「でもさ、エリザ。もしもだよ? その夢って奴が、他の誰かの夢とぶつかったらどうするの? 誰かの夢を潰さなければ、自分の夢がかなわないとしたら? そんなの、嫌じゃない?」
「え? うーん、そうだなあ……それでもいいんじゃないか?」
「え?」
「むしろ、その方がいいよ。お互いの夢をかけて、正々堂々真っ向から勝負するんだ。そんでもって、たとえ負けても、相手の夢が叶ったことを喜んでやれるなら、それはそれで最高だろ?」
完結済みの作品。
第1部 第1章すべてのはじまり「第1話 少年魔王と黒の姉」からエピローグ 二つの光が見守る世界「~少年魔王と英雄少女(完結編)~」まで。
作品解説のところにもコメディ要素が強い、と書かれていますが。
「魔王」とか「英雄」についてを考える内容とのことで。
四つの異世界と隣接した世界が舞台。
魔術には四大系統あって、生まれた月によって得意とする術が異なるそうです。
四大系統に属さない召喚術なんかもあったりしますし、術者によってアレンジ入っている場合もあったりとバリエーションはそこそこ。
タイトルにある、少年魔王は、圧倒的な召喚術の才能を持つ少年ネザクとその姉が中心となる話。
城塞都市なんか簡単に制圧できる『魔』を召喚できるあたり、個人としての戦力がおかしい。
ネザク自身は良い子なんですけど、常識に疎い部分があったり、姉の要求に抗しきれず力を使ったら加減もよくできないから惨事になったりとドタバタしてます。
まぁ、姉の提案した雑な流れで魔王をなのり行動を起こしていますが・・・途中である少女と出会い魔王らしくなってきたかなぁ、と。
一方で、英雄少女の方はある学院に通う桁外れの少女の話。
この世界で少し前に起きた邪竜戦争。その時に活躍した、五人の英雄の一人が創設した英雄を目指す少年少女たちを鍛える学院。
同じように英雄を目指して入学試験を受けるわけですが・・・障害があるならそれをぶち抜いてけばいいじゃないという、良くも悪くもまっすぐな少女。
これで戦闘能力がずば抜けているっていうんだから、先生方も扱いに困るよなぁ・・・
特別学級に入れられて、そのクラスの人々と仲良くなったり、切磋琢磨して力をつけたりと順調に青春を全うしている感じ。
この魔王陣営と英雄陣営の話が交互に描かれてゆっくりと進んでいきます。
五大英雄・・・とくに黒霊賢者さんが変態でなぁ・・・個性強いというかあくが強いというか。
初期のころ、魔王陣営は世界征服を目的として行動を起こして、実際に五大英雄の一人に勝利し捕縛したりするんですが。それを餌に結構罠にはめたりとか結構狡猾。
でも、途中から英雄少女のメンバーと相対する流れになって、負けイベントからの和解となるわけですが・・・
世界征服目指して五英雄との戦いも考慮しているくせに、学生に負けるのかー、と。
いや学生とは思えない力量にまで到達しているんですけど、第1章最終章「それぞれの決着」は青臭くて、エゴばっかで読んでて楽しくなった。
コメディ要素として、ゆるーい空気になる処とか、圧倒的な力でわりと無双しているところとか気に入っている面もあると言えばあるんですが。
物足りない・・・というよりは、微妙に合わなかった、という方が正しいですかねー。