「……で、ご用件は?」
市立高校シリーズ
「……で、ご用件は?」
「どちらかといえば、反対」僕は言った。「でも、亜理沙が自分で考えて決めたなら、どっちでも応援する」
「不正指令電磁的なんとか」、「的を外れる矢のごとく」、「家庭用事件」。
「お届け先には不思議を添えて」、「優しくないし健気でもない」。
以上五話を収録した短編集となっております。
葉山君が一年生一月の頃のエピソードから、収録してある最後の話の時点では二年生の十二月になっていたり、とどんどん時間は過ぎていますが……
葉山君は、変わらないなぁ。
高校に入学し、不可思議な事件に巻き込まれて。
『頼まれ葉山』なんて、あだ名がついたりしているとか。人がいいですからね……
携帯のデータ飛ばされたらもっと怒っていいと思うよ……?
卒業してからも、謎があると呼び出される伊神さん。まぁ、本人も楽しんでるからいいでしょうけど。
後輩たちから「そうだね。召喚しようか。あの人」「えっ? 何?」「式神か何か?」「人間離れしてますが人間です」とか言われる伊神さんよ……
今回掲載の話で一番楽しかったのは「お届け先には不思議を添えて」ですかねぇ。
OBたちが隠したかった過去の話、というか。いったい何をやってるんだ、みたいなオチがつくんですが、他人事だと笑えてしまいますねぇ。本人たちは本当に死活問題だったんでしょうが。あとがきでシリーズはまだまだ続く、と書いてありますので、7巻を気長に待ちます。
……これから警察に行く。決着をつける。ずっと昔から、この学校に取り憑いていたものに。
葉山君たちが通う市立高校には、七不思議があるとか。
超自然現象研究会なる集まりが「七不思議」の特集を発表したと思ったら、それにまつわる悪戯が発生して。
……取り上げられた七不思議の内、4つまで関わって事情を知っている葉山君は相当に変わった高校生活を送っていますよねぇ……
しかし「カシマレイコ」の件は放送室にパソコン置いて、放送されるように準備しただけでしたが……
口裂け女は、鍵の施錠が甘い部室などに入り込んで、演出するというもので。
演劇部だったら、小道具のマネキンの首をとり、マスクをつけ「わたしきれい」と文字を残す。鎌まで買ってきておいてあるあたり、細かいことに拘ってはいますが……
ジョークにしては趣味が悪いな、という感じ。
葉山君は、これまでの事件で慣れてるのか、また色々と捜査しています。
ただ、慣れてはいるけれど葉山君は決して名探偵ではないので、一部分は分かっても真相にはたどり着けず。
結局伊神さんに頼ることに。しかしまぁ、伊神さんはまた相変わらず気ままな生活していると言いますか……普段の食事はカロリーメイト、料理は気が向いた時。だから調味料も、最低限……どころか、醤油すらないとか、ツッコミどころばっかりだな……
とはいえ、伊神さんの方も葉山君の事よくわかってるので気を使ってくれたのは良かったかなぁ。
「それなら、先に君に真相を話しておくよ。君はいま言った七人の中から、呼ぶべきだと思う人間だけを呼べばいい」
と事情を聴き、三つの不思議の内のひとつの謎を解く、という場面で葉山君の判断に任せたのは、少し変わったのかなぁ、とか思ったり。
そうして、七不思議について調べて、今回発生した悪戯の謎を解き明かして……そこからさらに別の真実が導き出される、という展開は中々面白かったです。
まぁ、間に合わなかった部分もありますが、闇の中に葬られてしまうよりは、救いがある結末になったのではないでしょうか。
「……きみの考えてることくらい、分かるんだよ」
(略)
「私が半分、背負ってあげる。もし駄目だったら、一緒に落ち込もう」
文化祭目前のある日、生徒たちが登校するとそこには変なイラストが描かれた張り紙があちこちに張られていて。
目つきが悪いピンクの、ペンギンとも天使ともつかないそれ。
美術部には絵を描く天使、奇術同好会にはシルクハットから鳩を出す天使、とデザイン違いのものを何枚も。
その目的は不明なまま……天使はどんどん増殖していって。
そんな中で葉山君がまた厄介ごとに出くわしたりしていますけど……彼はなんだ、そういう星の元に生まれたのか。
変な張り紙を張るだけならいたずらとして笑ってみていられたけれど、HPの改ざんをしたり、科学準備室に侵入したりと、冗談で済まない様子になってきて。
食中毒騒ぎを起こす気かもしれない。犯人を文化祭までに捕まえるのは、簡単ではない。
葉山君はまた一人でグルグルと悩み……先生に相談して、飲食系の出し物を中止にするという方向に。
……クラスメイト達の努力を水泡に帰す報告をしたことに、かなり気落ちしていましたが……そこに柳瀬さんが来て彼に手を差し伸べて。
いや、格好いいなぁ、本当。そして、感極まった葉山君に抱き付かれて照れてる場面は可愛かった。いいキャラしてますね、本当。
各章AパートBパートがあって、視点が切り替わりますが……そこにも仕込みがして会って。すっかり騙されました。
「天使」事件の本当の目的は、実行者たちにとっては大切な……とても些細な願いで。こういう遊び心ある事件は、好きですねー。
ちゃか
ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
新刊・既刊を問わず読んだタイミングで記事を作成しております。
コメント歓迎。ただし悪質と判断したものは削除する場合があります。