「だけどね。私は傘が無駄になったことより雨が降らなくてよかったと心から思う」
直後、彼女が真剣な眼差しを浮かべる。それは切実と呼べるほどの。
「犠牲者を一人でも減らせればそれでいい。それがミゼンの存在する意義だから――」
最初はすごくわくわくしていました。
犯罪を予測して、未然に防ぐための組織。
捜査一課に属してはいるものの、そのお題目の怪しさから、内部からの評判は悪く、人数も少数。
設立したばかりで実績にも乏しく、スタートを切ったばかりの「捜査一科犯罪未然防止対策係」。
その設立に奔走した上司と、スカウトされて所属することとなった巡査部長の青年の物語。
犯罪を予測するといっても決して、怪しいオカルトな手段ではない。
現代に存在する膨大なデータを集約して計測することで、「犯罪の起きるかもしれない確立」を割出し、確証を得るための捜査を行う、っていうのは中々いいと思っていたんですけどねー。
設定部分と、最初の事件くらいまではまだ面白かった……んですよ。
後半一気に失速した感じが。
ちょっと1巻でまとめるには欲張りすぎたんじゃないかと。
もうちょっとミゼンっていう組織を中心に描いてからだったら、後半の展開も許容できた気がする。
あれ、2巻あたりのネタじゃないのか。
1巻でもっとストライカーを活用して事件を解決していって、ミゼンの名前を内部に広めていく。
その上で、上司との距離を縮めていったり、その秘めた謎に興味を抱いたりする。
そして最後、暗躍しているらしい老人が「ミゼンに新人が、ねぇ。面白そうじゃないか」とか言って幕……とかいう展開で問題なかったと思うんですが。
前半部分と後半部分の温度差がもうちょっとなんとかならなかったのかと、残念に感じる一作。
一作目の電撃文庫『月光』ほどの衝撃がない。
あれぐらいの作品が出てくることを期待したいところなんですが。