ナルガ「歴史が出来たと思えばいいわ。古きは古きとして伝え、新しきは新しきとして語る。伝えることと、語ることの差を理解すれば、大丈夫よ」
『都市シリーズ』や『終わりのクロニクル』、『境界線上のホライゾン』などを執筆されている川上稔先生本人が、「川上作品について」まとめた同人誌。
『境界線上のホライゾン』のキャラクターたちがアイコン付きで会話していく、カクヨムでの連載中の『川上稔がフリースタイルで何かやってます。』とかでも描かれている、チャット会話形式の解説本ですね。
メイン解説はアデーレとナルゼ。「すべての作品が一つの長大な時間軸の上に存在する」という川上作品の特徴から、「どの作品から読むべきか」というアドバイス。
今では入手が難しくなっている作品もありますが、各シリーズの解説などが載っているのでどういう世界観なんだろうと触れる入門編としては良いのでは。
作品の設定として「同一世界観」モノであり、時間軸が異なり、他作品との用語的な繋がりについて考えたりする楽しみも出来るけれど、「現役作品や興味を持ったものから読むと良い」という発言が作者頒布物から見られるのは良いですねー。
昔からの御約束・定番に則ったものもあるわけではないから、気楽にしてほしいって発信してもらえるのはありがたいですよ。入る抵抗感薄れるだろうし。……それはそれとしてコアな読者は考察楽しめる余地もありますしね。
作中の時系列的には「FORTH」→「AHEAD」→「EDGE」→「GENESIS」→「OBSTACLE」→「CITY」→「LINKS」だけど、刊行順としては「CITY」→「AHEAD」→「FORTH」→「GENESIS」→「OBSTACLE」→「EDGE」→「LINKS」って感じで一致してないのもポイントですか。
私のオススメとしては現代舞台で描いている「FORTH」世界の『連射王』と『パワーワードのラブコメがハッピーエンドで五本入り』ですかねぇ。後者はそもそも電子限定ですし『連射王』も紙版は絶版らしいですが、今だと電子で触れやすい作品なので。良い時代ですね~。
境ホラのキャラなので、他シリーズについて語るときのアデーレは「どんな内容なんです?」って聞いてるのに、境ホラの時は「しらばっくれて言いますけど」って枕についてるの笑う。
好きな作品である、もう一つの電子限定短編集『パワーワードの尊い話がハッピーエンドで五本入り』がどの時代に属するのか、とかも分かって個人的には満足度の高い一冊でした。見開き6P(つまり12P)という短さでしたが楽しかったです。
私は最近、新刊ちょっと積読の山に埋めちゃってるので、ボチボチ消化していきたいところですねぇ。