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「いや……、由宇君も間違いないって言っていたし、うん。解った。覚悟を決めようじゃないか」
完結した『9S(ナインエス)』シリーズ、最後を飾る短編集。
雑誌掲載したものの文庫未収録だった『アムネジア』や、電撃ノベコミ+や、FANBOXなんかで公開されたエピソードに加えて、各種書下ろしを加えたお祭りのような1冊。
『彼女の記憶と記憶の彼女』。八代とマモンが減圧室に居る時期、八代やNCT研究所にいる朝倉、ADEMで取り調べを受けている福田といった面々が由宇の幻影を見て……その真相とは、という話。由宇にかかれば一瞬で解決しますが、それはそれとしてその状況を楽しんでるのがらしくて好き。
『アムネジア』。海星に捕まった由宇奪還後、闘真が不坐についていくことを決めた後のエピソード。由宇は捕まった際に、自分の記憶を消すことで情報を渡さなかった。しかし、その際に消し方が雑な記憶があり……奇妙な引っ掛かりを覚えた由宇に頼まれて、麻耶が「失われた記憶」を探す話。闘真がちょっと哀れだったりしましたが……まぁ……つよくいきろ。
書き下ろしの『スフィアドームを召し上がれ』。新組織9Sとなってからのエピソード。岸田博士の食生活・健康状態を危惧した由宇が、職員の生体データを取得して「既存のメニューから、最適の食事を提供する」機能を持った券売機を作成。
ガッツリ食べたいのに不摂生気味の岸田博士は健康志向のメニューになって不満を募らせたり。データ的な部分しか見てないので、ストレス緩和が必要な八代に特別なデザートが出たりして刺さるような視線を向けられたりと一部でトラブルは起きてましたが。
伊達が十二連続希望のメニュー引き当ててたり、マモンと才火にも適したメニューを提供してたり、機能はちゃんとはしてるんですよね。ただチートデイとかの概念はないので、テンプレ提供を続けるのは人の心……感はある。コミカルで笑えて、なんだかんだ本書収録のエピソードで一番好きかもしれませんね。
そして『9S』という物語のベースとなった「峰島勇次郎の遺産」というオリジナル小説と同じタイトルの短編が、最後のエピソードとなり……そこで勇次郎と由宇の母の物語が描かれていました。
あとがきでも触れられていましたが、始まりと終わりのエピソードの名前が同じになるのは妙味があって良いですね……。いやぁ、楽しかった。