「……もし、失敗したら?」
「その時は、この首を差し出しましょう。それで足りないというのであれば、僕が持つ全てを差し出します」
王都ヴェロネーゼにある王立魔法図書館。地上20階建てという国内一の大きさを誇り、さらに地下には禁書も封じられていた。
シンプルに広く蔵書数が多いので、建物内での移動も大変だし蔵書数にみあった仕事量は膨大。貴重な書物を狙った襲撃もしばしばあるので撃退も仕事に含まれるし、禁書から出る瘴気に耐える必要もある。
そのせいで、現在司書として勤めているのは主人公のセレルただ一人だった。
……司書に乗っかる業務が多すぎるし、警備が必要なんだったら蔵書管理部門と警備部門で人員増やすなりするべきだろとか。瘴気放つ禁書の問題があるなら管理場所変えるわけにはいかないのか? みたいな疑問点は浮かびますが。
定期的に禁書に問題がないか確認する、という業務は司書らしいし敢えて遠ざける方が危ないのか。
通常利用の常連客もそこそこいるみたいなので、禁書区画に踏み込みさえしなければ問題はなさそうですし。
彼は平民出身であることや、所持する魔導書の位階が高くはないことなどで、一部貴族からは疎まれているようですが。
膨大な業務をさばき続けている実力は本物だし……それを一人でこなせる人材が、ただの司書であるはずもなく。
王女と個人的な親交もあるし、国王陛下ほか上層部からも信頼されてるから、何か隠してるのは確定してるんですよね……そもそも口絵バレしてますが。
ある日、そんな彼の下に王女の仲介である依頼が持ち込まれる。
それはベルナール公爵家の令嬢シオンを蝕んでいる病の治療方法を探してほしいというものだった。
図書館の蔵書ほとんどを読破しているセレルでも、すぐにはわからない謎の病。それに興味があったこともあり、依頼を受けたわけですが。
もちろんただの病であるはずもなく。彼は陰謀に巻き込まれ……物理的な障害だったら容易く蹴散らせるのは大きい。でも、彼まだ青いというか、知識量は膨大でも神算鬼謀を発揮するタイプではないんですよね。
敵に裏をかかれて窮地に陥ったりもしてましたが、最終的には乗り越えて生還したので何より。