「……残念です。どんなに望んでも、神はわたしに魂を描く術を与えてはくださらなかった……」
「代わりに魂を見抜く眼をくれたよ」
店の住所などを公にしないように誓約書を交わす、特殊な臨時店舗「テオドール・ダナー」。
しかし人の口に戸は立てられず、ひっそりと噂が広がっていくことに。そんな中、変色気味の娘でも、テオドールの神業のごとき皿なら食べられるかも、なんて相談まで持ち込まれて。
夜の営業時間に子供を連れてくるわけにもいかず、昼に店員たちと賄いを食べる形になって。ハンバーガーですら絶品作るんだから、お見事というか。……消えるホットドッグ作ってる時点で今さらか。
その後まーたテオドールが誘拐されてましたが、この人本当に料理と店が関係しない事柄に関しては隙が多いというか。もう四六時中護衛張り付かせておくべきなのでは……?
今回はそこまで悪意のあるものでもなかったのと、テオドールがついて行ったのも料理に使えそうな香りを察知したからだったり、あまりにも筋金入りなアレではありましたが。
そして、もう一つ。いくらなんでも毎日美術館から絵を運んで、戻すなんてことをしていたら、流石に引っ掛かりを覚える人も現れるか。
本職だったので尾行されても撒いてはいましたけど、スタートとゴールに運搬用の車両を変えられないとどうしても限界があると言うべきか。
核心には至らなかったけれど行動を起こした人も起こした人ですが……まぁ、天使たちが居るお店に手を出して目的を達成できるはずもなく。返り討ちにあってたのは笑った。あっけないわぁ。
テオドール・ダナーの熱狂的なファンである2世閣下が、父親である1世を引っ張り出して来たのも、1世は1世でそうとは知らずとも彼の料理のファンだったと明らかになったり、本当に凄まじい。
人の名前を覚えられなくても客の顔は忘れず、求められる品を提供する彼は本当にプロだよなぁ。
そして終盤に明らかになった、ガーディ少年の正体にはびっくり。意外なところで縁があったんだな、と言いますか。あの絵師は死後に好き放題動き回りすぎでは。多分蘇生できる類の魂でしょ、アレ。
この上下巻でシティでの臨時営業は終了となりましたが、さてこの後はどんな感じでシリーズ展開されてくんでしょうかねー。楽しみ。