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「俺、この宿にこられて本当に運がよかった。ここは、いいところだな」

「そう言っていただけると、私としても嬉しいです」

「……次は、信じられる仲間と一緒にまた来るよ」

 

祖父母から継いだペンションの経営をしていた主人公。

しかし近隣施設が発端の火災に巻き込まれ死亡し……異世界で、始まりの魔女の一族の末裔の少女ルアナとして生を受けます。

しかしルアナの双子の妹が豊富な魔力を誇る英才だったのに対し、ルアナは魔女術を全く使えない落ちこぼれであり、隠れるように暮らしていた小さな村社会の中であからさまな差別を受けることとなった。

 

それでも諦めずに「ノヴァ文字」という魔女の文字を解読し、魔女に関する知識が豊富な使い魔を召喚することに成功。

黒猫の師匠はルアナが「黒魔女」という、その気になれば世界の運命すら変えてしまえることを教えてくれます。

しかし前世の記憶を取り戻していたルアナは、夢半ばで終わってしまったペンション経営をこの世界でもやりたいと思って、そのために奮闘することを決めて。

 

成長してからルアナは村を飛び出して……それから4か月でペンション始めてるんだから、仕事が早い。

この世界には人族のほかに、人間に獣の耳やしっぽが生えた亜人や全身が毛に覆われた獣人なども存在するそうで。しかし過去に多くの種族がいがみ合う「世界大戦」が起こった影響もあって、関係は良好ではないようです。

宿でも「亜獣人お断り」のところが多いみたいですしね。……偏見以外にも、獣人止めた後は抜け毛の清掃などの手間が増えるから、という業務面の問題もあるようですが。

 

魔女術を駆使してペンション経営してるのと、前世知識もあって「店に来てくれたお客様」として接する彼女の在り方は、亜人・獣人にはありがたいもののようです。

……亜人が連れている相棒の獣をモフモフできるっていうのも、割と理由になってそうな気はしますが。

色々とこの世界事態の持つ不穏な気配を感じつつも、基本はペンションにやってきたお客さんとの穏やかな交流を描いた落ち着いた1冊でしたね。

シリーズ続くと問題も表面化してきて、慌ただしくなりそうではあります。