気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

増田メグミ

9S〈ナインエス〉true side XIII

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「私はもっと話し合いたかった。理解し合いたかった」

(略)

「何を言う。充分に話し合ったではないか。科学という正確無比なやりとりは、万の言葉より有意義なものだ」

 

ついにシリーズの決着を迎える最終13巻。好きなシリーズの完結はどうしたって喜ばしくも悲しいものですが。刊行の間が空いていたので、このシリーズに関しては見届けられた嬉しさの方が勝ったかなぁ。

 

閑話休題。鳴神尊の暗殺者は、当主の命令に逆らえない。

そんな悪縁すらも絶って闘真の裏人格は自由に動けるようになったわけですが。彼は、完全に世界の外へ踏み出してしまった峰島勇次郎が自分を介してこちらに干渉していることにも気付いて。人格切り替えスイッチである鳴神尊を破壊しようとしたわけですが。

裏人格もまた闘真であるわけで……彼との別れを嫌った由宇に止められることに。

 

岸田博士が峰島勇次郎と再会して、「実の親よりも親らしい」とか言われてましたが。

どの口でほざくんだこの野郎、という気持ちと今更親らしく振舞われても困惑するよなぁって気持ちが同時に沸きました。

由宇がグラキエスを滅ぼすだろうと確信し、闘真の行動を由宇が止めたことに感謝して、今自分がやりたい実験にウキウキ乗り出すのどこまでもマッドサイエンティストだなぁって感じがして、最終巻までブレなかったところは評価しても良い。

 

闘真の認識によって峰島勇次郎の干渉度合いが濃くなるという事実を由宇達も認めることになって。そこに当主である不坐を排除した状態で行われた真目家会議の結果を携えた麻耶の通信が繋がるのは良かったですね。

最悪の場合、殺すことも辞さないという覚悟を示した上で……闘真の存在が逆にこちらの手を峰島勇次郎に届かせてくれるかもしれないから、一番守らなくてはならないと結論を出したのも熱かった。

 

由宇と2人きりになった状態で闘真が真っ直ぐに「大好きだ」と伝えて、由宇もそれに応えているのはニヤニヤしてしまった。決別してからの復縁はめでたい。

その直前の会話で不坐から「お前の恋人はおっかないな」と、不坐が2人の関係を「恋人」と表現しているのも、たった一文ではあるんですが好きな描写でした。おっかないところもあるけど、闘真の前では可愛いんですよ、その子。

 

由宇が考えていたグラキエス対策に必要な最後のピースを、予期せず闘真が見つけてきたりしたのは良かった。スヴェトラーナとクレールの存在も、要所で光ってましたし。

マモンもまた要所で活躍してくれたりしてましたし。最終決戦に臨むにあたっては敢えて情報を拡散してみせる必要もあったりで、サブキャラ達にも役割があったのは結構好きな要素でしたね。

 

勇次郎と由宇がついに再会を果たして……科学の信奉者であった勇次郎に対して、もっと話し合いたかったといったシーンの地の文が良かったですね。闘真と会って、人と人の綱がりの大事さを知り人になれた、という描写がとても良い。

グラキエス対策、峰島勇次郎との決着。闘真の脳の黒点……もう一人の自分とのやりとり。そういった、これまでに描かれていた様々な出来事に決着がついて良く流れは熱く、一気に読んじゃいました。良い完結巻だった。

9S〈ナインエス〉true side XII

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「……伊達」

「なんだ?」

「決めたぞ。私は私の枷をとる」

 

11巻が20123月刊行だったらしいので、実に12年ぶりに刊行されたシリーズ最新刊。最終巻となる13巻と同時発売してくれたのは、本当にありがたかったですねぇ。

峰島勇次郎、元は峰島勇という名前だったけれど……由宇の才能を認め自分の名前を与え、自分は2番手であるという表れで「勇次郎」に改名したと。

勇次郎は基礎知識とかを踏まえず独自のルートで答えを導く異才であった。そして由宇は、幼少期から秀でており……一般的な文法に則って峰島勇次郎の技術を説明することが出来た、と。

 

まぁその理論を一から十まで説明しようとする部分で尖ってるんですが。より分かりやすく解説できる横田健一氏の才能についても想いを馳せてしまった。やっぱり有能すぎるから1巻で消されたのでは……?

岸田博士が峰島勇次郎のゼロファイルを流した……パンドラの箱を開けた、この物語の始まりを告げた人物であるということが11巻で明かされたわけですが。

伊達に対して、由宇を信じ続けて毒のカプセルなんて必要ないと言い続けた善性の人であることも間違いがなくて。

その岸田博士が不在の時に彼の存在を通じて、伊達と由宇の関係が少し変化したの良かったですねぇ。

 

伊達は彼女を信じて今回は毒カプセルを注射しなかった。そして伊達の決断を見た由宇は、自らに課していた枷を外すことを告げた。

すなわち遺産技術、という彼女自身が抱え続けた武器を開放することを。かなり良い展開でしたねぇ。シリーズの集大成というか、最終局面だなぁと思わせる熱量があった。

 

マモンと八代が救助されたシーン、ヘリで吊るされることになったシーン微笑ましくて好き。……グラキエスに襲われてる状況なのであんまりほのぼのできる状況でもなかったですけど。

あとは僻地に配置されて燻りつつも認められるためにイワンの蛮行も見逃してきた司令官であるゴーゴリが、いろんな思いをのみ込んで「誇り高く戦い誇り高く死ね」と部下に命じたシーンは、彼なりの意地を感じて良かった。

 

規模の大きな作戦になるので、伊達が交渉によって勝ち取った「海星の恩赦」によって、動かせる兵隊が増えたのはありがたかったですねぇ。

合法で動けるようになったことでロシアの兵も動かせてましたけど。人手があるに越したことはないでしょうし。

遺産技術を開放しただけあって防刃スーツとか、市販の防犯ブザーの音データを書き換えてグラキエス対策にしたり、由宇が有能すぎる。由宇の的確過ぎる分析による指揮、凄まじかったですね……

 

ただ、善性の少女であるため犠牲を許容する作戦の指揮を任せるのは……というのを、かつてネズミを撃った八代が提案するの良いですねぇ。アドバンスLCの蓮杖とかが後半の犠牲が出るタイミングの指揮を請け負ってくれたのもありがたかった。良い人材が揃ってるな。まぁ優秀な彼らをして、由宇の指揮を模倣するのはかなりの難行だったみたいですが……。

 

さてそんな風に由宇やADEM陣営が奮闘している中で、闘真が何をしていたのかと思えば……。

洞窟のような場所で目覚め、峰島勇次郎と対面することになってるんだから、彼は彼でどんな運命の下に生まれてるんだ……って感じのイベントと鉢合わせてましたが。

世界の外側を覗きすぎたせいで、境界線を越えてしまったためにほとんどの人から認識できない状態になっているとか、マッドサイエンティストの極致ってすごいと思います。

実際に対面していたというよりは、夢のような世界で一瞬チャンネルがあった結果のようでしたけど。勇次郎と会った直後に記憶を取り戻したスヴェトラーナと出会ってるわけで、悪運尽きることなしって感じ。

 

終盤、麻耶や勝司たちが真目家と峰島勇次郎の繋がりだったり、峰島勇次郎の目的だった李……グラキエスで再現された脳についての考察だったりをして、情報を整理してくれたのはありがたかったですねぇ。

同時に、物語が終わりに向かっていっているのを感じてちょっと寂しくもありましたが。

9S〈ナインエス〉true side XI

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「そう言うことじゃなくて。彼女は普通の優しい子です。彼女自身は。でも……。僕は彼女を守る力が欲しい」

(略)

「必要なのは強さであって力とは違いますよ。そこをはき違えると不幸になります」

 

再読。無気力状態の由宇よりも先に、無機物生命体……グラキエスの生息域を見抜いた岸田博士はお見事。その情報を聞いた由宇が計算したところ、地上を支配するのにかかる日数はなんと「十日」。予想以上に早いタイムリミットが切られることになって……由宇が自らシベリアに赴くことになったのは、一つの進展か。

いつまでも地下に引きこもっているのも、彼女らしくないですしね。

 

シベリアへと赴いた由宇は、すぐにイワンと話すために手近な兵士に駆けられた洗脳を話術に解いたわけですが。イワンも速攻で使えなくなった兵はいらないと切り捨てにかかったので、おっかないですねぇ……。従えてるいかずち隊からして死兵だからな……。

true side」で本当にいくつもの伏線回収されて行ってるの好きなんですよね。トンデモ能力者だったサタンもまた、今回猛威を振るっている無機物生物であり……グラキエスとは違う進化を遂げた存在である、というのとか。ちゃんと理由付けされていくの好き。

 

由宇が基地に侵入したのと時を同じくして、イリーナの母スヴェトラーナや闘真たちと行動を共にしていたミネルヴァのリバースも基地に入り込んでいて。

予期せぬ接点が出来ていたわけですが。闘真から由宇の話を聞いていて、彼の言葉を借りてフォローしていくたびに由宇が不機嫌になっていく描写、好きです。

グラキエスに飲まれた村々から生き残った人々を逃がし、難民を率いる状態になっているスヴェトラーナ達ですが。軍部の暴走によって全滅した街まで出ているとかで、もうメチャクチャですね。

さらにアリシアが不穏さを感じ取っていた通り、スヴェトラーナの記憶にも爆弾情報眠っていたのがもう……。

 

でも、伊達が上手く立ち回って交渉を成立させて、公的に認められた状態で介入できるようになったのはお見事でした。

マモンも八代も岸田博士も各々別の形で命を拾っていましたし、悪い事ばかりでもないですね。

……岸田博士だけ合流できていないのは気がかりではありますけど。最後、峰島勇次郎と旧知であった彼が行ったとあることについての描写があったのが、個人的には初めて読んだときに一番驚いた記憶がありますねぇ。



9S〈ナインエス〉true side Ⅹ

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「一つだけ助言を。あなたという人間の本質は、否応なく鳴神尊の継承者です。ゆえに真目不坐や勝司などの言葉はまやかし程度に思いなさい。他人の視点はあてにならないと知りなさい。あなたはあなたの目で見て考えて解釈するのです。そのためにまず鳴神尊の使い方を熟知するのです。強さを追い求めるために作られた小刀。ならばその本質は強さの中にあります。本質をしれば、あなたは鳴神尊を自在に操れる。私はそう思うのです」

 

再読。

脳の黒点と禍神の血だったり、峰島勇次郎の研究との関係といった話の軸というのが明確になってきて……この10巻からは「true side」とつけられて展開していくんですよね。

また、9巻までのイラスト担当していた山本ヤマトさんが多忙のため、ここから増田メグミさんに変更となってます。

 

闘真との決別を選んだ由宇は、自由に外を歩いた結果として得た絶望を抱えたまま地下深く沈み込んでしまって。

これまでの鳴神尊の継承者は脳の黒点が内向き……つまりは自己の変革のために作用していた。けれど、闘真はそれが外向きであり変革を周囲にもたらしていく存在になっているということに由宇は気付いていて。だからこそ、次に対峙した時には殺さなくてはならないと悲痛な決意をしていたわけですが。根が善良なので、抱え込んじゃうんだよなぁ……本当に。

 

一方の闘真も、敢えて父・不坐の下に飛び込むことで自分の血についての理解を深め、由宇の敵になるだろう父に備えようとしていたわけですが……元の性格もあって、なかなか進展はしていない模様。

口絵でホットケーキ焼いてクレールと才火に提供しているの、ほのぼのしすぎてて笑っちゃった。

 

今回の遺産騒動の舞台はシベリア。

短編集「memories」にて、日本に亡命してきたマッドサイエンティスト、セルゲイ・イヴァノフが遺した研究所に放置された技術が、二十年の時を経て表舞台に躍り出てくることに。

ロシアの駐在武官から、その事件に関する映像を見せられた伊達は、懐かしい女性の姿を確認したわけですが。

 

ロシア側はADEMに協力を要請を出してきたわけですが……機材の持ち込みに制限を掛けられたり、派遣人数は文官三名と制限を掛けられたり……さらにはそのうちの一人に重要人物である岸田博士を入れろと言ってきたり、なかなかのみ込みがたい条件を付けて。

昨今の情勢で、日本ひいてはADEMの立ち位置は微妙になっているし、遺産関連も織り込んだ第三京都条約が次の安保理で締結される状況だから、条件飲んでくれるならそっちで協力するよ、とは言っているわけですが。……胡散臭いなぁ、という気はする。

実際、ロシアの新たなマッドサイエンティスト、イワン・イヴァノフの描写があったりして、またややこしくなりそうだとは思いましたね。

 

諸々の状況を踏まえて伊達は条件を呑んで人員を派遣したわけですけど。

マモンと八代が減圧室からようやく脱出できるタイミングだったのは、運が良かったか。……というか先の事件から2週間程度で、規模の大きい遺産事件が起きるんだからADEMに暇なしですね……。

第三京都条約の決議が2週間延期されたことで、第二京都条約の期限が切れた1週間の間だけ使える、Bランク相当の技術を使った耐衝撃スーツを引っ張り出してきたのには笑いましたが。法には従うけど、裏技も駆使してくる強かさは好きです。

 

ADEM側が行動を開始したのと同時に、真目家に戻った闘真も勝司から情報を得てクレールの母とクレールを再会させようと、シベリアの渦中に飛び込むことに。

先代の継承者、蛟の妻でもあるわけですからヒントを得たいという事情もありましたが。

 

あの短編から果たして彼女は一体何をしていたのかと思えば、ミネルヴァの創設者でもあったとか言う情報が出てきて。海星みたいに遺産犯罪撲滅を誓う組織だったものの、遺産の毒に飲まれてあんな犯罪者集団に堕ちたとか。

……それを思うと、幼少期の由宇を保護した上で今まで変節することなくADEMという組織の在り方を貫き続けている伊達って、思っていた以上の傑物なんじゃないですかね。

 

ADEMから派遣されたマモンはイワンを探った結果消息不明に。八代、岸田博士はそれを確かめるべくイワンに近づき、こちらも姿を消してしまって。

闘真たちも無機物生命体の危機にさらされるど真ん中に飛び込んでいるわけですし、どこもかしこもスリル満点でどうなるのかハラハラしますね……。

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