気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

守雨

シャーロット~とある侍女の城仕え物語~ 上

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「ルーシーさんに無断で小遣い稼ぎをしたとして、『バレたらどうしよう』ってずっとクヨクヨするくらいなら、お金を受け取らずにプレゼントして喜んでもらったほうが、気が楽です」

「ふふふっ。なるほど。シャーロットはそう考えたのね。でも、無料はやめておきなさい。人間はね、無料の物を粗末に扱いがちです(後略)」

 

器量よしの少女シャーロットは、森近くの小屋で両親と仲良く暮らす中で、母から様々な知識や礼法などを教えられ、狩人の父からは森の歩き方などを教わってきた。

彼女は両親と血が繋がっていない捨て子だったが、2人から愛情深く育てられて来た。

ある日その両親が親戚に逢いに行くと手紙を残して家を経ってから消息を絶ち……母の遺した手紙に記されていた通り、仕事を紹介してもらいにとある商会に行くことに。

 

母はシャーロットを王侯貴族には近づけたくなくて、どこかの商会で仕事を見つけて欲しかったみたいですけど。商会の人が両親を亡くした後ではなにかと大変だろう、と気を利かせて給料の良い城の仕事を紹介してくれることになって。

充実した教育を受けていたシャーロットは問題なく侍女の仕事をすることが出来ていましたが。……両親と森の小屋で過ごし、他人と交流した経験の薄かった彼女は、礼儀として男性にも笑顔を維持して会話しており……その結果、勘違いする人物が増えたりするトラブルも。

上司が気の利く人で別の部署に配置換えしてくれたり、実際良い環境で働けていましたね。

 

……途中で視点変更が入って、消息を絶った両親があの日何をしていたのか。

シャーロットを大事に育てていた彼らが何を隠していたのか、というコトについても明らかになっていくわけですが。

実はシャーロットは高貴な生まれながら、親族に命を狙われる可能性があったため、両親に託されて逃げて来たという経歴があったそうで。

……十何年も追跡している人員も登場したりするので、逃げたのは正解だったと言えますけども。

 

土砂崩れに巻き込まれ記憶を失っていた父が、なんとか助けを借りながらも帰還して。シャーロットに事情を伝えることが出来たのは良かったですが。

先述の通りまだ追手が存在している状況で、少しでも味方を増やせればよいなぁという状況でしたが、どうなるやら。

女伯爵アンバーには商才がある! やっと自由になれたので、再婚なんてお断り

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『あなたが自分の人生を守らなかったら、誰が守ってくれるというの?』

『あなたに働く意欲があるなら仕事を紹介するわ。住む場所も提供する。闘うべき時は戦いなさい。自分を救い出すのよ』

 

オルブライト伯爵家の令嬢アンバー。

彼女は父が推し進めた縁談に従って、家格が上の侯爵家から婿を取ることに。

侯爵家側がつけた唯一の条件が「財産管理を、息子に行わせること」。しかし……その息子ブランドンにはそういった経営の才能がなかった。

どんどん伯爵家の財政が傾いていく中、アンバーはブランドンに助言をしたりもしたが受け入れられず……密かに自分の資金を使って、いくつかの商売を開始。

それらは順調に利益を上げ、使用人たちの賃金を賄うことも出来るようになっていたようですが。

 

ブランドンはなんとメイドの一人と駆け落ち。

それを受けてアンバーは、速攻で離縁の手続きを進めて。相手側に非がありつつも、侯爵家の経済状況を知っているから、慰謝料の請求を行わなかった。

……そんな思いやりを、下の家からの借りと取られた侯爵家は親戚筋という伝手を使ってアンバーを国王付きの侍女……ようするに愛人として迎え入れるなんてトンデモ提案をしてきて。

 

素直に受け入れられる話ではなくて。ブランドンを追い払った後、家の前で倒れていた自称平民の絵描きクリスティアンと婚約することで、その慈悲を拒むことに。

この婚約にはもう一つ目的があって、それがアンバーが別名義で行っていた各種経営の手続きをクリスティアンに移してから、アンバーに戻すことでオルブライト伯爵家の財務状況を回復させることで。

そんな面倒な手続きを挟むのは、アンバーの努力の成果である店舗経営は、「財産管理をブランドンに任せる」という結婚時の約束に反していると文句を付けられる懸念があったためだった。

 

そうやって仮初の婚約者となった2人だったわけですが。

アンバーは自分が夫に虐げられていた経験もあって、同じように認められていない女性たちに仕事を与える活動を始めて。途中、過労で倒れてしまう場面もありましたが。道を切り開いて、多くの女性たちを救っていったのはお見事。

クリスティアンは自称平民と言いつつも、節々に教育を受けた痕跡があって。

実家との確執がありつつ、絵描きとしても認められていくことになって。

各々の道で成果を上げた2人が、お互いを大事にして仮初の関係が本当になったのも良かったですね。



手札が多めのビクトリア3

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「ふうん。私さ、仕事をしているお母さんを初めてみたけど、かっこよくて驚いちゃった。キリリとしていて、デル・ドルガーよりもずっとかっこよかった!」

 

イラストレーターが、牛野こもさんに変更になって贈られる3巻。

アシュベリー王国は周囲に4つの国があり、各世代で順番に王妃を迎え入れることでバランスをとる外交を行っていた。

次代を担う王太子妃として迎え入れられたのは北方、イーガル王国出身の侯爵令嬢デルフィーヌ。彼女は、王太子と良好な関係を気付いていたようですが。

イーガル王国内部でのいざこざがあったり。さらにアシュベリー王国は近ごろスバルツとの境で金鉱脈が見つかったことで緊張感が高まっていたりと、ピリピリした状況だったようですが。

 

それはそれとして、ノンナはクラークに誘われて歌劇を見に行くデートをしていたり。

アッシャー家としてみれば、軟膏用の工房の改修工事が終わり稼働を開始しようとしていたりして、色々と順調に進んでいる状況ではあったんですよね。

ノンナがちょっとお転婆に育ちすぎて、淑女教育は「もうすこし頑張りましょう」な部分はあれど、3人家族は幸せに過ごしていました。

 

ただ先述の通りアシュベリー王国はいま悩みの種が多く……。

そんな中で、祭事で王太子妃が表に出る予定が近くにあって。アシュベリーの工作組織が影武者を立てることになったわけですが。

その影武者が別の任務先でトラブルに遭遇し、負傷。影武者を任せるのには不安が残る状況になってしまった。

そこでジェフの兄エドワードはビクトリアの経歴を知っていることもあって、彼女に代理を頼めないかと画策することに。

 

ビクトリアは悩みながらも、この話を聞いたうえで断ってその上で王太子妃に危害が加えられれば、心に傷を負ってしまいそうだから、という利己的な理由も含みで受諾することにして。

ノンナには隠して仕事に出ることになっていましたが……残されたノンナ、どうにか城に潜入できないかと画策するし、ちょっと夜に抜けだしたりするし、怪しい人物への警告からの攻撃に躊躇いがないしで、スペックは本当に凄腕工作員だよなぁ……。

周囲の人々の薫陶もあって、善性に育ってくれていたからこそ、ビクトリアが警戒している「命を奪う一線」を超えずにいてくれているのが良かった。

まぁ、ノンナ実母に捨てられていたのを察しつつも、ビクトリアとも良好な関係を築いている、元から良い子ではありましたけども。

 

ビクトリア、出来る範囲での情報収集をしっかりして、手札が限られた状況でもある程度真相に辿り着いているのが凄いですねぇ。

現役の工作員から教官になってもらえないだろうか、と思われているのも納得。

エドワードの隠された仕事とかに推察をつけたりして、アシュベリー王国の裏事情にも詳しくなってきてるし。王太子妃との縁が出来た事で、表舞台でも注目を集めることになるし。彼女たち夫婦の望む平穏とは少しずつズレてしまってはいますが……それでも、彼女たちの周囲に大過なく騒動を超えられたのは良かったですね。

毒好き令嬢は結婚にたどり着きたい

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「特級薬師に必要なのは『心から信頼できる人と結婚して子供を産み育てること』だわ。だから私はずっとそんな人と出会えることを願っていたの。でも夜会ではなかなかそう思える人がいなかった。なのにステファンが帰ってこなかったとき、何が何でも探し出す、たとえ私の命が危なくても、と思ったの」

 

主人公エレンの生家であるボウエン侯爵家は、三百年以上女流で薬師の技と知識を継いでいる家。

最近では特級薬師の祖母が流行り病に効く薬の製法を王家に伝えたことで、資金的にも安定していた。そして、薬師の技の次期継承者であるエレンは近く結婚を控えていた。

しかし、婚約者が浮気をしていることが発覚し……噂好きの夫人に話を通して破談に持っていく流れは強かったですね。

努めて冷静に対処しないといけないくらいショックを受けていた、という表れでもあるとは思いますが。

 

婚約が破談にこそなったものの、薬師の技と知識は継がなくてはならない。

エレンには姉が2人いたが、時に毒を扱い、自身の体に毒を取り込み耐性をつけもする技を学ぶには適性が無いとみなされて既に他家に嫁いでいたため、継承できるエレンに負担がかかってしまう形ですね。

だからエレンは夜会に参加したりして、相応しい相手を探そうとするのですが……なかなか振るわず。

一応彼女を気にかけている幼馴染の公爵家子息なんかもいたんですが、先述の通り毒を扱う公爵家夫人というのは問題があろう、と断ることになっていましたし。

 

実際エレンは薬師としてかなり素質ありますよね。

毒を受けた人物を見つけて治療するのは薬師の性でしょうが、珍しい毒だから経過観察したいとか言ってる研究者の性質もありますし。

いろんなトラブルを超えてお相手が確定した後、ボウエン侯爵家の特級薬師が代々継いできた記録に書き加える価値のある新薬をみつけたりしていますし。

 

序盤に発生した「婚約破棄」という問題を解決した後は、幸せなエピソードが多くてホッとする作品。

エレンが保護した少女ノーラが、動物専門の医師として成長していく流れとか地味に好きです。

砂漠の国の雨降らし姫~前世で処刑された魔法使いは農家の娘になりました~

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「人との関わり方を知らないまま大人になって、恋もせずひたすら隠れて生きろと? それ、幸せな人生かしら。偉い人に閉じ込められて利用されるのと、たいして変わらないわ」

「そうだな……そうだった。お前の言う通りだなイルダ。自分を守るために誰とも関わらずに生きろと言うのは、残酷だな」

「ねえ、あなた。これからはもっと先を見てアレシアを育てましょうよ」

 

砂漠の国において最強の水魔法使いとして畏怖されたアウーラ。

しかし彼女は隣国との内通の疑いをかけられて処刑されてしまった。

……そんなアウーラの生まれ変わりである少女、アレシアが主人公の物語。

彼女は生まれた時から特殊な力を持っていた。それが「自分が寝ている間、一定範囲に雨を降らせる」能力。

 

砂漠において水はあまりにも貴重なため、その力が権力者に知られたらどうなるかわからない。

そう考えた両親がアレシアを守ろうと工夫を凝らしてくれたのが、本当に良かった。前世で大変な目にあった彼女ですから、良い両親のもとに生まれたのは救いですよ。

 

寝るときに雨を降らせる、という魔法としか思えない力。

けれど、魔法使いとしての記憶を取り戻しても制御することはできず……アレシアが成長するにつれて雨の降る範囲も拡大していった。

初期は街から離れた場所に隠れ住み、成長してからは街に拠点を設けて人に紛れることにした。アレシアの世界が少しずつ広がっていくのが良かったですね。

 

アウーラを処刑した王家は後にクーデター起こされた、今は新しい王家が立っているみたいだし。アウーラが起こしたとされる大洪水はあくまで自然災害に過ぎないと隣国では伝えられてるみたいですけど。

アレシアの転生までまだ三十年程度しか過ぎておらず、実際に大洪水の被害を受けた人が生き残っているのもあって、この国ではアウーラを責める声がまだ多いみたいで……図書室で怪しい集いが催されたりして、心配材料は多いなぁ……。

 

あと地味に改行が多いレイアウトなのが気になったなぁ……。地の文が短いシーンとかだと特に空白が目についたというか。

手札が多めのビクトリア2

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「君は君の好きなことをやるべきだ。俺は君が暗号を解くときの表情を見てみたいと思ってるよ。真剣に暗号を解いてるときの君はきっと美しい表情をしてるはずだからね。俺の妻はなんて魅力的なんだろうって、惚れ惚れするに決まってるさ」

「ふふふ。ノンナが聞いたらまた呆れた顔をするわね」

 

1巻で、ハグル王国から脱走しアシュベリー王国へとたどり着いたビクトリアの物語は、大きな山を越えひと段落しましたが。

脱走工作員の生存がハグルにバレたため、ビクトリア達はシェン国へ活動拠点を移していたわけです。

そんな終わりから5年。ついに彼女たちはアシュベリー王国へと帰還することになって。

 

ビクトリアの事情を把握しているエドワードとマイクが、色々と配慮してくれてるのもありがたかったですねぇ。

彼女の名前は偽名だったわけですが、アシュベリー王国へ戻ってきたなら以前付き合いがあった人とも出会うだろうから、ビクトリアはミドルネームとして残すことを認めてくれましたし。

ヨラナにスーザン、バーナードにクラークなど。ビクトリアとノンナを知る人々が、彼女たちを受け入れてくれたのも良かった。

 

ノンナは12歳になって美しく育ったけれど、ビクトリアの教えの下で強く育ったし、シェン国で武術も習ったこともあってやんちゃ盛り。

一方でクラークは資料管理部での仕事を始めていたので、ある程度の落ち着きを身に着けて始めていて。

前までのように遊びたいけど反応の違いに戸惑うノンナと、対応に青さと努力が見えるクラークの様子は微笑ましかったですね。

 

シェン国で得た薬の知識とかで、新しい縁が出来たりもしていましたけれど。

ビクトリアの工作員としての知識や経験が失われたわけではなく。久しぶりに再会したバーナードから結婚祝いとして贈られた、有名な作家の直筆原稿には暗号が隠されているかも、なんて面白そうな話を聞いて。

実際に読み解いてしまうんだから大したものです。解き明かせたのは前半部分だけ、というか。ある場所について記されていただけなので、答えを知りたければ現地に行かなければならないという状況になって。

 

夫でもあるジェフリーが、ビクトリアの在り方に理解を示してくれて、旅行という体裁で謎解きに付き合ってくれたのは良かった。

……まったく別件の問題に遭遇して解決したり、解き明かした謎が大きな利益をもたらすものだったり、ノンナを惑わせる出会いがあったりと大わらわですが。

年月を重ねて夫婦関係も良好な中で、趣味としての活動にも力を入れているのがいいですねー。

手札が多めのビクトリア1

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「本当にこれも君が教えたのか? 危ないと思うが」

「危ないことを全部遠ざけていたら守られるだけの女に育ってしまいます」

 

WEB既読。               

ハグル王国の工作員として育てられたクロエ。幼少期に親元から放され、専門の訓練を受けてエースにまで上り詰めた。

仕事がら家族に会うことは出来ないけれど、仕送りをすることだけは出来たから、自分の頑張りは無駄ではないと思えた。

 

しかしある時故郷を訪れてみたら……何年も前に、彼女の家族が死んでいたことが発覚。他の組織メンバーにも家族の訃報だけは知らされた筈なのに、自分は教えてもらえなかった。

その事から組織に不信感を抱いた彼女は、工作員生活からの逃走を決意。やめようと思って辞められる仕事ではないし、ただ逃げても追手が掛かる。

だから入念に準備して、2つ隣のアシュベリー王国まで渡り、ビクトリアと名を変えて生きていこうとした。

 

実際辿り着く所までは問題なくこなしたんですけど、到着した直後に親に捨てられた少女ノンナと出会ったり、ひったくりを捕まえたりとイベントがひっきりなしに発生。

でもひったくりを捕まえるのに協力した事で騎士団長との縁が出来て、異国人がいきなりノンナを引き取って育てたいと言いだした時に身元保証人を引き受けてくれたわけですから、結果的には良かったんですよね。

その後住む場所を探していましたけど、それもまたひったくりに遭遇した貴婦人との縁によって獲得したわけですし。

 

工作員のエースだっただけあってビクトリアのスペックは高く、偏屈な研究者の助手と言う仕事をしっかり見つけてますし、念願の日常を満喫してるんですよね。

保護する事になったノンナや騎士団長、家主や仕事先の人々との関係も良好ですし、安心して読めます。

そうやって情が移って行動が鈍りそうなタイミングで、工作員としての過去が追い付いてきて、逃げる選択を取る羽目になるんですから、中々上手くいきませんね。

 

でも、積み重ねた時間は決して無駄ではなくて、良い決着を迎えてくれます。1冊でまとまってるので、気になった方はぜひ。

ちなみにWEBには本編から数年後のエピソードを描いた「ビクトリア2」が掲載されてるので、人気出たようだったらそちらの書籍化にもつながると、個人的には嬉しいですねー。

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
 新刊・既刊を問わず読んだタイミングで記事を作成しております。
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