね。

最中や飴里がお互いに刺さる言葉を自然に出しているのが尊いんですよ。

 

……ここまで読み切りパートの話しかしてないんですけど、やっぱり好きだなぁと思いました。

女装している彼を「最中」と呼ぶとバレてしまうだろうから、とあずきってあだ名をつけて。それから飴里の心に「あずき」のスペースが出来ているのが良いんですよね。

他の女友達と出かけているときにネイルでダスティローズという色が、あずき色っぽいなぁ……って手に取ったりしてますし。

最中も飴里という友達が出来たことで少し世界が広がっていましたし。

 

飴里、自分でも調べて和装を着られるようになって。当人曰く「ありあわせ」でもカワイイ格好になっているのは、それまでの積み重ねというかセンスの賜物だなぁ……という感じ。

飴里は最中の「和装&女装」を受けれいてくれたけど、分かってくれる人ばかりではない。だから、飴里の他の女友達とは会わない。「言わなければよいんじゃ?」って言う飴里に「友人として会うなら、男って言わないのは対等じゃない」って言う最中君、自分なりの芯がハッキリしてて良いですね。


メロンブックス通販にあった同人誌は在庫なくなってましたが、読み切りパートは先生のpixivに掲載があったので、参考程度に。
(2025/5/1追記)明日5/2に電子版が発売するみたいですー。オススメなのでどうぞー。




NEOEZO RECORD ブルークロスの純愛/レッドストランドの崩壊 設定資料集

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「ようこそ、ネオエゾシマへ。」

 

かえる3号さん製作のマーダーミステリー「ブルークロスの純愛」、マーダーミステリー×TRPG「レッドストランドの崩壊」。

別々の遊戯ではありますが、同じ世界を舞台にしたサイバーパンク要素のある作品ですね。「ブルークロスの純愛」の方は何回かGMやったりしてる好きな作品です。「レッドストランドの崩壊」も動画見たし、シナリオ買わせてもらってはいるんですがまだGMは出来てないので、いつかはやりたいですねぇ……。

 

設定資料集なので、各キャラのイラストだったり初稿のラフバージョンとか色々見られるのは楽しいですね。

イラストのオ田先生からのコメントもあって「あざといかわいさを大事にした」とか、頷ける部分が多くて良かった。ブルークロスのキャラだと、女ホークアイとか女ワビサビとかのデザインが好きです。マエストロは逆にごつい男バージョンの方が好きだし、スネークも男のマント?的なので姿隠してる男バージョンの方が好み。

 

シナリオの背景設定だとか、「このキャラはこういう方向性でつくりました」と言った製作者のひと言コメントがあったり、各カードの解説がゲームの盤面にある説明じゃなくて

設定に寄ったフレーバーテキストになっていたのも、個人的には熱かった。こういう感じの情報開示、大好きなんですよねー。

とあるカードの解説が「作中屈指の迷情報」と書かれているのは笑ったし。

P27のホークアイのロジックチェイン「ブラックボックス」の内容が、P25の実験室の「部屋の構造」と同じになってるからここは誤植かな……。

製作背景についても簡単に描かれていましたが、好評を貰ってるらしい盤面デザインや演出面もギリギリまで調整していたとかで、苦労の一端が伺えましたね……。

かえる3号さんと昔から遊んでる方々の対談では、こだわりが凄いのは長所だけどやりすぎと感じる部分もあり、短所でもあると指摘してくれてたのは良い関係だなぁと思うなどしました。

 

レッドストランドの崩壊ではmuraryoさんのイラストコメントがあって、女ギークがお姉さんらしさを出してるとか、ルーキーが男女で違うイメージで作ってるところとか、そういう部分が分かるの良かったですね。女ルーキー、初期稿のデザイン好きだなぁ。

レッドストランドのカード解説(フレーバーテキスト)、「怪文書が目立つ」とか書かれていたりするのが笑いを誘う。

そして設定資料集として世界観解説といいますか、2作品の繋がりについて語っている章があったのも嬉しかったですねぇ。設定大好き。

Hiten illustration book Vol.19 W AestheticⅢ

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2024冬コミ新刊。Hiten先生のイラストブック。

透明感のある雰囲気とか、色使いがやっぱり好きなんですよねー。

表紙イラストにもなっている「梅が香」が良かったです。解説でも「淡い雰囲気に仕上げました」と書かれていましたが、うん、確かに淡いってこういう感じかなぁ……と肯いてます。

ピンクの花と、着物の寒色系の色味が良い味出してて好き。

 

その次に載っているのが「晩秋」で紅葉の背景と、お堂の床?的なところに座っている着物姿の少女の画。紅葉の色で全体的には明るいのに、ちょっと下向いていたり、座っている向きとかで少女には影が結構かかっているのがメリハリ効いてて好き。

次が見開きで「雪景色」となって、季節が進んで行ってるのも楽しい。どの季節も、温度を感じそうな雰囲気がある。

冬の後に「金魚水槽」が来て、これは特に季節明示されてませんが、なんとなく金魚すくいとかで夏祭りイメージがあるんですよねぇ。春秋冬と来てるのもあって夏の味を勝手に感じてる。

 

その後、「和洋浪漫」で大正ロマン的な衣装をイメージしつつアレンジは言った服を来た2人の少女のイラスト。緑の子の服のデザインが好きです。ピンクの子の降格が少し上がってる感じなのも好き。

「春の訪れ」は「梅に鶯」からの発送で巫女服姿の女性の指に鶯止まって一瞬を切り取っている感じが良い。

「更なる情熱」は、色気のある絵と解説に書かれている通り、恋人同士の距離間を感じて好きです。

最後に掲載されていたのがあみあみ様のマスコットキャラクターの「あみこ」の描き下ろしイラスト「願い」。七夕モチーフなのが良くわかる涼し気な絵でしたね。

Unnamed Memory 虚ろ月

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「誰のことも見たことないんですけど。人を好きになるってどういう気持ちなんですか?」

「そこからか……」

(略)

「お前にいつも幸せでいて欲しいという感情だな。その時に一番近くにいたい」

 

C1052024年冬コミ)合わせの新刊。

事前情報で消滅史っていうところだけ聞いていて、タイトルがこの「虚ろ月」という者だったので、悲惨なタイプの消滅史だったらどうしようかと思っていたんですが。

実際問題、ティナーシャが再会するまえにラナクが死んでしまって、彼女が魔女として長くを生きてまで成したかった魔法湖の昇華が叶わなくなってしまった。

 

そのため、もう死にたいな……という絶望にティナーシャが浸っていたところに、魔女の塔に呪われた状態のオスカーがやってきて。

下見のつもりだったけど、塔の解体を考えているとティナーシャが口走ったことで、そのまま挑戦することに。1度目は流石に無理で、塔の外壁を伝って降りたとか無茶するなぁって感じではある。

その後2度目の挑戦で制覇しているあたり、特訓は怠ってないんですよね……。

「死にたい」なんて絶望を負っているティナーシャ相手に、適度に距離をとって無理に踏み込まず、パーフェクトコミュニケーションをとっているオスカーはお見事でした。

 

魔法視の特訓で猫使われているのがなんか和んだ。

不可視で周囲をうろつくから、それをキャッチするのを頑張るという特訓を選んだ理由が「猫を捕まえると嬉しいから」なの可愛いなティナーシャ。人懐っこい猫だと、実際和みますけども。早く察知できれば前足側を掴める、ちゃんと習熟しないと無理なあたり特訓として効果的なのも笑えるポイントですが。

ティナーシャ、いつものルートよりも死を望んでいるからか、ラヴィニアに会いに行くハードルが低いのがなぁ。本編だと、出会った時期が早くてラナク生存の可能性がまだあったのもあって「ただの契約者だから、魔女と戦うまでではない」みたいな距離感だったハズなのに。

ラヴィニアから魔法球の存在をティナーシャが聞いて、それでも使わないことを選んで。

定義名が分からずどうしようもないはずの魔法湖に対して、オスカーなりにできる事をしていたり。普段と違う選択を見られるのは、消滅史ならではで……いつか失われるのが確定しているとしても、とても良いエピソードでした。

タイトルに「虚ろ」とか入ってるので、零れた灰みたいに闇よりだったら怖いなぁとは思っていたんですが(闇消滅史は闇消滅史で好きですけども)、読了後どこか温かい気持ちになれたので良かった。

 

Invitation ――Unnamed Memory 現パロ再録本

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「あんたさ、それって恋人って言うんじゃないの?」

「えっ?」

頭の中大混乱の彼女が、「よそからどう見えようと違うと思えば違う」という結論にたどり着くのは、この十五分後のことである。

 

2411月のコミティアで頒布された、古宮先生の同人誌。

電撃の新文芸から書籍化された『Unnamed Memory』や『Babel』は「―world memoriae―」シリーズに属する作品なんですが、それらのキャラが登場する現代パロディとして『Babel学園』というのを古宮先生は過去にWEBで書かれていたんですよね。

(なお、『月の白さを知りてまどろむ』こと月白にも現パロが存在したりもしますけど、月白は『―world memoriae―』シリーズに含まれないので注意)。

 

で、『Babel学園』とある通り舞台はとある高等学校。雫とかが通っていたり、ラルスが教師だったり。エリクは教育実習生とかで来てたんだったかな? みたいな形だった気がします。

非書籍化作品『Rotted-s』のアーシェやレアのエピソードもありましたけど、レアは年上なので大学生だからアーシェ以外との絡みは基本無かったような。『Babel学園』を読んだ記憶もちょっと薄れて来てるのでちょい自信ない部分もあります。

 

閑話休題。

今回再録されたのは、そんな現代パロディ時空で『Unnamed Memory』のオスカーとティナーシャに焦点を当てたエピソード。『Babel学園マイナス』と題して描かれていたものですね。

あとがきにもありましたが、あくまで先に『Babel学園』があってその時代には夫婦になっている二人が結婚するまでの過去を描いたものなので、マイナスってついてるんですなー。

 

最初の一文というか章の区切りからして「結婚式まであと1011日」とかですからね! ざっくり2年半。『Unnamed Memory』本編では1年の契約期間の間に関係が劇的に進んで行ったのを想うと長いですけど、400年精霊術士を拗らせたりしてなくてもティナーシャは彼女らしい感性で生きているので、まぁ野良猫を懐かせるのには時間かかるよね……感。

 

オスカーは学園の理事長の家に生まれた青年で、作中開始時点ではまだ仕事を手伝ってるけど理事長に就任はしてない状況。

ティナーシャはその大学に通っている一学生だったわけですが、縁が出来てからオスカーが少しずつ距離を縮めていってるのは相変わらずの2人のやり取りでしたね。

ティナーシャの父母が健在だったり、現パロならではのほのぼのエピソードが多くて、終始ニコニコ読み進められて、本編も好きですが2人のキャラそのものも大好きなので、現パロで違う味わいの物語楽しめるのはやっぱり良いですね。

押しの強い後輩の話1

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「冗談と本気の区別もつかねーのか 何年オレのこと見てたんだバカ」

2年です……」

 

タイトル通りの作品。

朝見美雨という、中学時代に痴漢から助けられたことで彼女に立候補するともうアピールしてきた少女に付きまとわれている主人公の白鋼尚也。

なんと彼を追いかけて同じ高校にも進学してくるほどで……学年が違うとなかなか交流の機会ってのは無いものですが、美雨ちゃんはその行動力でグイグイ会いに行ってアピールを続けて。

 

2年もそんなアピールを続けた結果、先輩が絆されて恋人関係になろうか、と言ってもらえたわけですけど。

これまで押しても押してもビクともしなかった先輩の壁が崩れたことで、実は美雨ちゃん自身は押しに弱いことが発覚。

照れ過ぎた結果として逃げてしまってましたけど。……逃げたあとも返事保留したままアピールしに行ってるの、なるほど押しが強い。さすがにちょっと距離が遠くなったりもしてましたが、まぁあんまり長く停滞させずサクッと交際関係になったのは良かった。

 

そうやって恋人関係になったわけですが。2年間の塩対応に慣れて、甘くされると限界を迎えてしまうというのが、かわいいなぁ……。

先輩の方も受け入れた後はグイグイ攻めていくので、可愛いところが頻繁にみられるの良いですね。

美雨ちゃん、付き合う前は先輩のバイト先にお客としてあししげく通っていて、付き合い始めてからは一緒に働き始めたりして、まぁ割とストーカー評価間違ってないんですけど。その一途さで先輩の壁壊したからまぁまぁ……。

no-seen flower ガイドブック“Closed Garden”

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「だからちょっと引きずり降ろしてやろうかと思って」

「何を考えているんですか、あなたは……」

「じゃないとあいつは一人のままだろう?」

 

2024年夏コミで刊行された、古宮九時先生の個人サイト「no-seen flower」掲載の作品のガイドブック。

作品の解説だったり、いくつかの短編だったり、コラムなんかが収録されている満足度の高い1冊。シリーズ内作品群のページになんか、弊ブログの名前が登場した気がしますが、きっと錯覚ですね、はい(現実を見ろ)。

ちょっと1005本全部読んで感想記事書いてるだけの一般読者なのに……。

 

作品紹介のページの『Icy Prayer』で「ファルサスはひどい」と紹介されてるの、実際変な植物ネタとかあるから、ひどいんですが、各作品についている23行の紹介文に紛れ込んでるの笑っちゃうな。

短編は、Unnamed Memory本編の解呪前「共生の記憶」、Act.2の女王ティナーシャを描く「幕間にて」、Babelで雫が旅をしていた時のエピソード「旅の終わり」、Rotted-sでアーシャがレアの傍に居ることを選んだあとの「終着へとのびる」、月白のサァリが17歳の頃のエピソード、を描いた「朱色の帯」の5編が収録されています。

オスカーがティナーシャに対しての印象を語っているのが印象的で、「共生の記憶」が一番好き。あとは、「朱色の帯」でいつも通りのサァリとシシュのやり取りが見られたのも楽しかった。書籍完結してるし、WEBWEBで関係変化してってますからね……。

 

コラムは、オスカーとティナーシャの関係について。アニメ視聴者から「いつキスするような関係になったんだ」とアニメから入った人に驚かれた、というような記述がありましたが、撫ででも良いゾーンが広がった猫扱いされてるのが面白かったですね。実際、多数決するまで好意に気付いてないからな、あの最強の魔女……。

コラムでは「王同士の婚姻について」だとか、「Act2におけるティナーシャの変化」や「『Unnamed Memory』における言語」なんかにも触れられています。言語については、『Babel』だったり『ate4』を読んでいるとより味わい深いですね……。

あとは、あちこちで『Aeterna』に触れられることが多くて、ateの進行が進んでいることだったり、終わりが近づいている感じがして、楽しみでもあり惜しくもある。

 

あとは大陸別の異能とか、大陸の距離についての話についても触れられていましたね。

アイティリスと東の大陸の近さが、神話時代のアイテアの想いがあったからだというのも良かった。……時を経るにつれて、神の想いであっても薄れて変わっていくのは、寂しいものもありますが。

滅びない国も死なない人もいない、というのはこれまでも描かれてきたわけですからね。

コラムで「終わる物語と終わらない物語」についても語られていましたが、そこに通じるようなものを感じました。

何に使うってわけでもないですけど、後は各キャラの属性についても記述があったのは面白かったですね。

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
 新刊・既刊を問わず読んだタイミングで記事を作成しております。
 コメント歓迎。ただし悪質と判断したものは削除する場合があります。

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