「僕の名前は勇人、姓はない。地底が開いて混沌とした時代において『勇者』と呼ばれることもあった戦うことしかできない愚か者で、僕の目的は――この世界からモンスターを全て死滅させることだ」
ダンジョンの出現に伴って魔物が現れた世界。
それによって人類は大きな被害を出し……そんな絶望的な状況の中でも抗い続けた人々がいたおかげで、命脈を保つことが出来た。
主人公の勇人は、50年前のダンジョン出現黎明期に最前線で戦い続けた4人のうちの一人で、『勇者』と呼ばれることもあった人物だった。
彼は喋る魔物「エリート」を狩り続けていたが……二十体近く狩る中で仲間を失い、彼自身もエリートの一体であるリッチから呪いを受けて地底に封印されてしまう。
半分人間・半分魔物の状態になった勇人はそれでも心折れずに生き続け……ある日、地底から解放されることに。
その切っ掛けを作ったのが、50年の間に復興した世界で生まれたダンジョンに挑みつつ配信を行う、ダンジョン配信者の少女雨宮霞だった。
彼女は、友人といつもどおりのダンジョン探索を行っていたところ、予期せぬ強敵と遭遇。友人を逃がすために殿を務め、ギリギリまで魔物を削ったものの……限界を迎え下層に逃げることにして。
そうしてボロボロになった霞と勇人が出会い……呪われて半分リッチになっている勇人は、魔物としての特殊能力も使えて、それによって致命傷を負っていた霞を蘇生することに。
結果的には霞が下層側に逃げたが功を奏した形ですね。勇人、地底……とは言わないまでも通常よりも深い階層に封印されていたので、霞が上層側に逃げていたら間に合わなかったでしょうし。
霞、かなり無心にダンジョンに挑む続ける修行僧じみた配信者だったみたいですが。彼女には、ダンジョンで行方不明になった姉を探したいという目的があって。
最初にあった現代人で、諦めず足掻いている子で……当人にその意識がないとはいえ、自分を封印から解放してくれた恩人。
だから勇人は彼女を助けた上で、お互いの目的のために協力することに。
勇人、50年飲まず食わずで地底で生きてたあたり、肉体的には魔物なんでしょうけど。その精神は『勇者』と呼ばれるだけの事はある、というか。人間大好きで、自分は戦うことだけでしかその幸福に貢献出来ないと思い込んでて……だから、解放されてからもダンジョンに挑むことに躊躇いがないのあまりにも強すぎる。
半分魔物になった影響か、実年齢70歳以上な割に若々しい肉体を保っているオマケもありましたが。黎明期に「エリート」を殺し続ける事が出来た実力は本物で、現代最強と謳われる相手と腕試しすることになった際も、自分の知らない技術使われて戸惑いつつもそれに追いついて凌駕してったの、「戦闘技術が化け物」と評されるのも無理はない。
魔力を利用しての肉体の再生、これはリッチとしての能力じゃなくて理論上誰でも使えるはずだぜ? とかしれっと言ってくるの、当人のスペックがとんでもないし、人類への期待がデカすぎる……。これは勇者ですわ。